『わたし出すわ』:2009、日本

函館。民家の郵便受けに1キロのゴールドバーが投げ込まれた出来事を、ニュース番組が報じている。そんな中、山吹摩耶は東京から帰郷 してアパートに引っ越した。彼女は引越屋の布田と大国に「これ、気持ちです」と言い、ポチ袋を渡す。部屋を出た布田が袋を開けると、 10万円も入っていた。彼は慌てて部屋に戻り、「貰えないですよ」と言う。すると摩耶は「気持ちですから。そのお金を有効に使って、 いい思い出を作ってください」と告げる。部屋を出た布田は、大国が貰った中身が1万円だと知って困惑した。
市電に乗った摩耶は、高校の同級生である運転手の道上保に終点で声を掛け、「仕事が終わる時間まで待ってていい?話があるの」と言う 。摩耶から「他の4人はどうしてる?みんなに連絡してくれる?」と頼まれ、道上は高校時代の仲間である魚住サキ、平場さくら、川上孝 、保利満に電話を掛けた。社長夫人のサキは「摩耶は成功してるって感じだった?」と興味を示し、さくらは「会いたいけど飼い犬が難病 にかかって、それどころじゃない」と言う。マラソン選手の川上孝は故障して「せっかくだけど会える状態じゃない」と告げ、養魚試験場 で働く保利は「中国から人が来ているので会えない」と述べた。
全員が来られないと聞かされた摩耶だが、微笑して「大丈夫、しばらくいるから」と道上に言う。母親のことを問われ、「悪い状態のまま 、変わらず」と答える。道上は「大変だな。病院代もバカにならないだろ」と口にする。摩耶は、道上が高校時代から世界中の路面電車 巡りを夢見ていたことを確認する。道上が「これで充分だよ。お金も無いし」と言うと、彼女は「私が出してあげようか」と言う。後日、 道上の家に摩耶から大金が届き、「勝手に旅行費用を換算して送らせてもらいました」という手紙が添えてあった。
摩耶はサキと再会し、彼女がオーナーを務めるレストランに誘われて昼食を取った。サキは「玉の輿に乗れた」と嬉しそうに言い、「摩耶 も東京を引き払って、こっちで落ち着きなさいよ」と勧める。サキは摩耶に高価な服を買ってプレゼントした。摩耶が歩いていると、道上 の妻・かえでが待ち伏せていた。「なんであんな大金を主人に」と問われ、摩耶は「お世話になった人に、せめてものお礼として」と返答 した。かえでが「もっと有効に使ったらどうですか。世の中には貧しい人や体が不自由な人、助けを求めている人もいるわけで」と言うと 、摩耶は「そういうことなら、相談して、道上さんに理解してもらえばいいじゃないですか」と提案した。帰宅したかえでは、浮かれた 様子で札束を手に取り、その姿を夫に撮影してもらった。
サキの夫・豪の乳製品会社で横領疑惑が持ち上がった。取材に応じようとした豪は、倒れて急死した。豪の通夜で、摩耶と同級生の面々は 顔を合わせた。通夜の後、摩耶は「川上君のお母さんに久しぶりに会いたいな」と言う。川上の母・たみは、彼女を笑顔で歓迎した。川上 が故障しており、チームにも会社にも高額の治療費を捻出できないことを知った摩耶は、「私が出してあげるから」と告げた。
後日、摩耶は川上の主治医・大野と会い、「川上君の心臓は、普通の人の2分の1の消耗でも活動できるものなんです。特殊な心臓で、 長距離ランナーにとっては凄い武器なんです」と説明を受ける。しかし筋肉への負荷が大きすぎて、疲労骨折を繰り返す可能性が高い。 その慢性化を防ぐには、シカゴの有名な教授に手術してもらう以外に方法は無いらしい。摩耶は大野から、頼んでおいた見積書を受け取る 。川上から「なんで俺に?」と訊かれた摩耶は、「走ってもらいたいから。自分の納得するところまで」と答える。「それでマヤに何が 残る?」と尋ねられ、彼女は「私も、走りたいから」と告げた。
摩耶はさくらの運転する軽トラックに同乗し、大型ショッピングセンターへ出掛ける。ゴールドバーのニュースが話題になり、摩耶は 「さくらだったらどうする?私がゴールドバーあげようか」と問い掛ける。さくらは「欲しいものってあると言えばあるし、無いと言えば 無いし。旦那も今の男でいいしさ。職業は嫌だけど」と言う。彼女の夫・まさるは、消費者金融会社で働いている。さくらは摩耶から 何を買ってもいいと言われ、小型冷蔵庫を購入して代金を支払ってもらった。
さくらが帰宅すると、まさるは「俺の幸せは、お前の幸せだよな」と確認する。それから「その人に言ってくれないかな。箱庭協会の会長 が、ある金額で会長の権利を譲ってくれるらしいんだ。その金、出してくれないかな」と言う。さくらが電話を掛けると、摩耶はまさるの ために金を出してくれた。箱庭協会の会長は神林多恵からまさるに交代し、彼はわずかな記者の前で就任会見を行った。
渡米した川上は母とテレビ電話で会話を交わし、「手術は成功して経過も順調だけど、母さんの御飯、思い出すよ。早く帰りたいよ」と 言う。摩耶は、意識不明で寝たきりとなっている母を見舞うため、病院を訪れた。彼女は反応の無い母に話し掛け、しりとりをする。摩耶 が保利の職場を訪れると、彼は自分が続けている研究について語る。「こういう研究に金、出すか」と問われ、摩耶は「出すわよ。でも、 そんな研究資金を出したがってるとこ、たくさんあるわよ。それに対して貴方が上手く対処できるかしら」と述べた。
道上はかえでから「車の保険で、少しあの金を使ってもいい?」と言われ、「すぐ返せばいいよ」と優しく告げた。彼は交通局課長から、 旅行に行った際に各国の路面電車事情をレポートしてほしいと頼まれ、「初めからそのつもりでした。出来るだけのことはします」と 答えた。川上が帰国したので、摩耶は神社で会った。保利が中国人の美女を伴って高級ホテルの一室へ入ろうとすると、摩耶が現れる。 彼女は「キャンセルしたわ。貴方のボスに電話しなさい」と女を追い返した。
摩耶は自分が手配した部屋に保利を招き入れ、「もっと自分の仕事の重要性を分からないと」と諭した。彼女がホテルを去ろうとすると、 中国人美女を手配した仲介屋・溝口雅也が現れて「邪魔をすると怖いことになる」と警告した。別の日、摩耶は再び、さくらと買い物に 出掛ける。さくらは、まさるが会長職になってから、取り立ても物腰が柔らかくなったと評判だと語る。川上は順調にリハビリを続け、 大野から「休み明けにはとんでもない記録が出るかもしれない」と言われて喜んだ。
摩耶が母の見舞いを終えて病院を去ろうとすると、溝口が現れて「貴方のことを調べさせてもらいました。株が暴落した時も大変な利益を 出したらしいですね」と言う。サキは引っ越しを終え、生活費を稼ぐためにホステスの仕事に戻った。常連客の住職は、「アンタが結婚 する気なら、すぐ離婚してもいいよ」と口説いてシャンパンを入れる。彼は「お金は元気がある者に付いて来るんだ」と言う。
かえでは金遣いが荒くなり、若い男・マックスに高額な物を買い与えるようになる。まさるは彼女が300万円も使い込んでいると突き止め、 さくらに知らせる。かえでは使い込みを知った道上から「なんで使ったんだ?」と問い詰められ、「ここにあれば使うでしょ」と開き直る 。彼女は借金までしていたが、「しょうがないじゃない、今まで知らなかったことを覚えちゃったんだから。ここにお金があったのが いけなかったのよ」と逆ギレした。
摩耶は道上のために、新たに大金を用意した。しかし道上は「これ以上、お金は貰えないよ。好意を無駄にしてしまったし」と遠慮した 。「無駄ではないわ」と摩耶が言うと、彼は「こうなって、ますます外国に行きたくなった。退職金を前借りしてでも行きたいんだ。自分 のやりたいこと、やらなきゃいけないことに気付かされた。だから自分の気持ちとしても受け取れない。ありがとう」と語った。
病院へ車で向かっていた摩耶は、尾行に気付いた。途中で停車すると、運転していたのはサキだった。「なんで尾けてきたの」と質問する と、サキは「気になるのよ。なんで辛い私の所に来なかったのよ」と非難めいた口調で言った。摩耶は「今の貴方の気持ちは理解できない から」と答えると、サキは「どうしてそんなにお金があるの。誰がスポンサーなの」と尋ねた。摩耶は「サキ、東京へ行ってみる?」と口 にした後、彼女をアパートへ案内した。室内には何の調度品も無かった。
摩耶は押入れからバケツを取り出し、そこに入っていた5個の金塊を見せた。そして「1500万以上あるわ。あげる。もう私の全財産、サキ に残しておいたの」と言う。サキは金塊を現金に換えた後、高い服を買って出勤した。スタンレー・アラビアンの日本支社長・天草大二郎 が客として来ると、彼女は摩耶に電話を掛けた。スタンレー・アラビアンと天草大二郎が実在することを確かめたサキに、摩耶は「今日中 に何とかしようと思ってる?だったら今からそっちへ行く。その人、偽者かも」と警告した。しかしサキは「もういいわよ。私に任せて」 と言い、電話を切った。翌朝、サキは千歳の牧場で死体となって発見された…。

監督は森田芳光、脚本は森田芳光、製作総指揮は豊島雅郎、プロデューサーは竹内伸治&三沢和子、ラインプロデューサーは橋本靖、 エグゼクティブスーパーバイザーは黒澤満、撮影は沖村志宏、照明は渡辺三雄、美術は山崎秀満、録音は高野泰雄、編集は川島章正、 音楽は大島ミチル。
主題歌「ほしいもの」辻詩音、作詞・作曲:辻詩音、編曲:mw。
出演は小雪、黒谷友香、井坂俊哉、山中崇、小澤征悦、小池栄子、仲村トオル、藤田弓子、小山田サユリ、ピエール瀧、永島敏行、 袴田吉彦、加藤治子、天光眞弓、佐藤恒治、富川一人、鈴木亮平、吉増裕士、入江雅人、武田義晴、小川岳男、一太郎、林剛史、 珠木ゆかり、北川景子、趙淳、陳有崎、太田誠一、野間口徹、小村祐次郎、富田正夫、佐藤雄一、宮谷卓也、中山美緒、原田玲、佐藤瑞紀 、新立美香、山崎文雄、竹内伸治、広部卓也、永江智明、ヨシダ朝、永嶋啓司、田中俊英、大塚和彦、原隆仁ら。


森田芳光監督が『(ハル)』以来、13年ぶりにオリジナル脚本を手掛けた作品。
摩耶を小雪、サキを黒谷友香、道上を井坂俊哉、川上を山中崇、保利を小澤征悦、さくらを小池栄子、溝口を仲村トオル、たみを藤田弓子 、かえでを小山田サユリ、まさるをピエール瀧、住職を永島敏行、天草を袴田吉彦、神林を加藤治子、摩耶の母を天光眞弓が演じている。
川上に治療費の出所を尋ねようとしてコーチに制止される女性記者の役で、北川景子が1シーンだけ出演している。

冒頭、摩耶は引っ越し屋に金をプレゼントするが、布田には10万円、大国には1万円と金額が異なる。
なぜ金額に差があるのかは、全く説明が無い。
摩耶が言葉で明確に説明する必要はないけど、何となく推測できるための材料が欲しい。
この2人、仕事ぶりに差があるわけでもないし。
終盤に布田が再登場するので、その時に金額の差についての説明があるのかと思ったが、無いままだった。

とにかく構成が上手くないなあ感じる。
まず、道上が摩耶に頼まれて同級生4人に連絡を取るシーンがあるが、そこで1人ずつ登場させる必要なんて無い。
摩耶が道上に「そのお金、私が出してあげようか」と言った後、道上家に金が届くシーンへの繋ぎ方もイマイチ。
そこは、何か別のシーンを挟んでから道上家に金が届くシーンへ行くか、もしくは道上に「出してあげようか」と告げた後で移動したり して、その日の内に金を渡す展開へ移った方がいい。
この構成だと、後日に移るところがツギハギっぽく感じられる。

あと、道上は夢に対する熱い思いを語っているわけではなくて、今は別にどうでも良くなったような感じなのだが、それなのに摩耶が金を 出そうとするのは、どうなのかと。
まあ摩耶が何でもいいから金を出したがっているという設定のようだから、相手の情熱とか気持ちの強さは無関係なんだろう。
だけけど、そこはやっぱり、今も道上が夢を持っているとか、もしくは高校時代に熱く夢を語っていた回想シーンを入れるとか、そういう 描写が欲しかったな。

道上が金を受け取った後、その反応をキッチリと見せようとしていないことにも不満がある。
しばらく過ぎてから、かえでが「主人が喜んでいます」と語ったり、その後で彼女本人が浮かれている様子が描かれたりするけど、金を 受け取った直後のリアクションが欲しい。
道上は金を受け取ってすぐに喜んだのか、それとも少しは困惑したりビビったりしてから喜びに変化したのか。
その辺りの「金を貰った相手が直後に見せる反応、そして心情の変遷」ってのは、かなり重要じゃないかという気がするんだけどな。

途中でサキの夫が急死するが、その展開は要らないなあ。
摩耶が関与する前に、金を貰う側で勝手に「状況の変化」を作るのは、得策とは思えない。ある状況に置かれている人が、摩耶に貰った金 によって変化するという形で、見せていった方がいいと思うんだよね。
金を貰う前に大きな変化を見せると、摩耶の金による変化という部分の仕掛けの意味が弱くなっちゃうかなと。
サキの状況を変化させるなら、まだ摩耶と会う前に終わらせちゃった方がいいんじゃないかな。

サキの夫の通夜で、摩耶は同級生の面々と再会する。
「みんな会えないと言っていたけど、通夜では簡単に会えました」ということに何か意味を持たせているならともかく、そんな感じは 無い。
だったら、通夜で一度に全員と会うのではなく、その前に1人ずつと会う形にした方がいい。
っていうか、「全員と同時に会う」という状況って、少なくとも前半の内は、用意しない方がいいんじゃないか。

摩耶は保利をホテルの部屋に招き入れた後、「もっと自分の仕事の重要性を分からないと。貴方のために男の人を用意したわ」と言い、 ジョーという男を紹介する。保利が男娼なのかと困惑していると、ジョーはマジシャンであることが判明する。
このシーン、何の意味があるんだろうか。
もし喜劇のつもりなら、テンポも間の取り方も悪くて、全く笑いに繋がっていない。
さくらが飼い犬の死について「摩耶には分からないわよ、8年も一緒にいたペットなのよ」と言い、摩耶が「分かるわよ。ウチにだって ペットいたもの」と答え、「何?」という問い掛けに「ニシキヘビ」と答えるシーンも同様で、何の笑いにもなっていない。

まさるの就任会見でのコメントを長々と見せているのは、そこにメッセージやテーマがあるからだろう。
たぶん「箱庭だと、俯瞰で見ることが出来る」という部分に、重要な意味があるんだろう。
ただ、それが上手く機能しているか、観客に伝わるように描写されているかというと、答えはノーだ。
お金に関する森田監督の考えや主張を色々と盛り込みすぎて、まとまりが無くなっているんじゃないか。

サキが摩耶に「どこにお金が?」と問い掛けるのは、摩耶が他の同級生に大金を渡したことを知っているからだ。
しかし、サキが同級生から、それについて聞かされるシーンは描かれていない。そこは省略せず、ちゃんと描くべきだろう。
そこに限らず、必要に思えるような箇所を色々と省略しまくっている印象がある。
それとは逆に、溝口が絡む部分とか、終盤にサキの事件で刑事たちが来る展開とか、無駄に思える部分もある。
サキを殺した犯人が天草じゃなくて全く別の飲食店従業員とか、どうでもいいわ。

摩耶が道上に金を出すと言った直後、教室の映像に切り替わり、「マヤ、そんなの聴いて面白いのか?」というテロップが表示される。
同じように、川上の時は「マヤ、走ってみろよ。嫌なこと忘れるぜ」、さくらは「マヤ、あなたは東京にむいている」など、摩耶が各人 から高校時代に言われた言葉が表示される。
終盤になって、「みんなが声を掛けてくれたのが嬉しかった」というのが、摩耶が同級生に大金を出す理由であることが示される。
だけど、その短い文字だけでは何の説得力にもならない。
いや、むしろ「その程度のことで大金を支払う」という風に見せたいのだとしても、そこを理由にするなら、やはり回想シーンはあった方 がいい。

っていうか、そもそも、「摩耶が大金を出す理由」って、中途半端な形で用意する必要性があったんだろうか。
彼女は引っ越し屋にも金を与えているが、それについては「なぜなのか」という説明が用意されているわけではない。
で、別に理由付けなんて、無くても良かったんじゃないかと思うのよ。むしろ、最後まで理由は明確にされないまま、謎めいた形で終わらせてもいいじゃないかと。
それは金の出所に関しても同様で、「株で儲けていました」とか、逆に気持ちが萎えるわ。
そこも謎のままで良かったのに。

そもそも、なぜ摩耶が大金を出すのか、その出所はどこなのか、そういうことを探ることに主眼を置いた作品ではないはずだ。
劇中、彼女の同級生が「なぜ金を出す?」「スポンサーは?」と尋ねるシーンはあるものの、摩耶がはぐらかしてしまうと、そこで 終わらせる。
それ以上、追求しようとすることは無い。
金を受け取ったことによって、人がどうなるのかを描くことに主眼が置かれているはず。

ただ、金を受け取った人々の人生模様に主眼が置かれているはずなんだけど、そこの描き方については不満が多い。
まず何よりも、「全員、すげえ簡単に大金を受け取っちゃうのね」という部分に引っ掛かる。
いきなり大金をポンと渡されたら、不安に感じたり、「何か裏があるんじゃないか」と勘繰ったり、怖くなったりする奴もいて良さそうな モンでしょ。
最終的に受け取るにしても、心の葛藤、揺れ動きはありそうなものなのに、そこは淡白に処理される。
そりゃあ、中にはノホホンと平気で受け取って使っちゃう奴もいていいけど、そういう奴らばかりなんだよな。
大金を遠慮するのは、さくらだけだ。

摩耶が浮世離れした存在、フワフワして捉えどころの無い存在になっているのはいいんだけど、同級生の連中も中身がペラペラで、どこか 生々しさが感じられないのはどうなのか。
変なのは摩耶だけでいいのに、前述した「簡単に大金を受け取る」ということも含め、同級生も変な奴らに見える。
そいつらまでファンタジーになっちゃうと、この話の全てが絵空事になってしまう。
そうなると「摩耶が何の見返りも求めず、同級生たちに大金を渡していく」という部分の、ファンタジーとしての仕掛けが弱くなって しまう。

あと、かえでやサキは、「大金を受け取ったせいで人生が狂って不幸になる奴ら」という役割を担っていると思うんだけど、金遣いが荒く なって若い男に入れ上げるかえではともかく、サキは「摩耶から大金を貰ったせいで不幸な目に」という形が成立していないんじゃないか 。
彼女が天草をモノにしようとしたのは大金を手に入れたからじゃなくて、以前から上昇志向が強かったからだ。
彼女は天草を落とす目的で牧場へ出掛けて殺されるが、金を持っていたから殺されたわけではない。
サキの役割が私の想像と違っているのだとして、「じゃあ何を描きたかったのか」が分からない。
っていうか根本的に、この映画自体、何を描こうとしたのかボンヤリしている。

(観賞日:2012年4月1日)

 

*ポンコツ映画愛護協会