『惑星大戦争 THE WAR IN SPACE』:1977、日本

1988年、秋。国連宇宙局日本支部に、アメリカの本部で勤務している三好孝次がやって来た。2年ぶりに帰国した彼は、旧知の間柄である日本支部員の滝川ジュンや所長の松沢博士らと再会した。突如として発生した流星群のせいで、日本支部の通信には障害が起きていた。宇宙ステーション“テラ”を呼び出しても、応答は無かった。その夜、三好は旧友である国防軍パイロット教官・室井礼介、空挺隊員・冬木和夫とも再会した。三好は室井とジュンが婚約したと知り、複雑な表情を浮かべた。
三好は松沢から連絡を受け、室井たちと共に日本支部へ戻った。松沢は彼らに、全米各地で謎の飛行物体が目撃され、UFO騒ぎで大混乱になっていることを語った。シュミット博士たちが追跡調査を始めているものの、まだ正体を確認するに至っていないという。その時、ようやくテラとの通信が繋がった。ノイズ混じりの中、テラにいる三笠忠が「金星から断続的な電波が地球に送信されている。解読は不可能だ」と伝えた。それから彼は焦った様子に変わり、「巨大な宇宙船だ。宇宙船がステーションに接近してくる。船だ。ローマ船だ。大きい。すごく大きい。ぶつかるぞ」と叫んだところで通信は切れた。
三好はジュンの父で恩師でもある宇宙工学博士・滝川正人を訪ねた。三好が恋人だったジュンを残してアメリカへ行ったため、滝川は彼に良い感情を抱いていなかった。三好が「宇宙防衛艦“轟天”の出撃は可能なんでしょうか」と訊くと、「轟天の開発は中止したはずだ」と滝川は答えた。三好は「それは3年前、UFOによる地球侵略の可能性が薄らいだからです。しかし、轟天はもう一歩で完成するはずだったんでしょ。国連から依頼された宇宙防衛艦の開発を強引に中止なされた本当の理由は何なんですか」と質問する。彼は国連本部から、滝川と会って説得するよう指示されていたのだ。しかし滝川は「必要が無いからだ」と冷たく告げる。
三好は「例の流星群は、謎の飛行物体の地球への到着だった。そうとしか考えられないデータが多すぎるんですよ」と述べるが、滝川の考えに変化は無かった。そこへ松沢から電話が入り、UFOの調査をしていたシュミットが山の中で何者かに殺されたことが三好と滝川に伝えられた。三好は室井と冬木の待つ車に戻り、滝川家を後にする。だが、シュミットの運転する車とすれ違い、三好は驚いた。
シュミットは滝川の家を訪れ、「数日前から得体の知れない連中に尾行されていたため、死亡したという嘘のニュースを流させたのだ」と説明した。彼は「そいつらは他の天体からの宇宙人だろう。轟天を完成させてもらいたい。既に敵の地球侵略は始まったと言っていい。彼らの侵略を防げるのは轟天しかないと君は分かっているはずだ」と説くが、滝川は「轟天は動かせん」と冷たく断った。
シュミットが「それなら国連で完成させるから、設計図を渡してくれ」と言うと、滝川は「君には渡せんよ。上手く成り代わったつもりだろうが、シュミット博士はライターを右手では付けん。左利きだ」と告げる。偽者のシュミットがピストルを構えたところへ、三好たちが飛び込んできた。偽者は「近寄るな。設計図を渡さんのなら、お前を連れて行くだけだ」と滝川を脅す。三好たちは隙を見て偽者に飛び掛かり、冬木が発砲する。外へ逃げ出した偽者は爆死し、ゴムマスクが外れて緑色の顔が露わとなった。
この事件を宇宙からの挑戦と判断した政府は、大石国防軍司令を長とする防衛対策本部を設置した。大石司令は情報分析の結果、敵基地は金星上に有りと断定した。滝川は轟天の完成を要請され、それを承諾した。彼は乗組員として三好、ジュン、室井、冬木たちを集め、建造基地へ向かう。その間にも敵の円盤が世界各地を攻撃し、多大なダメージを与えていた。NASAのパイロットであるジミーも、敵の攻撃を受けながら基地へ辿り着いた。
轟天が完成した直後、地球人兵士に化けた一味が基地に乗り込んで来た。敵は滝川の引き渡しを要求するが、三好たちが撃退した。滝川の号令により、三好たちを乗せた轟天は出撃する。世界中の円盤が集結し、轟天を標的に定めた。しかし轟天は搭載した武器で円盤を撃滅し、イオンロケットを噴射して宇宙空間へ出た。室井は三好と2人きりになり、「金星での戦いで、俺にもしもの事があったら、ジュンをよろしく頼む」と告げた。室井は、自分がジュンを好きだと気付いた三好が、身を引いてアメリカへ去ったことを知っていた。
轟天が金星まで3日という地点まで辿り着いた時、モニターにテラの残骸が写し出された。室井は救助に行くことを主張するが、三好は「あの様子では生存者はいない」と反対した。滝川は室井の意見を汲み、彼をテラへ向かわせた。テラに生存者はおらず、室井は三笠の遺体を回収して轟天へ戻った。室井たちが離れた時、ジュンの目の前で遺体が起き上がった。それは三笠の遺体に化けた宇宙人だったのだ。ジュンを人質にした宇宙人はエアーロックを開けさせ、彼女を連れて轟天から逃亡した。
しばらくすると、金星から通信が入った。モニターには宇宙獣人に捕まっているジュンの姿が映り、その横に鎮座した銀河帝国司令官ヘルは「太陽系から2万2千光年。お前たちがメシエ13と名付けている球状星団、恒星ヨミの第3惑星、それが我々の母なる星だ。銀河帝国は既に、宇宙空間を自由に航行する手段を手に入れている」と語った。滝川が「それほど高度の文明を持っていながら、なぜ遠い太陽系を征服に来なければならないんだ」と尋ねると、彼は「我々の星は年老いた。他の星へ移り住む必要があったのだ。我々の求めた星。それが、我が母なる星とそっくりの太陽系の第3惑星、地球なのだよ」と述べた。
ヘルは「我々への反抗がの可能だと思うなら、地球人類が望みを託したその轟天も、間もなく血祭りに上げられるだけだということを予告しておこう」と不敵に言い放ち、通信を切った。やがて轟天は金星に到着し、偵察隊員の三好たちがランドローバーで出動した。彼らはローマ船にそっくりな敵の戦艦を発見するが、バリアーに守られていた。レーザー攻撃を受けた三好たちは、轟天へ戻った。
偵察部隊の撮影した映像を確認した滝川は、船首に付いている巨大な顔のような部分に着目する。彼が「あの口が何かだ」と言うと、三好は「ある種のエアダクトだと思います。あの口から潜入するしか他は無いでしょうね」と告げる。室井やジミーたちが戦闘機でバリアーを破壊し、三好たちが潜入して敵艦の心臓部を叩くという作戦が立てられた。三好は心臓部を叩くだけでなく、必ずジュンを助け出すという強い意志を持って作戦に臨んだ。
室井たちは出撃し、敵の円盤と戦闘を繰り広げる。三好や冬木ら4人はランドローバーで敵艦に近付き、バリアーが破壊されるのを待った。ジミーは円盤の攻撃を受けるが、特攻してバリアーを破壊した。三好たちは敵艦の口から潜入するが、交戦によって2人が犠牲となる。大広間まで辿り着いたところで、冬木も命を落とした。そこにヘルが配下を連れて現れ、三好はジュンと共に牢へ放り込まれた…。

監督は福田純、特技監督は中野昭慶、原案は神宮寺八郎、脚本は中西隆三&永原秀一、製作は田中友幸&田中文雄、撮影は逢沢譲、美術は薩谷和夫、録音は伴利也、照明は小島真二、電子音響デザインは大野松雄、編集は池田美千子、特殊技術 監督助手は川北紘一、技斗はジャパン・アクション・クラブ、音楽は津島利章。
出演は森田健作(松竹)、浅野ゆう子、池部良、沖雅也、宮内洋、新克利、大滝秀治、平田昭彦、橋本功、中山昭二、睦五郎、山本亘、遠藤剛、マンモス・鈴木、ウィリアム・ロス、デビット・ペーレン、兼松隆、菊池太、早田文次、村嶋修、竹村洋介、川端真二、森田川利一、吉田耕一、大谷進、江藤純一、吉宮慎一、瀬戸山功、直木悠ら。


当時の東宝映画代表取締役社長だった田中友幸が製作したSF映画。
監督は「ゴジラ」シリーズで5本のメガホンを執った福田純で、その全てで彼と一緒に仕事をしていた中野昭慶が特技監督を務めている。
三好を森田健作、ジュンを浅野ゆう子、滝川を池部良、室井を沖雅也、冬木を宮内洋、三笠を新克利、松沢を大滝秀治、大石を平田昭彦、国防軍幕僚を中山昭二、ヘルを睦五郎、シュミットをウィリアム・ロス、ジミーをデビット・ペーレンが演じている。

この映画が公開された1977年、アメリカでは『スター・ウォーズ』が公開され、爆発的なヒットを記録した。
日本でも翌年の公開に向けて『スター・ウォーズ』に関する情報が発信され、SFブームが巻き起こった。
このブームに便乗するため、田中友幸は急遽、SF映画の企画を立ち上げ、自ら原案を考えた(原案の「神宮寺八郎」は彼のペンネーム)。
『スター・ウォーズ』に先んじて、1977年12月に公開するスケジュールが決まったが、脚本が完成したのは10月という突貫工事だった。

製作日数が2ヶ月しか許されておらず、わずか数週間で撮影を終えざるを得なかった。
だが、その期間だけでは、特撮シーンを全て賄うことは出来なかった。
そのため、『宇宙大戦争』や『世界大戦争』など、これまでに東宝が公開した映画の映像を借用している。
経営状態の悪化した大映で作られたシリーズ4作目以降の『ガメラ』とは違って、予算じゃなくて時間が足りないせいで過去のフィルムを使っているわけだね。

だけど、あの『スター・ウォーズ』に対抗するSF映画として用意した作品が、他の過去作品のフィルムを拝借しているって、その時点で敗北が決定しているようなものだ。
「特撮シーンを新たに用意している時間が無いから、過去の映像で間に合わせよう」って、それはカッコ悪いなあ。
脚本にしても、じっくりと練り直すような時間も無く、田中友幸の思い付いた内容を雑に膨らませただけ。
なので、1963年の『海底軍艦』のリメイクのような内容になっている。

っていうか、「宇宙人が地球の侵略に来て、それを数少ないメンバーで倒す」という大枠は、『スター・ウォーズ』以前に日本で作られた特撮映画で良く使われていたパターンだよね。
『惑星大戦争』を製作した時に田中友幸社長が「『スター・ウォーズ』から学ぶべきものは何も無かった」と言ったのはマニアの中では有名な話だが、「むしろ学べよ」とツッコミを入れたくなるぞ。
何も学ぼうとしなかったから、古い特撮映画のパターンになったんじゃないのかと。
この映画の醸し出す「古臭さ」は、「今の時代に見るから、そう感じる」ということではない。1977年の段階で、既に古臭かったのだ。
それは『スター・ウォーズ』と比較すれば、説明不要だ。

劇中に登場する「轟天号」は、『海底軍艦』で登場した乗り物だ。
『海底軍艦』の時は空飛ぶ潜水艦だったが、今回は宇宙が舞台なので、もちろん宇宙船だ。ただし、「艦首に巨大なドリルが付いた戦艦」というデザインのベースは変わっていない。
でもね、宇宙で敵と戦う時に、ドリルって必要が無いでしょ。実際、この映画でも、ほとんど役にも立っていないぞ。最後はドリル部分が外れて小型船のような状態になり、敵に突っ込むんだけど、形状がドリルになっている意味は無いよね。
一方の宇宙人も、なぜかガレー船みたいな宇宙戦艦で、ご丁寧にオールまで付いている(用途はレーザーだけど)。
いや、せめて「実は古代ローマ人というのは、宇宙から来た面々だった」とか、そういう設定ならともかく、そうじゃないし。

まず森田健作、池部良、沖雅也といったキャスティングの時点で、「おいおい、マジか」と思ってしまう。
パロディーやコメディーとして作るつもりなら分かるが、とてもじゃないがスペース・オペラには全く馴染みそうにないようなメンツばかり揃えてどうすんのか。
しかも、主演の森田健作は、わざわざ松竹から招聘しているのだ。どういうセンスなのかと。
そんで池部良は全くやる気の見られない芝居だし、それに感化されたのか森田健作にもやる気が見られないし。

さて、物語の内容を見ていこう。
滝川は轟天の製造に戻ることを頑なに拒否しているが、国防軍司令から依頼されると、何の迷いも無く喜んで引き受けている。
ってことは、特に固辞するような特別の理由があったわけでもないのね。
ただ、そう思っていたら、終盤になって「実は轟天には開発途中で製造したオキシジェン・デストロイヤー、じゃなくて銀河系を吹き飛ばせる爆弾が積んであって、だから轟天は飛ばしたくなかった」みたいなことを言い出す。
だったら、それを降ろして発進すれば良かったんじゃないの。まあ、それが無かったら敵の戦艦を撃滅できてないんだけどさ。

三好たちが潜水艦で建造基地へ向かっている間に、円盤が世界各地を攻撃している様子が挿入されて、初めて「宇宙人が地球侵略に来た」というのを明確な形で描いている。
いやいや、どんなタイミングだよ。
それを先に描いて、そのうえで「轟天を作らなきゃ」という流れに持って行くべきなんじゃないのか。偽のシュミットにしても、宣戦布告して爆死したわけじゃないんだからさ。
っていうか、偽者が轟天を作ってくれと頼んだ時に、ホントに滝川がOKしたら、どうするつもりだったんだよ。

シュミットの目的は設計図を手に入れることだったようだが、さっさと滝川を始末すればいいだけなんじゃねえのか。
「設計図を渡さんのならお前を連れて行くだけだ」と言っているが、なぜ連行する必要があるのか。爆弾を作ってほしいってことなのか。
だけど、テメエらは円盤で一方的に世界各地を滅ぼすことの出来る軍事力を持っているんだろうに、なぜ同じような爆弾は作れないのかと。
っていうか、目的は設計図なんだから、滝川を殺してそれを見つけ出せばいいんじゃないのか。

円盤は世界各地を攻撃しているけど、なぜ轟天の建造基地を集中的に攻撃しないのか。
轟天が完成した時に敵は地球人兵士に化けて基地へ乗り込んでいるが、そこで地球人の姿に化ける必要性はあるのか。
あと、なんで地球の武器を使ってるんだよ。お前らの方が能力の高い武器を持っているんじゃないのか。
それと、たくさんの円盤で世界を滅ぼしている連中にしては、わざわざ地球人に成り済まして基地に潜入して占拠するというのは、やってることが妙に人間臭いというか、テロリスト臭いぞ。

敵は三笠の遺体に化けて轟天に乗り込み、ジュンを拉致して逃亡するんだが、なんだよ、そのセコい手口は。
そんなことよりも、普通に轟天を攻撃すりゃいいんじゃないのか。
まあ幾つもの円盤で全く歯が立たないってことは。その程度の軍事力なのかもしれんけどさ。
でも、たった一隻にコテンパンにされるような相手に対して、轟天が完成するまでの国防軍は何も出来ずにやられ放題だったのかよ。

円盤が世界各地を攻撃しているシーンで、「敵妨害電波のため、ミサイルは全く命中できません」というセリフがある。
だけど、轟天は何の苦労も無く、普通にミサイルを命中させている。
その技術があるなら、轟天の完成前に、その妨害電波でも敵に命中させられるシステムを、とりあえず世界中で導入すべきじゃないのか。
そうじゃないと、轟天が宇宙へ行っている間も、地球は完全に無防備なんだから、敵に滅ぼされちゃうぞ。

あと、三笠に化けた奴がジュンを拉致して逃亡する理由は何なのか、サッパリ分からん。滝川が邪魔なら、侵入したんだから殺せばいいし。
ジュンを人質にして何か要求して来るのかと思ったら、ヘルは自分たちの目的を説明するだけ。こいつを助けたかったら手を引けとか、そういうことを要求するわけでもない。
で、なぜか、ジュンをわざわざボンテージ・ファッションに着替えさせている。ただのエロい奴になっちゃってるぞ、それだと。拉致の目的がサッパリだ。
ヘルは三好も捕まえてから、滝川に「降伏しなければ2人を殺す」と脅しを掛けているけど、なんでジュンを拉致した時にそれを言わなかったのかと。

三好たちは金星を調査するため、レンジローバーという名のトレーラーで出動する。最初はタイヤで陸上を移動していたが、山を越えるために空を飛ぶ。だったら、最初から飛んでおけよ。
その後、彼らは敵艦の写真を撮り、船首の口の部分について「ある種のエアダクトだと思います。あの口から潜入するしか他は無いでしょうね」と三好は語る。すると滝川は「よーし、あれがエアダクトだと仮定して、あれから潜入する作戦を立ててみよう」と言い出す。
「あれがエアダクトだとして」って、何の根拠も無い当てずっぽうな考えなのに、それに基づいて作戦が決められる。そして、その当てずっぽうが、なぜか正解してしまう。
一方、チューバッカもどきによって中途半端な格好に着替えさせられていたジュンは、ヘルがコンピューターのボタンを色々と押してモニターを切り替えているのを見ている。三好と一緒に牢へ入れられた時、同じ物を発見し、「数字パターンがあるはずよ。もし彼らが6進法を使っていれば開くはずだわ」と言い出す。
これも当てずっぽうなのだが、実際にボタンを押すと、すぐに牢が開く。

最終的には滝川が一人でドリル部分に乗り込み、敵に突っ込んで爆死するという特攻精神で問題が解決される。
「カミカゼ、バンザイ」というわけである。
ちなみに、『スター・ウォーズ』やSF映画ブームに便乗したのは、東宝だけでなかった。東映も1978年4月に『宇宙からのメッセージ』を公開している。
余談だが、ウィリアム・ロスは『宇宙からのメッセージ』にも出演している。
「だから何なのか」と問われたら、「特に意味は無い」と答えるしかない。

(観賞日:2012年11月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会