『ルパン三世 THE FIRST』:2019、日本

第二次大戦時のフランス。パリ郊外に暮らす考古学教授のブレッソンは迫る危機を察知し、自身の日記を娘婿に託した。娘婿はブレッソンに鍵を渡された孫娘と妻の3人で、車に乗り込んだ。3人が去った後、邸宅にはナチスの小隊が乗り込んだ。「例の物を渡してもらおう」と脅されたブレッソンは拒否し、その場で射殺された。娘婿たちはランベールという男の車に追われ、トラックと激突した。ランベールは鍵を奪い、その場から逃亡した。
十数年後、パリ。ブレッソン回顧展が催されている博物館で、ブレッソン・ダイアリーが公開された。日記を読んだ者は莫大な財宝が手に入れられると言われており、かつてはナチスも狙っていた物品だ。そこへルパン三世の犯行予告状が届いたため、館長は警備員を読んで日記を安全な場所へ移そうとする。警備員のレティシアは相棒がルパンの変装だと気付き、手錠を掛けて待機していた銭形警部を読んだ。ルパンは変装を解いて逃亡し、銭形と部下たちは後を追った。
レティシアは日記を金庫に保管すると言い、同行の警備員に謝って睡眠スプレーで眠らせた。彼女は屋上へ移動するが、待ち受けていたルパンに日記を奪われた。ルパンはレティシアの追跡を軽くかわすが、峰不二子に日記を奪われてしまった。そこへ銭形と警官隊が現れ、レティシアは逃亡するがルパンは取り押さえられた。レティシアが無線で「ごめんなさい、おじい様」と失敗を報告すると、ランベールは「この役立たずめ。バックアップが上手くやってくれた。例の約束は無かったものと思うんだな」と告げた。
ランベールはボスのゲラルトや組織の面々に、念願のブレッソン・ダイアリーが手に入ったことを報告した。彼はゲラルトたちに、日記が難攻不落の仕掛けに守られていること、どんな手を使っても突破することを語った。そこへ不二子が戻り、彼らに日記を手渡した。不二子は報酬の金を受け取って去ろうとするが、ケースに仕込んだ発信器をゲラルトに気付かれて捕まった。ルパンは銭形たちに護送されるが、次元大介と石川五ェ門の協力で逃亡した。しかし次元と五ェ門は、日記を手に入れるための協力を拒否した。
ランベールは鍵を使って日記を開こうとするが、鍵穴に入れようとしても合わなかった。ルパンはレティシアの靴に発信器を仕込んでおり、彼女の家に赴いた。部屋を見回したルパンは、レティシアが考古学を研究していることを知った。部屋の壁には鍵の図面もあり、ルパンは祖父から受け継いだ鍵と見比べた。レティシアはトイレに入ってランベールに連絡し、ルパンが鍵を持っていることを知らせた。するとランベールはルパンを連れて来るよう指示し、成功すれば例の約束を考え直してやると告げた。
レティシアはルパンに、情報を提供するのでブレッソン・ダイアリーの謎を一緒に解きに行こうと持ち掛けた。「ブレッソンには発掘調査の資金を援助してくれるパートナーがいた」と彼女が言うと、「ヒトラーか?」とルパンは口にする。レティシアは怒って真っ向から否定し、ブレッソンはエクリプスをナチスから守るために命を落としたのだと主張した。ルパンは取引を承諾し、レティシアの案内で補給船に忍び込んだ。するとランベールの飛行艇が海に降り立ち、ルパンとレティシアは乗り込んだ。
ルパンはランベールが書斎から去るのを待ち、金庫を開けて日記を取り出した。別の部屋に移動した彼は、2つの鍵を組み合わせた。だが、彼はレティシアに、日記を開けるにはキーワードが必要だと告げる。5つのアルファベットを並び替えた8つのキーワード通りに正しく回さないと、撃鉄が作動して爆発するのだと彼は説明した。しかしレティシアが不用意に鍵を鍵穴へ差し込んだため、1分の時限装置が起動してしまった。
ルパンが「レティシア」のイニシャルで鍵を回すと、日記は開帳した。日記を読んだレティシアは、エクリプスが無限のエネルギー装置であること、メキシコにあるが辿り着くには3つの試練が用意されていることを知った。レティシアはルパンの背後に回り、拳銃を向けた。ルパンは密かに銃弾を抜き取っており、外でランベールたちが待ち受けていることも分かっていた。彼が部屋を出ると、ランベールは手下のハンスたちに銃を構えさせていた。彼はハンスたちにルパンを捕まえさせ、レティシアから日記を受け取った。ルパンは余裕の態度を示し、かつてランベールが所属していた研究機関がアーネン・エルベだと見抜いた。ルパンは手下たちに連行される時、ランベールの背後にいるゲラルトの姿を確認した。
レティシアはランベールに、これで泥棒への協力は終わりにして約束を果たしてほしいと頼む。彼女は考古学を学ぶため、ボストン大学に進学することを希望していた。彼女はランベールにボストン大学から届いた手紙を差し出し、既に試験の承諾を得ていることを話した。ランベールは激昂し、「惨めな養護院から引き取って育ててやったのは誰だ?。この恩知らずめ」と怒鳴る。レティシアがブレッソンのような考古学者になりたいのだと訴えると、彼は本心を隠して「これが終わったら好きにするがいい」と告げた。
レティシアが喜んで部屋を去った後、ランベールはゲラルトから彼女を恐れていることを指摘される。ランベールがゲラルトの組織に注目された論文は、レティシアの盗作だった。「才能という物は遺伝するんだな」とゲラルトが嘲笑すると、ランベールは苛立ちを見せた。ルパンが連行された格納庫では、不二子が拘束されていた。彼女はルパンを連行してきた手下たちを誘惑し、退治して拘束を解いた。彼女は小型機を奪って逃走し、ルパンは手錠を外して手下たちを昏倒させた。
ルパンはゲラルトとランベールがいる部屋に潜入し、2人の会話を盗み聞きする。会話の内容で、ルパンはゲラルトがアドルフ・ヒトラーの信奉者であること、ヒトラーがブラジルで生きていること、第3帝国復活のためにエクリプスを手に入れようと目論んでいることを知る。ゲラルトが部屋の外で話を聞いていたレティシアに気付き、部屋に連れ込んだ。レティシアがランベールに抗議すると、ゲラルトは注射で眠らせた。彼はハッチを開き、ランベールにレティシアの始末を命じた。
ランベールが狼狽して「まだ利用価値があります」と進言すると、ゲラルトはレティシアを突き落とした。ルパンは飛び出して後を追うが、レティシアを救う方法など何も考えていなかった。そこへ不二子が飛行機で駆け付け、2人を救助した。敵の攻撃で飛行機は墜落するが、次元と五ェ門が車で救助した。ルパンは銭形と警官隊を呼び寄せ、輸送機を奪って逃亡を図る。銭形が追って来たのでルパンは捕縛し、ゲラルトの計画を説明して休戦協定を持ち掛けた。レティシアに頼まれた銭形は、協力を承諾した。
輸送機は大西洋沿岸の海洋油田に着陸し、ルパンはレティシアに彼女の祖父がブレッソンだと教える。ルパンはゲラルトの飛行艇を去る時、鍵と日記を持ち出していた。彼はブレッソンに協力して日記の仕掛けを作ったのがルパン一世だと気付き、興奮してレティシアに教えた。ルパンたちは再び輸送機に乗り、エクリプス遺跡があるメキシコのティオティワカンへ向かう。先に遺跡へ到着したゲラルトたちは、扉を壊して中に入った。不安を覚えたランベールは、先に進むようハンスに指示した。するとハンスは第1の試練によって消失し、日記が必要だと感じたゲラルトたちは飛行機の墜落現場へ戻ることにした。
ルパンたちはゲラルト一味の動きを観察し、去るのを確認した上で遺跡に入った。彼らは日記を読み、試練を攻略する方法を考える。大量の目玉の中からルパンが正解の1つを見つけ出し、一行は第1の試練を突破した。続く第2の試練では、橋を渡るために隕石が必要だった。五ェ門の態度を怪しんだ銭形は、斬鉄剣が隕石で作られていることを見抜いた。協力を嫌がっていた五ェ門だが、結局は橋を渡るために斬鉄剣を使った。
第3の試練である死の回廊について、日記では「身体能力を使って駆け抜け、礼拝堂まで辿り着けば全ての試練は停止する」と記されていた。ルパンは罠を回避しながら回廊を突破し、ルパン一世のハットとステッキを見つけた。ルパンは礼拝堂に着くが、ゲラルトの一味がレティシアたちを銃で脅して連行してきた。一味は一部の手下を飛行艇で出発させ、遺跡に留まってルパンたちの動きを観察していたのだ。一味はルパンたちを拘束し、ゲラルトとランベールはレティシアを連れて礼拝堂へ行く。2人はエクリプスを起動させ、レティシアを連れて飛行艇に戻った。崩壊する遺跡から脱出したルパンたちは、すぐに後を追った。ゲラルトとランベールはエクリプスを使い、彼らを始末しようとする…。

監督・脚本は山崎貴、原作はモンキー・パンチ、企画プロデュースは加藤州平&加藤良太、製作は竹崎忠&沢桂一&市川南&安岡喜郎&菊川雄士&島村達雄、エグゼクティブプロデューサーは篠原宏康&伊藤響&阿部秀司、プロデューサーは野崎康次&北島直明&伊藤武志、監督補は波田琢也&中嶌隆史、アートディレクターは梅田年哉、CGスーパーバイザーは荒川孝宏、エディターは高橋友和、ラインプロデューサーは立川真由美、音響監督は清水洋史、音楽は大野雄二。
声の出演は栗田貫一、小林清志、浪川大輔、沢城みゆき、山寺宏一、藤原竜也、吉田鋼太郎、広瀬すず、伊藤和晃、平修、高桑満、早川毅、和優希、紺野相龍、白熊寛嗣、佐々木省三、堀越富三郎、井木順二、土屋直人、井川秀栄、藤高智大、佐伯美由紀ら。


モンキー・パンチの同名劇画を基にしたTVアニメ『ルパン三世』の劇場版第7作。ルパン三世が単独で映画化されるのは、1996年の『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』以来23年ぶり。
シリーズ初のフル3DCGアニメーション作品。原作者であるモンキー・パンチの希望を実現すべくフル3DCGアニメーション化の企画は進められたが、彼は完成を待たずに死去した。
監督・脚本は『DESTINY 鎌倉ものがたり』『アルキメデスの大戦』の山崎貴。
ルパン役の栗田貫一、次元役の小林清志、五ェ門役の浪川大輔、不二子役の沢城みゆき、銭形役の山寺宏一は、シリーズのレギュラー声優。
ゲラルトの声を藤原竜也、ランベールを吉田鋼太郎、レティシアを広瀬すずが担当している。

アニメ映画で宣伝のために有名俳優を起用するのは今に始まったことじゃないが、この作品でも藤原竜也、吉田鋼太郎、広瀬すずが起用されている。
藤原竜也は藤原竜也以外の何者でもないし、広瀬すずは広瀬すず以外の何者でもない。ただ、それよりも声がキャラと上手く馴染んでいないってことの方が問題だ。
しかし、そんな両名よりも問題なのが小林清志。
ずっと次元の声を担当してきた人だし、もちろんベテランの本職だ。ただ、やはり年には勝てないのか、明らかに声が老いて弱っている。

そもそも『ルパン三世』がフル3DCGアニメーション化に向いている素材だとは思わないので、その企画そのものに個人的には賛同しない。
ただ、それが原作者であるモンキー・パンチの希望ってことなら、それは仕方がない。
でも、実際に完成した作品を見ると、「何か違う」という印象が否めない。
何が違うって、なんかピクサー・ディズニーみたいなデザインや動きなのよね。キャラは丸みを帯びていて、劇画よりも漫画っぽさが強いのだ。

アクションシーンにしても、もっと誇張した方がいいと思うのだが、おとなしいんだよねえ。そういう動きの部分も、ちょっとピクサー的な匂いを感じてしまう。
冒頭のルパンやレティシアが日記を奪おうとするシーンにしても、次元と五ェ門がクルマでルパンを助けるシーンにしても、「TVアニメ版を模倣し、おとなしくした劣化版」みたいに見えちゃうのよ。
絵は綺麗だけど、綺麗だからいいってモンでないのよね。
かつて作られた実写版は酷かったけど、絵としての印象は、むしろアニメから遠い分だけ、そこまで気にならなかったのよ。
こっちは同じアニメなので、「もっと出来るはずだろ」と言いたくなる。

ルパンがブレッソン・ダイアリーを手に入れようと言った時、次元と五ェ門は協力を拒む。「あるのか無いのか分からないお宝のありかが書いてあるだけなんだろ」と次元は語るが、そんな理由で協力を冷たく拒むのは不可解だ。
ルパンと彼らって、そういう関係性じゃなかったはずでしょ。「宝があるのか無いのか分からない」という理由で断るような間柄じゃないはず。
そんで次元はルパンを助けた時に「なぜ来たのか」と問われ、「ブレッソン・ダイアリーが開いたって聞いたぞ。独り占めしようとしやがったな」と怒る。
だけど、次元はルパンがブレッソン・ダイアリーを手に入れようと持ち掛けた時、「宝があるのか無いのか分からない」という理由で協力を断っていたでしょうに。支離滅裂じゃねえか。

飛行艇に侵入して日記を入手したルパンは、「この警戒態勢じゃ、脱出は無理だ」と言う。そして彼は都合良く無人だった別の部屋へ行き、そこで日記を開く。
だけど、脱出が無理だとしたら、開帳しても意味が無いでしょ。
「ブレッソン・ダイアリーを開帳したら、目的は達成」ってことじゃないんだからさ。そこから逃げ出さないと、何の意味も無いんだからさ。
なので、「脱出は無理だから飛行艇の中で日記を開く」ってのは、シナリオに合わせてルパンを不自然に行動させた御都合主義が不細工な形で露呈している。

ルパンは鍵を組み合わせ、日記を開帳する作業までやっている。だけど、それをレティシアが見守っているのも、ずっとランベールが接触してこないのも不自然だ。
ランベールはレティシアから連絡を受けた時、「鍵と一緒にルパンを連れて来い」と命令したのだ。だったら、ルパンが飛行艇に潜入した時点で、もうランベールは彼を拘束するために行動を起こすべきじゃないのか。
彼は日記の開帳に自信満々の様子だったんだし、「ルパンに全てやってもらおう」ってのは変だよ。
そして、仮にそういう狙いだったとしたら、それは観客に対して先に説明しておくべきだし。

ルパンは日記を見て、すぐに「キーワードが必要で、正しく回さないと撃鉄が起動して爆発する」と説明する。
そんな説明を聞いていたレティシアが、能天気に鍵を鍵穴に差し込むのは「なんでだよ」と言いたくなるぞ。
「時限装置は知らなかった」ってことなんだろうけど、そういう問題じゃねえだろ。時限式じゃなくても、「撃鉄が起動して爆発する」と聞かされたら、慎重になるのが普通だろ。
そこだけレティシアのボンクラっぷりが極端になっちゃってるぞ。

レティシアはランベールの泥棒行為に協力し、ルパンを騙して連れて行く仕事も実行する。ランベールが悪党なのは明白なのに、それでも彼女は約束を果たしてもらうために命じられた仕事をこなす。
では彼女が求めている約束は何なのかというと、「ボストン大学への入学」だ。
それが明かされた時、「なんだ、そりゃ」と呆れてしまう。
そりゃあ本人としては「絶対に叶えたい夢」なんだろうけどさ、悪党の片棒を担いで犯罪を繰り返し、下手すりゃ逮捕されるリスクまで負う見返りとしては、割に合わなくねえか。

これが例えば、「レティシアは自分がブレッソンの孫娘だと分かっていて、祖父の名誉を回復したり、祖父の悲願を引き継いだりするために動いている」ってことなら、そのためにリスクを追って犯罪に手を染めるのは理解できるのよ。
でも、彼女はブレッソンの孫だと知らずに動いているのよね。
単純に「考古学を勉強したいからボストン大学へ行きたい」ってだけなのよね。
それは彼女を突き動かす理由として、そして観客を納得させる理由として、あまりにも弱すぎるでしょ。

ゲラルトとランベールの会話で「ヒトラーがブラジルで生きていて、第3帝国の復活を目論んでいる」ってことが明らかにされると、前述した「レテイシアの目的」と同じぐらいの脱力感に見舞われる。
今さら「ヒトラーが生きていて第3帝国の復活を目論む」って、その設定はどうなのかと。バカバカしいとしか思えないわ。
終盤に入って、ヒトラーを登場させるのもセンスが無い。
「実はルパンの変装」という設定ではあるけど、本物かどうかが問題なんじゃなくて、ヒトラーを登場させている時点で「何だかなあ」と。

ランベールはレティシアの論文を盗作するだけでなく、「約束を果たす」と嘘をついて自分の目的のために都合良く利用している。
しかしゲラルトからレティシアの始末を命じられると、「まだ利用価値がある」と理由を付けて殺害を阻止しようとする。
でも、そんなトコだけ「親心」とか「人間味」みたいなモノを急に見せられても、キャラとして中途半端にしか思えないよ。
それ以降はレティシアへの親心で行動するのかというと、普通に醜い悪党のままなんだし。

「ルパンが飛行艇を飛び出してレティシアを救い、不二子が飛行機で駆け付け、敵の攻撃で墜落すると次元と五ェ門が車で助け、車が爆破されて」という一連のアクションシーンなんかは、普通に考えれば大きな見せ場になるはずだ。
しかし残念ながら、引き付ける力が弱い。
その理由は、より実写に近付けようとする描写になっているからだ。
それが3DCGの特性ちゃあ特性なんだけど、「だったら実写でいいでしょ」と言いたくなる。実写でやったら「凄いアクション」でも、同じことをアニメでやると一気に凡庸化してしまうのだ。

敵は次元の運転する車を爆破すると、そのまま飛び去る。
だけど、それは変でしょ。「車を爆破すれば追って来られないからOK」ってことでもあるまいに。
ゲラルトはレティシアを始末しようと目論んでいたんだから、少なくとも彼女だけは確実に殺すべきでしょ。
車を爆破した時に、ルパンたちも殺したと思い込んでいるわけでもないでしょ。ルパンたちが生きていることは、目視できる状態にあるんだし。
そのシーンの敵の行動は、どう考えても不可解だ。

次元のキャラがおかしくなっていることは前述したが、銭形にも同じようなことが言える。
彼はルパンから休戦協定を持ち掛けられた時、それを拒む。しかしレテイシアから「私を信じて」と見つめてお願いされると、顔を真っ赤にして協力を快諾するのだ。
いやいや、そんな「可愛い女の子に頼まれたら照れて快諾する」みたいなキャラじゃなかったはずでしょ、銭形って。
あと、そのシーンでルパンたちが日清のカップヌードルを食べているんだけど、そのプロダクト・プレイスメント、すげえ邪魔だわ。

海洋油田に着いたルパンは、レティシアに「君の祖父はブレッソンだ」と教える。それを聞いたレティシアは、感動で泣き出す。
だけど、レティシアがブレッソンの孫娘ってことは、たぶん映画を見ている大半の観客が最初から分かっていたことなのよね。
もちろんレティシアは何も知らずに行動していた設定なんだけどさ、あまりにもバレバレなので「なんで気付かないのよ」と言いたくなる。
そして、そこを感動のシーンとして演出されても、白々しくて呆れてしまうだけだ。

ゲラルトたちは日記がルパンに摩り替えられていると知っても、取り戻しに行かずに遺跡へ向かう。そしてハンスが試練で死ぬと、「日記が無いとダメだな」ってことで飛行機の墜落現場へ戻る。
でも、なぜ日記が無くてもエクリプスを入手できると思ったのか。
そこで簡単に「無くても大丈夫」と思える程度の日記なら、最初から必死になって手に入れようと思わなかったはずだろ。
ハンスが死んでから「やはり日記が必要」と焦るのは、ボンクラにしか思えない。

実際のところ、ゲラルトたちは墜落現場に戻っておらず、「そう思わせておいてルパンたちにし試練を突破させる」という作戦だ。
でも、「だったら最初から、そうすりゃ良かったじゃねえか」と言いたくなる。
日記の時も、最初は「ルパンをレティシアに連れて来させる」というだけだったはずが、ルパンに日記の仕掛けを解除させていた。今回も、最初は自分たちでエクリプスを見つけようとしていたのに、途中で「ルパンに試練を突破させる」という方針に変更している。
それが行き当たりばったりにしか思えないのよ。

ルパンたちが遺跡に入ると、しばらくはゲラルトの一味が関与しない。
もちろん試練の突破を待っているから当然なんだけど、かなり都合のいい展開だと感じる。
で、ルパンたちが遺跡に足を踏み入れると、勢いの足りない「インディアン・ジョーンズ」シリーズになる。それだけでも「なんか違う」と言いたくなるが、さらに厄介なのが第2の試練の突破方法。
急に「斬鉄剣は隕石で出来ている」という設定が用意され、呆れるぐらいの御都合主義で突破してしまう。
五ェ門と斬鉄剣の使い方が雑すぎるだろ。

ルパンが第3の試練をクリアすると、すぐにゲラルト一味がレティシアたちを銃で脅して連行して来る。
ルパンたちのおかげで全ての試練は解除されているので、それを突破しなくても進んで来られるのは分かる。でも、ルパンが第3の試練をクリアした直後ってことは、一味はずっと後ろから尾行していたってことになるよね。そうじゃないと、すぐにレティシアたちを連行して来るなんて無理だからね。
ってことは、そんな一味の動きにルパンたちは全く気付いていなかったってことになるだろ。
それは変だぞ。

ゲラルト一味は試練を全て解除してもらって礼拝堂に辿り着いたんだから、もうルパンたちを生かしておく必要なんて無いはずだ。
なのに縛り上げるだけで済ませるってのは、どういうつもりなのか。さっさと殺せばいいだろ。
あと、レティシアだけを礼拝堂まで連れて行き、エクリプスを起動させたら飛行艇にも連れて行く理由も、これまた意味不明。
もうレティシアの利用価値だってゼロになっているはずだぞ。そこで彼女を生かして連行する意味って何なのか。

ランベールはエクリプスを使うと急に増長し、日記を燃やす。ゲラルトがアタフタして焦っていると、ランベールは「ベルリンを燃やす。私は世界の王になる男だぞ」などと言い放つ。
ここの上下関係を、一時的であっても逆転させちゃダメでしょ。ランベールが増長するにしても、ゲラルトは焦らず、あくまでも見下した態度で制圧すべきだよ。
あと、そこに来てゲラルトが急に怪力でランベールを投げ飛ばすような格闘キャラになるのも違和感があるし。
その怪力格闘キャラはルパンとの最後の対決でも出るんだけど、そういうのを担当する奴は別で用意しておけよ。

増長したランベールは、自分を批判するレティシアに憤慨して罵る。だが、直後にゲラルトがレティシアを射殺しようとすると、庇って撃たれる。
いやいや、何でだよ。そんなトコで「レティシアを引き取って育てたのは本当の優しさだった。レティシアを実の娘のように愛していた」みたいなアピールを急にやられても、受け入れ難いわ。
しかも、直前まで「世界の王になる」とか言っていたような男だぞ。ただの支離滅裂にしか思えんよ。
「根はいい人」として死なせたかったのなら、そこからの逆算が下手すぎる。

終盤、ルパンはヒトラーに化けて飛行艇に乗り込み、エクリプスを破壊しようとする。ここで彼はゲラルトに余裕を見せ付け、隙を見て脱出しようとする。しかしゲラルトに捕まり、ピンチに陥る。
で、ルパンが捕まってピンチに陥るのって、調子にのって余裕を見せていたせいだと感じるのよね。
もっと慎重に行動していれば、ゲラルトに気付かれることも無いまま、すんなりと脱出できたんじゃないかと。
自分でピンチを作って自分で回避するという、マッチポンプに見えちゃうぞ。

どうやら山崎貴監督の中では、『ルパン三世』と言えば、ほぼイコールで『カリオストロの城』だったようだ。
そんなわけで、この映画は『カリオストロの城』の影響を強く感じさせる仕上がりとなっている。
当初は離れようと思ったが、どうしても似てしまったってことは本人も認めている。
もはやオマージュと言うよりも、物真似になっちゃってるよね。『カリオストロの城』が大好きな人が作ったファン・ムービーって感じになっちゃってるよね。
で、ファン・ムービーとして捉えてしまうと、いっそのこと『カリオストロの城』をフル3DCGでリメイクすれば良かったんじゃないかと思ったりして。

(観賞日:2021年2月27日)

 

*ポンコツ映画愛護協会