『龍三と七人の子分たち』:2015、日本

かつてヤクザの親分だった龍三は、すっかり老齢になった。彼は刺青や指を詰めた手を堂々と見せて暮らしているので、同居している息子の龍平と彼の妻から「近所の目もあるんだから」と注意される。しかし息子夫婦に疎んじられても、龍三は反省する様子を見せずに反論する。龍平は息子の康介が休みに入ったので妻の実家へ行くことになり、龍三に留守番を任せた。庭先で木刀を振り回した龍三は、近所の少年が覗いているのに気付くと睨み付けて追い払った。
パチンコ店へ出掛けた龍三は、徳永という男から玉を貸してほしいと頼まれる。龍三は台を譲るが、徳永がフィーバーしたので玉を貸してくれと持ち掛けた。徳永が不遜な態度で断ったので、龍三は腹を立てて殴り掛かった。店員たちが止めに来ると龍三は暴れるが、店から追い出された。龍三が帰宅すると、オレオレ詐欺の電話が掛かって来た。龍三は簡単に騙され、龍平からの電話だと思い込んだ。向こうが「会社から預かった五百万を紛失した」と嘘をつくと、龍三は五十万と金目の物を用意すると約束した。
龍三は公園へ出向き、受け子の田村と会う。龍三が金目の物としてヤクザ時代のバッジを見せたので、田村は動揺する。そこへ龍三の組で若頭だったマサが現れ、詐欺だと感じて田村に掴み掛かる。龍三はマサを叱り付け、田村に詫びて指を詰めようとする。龍三がドスを持ち出したので、田村は怯えて逃亡した。龍三とマサは蕎麦屋へ行き、昼食を取った。マサは龍三に、元ヤクザのモキチが寸借詐欺で暮らしていること、水商売をしている孫娘に食べさせてもらっていることを話した。2人は蕎麦屋の客が注文する料理を当てる賭けを始めた。狙いが外れると、2人とも客に当たり散らした。
夜の街を歩いていた龍三とマサは、モキチがチンピラの松嶋たちに暴行される様子を目撃した。龍三は刺青を見せて凄むが、松嶋たちは相手がヤクザだと知っても全く怯まなかった。そこへマル暴の村上と後輩刑事が現れ、松嶋たちを追い払った。後輩刑事は彼らが京浜連合という暴力団上がりの連中であること、ヤクザではないので簡単に逮捕できずに困っていることを龍三たちに語った。村上は無茶をしないよう釘を刺し、その場を後にした。
龍三たちは昔の仲間と会いたくなり、年賀状を見て連絡を取る相手を選んだ。龍平は上司から呼び出しを受け、休暇を切り上げて勤務している食品会社へ出向いた。すると会社の前には「食の安全を守れ」というプラカードを掲げたデモ隊が押し掛け、上司が顔をしかめていた。上司は龍三が元ヤクザだという情報を得ており、頼んでくれないかと龍平に持ち掛けた。しかし龍平は自分が働いている会社さえ龍三に教えておらず、迷惑そうに断った。
龍平が家に戻ると、龍三がマサとモキチを招いて酔い潰れていた。しかも龍三は、康介が可愛がっていたジュウシマツを焼き鳥にしていた。龍平は憤慨し、出て行くよう要求した。龍三とマサは西郷隆盛像の前へ行き、葉書を出した相手が来るのを待った。するとカミソリのタカ、五寸釘のヒデ、ステッキのイチゾウ、早撃ちのマックという4人が集まって来た。ところがモキチが余計な相手も葉書を送ったせいで、龍三の中学時代の同級生まで来てしまった。
モキチが龍三たちの元へ来て、銭湯の「梅の湯」が潰れたことを知らせた。龍三たちが梅の湯へ行くと、モキチは息子夫婦が騙されたこと、京浜連合が周辺の地上げに絡んでいることを話す。そこへ京浜連合の佐々木が手下2人を連れて現れ、龍三たちを追い払おうとする。龍三たちは武器を構え、マックは拳銃を威嚇発砲した。佐々木たちは慌てて車に乗り込み、その場から逃走した。龍三は仲間たちに、また組を作って京浜連合を整理しないかと持ち掛けた。全員が賛同し、マサは前科を点数にして親分と若頭を決めようと提案した。最も前科の多い龍三が親分、次点のマサが若頭、他の面々はヒラの組員ということに決まった。
龍三たちはマサのアパートへ移動し、酒を酌み交わした。翌朝、京浜連合の北条がマサの部屋を訪れ、「水道を見せて」と勝手に上り込む。彼は浄水器を取り付けて「サービスだから」と言い、布団を売り付けようとする。しかし奥の部屋にいた龍三たちに凄まれ、彼は布団を置いて逃げ出した。龍三は組の名前を「一龍会」に決定し、かつて世話になっていた榊会長の屋敷へ挨拶に行く。しかし会長は5年前に亡くなっており、会社を継いだ息子は「任侠の世界の方々とは関わらないようにさせて頂いております」と告げた。龍三たちが居座ると、彼は浄水器と布団のセールスを始めた。
龍三たちが榊邸を去って歩いていると、徳永が車で現れた。彼は車椅子に乗って障害者を装い、あくどい手口で借金を取り立てた。徳永は龍三たちに取り囲まれると、「小遣い稼ぎしてみませんか」と同じ仕事を持ち掛けた。龍三はマサから「組を作ってばかりで金が要るじゃねえか」と言われ、やってみることにした。龍三、マサ、モキチは稼ぎの半分を貰うと約束させ、徳永の車で団地へ行く。3人は「同情を誘うように」と助言され、ある主婦の部屋へ赴いた。
マサが車椅子に乗って凄むと、主婦は辛い生活環境にあることを説明して返済を待ってほしいと訴えた。それでもマサが金を要求すると、龍三が怒鳴り付けて批判した。しかしマサに今までの貢献を訴えられると、龍三は彼に謝罪した。龍三は徳永の元へ戻り、彼を殴り付けた。マサが「どこから仕事を受けてんだよ」と訊くと、徳永は元暴走族の西と佐々木だと打ち明けた。龍三は一龍会を集合させ、京浜連合のビルへ乗り込むことにした。
龍三たちはビルへ行き、西と佐々木に「組を作ったので昔のシマを仕切らせてもらう」と言う。勝手にするよう西が告げると、龍三は彼らがヤクザと同じことをやっていると指摘して怒鳴り付けた。西は村上を呼び、龍三たちを追い払ってもらう。村上は龍三に、「今は暴対法があるから、ヤクザって言うだけでパクられるんだぜ」と警告した。しかし龍三たちは、まるで意に介さなかった。翌日、モキチ、マック、ヒデはバーへ行き、みかじめ料を要求した。バーテンは不憫な老人だと同情して千円を渡すが、モキチは「ヤクザとして仕事をした」と思い込んで満足した。
龍三、マサ、イチゾウ、タカが食品会社の前を通り掛かると、昔の仲間であるヤスがデモ活動に参加していた。ヤスが食品偽装を繰り返す酷い会社なのだと説明すると、龍三は「これじゃ金になんねえだろ。会社を困らすには、他に方法があんだろ」と告げる。龍三は龍平の車を勝手に拝借し、街宣車に利用して食品会社へ乗り込んだ。しかし上司から指示を受けた龍平が出て来たので、慌てて車の後ろに隠れる。龍平は責任者と話そうとするが、デモ隊の糾弾を受けて退散した。
徳永は西の命令を受けて食品会社へ赴き、解決すると持ち掛けて金を請求する。そこへ龍三が乗り込み、徳永を恫喝して追い払った。彼は龍平の上司に自分が解決すると持ち掛け、金を請求した。会社を去った彼は、モキチに車のテープを剥がすよう指示した。しかしモチキは、片側のテープしか剥がさなかった。翌日、龍平はテープに気付かないまま、車で出勤した。見つけた上司は「父親とグルなのか」と憤慨し、龍平は初めてテープの存在に気付いた。
一龍会の面々は食品会社から受け取った金を競馬に使うが、全て使い果たしてしまった。龍三はマサたちを連れて、馴染みのママがいるスナックへ遊びに行く。ママは龍三に、モキチの孫である百合子が働いていることを教えた。百合子は龍三から「こんな商売やめろ」と言われると、「お爺ちゃんが働かないから私が食べさせてあげてるの。私だってお爺ちゃんのせいで色々と酷い目に遭ってきたのよ。でも、だからって見捨てられる?」と述べた。百合子が交際している石垣は、京浜連合のメンバーだった。西は一龍会の動きに苛立ちを募らせ、石垣に百合子を拉致して来るよう命じた…。

監督・脚本・編集は北野武、プロデューサーは森昌行&吉田多喜男、アソシエイト・プロデューサーは川城和美&福田太一&二宮清隆、撮影は柳島克己、照明は高屋齋、美術は磯田典宏、録音は久連石由文、衣裳は黒澤和子、音楽は鈴木慶一。
出演は藤竜也、近藤正臣、中尾彬、品川徹、樋浦勉、伊藤幸純、吉澤健、小野寺昭、安田顕、矢島健一、下條アトム、勝村政信、萬田久子、ビートたけし、辰巳琢郎、徳井優、川口力哉、山崎樹範、川野直輝、石塚康介、芦川誠、國本鍾建、清水富美加(現・千眼美子)、池谷のぶえ、山口祥行、本宮泰風、荒谷清水、清水一彰、伊東由美子、酒匂芳、猫田直、込江海翔(康介役)、佐藤真弓、浅野雅博、遠藤雄弥、水澤紳吾、ガンビーノ小林、竹井亮介、おかやまはじめ、中村無何有、富川一人、橘美緒、板垣雄亮、佐々木光弘、柊瑠美、荻野友里、内山森彦、坂口芳貞、宇納佑、湯沢勉、越村友一、重村佳伸、中脇樹人、兼松若人、森本のぶ、松原慎太郎、はやしだみき、藤本浩二ら。


『アウトレイジ』『アウトレイジ ビヨンド』の北野武が監督&脚本を務めた作品。
いつもは主演も兼ねているが、今回は脇役である村上として出演している。
龍三役の藤竜也、マサ役の近藤正臣、モキチ役の中尾彬、マック役の品川徹、イチゾウ役の樋浦勉、ヒデ役の伊藤幸純、タカ役の吉澤健、ヤス役の小野寺昭という一龍会の面々は、平均年齢72歳。
他に、西を安田顕、北条を矢島健一、徳永を下條アトム、龍平を勝村政信、キャバクラのママを萬田久子、榊を辰巳琢郎、龍平の上司を徳井優、佐々木を川口力哉、田村を山崎樹範、松嶋を川野直輝、石垣を石塚康介、百合子を清水富美加(現・千眼美子)が演じている。

龍三の「短気で暴れん坊」という性格設定が、まるで笑えないモノになっている。
例えばパチンコ店の一件にしても、そりゃあ徳永の態度には大いに問題があるけど、だからって問答無用で殴り掛かることは無いだろうと。止めに入った店員たちにまで暴行することは無いんじやないかと。
カタギの衆に迷惑を掛ける行為に対して、龍三は全く悪びれる様子が無い。っていうか、積極的にカタギの衆を怖がらせている。
そういう龍三の「行儀の悪さ」が、喜劇としての調味料になっていないのよね。

「振り回した木刀が車に激突して手が痺れる」とか、「覗いている少年を睨み付ける時に放屁する」とか、そういうベタで古臭いタイプのギャグが色々と盛り込まれている。
北野武が喜劇映画を手掛ける際には、そういうベタベタ&コテコテなネタが持ち込まれるのは仕様だと言っていいだろう。しかし残念ながら、ことごとく外しているし、邪魔だと感じる。
蕎麦屋で賭けをした龍三とマサが客を恫喝するシーンなんて、間違いなく喜劇として撮っているはずだけど、ただ不愉快なだけ。
後半の、京浜連合のビルでマックが仁義を切るシーンでは、彼が何か言う度に佐々木がツッコミを入れる。だけど、その度に両名のカットの切り返しがあるし、ツッコミの数も多いので、こっちが「もういいよ」とツッコミを入れたくなる。

龍三は村上と会った時、「ヤクザも現役の時はいいけど、引退したら酷いもんさ」と愚痴っているけど、別の意味で酷い奴になっている。
「引退したのに現役だった頃と変わらない振る舞いを続けており、ヤクザとして周囲をビビらせている」というキャラクター設定にしてあるんだけど、これが上手く機能していない。
それが絶対にダメってわけじゃなくて、上手く使えば笑いに結び付いたはずだ。
でも、彼が周囲の人々を恫喝したり迷惑を掛けたりする様子が、シンプルに「嫌悪すべき存在」と化しているのだ。

そうじゃなくて、「ヤクザだったことを隠して肩身の狭い思いをしている」とか、「バカにされても耐え忍んでいる」とか、そういう弱さや情けなさを全面に押し出した方が、龍三に好感を抱くことが出来たんじゃないか。
この映画だと、京浜連合はクズだけど、一龍会も引けを取らないクズ野郎の集まりになっているのよね。
「愛すべきワル」や「応援したくなるワル」じゃなくて、クズなのよ。
もちろん意図的なんだろうとは思うけど、そのせいで不快感が強まって笑いを阻害しちゃったら本末転倒でしょ。

龍三たちは「組を作ろう」と言う時、かなり軽いノリで盛り上がっている。「クズどもは許せない」とか「自分たちが立ち上がらなきゃ」といった義侠心や使命感で組を作るような展開にする必要は、全く無い。
それだと、カッコ付け過ぎて逆にカッコ悪くなってしまう。
彼らはヤクザだから、全面的に「正義の味方」とか「ヒーロー」として描くことを避けるのは一向に構わない。
ただ、その軽いノリは、共感を全く誘わない状態を生んでいる。

龍三たちが軽いノリで組を作るのは、足を洗ってから長く経つものの、現役時代の気持ちを捨て切れていなかった連中ってことだ。
喜劇だから、軽薄で浮ついた動機にしてあるのかもしれない。
ただ、観客が彼らを応援したくならなきゃマズいはずで。
それを考えると、「老害扱いされて居場所が無い」とか、「生き甲斐を失っている」といった「老いの哀れ」を見せておいて、そういう連中が「死ぬまでにもう一花咲かせたい」とか、「まだ人生の充実感を体感したい」ということで組を作る流れにした方がいいんじゃないかと。

榊ジュニアがセールストークを始めた後、カットが切り替わるとモキチが布団を抱えて龍三たちと共に歩いている。
つまり布団を購入したという形になっているんだけど、なんで普通に買っているのかと言いたくなる。
笑いとしてやっているんだろうけど、まるで笑えないだけでなく強い違和感を覚える。
そのシーンで笑いを取りに行くにしても、「榊ジュニアがあくどいセールスの親玉だったのか」と龍三たちが気付いた上で、何かしらのネタを用意すべきだ。

そこに限らず、龍三たちのモウロクしているレベルを、その場その場で都合良くコロコロと変えている。
龍三がオレオレ詐欺に簡単に引っ掛かるのも、「元ヤクザの親分だけどモウロクしたジジイになっている」ってのを表現したかったんだろうとは思うけど、段取りに対する説得力が乏しい(おまけに全く笑えないし)。
そんな風になってしまった最大の要因は、「先に撮りたいシーンが幾つかあって、そこから逆算して映画を作った」という経緯にある。
そもそもストーリーテリングへの関心が薄かった北野監督だが、『アウトレイジ』シリーズでは「普通の娯楽映画」も作れることを証明してみせた。しかし久々に喜劇を撮ることになって、またストーリーテリングへの意識が薄れてしまったようだ。

北野監督はお笑いの世界で生きて来た人だから、喜劇映画を作りたくなるのは理解できる。
ただし、彼は漫才の出身であって、喜劇の世界で生きて来た人ではない。コントの経験はあるものの、彼がやっていたのは喜劇的な物とは全く質が異なる。「そのコントを飾り付けたり尺を伸ばしたりすれば喜劇に変化する」といったタイプのコントをやってきたわけではない。
そのせいもあって、北野監督は「面白そうなシチュエーション」は思い付いても(それが実際に面白いかどうかは別にして)、喜劇として1本の長編ストーリーを作ることは向いていないんじゃないだろうか。
これまで彼が作って来たコメディー系の映画を見る限り、そういう印象を受ける。

龍三たちが徳永に案内させて主婦の団地へ行くシーンなんて、まるで要らない。
これといった笑いがあるわけでもないし、邪魔なだけだ。さっさと京浜連合のビルへ乗り込む展開へ移ればいい。そっちの方が、絶対にスムーズだしテンポもいい。
この映画、撮りたいシーンをツギハギしているせいなのか、余計な箇所が多くてテンポが悪いんだよな。
久々のコメディーだから、盛り込みたいことが多くて、どれも削れなかったのかもしれないけど、そこはスパッと切ってもらわないと。

龍三たちが一龍会を作って何をするのかというと、「みかじめ料を請求する」「会社を脅して金をせびり取る」といった行為だ。カタギの人間から卑劣な行為で金を奪おうとするんだから、まるで笑えないよ。
「愚かな悪巧みをする連中が卑劣な方法で金を得ようとするが、ことごとく愚かなヘマをやらかして失敗に終わる」という情けなさを見せてくれるなら、また喜劇として機能しただろう。でも、そういうわけじゃなくて、食品会社からは大金をせびり取っているんだよね。
しかも龍三の息子の会社だし、街宣車の一件で下手すりゃ息子はクビになっていたかもしれないし。
父親がヤクザということで、これまで家族は多大な迷惑を被って来たはずだ。そのことに関して、龍三が罪の意識を感じている様子は全くどころか、引退した今でも迷惑を掛けまくっているのだ。

龍三がスナックのママに誘われて彼女のマンションに行くと、ノックの音がする。ママは男が来たことを告げ、フンドシ一丁になっている龍三を隠れさせる。ママは逃げるよう指示し、龍三は彼女の服を借りて非常階段から逃走する。龍三はオカマたちから勝手に商売している同業者だと誤解され、挨拶を要求される。
でも、こんなエピソード、まるで要らない。
ちなみにママの男は西なのだが、そのことを龍三は全く知らない。それ以降の展開でも、「ママは龍三に惚れているが西と交際している」という設定は、物語に何の影響も与えない。
だから、そこはホントに要らないのよ。

そんなエピソードはバッサリと削って、さっさと次の展開へ移ればいい。
ただし、次の展開ってのは「西の指示を受けた石垣が百合子に事情を話し、相談を受けたモキチが単独殴り込みを掛けるけど捕まって殺される」という内容であり、それはそれで要らないなあと感じる。
モキチの死体を使ったネタを盛り込みたかったのは分かるけど、この映画は誰も殺さずに終わった方がいいよ。
一龍会のメンバーが死ぬとしても、それは病気とか心臓発作にした方がいいわ。

っていうか、そもそも百合子の出番は少ないし、初登場するタイミングも遅い。
彼女とモキチの関係も、ほとんど描かれていない。
石垣と百合子の関係にしても、「石垣が西から百合子の誘拐を命じられる」という展開へ持って行くために、慌てて触れている感じになっている。
上手く話の流れに乗っていないんだから、石垣や百合子が絡む展開を丸ごとゴッソリと削除してしまえばいい。そして、全く別の内容で、最終対決への流れを構築した方がいい。

石垣と百合子から話を聞かされたモキチが、龍三たち相談せず単独で殴り込みを掛けるのも不自然だし。
また、ヤクザではなく、法律には引っ掛からないように留意しながらビジネスをしているはずの西が、その時だけはモキチを撲殺するのも不可解だ。
「モキチを殺された龍三たちが仇討ちに燃えて殴り込む」という展開を作るために、登場人物の行動がデタラメになっている。
一龍会が逃げる西たちを追い掛けるためにバスジャックするという最後の展開も、カーチェイスをやりたかったのは分かるけど、まるで乗れない。一龍会も素人に迷惑を掛けまくっているからワルを退治する爽快感は弱いし、ハチャメチャなパワーも弱いし。

(観賞日:2017年6月12日)

 

*ポンコツ映画愛護協会