『わさお』:2011、日本

鯵ヶ沢町に住む小学生の田川アキラは、姉の真希、父の剛、母の美佐子、そして飼い犬のシロと共に、トライアスロン大会を観戦していた。バイクで通過していく選手たちをコース脇で応援している最中、アキラは隣りに割り込んで来た男性とぶつかり、シロを遊ばせるために持っていたボールを落としてしまった。コースに転がったボールを追い掛けてシロが飛び出し、慌てて美佐子が捕まえに行く。そこへ車が走って来て、美佐子ははねられた。
美佐子は病院に運ばれるが、意識不明の状態が続いた。アキラはシロに怒りをぶつけ、「お前のせいだぞ。もうどこにでも行け」と罵った。剛はシロを、東京で暮らす親戚の元へ戻した。だが、その親戚が目を離した隙に、シロは逃げ出してしまった。シロは野を越え山を越え、長い月日を掛けて、ついに東北の地へ辿り着いた。シロは懐かしい田川家へ行き、アキラの自転車を見つけて歩み寄った。
鯵ヶ沢町の海沿いできくや商店を営むセツ子は、3匹の犬を散歩させていた。居酒屋「ISARIBI」を営む尚子が開店準備をしていると、百姓の達也が野菜を届けに来た。彼は浮かない顔で、「今日はこれだけだ。畑を荒らされた」と告げた。犯人の正体は分からないという。田川家を去ったシロは、下校するアキラの姿を遠くから眺めた。アキラは散歩帰りのセツ子と遭遇し、挨拶を交わす。セツ子が飼っている犬は4匹だが、その内のナギサは調子が悪く、その日は休ませていた。
セツ子が店に戻ると、ちょうど夫の浩が漁から戻ったところだった。川で釣りをしていた尚子の父・茂夫は居酒屋に現れ、「凄いのを見た。白いライオンだ」と言う。しかし尚子も常連客の老人3人組も、まるで相手にしなかった。ナギサを診察してもらうため、セツ子は夫に留守を任せて谷岡動物病院へ向かう。谷岡はナギサが飲み込んでいた花火を取り出し、「これで心配ないと思いますよ」と告げた。
セツ子が帰る途中で達也の畑に立ち寄ると、甚大な被害が出ていた。達也は「熊か山猿か、野犬なら結構デカい奴だ」と言う。店に来たアキラは、セツ子の飼い犬のモンちゃんが妊娠していることに気付いた。過去に犬の妊娠を見たことがあったのだ。真希が呼びに来たので、アキラは母が入院している病院へ向かう。その近くをシロが走っていたが、2人は全く気付かなかった。店に戻ったセツ子は、中学生のサヨから、モンちゃんの妊娠に気付いたのがアキラであることを聞かされた。
海辺へ墓参に出掛けたセツ子は、シロと遭遇した。しかし目を離した隙に、シロは姿を消していた。畑が荒らされる事件が続発しているため、保健所職員の井原や役場職員の小山は達也から「早く何とかしてけろ」と抗議される。犯人が熊である可能性が高いということで、老人の貢は「トライアスロンをやっている場合じゃねえ」と言う、小山は慌てて「トライアスロンは予定通り開催します」と告げ、協力を要請した。熊を退治するために猟友会を呼んではどうかと老人たちが言うと、茂夫は「いい人知ってるばってん」と述べた。
翌日、港で作業をしていた浩は、シロを目撃した。セツ子が犬たちを散歩させていると井原が来て、「最近、熊が出るらしくて。何か気付いたことありますか」と尋ねた。「熊が親子連れでも、殺すんですか」とセツ子が訊くと、「もちろん、最初は山さ追い返しますよ。殺処分は最終手段ですから」と井原は答えた。井原が去った後、セツ子は「みーんな一生懸命生きてんのにねえ」と呟いた。
店に戻ったセツ子が犬に餌をやっていると、シロが現れた。しかし「貴方も食べる?」と呼び掛けて近付こうとすると、すぐに逃げ出した。浩が「あのワサワサは、なかなかのモンだ」と言うので、セツ子は笑った。アキラは病院を訪れ、意識が回復した美佐子に「シロを東京へやっちゃった。怒ってるよね」と申し訳なさそうに告げる。美佐子は静かに彼の手を握った。その夜、サヨの家では、何かが庭の小屋を荒らすという事件が起きた。
翌朝、井原たちに呼ばれたマタギの長谷川がサヨの家を訪れ、被害状況を調べた。居酒屋で飲んでいた達也は、尚子から「トライアスロン出てよ」と持ち掛けられ、老人たちが出場を決めたことを知らされる。「一番になったら、達ちゃんのお嫁さんになるから」と言われた達也は、驚いて尚子の顔を見つめた。セツ子は餌を入れた皿を店の外に置き、浩に付き合ってもらってシロが来るのを待つ。物陰から様子を窺っていると、シロがやって来た。そこへナザキが歩み寄り、餌を食べた。それを見ていたシロは、餌を口に運んだ。それを見ていたセツ子は喜び、浩に「あの子の名前、今日から“わさお”だよ」と告げた。
トライアスロンの練習をしていた老人3人組は、わさおを目撃した。大会出場を決めた達也は、練習を開始した。夜、自転車を走らせて いた尚子は、わさおを目撃した。彼女と老人たちは、わさおの面倒をセツ子が見るようになるのではないかと噂した。翌朝、きくや商店に来たサヨは、友人のトモヤとヨーヘイに「トライアスロンの後夜祭に申し込む。大会の後、ねぷた集めてお祭りみたいなことするんだって。それ、参加しよう。3人でねぷた作って、お囃子やろうよ」と持ち掛けた。男子2人は嫌がるが、サヨは強引に参加を決めた。
店の外に現れたわさおは、もうセツ子が近付いても逃げなかった。トラックの荷台にナギサを乗せた彼女が「一緒に行くか?」と誘うと、わさおは飛び乗った。セツ子は浜辺でわさおとナギサを散歩させた。サヨはアキラにトモヤとヨーヘイを連れ出してもらい、谷岡の指導で太鼓を練習させた。アキラがきくや食堂にいると、サヨがやって来た。サヨから飼っていた犬のことを訊かれた彼は、「いつも一緒にいたのに、どっか行っちゃえって言っちゃったんだ」と悔やんでいる様子を見せた。
トモヤとヨーヘイが来たので、サヨは一緒に去った。浩はセツ子に、サヨの両親が離婚調停中であることを教えた。店に来た長谷川は、セツ子の飼っている犬たちを調べる。セツ子が行くと、彼は「もう一匹いるべ?」と尋ねる。「わさおは悪さする子じゃないですよ」とセツ子が言うと、長谷川は「熊とやり合う恐れがあるべ。熊を手負いにされたら厄介だ。ここで世話してるんなら、繋いどいてけろ」と述べて立ち去った。
きくや食堂を訪れた達也は、結婚したい相手がいることをセツ子に打ち明ける。セツ子は微笑を浮かべ、「達っちゃんなら、きっと上手く行く」と告げた。犬の散歩に出掛けたセツ子は佇んでいるサヨを見つけ、彼女を励ました。わさおの存在を知ったアキラは、それがシロであることを知らず、「会いたいなあ」と口にする。山に入った長谷川は動物の気配に気づいて猟銃を構えるが、それはわさおだった。彼は猟銃を下ろして立ち去るが、その近くには熊が潜んでいた。
剛は美佐子の担当医から、体調が安定して来たので別の病院で手術してはどうかと勧められる。トラックを走らせていたセツ子はわさおを見つけ、車を停めて呼び掛ける。わさおがアキラのいる美佐子の病室を見つめていることに、彼女は気が付いた。老犬のナギサは、日に日に衰弱していった。面倒を見ていたセツ子が転寝している間に、わさおがナギサに近付いた。わさおが去った後、セツ子が目を覚ますと、ナギサは息を引き取っていた。「ありがとね」とナギサに告げたセツ子は、犬の毛を見つけ、わさおが来ていたことを知った…。

監督は錦織良成、脚本は小林弘利、製作は遠藤茂利&木下直哉&福原英行&堂馬隆之&水口昌彦&平井陽一朗&五盛篤史&塩越隆雄&石田稔&遠藤俊昭&八幡正史&吉村和文、エグゼクティブプロデューサーは伊藤満、プロデューサーは柳迫成彦&川崎隆&小笠原宏之、撮影は柳田裕男、照明は吉住荘介、美術監督は稲垣尚夫、録音は西岡正己、編集は日下部元孝、音楽プロデューサーは津島玄一、音楽は海田庄吾。
主題歌『僕の宝物』作詞:玉城千春、作曲:海田庄吾、編曲:井上鑑、歌:薬師丸ひろ子。
出演は薬師丸ひろ子、平田満、佐野史郎、笹野高史、尾美としのり、クノ真季子、嶋大輔、大沢樹生、伊澤柾樹、吉永淳、甲本雅裕、鈴木砂羽、上田耕一、河原さぶ、不破万作、前田聖来、井之脇海、藤本旺輝、赤山健太、高田賢一、中帆登美、藤本一喜、伊藤一郎、えりえ、伊藤幸純、本橋奈々、花凛、高月祐士、三村申吾、東條昭彦、菊谷明生、小山内怜那、猿川天嵐、木村唯菜、中川美紅、中川愛佳、中川百々香、田村皆美、津田禎、戸松あかり、藤田幸雄、山西栄莉香ら。


ブログやテレビ番組で紹介され、「ブサかわ犬」として人気者なった同名の犬を題材にした映画。
劇中の「わさお」は、わさおが演じている。
セツ子を薬師丸ひろ子、浩を平田満、茂夫を佐野史郎、長谷川を笹野高史、田川を尾美としのり、美佐子をクノ真季子、井原を嶋大輔、谷岡を大沢樹生、アキラを伊澤柾樹、真希を吉永淳、達也を甲本雅裕、尚子を鈴木砂羽が演じている。
監督の錦織良成と脚本の小林弘利は、『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』に続いてのタッグ。

「日本の動物映画に当たりは無い」というのが私の偏見だが、その偏見を覆すことが出来なかった作品である。
動物映画、しかもネットやテレビ番組で取り上げられて人気者になった犬を題材にした映画ということで、最初から「こりゃ間違いなくダメな作品だろうな」と思っていたのだが、その予想は的中した。
そもそも、わさおはブログなどで取り上げられて「ブサかわ犬」として人気者になっただけであり、そこに魅力的なドラマがあって話題になったわけではない。
だから、企画として最初から無理があるんだよな。

原案になるような厚みのあるドラマが存在しないので、映画としてはオリジナルの物語を構築する必要がある。
で、どんな内容の物語を作るのかというと、やっぱり「感動的なドラマ」を狙っちゃうんだよね。
いや、そりゃあ分からないではないのよ。もちろん、この題材でミステリーやアクションに仕上げるのは完全に的外れだし、観客動員ってことを考えると、やはり感動のドラマってのが最も分かりやすい路線なんだよね。人情喜劇ってのも無くはないけど、まあ難しいしね。
ただ、感動路線にするのは受け入れるとしても、ものすごく陳腐で安っぽいんだよなあ。
まあ日本の動物映画って、総じてそんな仕上がりになっちゃうんだけど、それにしても安っぽい。

まず野良犬となったシロが町を移動する様子が写し出された後に描かれるトライアスロン大会のシーンからして、「わざとなのか、ツッコミを入れてもらいたがっているのか」と邪推したくなるほど変な内容なのね。
「アキラがボールを落とし、それを拾おうとしてシロが飛び出し、シロを捕まえに行った美佐子が車にひかれる」という展開の安っぽさは、ひとまず置いておくとしよう(ホントは置いておくべきじゃないんだが)。
でも、「なんでトライアスロン大会のルートに車が反対車線から猛スピードで走って来るんだよ」と言いたくなる。
交通規制は敷かれていないのか。それとも、真っ当な大会じゃないのか。

アキラは「お前のせいだぞ」と泣きながらシロを罵り、剛が東京の親戚に預けることにする。剛がシロを車に乗せて出発すると、アキラは涙をこぼしながら走って追い掛ける。
いやいや、どういう感情から来る行動なんだよ、それは。
「母親が死ぬかもしれない」ということでシロを罵倒しておいて、なぜ追い掛けるのか。
もしかして、「罵倒したけど、ホントは今も愛情があるので追い掛ける」とか、そういう複雑な感情表現のつもりなのか。
だとしたら、それは無理。伝わらんよ。

その後、アキラに嫌われたシロは東京の親戚に貰われるが、抜け出してアキラの元を目指す。動物が主役の映画やドラマで見飽きるほど見て来た展開である。
そこから「たくましい野犬となり、他の野犬を束ねてリーダーになり」という『炎の犬』的な流れは無いが、あっという間に成長したシロは、森で威嚇してきたドーベルマンがビビって逃げ出すぐらい凄みのある犬に成長する。
わさおは「ブサかわ犬」として人気者になったが、シロは「一睨みで野犬を怯ませる怖い奴」になる。
まさか、そのシロとわさおが同じ犬だとは思えないだろう。
だが、そうなのである。

シロが「わさお」になったところで、「わさおって、菊谷商店の節子さんが面倒を見ている犬だよな」ってことに気付く。つまり映画としては、セツ子とわさおの関係がメインで描かれるべきなのだ。
にも関わらず、アキラとシロの関係から話が始まっている。そうなると、アキラとわさおの関係を大きく取り扱う必要性が生じる。
だが、後に飼い主となるのはセツ子なのだから、そちらの関係も描く必要がある。
この時点で、既に「盛り込みすぎじゃないのか」という印象を受ける。
まだ始まって10分ぐらいしか経っていないし、セツ子とアキラの2人しか重要人物としては受け止めていないにも関わらず、そう感じるのだ。

セツ子が登場すると、3匹の犬を散歩させている。飼い犬は4匹だが、ナギサは調子が悪いので休ませていると彼女はアキラに説明する。
その「ナギサは具合が悪い」とか「休ませている」ということに、何か意味があるのか、後の展開に関わって来るのかというと、特に意味は無い。
診察に行くという展開があるが、それが無くても何の支障も無い。
それは谷岡を登場させるために用意された展開だが、彼を登場させる方法なら、他に幾らでもあるだろう。

散歩から戻ったセツ子は餌をやるが、モンちゃんの様子に違和感を抱いたらしい反応を示す。何を感じたのか、モンちゃんにどんな異変が生じたのかと思っていたら、それを説明しないままカットが切り替わり、次の展開に進む。
その後、アキラが来て「妊娠してる」と口にするので、さっきのはそういうことだったのかと、ようやく分かる。
で、そこの「セツ子が異変を感じる」と「アキラが妊娠だと気付く」という2つの出来事の間隔を空けることに、何の意味があるのかと。そこは「セツ子が変だと感じた時にアキラも同席していて、妊娠に気付く」ということにしておけば、1シーンで処理できることでしょ。2シーンに分けるのは、無駄な手間だ。
っていうか、根本的な問題として、「そのエピソードって必要か?」と思うしね。

次のシーンでは、茂夫が店に来て「白いライオンを見た」と言う。振り返ってみると、シロが東北の地に辿り着いた後、川釣りをしていた茂夫が何かに気付いて「あん?」と口にするシーンがあった。つまり、彼の見たライオンってのは、わさおのことだ。
だが、「あん?」と茂夫がどこかを見た次のカットでは、シロは道路を走っているのだ。
つまり「茂夫がシロを見た」と感じさせるカットが、用意されていないのだ。
それは明らかに手落ちでしょ。

最初にアキラが病院を訪れた時、美佐子は意識不明の状態が続いている。しかし次に病院が写ると、美佐子は普通に目を覚ましてベッドにおり、アキラが話し掛けている。
どうやら、その2シーンの間に「美佐子の意識が回復する」という出来事があったようだ。
だったら、そこは描かなきゃダメでしょ。
そんな重要なシーン、なんで省略しているんだよ。
ずっと意識不明だった母親が目を覚ましたら子供たちは喜ぶはずだし、そこは見せるべき出来事じゃないのか。

その後、わさおは何度もセツ子と浩の前に現れるが、すぐに去ってしまう。だから当然のことながら、セツ子とわさおの触れ合いなんて、まるで描くことが出来ない。
そして、わさおは「たまに登場する犬」という良く分からない存在のままで放置され、わさおとは何の関係も無い話が描かれていく。
「畑が荒らされる事件の犯人探し」とか、「トライアスロン大会に向けての取り組み」とか、そういうことだ。
トライアスロンについては、「寂れた町に以前のような活気を取り戻したい」という住人たちの意識も示される。
繰り返しになるが、そういった話は、わさおとは何の関係も無い。住人たちはわさおを目撃するが、「畑を荒らす犯人では?」と誤解することも無い。

映画が始まってから約40分後、シロはセツ子の用意した餌を食べ、ようやく「わさお」と命名される。
だが、まだセツ子と仲良くなったわけではない。
わさおの絡む物語が遅々として進まない一方で、熊出没注意の看板が立てられたり、老人たちがトライアスロン大会に向けて練習を始めたりという様子が描かれる。
相変わらず、熊退治とトライアスロン大会を2本柱として映画は進められていく。

どうやら錦織良成と小林弘利は、「わさおの物語」や「セツ子とわさおの触れ合いのドラマ」なんて描く気は全く無かったようだ。
彼らが描こうとしているのは、「鯵ヶ沢町の人々が織りなす人間模様」である。
だから、わさおはたまに姿を見せるだけで、セツ子が飼い始めた後も、彼女とも、他の住人とも、ほとんど触れ合わない。
「次第に仲良くなり、強い絆で結ばれて」などというドラマは用意されていない。
「わさおと触れ合うことで、住民たちが少しずつ変化していく」とか、そういうドラマも無い。

わさおが映画の根幹部分において、いてもいなくても変わらない存在、っていうか要らない存在になっているわけだから、『わさお』というタイトルと中身は全く合っていない。
その時点で映画としてはアウトなのだが、もっと問題なのは、わさおをないがしろにしておいてまで描いている「鯵ヶ沢町の人々が織りなす人間模様」のドラマが、まるでまとまりが無いし、つまらないってことだ。
「わさおのことは置いておくとして、ドラマとしては面白い」ってことなら救いがあるが、そっちの出来栄えも悪いんだよね。
余計な要素を盛り込んで、それを融合させることも出来ず、1つ1つをスムーズに処理することも出来ず、無造作に散らばったままになっている。

後半に入り、トライアスロン大会の様子が描かれる。だが、わさおは全く大会に関わっていない。
主要メンバーの誰かがわさおと触れ合うことで影響を受けて大会参加を決めたとか、わさおのために頑張るとか、そういうことも全く無い。
わさおがいなくても、そのエピソードは成立する。
っていうか、そこに限ったことじゃなくて、わさおが登場しなくても、この映画はわずかな一部分さえ削ってしまえば、何の問題も無く成立してしまうのだ。

トライアスロン大会が終了した後、今度は熊退治のエピソードを着地させる作業に入る(っていうか、トライアスロン大会にしろ熊退治にしろ、どう頑張っても不時着だが)。
熊退治のエピソードは、まず美佐子が手術のために別の病院へ搬送され、それを見送ったアキラが自転車を走らせ、それを降りて山に入っていくという様子が描かれる。
なぜアキラが山に入るのか、その理由はサッパリ分からない。「母親が手術を受ける」→「不安になったアキラが山に入る」という方程式は、バカな私には難解すぎて理解不能だ。
で、アキラの前に熊が現れるんだが、彼を追い掛けて山に入って来たわさおが助けに駆け付け、熊と戦って追い払う。
改めて言うが、わさおは「ブサかわ犬」として話題になった犬である。熊と勇敢に戦って話題になったわけでもないし、子供を危機から救って話題になったわけでもない。
見た目の可愛さで人気者になった犬を題材とする映画なのに、そんな『銀牙 -流れ星 銀-』的な展開を用意するセンスは理解不能だ。

(観賞日:2011年8月19日)


2011年度 HIHOはくさいアワード:9位

 

*ポンコツ映画愛護協会