『ろくでなしBLUES』:1996、日本
吉祥寺の帝拳高校に通う前田太尊は、連れの沢村米示や山下勝嗣らと共に拳闘部の部室で原田成吉を待っていた。成吉は天才高校生ボクサーと呼ばれていたが網膜剥離でライセンスを失い、アメリカでの手術を終えて帰国したのだ。
だが、成吉は渋谷で東京四天王の1人である鬼塚に殴り倒されていた。成吉との勝負に意気込む前田は、町に出て彼を見つけ出し、殴り合いを始める。その様子を見ていたボクシング協会の柴田が成吉に声を掛け、もう一度プロでやらないかと誘う。
トレーニングを開始した成吉は、プロ復帰を賭けてテストマッチを行うことが決定した。一方、前田はプロテストを受けるかどうか迷っていた。成吉のテストマッチが行われる日、前田は仲間を連れて吉祥寺に乗り込んで来た鬼塚との戦いに挑む…。監督は那須博之、原作は森田まさのり、脚本はこがねみどり&菅良幸、製作は田中迪&小林尚武&鈴木ワタル、プロデューサーは南條昭夫&五十嵐智之&佐々木志郎、エクゼクティブ・プロデューサーは武政克彦&石川博&尾越浩文、撮影は森勝、編集は奥原好幸、録音は北村峰晴、照明は鳥越政夫、美術は和田洋、ファイティング・スーパーバイザーは廣戸聡一。
主演は前田憲作、共演は川本淳一、小沢真珠、柳澤龍志、梅木良則、木村輝秀、小林昭男、川畑忍、神崎良、荻島哲也、相沢充、金田敏男、平田祐二、稲葉健、鵜殿松郎、小畑由香里、佐藤亮、宮田充、ジャイアン・ジュン、大石宏人、山崎崇誉、大石享、芝直樹、鈴木直哉、友田健吾、酒井伸雄、ダニエル、野本健治ら。
少年週刊ジャンプに連載された森田まさのりの人気漫画を映像化した作品。
現役キックボクサーの前田憲作が主演しており、他にも柳澤龍志や大石享といった格闘家や、全日本キックボクシング連盟会長の金田敏男氏が出演している。普通なら最初に主人公のキャラクター説明をしそうなものだが、そういった様子は見られない。
滑り出しの展開だけを見ると、まるで成吉が主人公のようにさえ感じられる。
というか、序盤の展開を見ると、続編なのかとさえ思ってしまう。導入部分だけを見た時点で、「原作を読んでいない人は置いてけぼり」であることが確定する。
しかし、原作を読んでいる人に向けて作られているのかというと、そういうわけでもない。
出演者の演技は総じて上手くないのだが、演技力を犠牲にしてでも原作の絵に似ている人物をキャスティングしているというわけでもない。多すぎるキャラクターを全てフォローしようとして、全てが薄くなっている。
鬼塚との戦いに成吉の試合を挿入する演出も、前田と成吉の友情が描かれていないから生きていない。
いきなり作り物だとバレバレの雨が降り出すような陳腐な演出が、まとまりの無いシナリオと下手な芝居を、ますます安っぽく見せている。現役のファイターを起用したのだから、最大のセールスポイントは格闘シーンにあるはずだ。
しかし、中途半端な形でケンカと格闘技をミックスしたものだから、痛みは伝わらず迫力も薄く、打撃が軽く見えてしまうという結果になっている。
ケンカとしてのリアルな痛さがあまり感じられず、凝斗としてのカッコ良さも不充分なアクションシーンなどがありつつ、エンドロールでは前田憲作がキックボクシングの試合をしている様子が映し出される。
なるほど、これは前田憲作のプロモーション・フィルムだったのね。