『ROCKERS』:2003、日本
プロのミュージシャンを目指す高木仁は、父の巌にエレキギターを燃やされた。谷信之は眼科医の人見から、いずれ目が見えなくなると告げられた。彼は女を奪ったことで、暴走族の総長と副長に絡まれた。仁はお客さんがほとんどいないライブハウスに到着すると、バンド「ROCKERS」のメンバーである桃沢力人、早乙女学、山田公介に会った。彼はメンバーに、今日からはギターを捨ててボーカル一本で行くと宣言した。仁は今の状況を抜け出し、早くプロのミュージシャンになりたいと焦っていた。しかしバンドのメンバーは、彼の苛立ちを全く分かっていなかった。
ドラムの桃沢は女に振られ、全く元気が無かった。ギターの公介は女ばかりの家に生まれ、姉たちから人形代わりに遊ばれていた。ベースの学は子供の頃から飛ぶことに命を懸けており、その日はナツメグをかじり過ぎて吐き気と戦っていた。仁はメンバーの目を覚まさせる起爆剤が必要だと考え、新しいギタリストを加えることにした。彼はオーディションを開催するが、ロクなメンツが集まらない。しかし谷の演奏を聴き、メンバーに加えると即決した。
谷は仁たちに、友達が「博多パラダイス」でイベントをやるので出演しないかと持ち掛けた。仁たちは乗り気ではなかったが、「東京からモデルの女が来る」と言われて出演することにした。仁たちは店に行き、モデルのアケミたちと会って頬を緩ませた。しかしイベントが「八代目総隊長お疲れさまでしたパーティー」だと知り、彼らは逃げ出そうとする。谷たけは全く臆しておらず、ライブを始めようとする。仁たちは早くライブを終わらせ、帰ろうと考えた。
チークダンスが出来る曲を要求された仁たちは、『メリージェーン』を演奏した。しかし途中で谷が激しくギターを鳴らしたため、全員も彼に会わせてロック・バージョンを演奏した。彼らは演奏を終えると店から逃げ出し、追い掛けようとした暴走族はオーナーの山路から「掃除していけ」と睨まれて引き下がった。眼科に赴いた谷は、仁の大ファンである佐藤真弓に声を掛けられた。目が悪いのかと問われた彼は、ものもらいだと嘘をついた。
暴走族にギターとベースを奪われたため、仁たちは練習が出来なくなった。仁は死んだ祖父が金庫に入れてあった金歯を売り、新しい楽器を手に入れた。「80's FACTORY」のオーナーである杉村パルコが仁たちの元へ来て、店で演奏しないかと誘った。仁たちは喜び、スターになる夢を膨らませた。仁は谷から真弓が大ファンだと聞かされ、「俺は要らん。お前にやる」と冷たく言い放った。しかし真弓の気持ちは、自分に優しくしてくれた谷に移っていた。
「80's FACTORY」のライブ当日、仁たちの出番になっても会場には客が全く入っていなかった。仕方なく仁たちがライブを始めると、途中で1人の美女が入って来た。仁は急に張り切るが、谷から真弓だと教えられて驚いた。「リップオフ」のライブが始まる5時になると、ボーカルの桜井目当ての客が一斉に押し寄せた。桜井が歌い出すと、女性客が熱狂した。仁が悔しがると、谷は「まだ負けてる」と言う。彼が「バンドとして注目されるためには、縦ノリのスピード感を売りにするしかない」と言うと、仁は同意した。
仁たちは練習を積んでライブを重ね、着実に観客の数は増えて行った。谷は桜井からリップオフに勧誘されるが、何の迷いもなく断った。目の不調に焦りを覚えた彼は、「1年以内にプロになろう」と仁に告げる。仁はプロ入りの登竜門である西日本最大のアマチュアバンドコンテスト「Beat Big Bang」の存在を知り、ROCKERSで出場することを決めた。谷は練習中に苛立ち、ミスをしたメンバーを注意した。彼は「コンテストでは持ち時間10分で3曲を演奏する」と言い出し、反対する仁と口論になった。
どうせなら4曲やろうと仁が言い出すと、メンバーは賛成した。皆はコンテストにに向けて張り切るが、谷は人見から思った以上に進行が速いので手術をしようと告げられた。しかし手術しても治るわけではなく、何年かは今の状態が続くだけだった。「その間に新しい治療法が開発されるかもしれない」と言われた谷だが、コンテストが翌週なので悩んだ。真弓から話を聞いた仁は、谷にクビを通告した。彼は「コンテストには出さん」と言い、手術を受けてからバンドに戻るよう促した…。監督は陣内孝則、原案は陣内孝則、脚本は斉藤ひろし、製作総指揮は早河洋、製作統括は木村純一&丸茂日穂&松本知則&古屋文明&笠原和彦、製作は後藤圭介&細川健彦&藤沢美枝子&桃田享造、企画は岩本太郎&鈴木裕光&半田俊彦&小松賢志&村上比呂夫、企画協力は清水透&白濱なつみ、スーパーバイザーは井口玲子&明石雅晋、プロデューサーは杉山登&森谷雄、ラインプロデューサーは岩本勤、美術監督は清水剛、撮影監督は中山光一、照明は花岡正光、録音は横野一氏工、編集は深澤佳文、音楽プロデューサーはスマイリー原島&三原康可。
出演は中村俊介、玉木宏、岡田義徳、佐藤隆太、塚本高史、上原美佐、玉山鉄二、大杉漣、白竜、麻生祐未、風間トオル、小泉今日子、佐藤浩市、鈴木京香、中井貴一、松重豊、モト冬樹、八嶋智人、浦田賢一、伊佐山ひろ子、植松真美、小林且弥、はなわ、金原泰成、ザ・スリル、デミセミクエーバー、KP、The TRAVELLERS、ゴーグルエース、THE PRIVATES、SOULSBERRY、菅原龍平(from AUTAMUN STONE)、久保晶、花原照子、真鍋尚晃、増田雄一、秀島史香、王様、沢松綾子、大沢恵介、手嶋雅彦ら。
陣内孝則が初監督を務めた作品。彼が在籍していたロックバンド「ザ・ロッカーズ(TH eROCKERS)」を描いた自伝的作品。
脚本は『黄泉がえり』『ドラゴンヘッド』の斉藤ひろし。
ザ・ロッカーズは何度かメンバーが交代しているが、映画のモデルとなっているのは1978年から1981年の頃の面々。
仁を中村俊介、谷を玉木宏、桃沢を岡田義徳、学を佐藤隆太、公介を塚本高史、真弓を上原美佐、桜井を玉山鉄二が演じている。監督の陣内孝則も、携帯ショップの客として1シーンだけカメオ出演している。[GUEST STARS]として表記される出演者が9名。
葬儀の母親が麻生祐未、二枚目スターが風間トオル、パルコが小泉今日子、人見が佐藤浩市、看護婦が鈴木京香、牧師が中井貴一、コンテストMCが松重豊、オーディションに来るカツラの男がモト冬樹、往診の若い医師が八嶋智人という顔触れだ。
他に、山路を白竜、喫茶店のマスターを大杉漣、仁の両親を浦田賢一と伊佐山ひろ子が演じている。
[GUEST BAND]として、ザ・スリル(リップオフのメンバー役)やデミセミクエーバー、THE PRIVATESなどが出演している。冒頭、男児が母に連れられて教会へ行くと、祭壇の隣にエレキギターが置いてある。男児がギターを持って走り出すと、現在のシーンになる。
なぜ教会にエレキギターが置いてあるのか、どういう状況なのかはサッパリ分からない。
それはともかく、そういう入り方をするのだから、男児の成長した姿は絶対に仁であるべきだろう。ところが実際には谷なのだ。
いやいや、それはダメじゃん。なんで最初のシーンで幼少期を描くのが、仁じゃなくて谷なんだよ。谷がギターを背負って走っていると、仁もギターを背負って合流する。そのまま一緒に走ってどこかへ向かうのかと思いきや、シーンが切り替わると仁が父にギターを燃やされる出来事が描かれる。
焼却炉に放り込まれるので完全に燃えたのかと思いきや、走る仁が背負っているのは、そのギターだ。
だけど「もう使えないだろ」と思っていたら、ライブハウスに着いて「今日からボーカル一本で行く。これは決意表明だ」とメンバーに言ってギターを捨てる。
だったら、やっぱり持って来なくて良かっただろ。
わざわざ持って行くなら、物語なりギャグなりに活用しようぜ。走っている時点ではギターから煙が出ているけど、ギャグになるほどの描写ではないし。仁と谷はオープニング・クレジットの間、先を争いながら並走している。ところがライブハウスに切り替わると、仁だけになる。そして谷の方は、仁たちのライブを客席から見物している。この時点で、ようやく「仁と谷は知り合いでも何でもない」ってことが明らかになる。
赤の他人なら、並走シーンは邪魔だよ。
そもそも、オープニング・クレジットのタイミングで仁と谷を先に出している構成自体が間違いだ。先にバンドのメンバーを登場させて、谷は後回しにすべきなのよ。
せっかく仁のパートでギャグをやっているのに、いきなり「谷が医者から失明を宣告される」というトコで悲劇性が生じ、勢いやパワーが削がれちゃうし。
あと、まだバンドのメンバーも出て来ない内から、オープニング・クレジットで不倫課長とOLを出すのも余計だわ。オーディションのパートは、ただギャグをやったりゲストを出演させたりしたかっただけだろう。花原照子が三味線で参加したり、ズラが脱げてモト冬樹が不合格になったり、王様が門前払いを食らったりする。
面白いかどうかはともかく、そういうのは別に構わない。ただ、谷に関しては完全に切り分けて描くべきなのに、普通に「次の参加者」という形になっているんだよね。それは見せ方が上手くない。
あと、谷がやたらと反抗的で生意気なのは、どういうつもりなのかと。それにしてはオーディションに来ているし、メンバーに入ることは全く嫌がってないし。そこは見せ方が変だよ。そもそも谷がオーディションに参加している理由が良く分からないし。
もっと言っちゃうと、彼はオーディションに参加させるよりも、他の方法で新メンバーになる流れにした方が特別感が出せたと思うし。たくさんのギャグを盛り込み、たくさんのゲストを登場させたかったことは良く分かる。ただ、そういう作業を処理することに時間を使い過ぎて、テンポが悪くなって間延びしている。
もっとテキパキと進めたり、一気に次の展開へ飛んだりした方がリズム感が出るような箇所でも、ダラダラしちゃってんのよね。
あと、話のまとまりが悪くて散らかっている印象にも繋がるし。
どれだけコメディーをやっていても「いずれ谷の目が見えなくなる」という部分はシリアスに扱わなきゃいけないはずなのに、そこの流れも全く描けていないし。例えば「80's FACTORY」のライブパートなんかも、色々と邪魔な情報が多い。
そこは「ROCKERSは全く人気が無いが、リップオフの桜井は女性から大人気で仁義は屈辱を感じる」ということだけ描けばいいのだ。
しかし実際には「なぜかモニター越しに登場するパルコや桜井」とか、「美女だと思ったら眼鏡を外してお洒落した真弓」とか、余計な飾り付けが盛り込まれている。
あと、なぜ仁たちが博多パラダイスのライブに乗り気ではないのか、なぜ80's FACTORYだと大喜びするのか、その辺りも説明不足で良く分からないし。真弓は谷の様子がおかしいと感じ、そんなに目が悪いのかと尋ねる。しかし谷の返答は無いまま、シーンが切り替わる。
谷が教会で牧師と話す時、その場に真弓も同席しているので、「真弓は谷から手術や失明のことを聞いたんだろう」ってことは推測できる。ただ、その次に仁が「真弓から目のことを聞いた」と谷に話しているのは、さすがに省略が過ぎる。
仁が谷の病気について知るシーン、そしてショックを受けるシーンは、ちゃんと描くべきだよ。何なら仁だけじゃなく、メンバー全員が知る形の方がいいし。
しかも、仁は知った途端に手術を受けろと言ってんのよね。つまり、知ってからの苦悩や逡巡、メンバーでの相談といった手順も無いのよ。
ROCKERSにとって大きな出来事のはずなのに、なんて淡白な処理なのかと。コンテスト当日になってから仁たちの出番が来るまでには、10分ぐらい掛かっている。
その中には「ゲストのバンドを登場させるため」という目的も含まれているが、そんなのは別に構わない。本番直前になって谷が駆け付けるのはベタ中のベタとも言える展開だが、それも一向に構わない。
ただし、谷が出演に反対する仁を説き伏せた後、カットが切り替わるとメンバー5人でステージへ向かっているのは、シーンの繋がりとして違うでしょ。
なぜ谷が会場に現れたことに対する、メンバーの反応を見せないのかと。陣内孝則が本作品を企画したのは、谷のモデルである谷信雄への思いからだ。
なので、この映画で「仁と谷の絆」を軸に据えているのは当然だし、それは理解できる。
しかし桃沢たちからしても、谷はバンドにとって大事なメンバーのはずでしょ。そして谷からしても、「仁と一緒に演奏出来たら、他のメンバーは誰だって構わない」ってことじゃないはずで。
だから谷が来た時の桃沢たちの反応を見せないのは手抜きであり、そこを省略しちゃイカンと思うのよ。そして実のところ、そこの問題を簡単に解決する方法がある。
この映画だと「他のメンバーはトイレに行っており、仁が1人でいると谷が現れる」という形になっているが、そこを「メンバー4人が出番を待っていると、そこへ谷が現れる」という形にすれば済むのだ。
それなら、桃沢たちのリアクションを描いた上で、同じシーンの中で「仁は出演に反対するが、谷が熱い気持ちを訴えるので受け入れる」という手順も消化することが出来るわけで。ロッカーズはコンテストで優勝し、メジャーデビューが決まる。谷は無理したせいで右目の視力が極端に落ちるが、左目は術後の経過も順調で、失明は免れる。
だったら、後はエピローグで終わらせてもいいと思うのよ。
だけど実際には、「メジャーデビューから2年で解散した」ってことがナレーションで語られ、5年後に移る。そして、それぞれ別の仕事をしていたメンバーが再結成を決める展開が描かれる。
だけどさ、そういうのって完全に蛇足と化しているんだよね。そんな構成にしている理由は簡単で、ネタバレになるが「谷がバイク事故で死亡する」という出来事まで描きたいからだ。
陣内孝則が谷への思いから企画した映画なので、「谷の死むまで描きたいのは良く分かる。だけど構成としては、完全に失敗だ。そんなに簡単に再結成に向けて動き出すのなら、なんで2年で解散したのかと言いたくなるし。
「再結成に向けて動き出した直後に谷が死ぬ」というトコまで描きたいのなら、「解散して5年後」を重視した方が良かったんじゃないか。メジャーデビューまでの経緯なんて、極端に言えば丸ごとカットでもいい。
その代わりに、「解散したバンドが再結成に向けて動き出す」という部分を厚くした方がいい。
事故死までを描くのなら、結果として「視力の低下が云々」という出来事も邪魔になっちゃってるし。(観賞日:2025年7月1日)