『幸福の条件』:1993、アメリカ

カリフォルニアに住むダイアナとデヴィッドは、高校時代に恋に落ち、19歳で結婚した。デヴィッドは建築家、ダイアナは不動産仲買人として成功を収めた。結婚7年目に、2人はマイホームを建てるために土地を買った。そこまでは、幸せ一杯の夫婦生活だった。
ところが、不況のせいでデヴィッドが建築事務所を解雇され、ダイアナの仕事も上手く運ばなくなり、ついに家を抵当に入れることになってしまう。2人はデヴィッドの父親から5000ドルを借りてラスベガスに行き、ギャンブルで勝負することにした。
ラスベガスでの初日、ダイアナとデヴィッドは金を2万5000ドルまで増やした。だが、翌日にはルーレットで負け続け、全財産を失ってしまう。カジノから立ち去ろうとする2人は、大富豪のジョンから、ダイアナを勝負のお守りとして貸してほしいと頼まれる。
ジョンはギャンブルに勝ったのはダイアナのおかげだと言い、彼女とデヴィッドをパーティーに招いた。3人は話している内に、愛は金で買えるかという話題になった。ダイアナとデヴィッドが「買えない」と言うと、ジョンは「試してみるか」と告げる。
ジョンは、自分とダイアナと一夜を過ごせば、100万ドルを2人にプレゼントすると申し出る。ダイアナとデヴィッドは、その申し出を断り、その場から立ち去った。だが、ダイアナは考えた末に、「100万ドルがあれば2人の将来が築ける」とデヴィッドに告げた。
デヴィッドは友人の弁護士ジェレミーを呼び、正式な契約書を作らせてジョンと契約を結んだ。ダイアナがジョンの元に行った後、デヴィッドは後悔して彼女を追い掛ける。だが、ダイアナとジョンと共に、ヘリコプターで飛び去ってしまった。翌朝、ジョンのクルーザーで一夜を過ごしたダイアナは、デヴィッドの元へ戻ってきた。
カリフォルニアに戻ったダイアナとデヴィッドは、抵当に入れた土地を買い戻そうとする。だが、既に土地は人手に渡っていた。あの夜のことを気にしているデヴィッドは、ダイアナの財布の中にジョンの名刺があるのを発見し、2人が密会していると思い込む。
ダイアナは土地を買ったのがジョンだと知り、彼の元へ出向いて怒りをぶつけた。だが、ジョンはダイアナからジョンと会ったと聞かされて怒り、2人はケンカになってしまう。デヴィッドは家を飛び出し、ジェレミーの元に身を寄せた。
1人になったダイアナは、行く先々でジョンに待ち伏せをされる。ダイアナは、次第に彼に惹かれるようになっていく。やがて、ダイアナのことを忘れようとするデヴィッドの元にジェレミーが現れ、ダイアナからの離婚手続きの書類を手渡した…。

監督はエイドリアン・ライン、原作はジャック・エンゲルハード、脚本はエイミー・ホールデン・ジョーンズ、製作はシェリー・ランシング、共同製作はマイケル・タッドロス、製作総指揮はトム・シュルマン&アレックス・ガードナー、撮影はハワード・アサートン、編集はジョー・ハッシング、美術はメル・ボーン、衣装はボビー・リード&バーニー・ポラック&ベアトリクス・アルーナ・パスツォール、音楽はジョン・バリー。
出演はロバート・レッドフォード、デミ・ムーア、ウディ・ハレルソン、オリヴァー・プラット、シーモア・カッセル、ビリー・ボブ・ソーントン、リップ・テイラー、ビリー・コノリー、ジョエル・ブルックス、ピエール・エプスタイン、ダニー・ゾーン、ケヴィン・ウエスト、パメラ・ホルト、トミー・バッシュ、マリークレア・コステロ、カート・オデル、ジエッダ・ジョーンズ、マイラ・J他。


ジャック・エンゲルハードの小説を映画化した作品。
ジョンをロバート・レッドフォード、ダイアナをデミ・ムーア、デヴィッドをウディ・ハレルソン、ジェレミーをオリヴァー・プラットが演じている。また、ハービー・ハンコックとシーナ・イーストンが本人役で出演している。

下世話な表現をすれば、これは「奥さんが金と引き替えにリッチなオッサンとセックスして、そいつに惚れてダンナとの離婚を考えたけど、オッサンがワルだったからダンナとヨリを戻す」という、世にもバカバカしい話だ。
「勝手にやってろよ、バカップル」という話だ。

この映画を、下世話な表現を避けて説明しようとしても、無理である。
だって、下世話話な映画なんだから。
何しろ、金のためにワイフを他の男に抱かせたダンナと、金持ちのオッサンとラブラブモードになっておきながらダンナとヨリを戻す奥さんの話だよ。
これ、どう頑張ったって、上品なドラマにするのは無理があるでしょ。

最初に金を得るためのセックスを選んだ時点で、もう答えは出ている。
「愛とセックスは別物」ではあるが、しかし通常の夫婦関係であれば、その申し出を受け入れた時点で愛も終わりだ。
ところが、「取り引きを承諾しておいて愛もキープしよう」という無理な話で、そこから先を続けようとするので、薄い中身を伸ばすハメになってしまう。

最終的に夫婦が仲直りしたように収めているけれど、良く考えると全く収まっていない。最後の最後、ギリギリの段階まで、ダイアナはジョンと付き合っており、デヴィッドとは別れる気持ちを固めているのだ。
つまり、その時点で夫婦関係は破綻しているのだ。

ところが、最後の最後になって、なぜかジョンが妙な優しさを出して、自分が女を騙すワルだと見せ掛けるウソをつく。しかし、それも優しさと言っていいのかどうか。テメエで夫婦関係を破壊しておいて、今さらジェントルマンを気取っても遅いってのよ。

このジョンが卑怯で最低の男に徹してくれれば、そこへの強い嫌悪感から、夫婦に同情を寄せることも出来たかもしれない。ところが、なんせレッドフォードなので、悪人に成り切れない。それどころか、恋愛劇の主役になろうとしてしまう。
まあ、そんなインチキ紳士なジョンはさておいて、とにかくダイアナは彼がワルだということで、デヴィッドの元へ戻る。
だけど、それもどうなのよ。いいかげんな女でしょ、明らかに。テメエから離婚を宣言しておいて、やっぱりドタキャンって、そりゃ身勝手もいいところだ。
元サヤという終わり方だが、あの夫婦、まず間違い無く離婚するぞ。

本当は、「金が無くても愛があればOK」と結論付けたいんだろう。
しかし実際に結果として導き出されたのは、「愛は金で買えないのかもしれないが、愛を壊すことも出来る。ついでに言えば、愛は買えないかもしれないが、女は買える。それがダンナのいる女でも。そして上手くやれば、女を買った後で愛も得ることが出来るだろう」という答えであった。


第14回ゴールデン・ラズベリー賞

受賞:最低作品賞
受賞:最低脚本賞
受賞:最低助演男優賞[ウディ・ハレルソン]

ノミネート:最低監督賞[エイドリアン・ライン]
ノミネート:最低主演男優賞[ロバート・レッドフォード]
ノミネート:最低主演女優賞[デミ・ムーア]
ノミネート:最低オリジナル歌曲賞
「(You Love Me) In All The Right Places」


第16回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の男優】部門[ロバート・レッドフォード]
ノミネート:【最悪の女優】部門[デミ・ムーア]

 

*ポンコツ映画愛護協会