『別れぬ理由』:1987、日本
総合病院の整形外科医長をしている逸見修平は、房子という妻がいながら岡部葉子という人妻と浮気をしている。修平は自分の浮気のことは、雑誌の記者をしている房子にはバレていないと思っている。ある日、修平は房子がカメラマンの松永に車で家まで送ってもらうのを目撃する。
学会で札幌に行く時に葉子を連れて行くため、修平は飛行機とホテルのチケットを手配する。結婚記念日に房子をホテルのタンゴショーに連れて行った修平は、何か悪いことをしている償いではないかと勘繰られ、逆に男と浮気しているのではないかと房子に言ったりする。
不倫の特集記事を担当することになったと房子から聞かされた修平は、彼女を強引にラブホテルに連れて行く。修平は早く帰りたがる房子をベッドに押し倒した。しかし、いざセックスが始まってみると、房子は異常なほどに求めてくるのであった。その変わり様に驚く修平。
修平は学会に出席するため、札幌に飛んだ。一方、房子は湯布院に取材に出掛けた。お互いに、浮気相手と一緒にいることに気付いていた。自宅に帰った2人は、浮気のことで激しく言い争う。しかし、2人とも離婚する気は全く無く、愛人とも別れずに夫婦関係を続けていく…。監督は降旗康男、原作は渡辺淳一、脚本は那須真知子、助監督は長谷川計二、企画は三堀篤&瀬戸恒雄、撮影は木村大作、編集は祖田冨美夫、録音は上田武志、照明は篠崎豊治、美術は今 保太郎、衣裳は古藤博&増田和子、音楽は羽田健太郎、主題歌は小柳ルミ子。
出演は三田佳子、津川雅彦、古尾谷雅人、南條玲子、今陽子、平尾昌晃、湊広子、真夏竜吾、風間みつき、津山栄一、丹古母鬼馬二、伊織祐未、斎藤朋子、中尾愼司、中西典子、国宗篤、関水浩之、村添豊徳、佐川二郎、山浦栄、木村修、矢生有里ら。
渡辺淳一の小説というのは、どうやら映画の世界ではブランドになっているようだ。
低レヴェルの昼メロもどきみたいな作品でも、そこそこの予算が投じられ、大物の役者が出演するってのは、そのブランドのパワーが強いからだろう。
同じ内容でも、作者が渡辺淳一でなかったら絶対に映画化などされていないはずだ。オープニングで、ヒロインを演じる三田佳子が登場した時点で、「ああ、たぶん、この作品は駄作になるだろうな」という、高い可能性を感じさせてくれる。
だって、ロードレースの取材を、車が走ってるすぐ近くでやっているというのに、ヒラヒラするような服を来て、ロングスカートを履いているんだもの。
そんな非常識なヴェテラン雑誌記者がいるかね。大体、彼女の働いている雑誌が良く分からないんだよな。
最初にロードレースの取材があって、それから不倫の特集も担当したり、記事の内容は不明なんだけど、湯布院まで取材に出掛けたりもしている。
どういう雑誌なんだろ。
それに、そんなにヴァラエティーに富んだ取材を、1人の記者にやらせるものかなあ。三田佳子が、ずっとカメラマンの古尾谷雅人が撮影するのを眺めてばかりで、ほとんど取材している様子が無いのも、かなり奇妙な姿ではある。
だけど、たぶん細かいリアリティとかは最初から捨てているんだろう。
で、ついでに「夫婦の関係」という核であるべき部分も、適当に流してしまうわけだ。津川雅彦は、得意(?)としているエロいオッサンの役。
で、三田佳子&南條玲子とベッドシーンを演じる。
南條は渡辺淳一原作映画のヒロインの規定路線として、キッチリと裸になる。
だが、三田は本人が拒否したのか、あるいは監督や原作者がこれっぽっちも見たいとは思わなかったのか、大っぴらなヌードは披露していない。どうやら渡辺淳一という人は、和服に対して異常なこだわりがあるみたいだ。
で、監督も、そのこだわりを汲んだようだ。
札幌に旅行に来ているのに、なぜか南條玲子は和服を着ている。
戻って来る時は洋服だから、持って行ったってことでしょ。
そんな重いものを、わざわざ持っていくかね。わざとらしい動きとか、安っぽい台詞回しとか、そういうのがどれだけあっても、「原作が渡辺淳一で監督が降旗康男」という映画だから、たぶん当たり前なんだろう。
後半、夫婦の会話シーンで、心に思っていることをモノローグ調に被せる演出が出てくる辺りは、ギャグなのかマジなのか、かなり判断に困ってしまった。