『リング2』:1999、日本

山村貞子の死体が、30年ぶりに井戸の中から発見された。貞子の母・志津子の従弟・山村敬が、遺体の身元確認にやって来た。解剖した結果、貞子の遺体は死後1年ほどしか経過していなかった。つまり、それまでは井戸の中で生きていたことになる。
遺体の発見者である高山竜司は死亡し、元妻の浅川玲子は息子の陽一と共に行方不明になっていた。玲子が担当していた呪いのビデオの取材を引き継いだテレビ局員・岡崎は、高山の助手で恋人の高野舞と出会い、共に玲子を探し始める。
舞と岡崎は、倉橋雅美という女子高生に会うために精神病院を訪れた。雅美は、玲子の姪・智子がビデオを見て死んだ時に一緒にいた友人だ。雅美が病院のテレビに近付くと、ブラウン管には井戸が映し出され、近くにいた患者達が苦しみ始めた。
舞は玲子と陽一に出会った。陽一は舞に、近くに髪の長い女がいることを知らせた。舞は玲子から、陽一が近付くと勝手にテレビが付いたことを聞いた。一方、岡崎は取材した女子高生・沢口香苗から、呪いのビデオを受け取った。ビデオを見た香苗は、岡崎にも必ず見て欲しいと頼んだ。岡崎は彼女に約束したが、ビデオを見なかった。
精神病院の川尻医師は、舞と岡崎、それに刑事の大牟田の前で、雅美を使った実験を行おうとする。それは、雅美の持つ特殊能力を使って、ビデオに井戸の映像を念写する実験だ。だが、テレビ画面には井戸ではなく、鏡を見る女の姿が映し出された…。

監督は中田秀夫、原作は鈴木光司、脚本は高橋洋、プロデューサーは一瀬隆重&石原真、エグゼクティブ・プロデューサーは原正人、撮影は山本英夫、編集は高橋信之、録音は柿澤潔、照明は小野晃、美術は斎藤岩男、ビジュアル・エフェクト・スーパーバイザーは松本肇、スペシャル・メイクアップ・スーパーバイザーは和田卓也、音楽は川井憲次、音楽プロデューサーは浅沼一郎、主題歌は今井美樹。
出演は中谷美紀、佐藤仁美、深田恭子、松嶋菜々子、真田広之、小日向文世、石丸謙二郎、柳ユーレイ、大高力也、沼田曜一、雅子、梶三和子、松村克己、伴大介、伊野尾理枝、芹沢礼多、つじしんめい、諏訪太郎、田村錦人、並樹史朗、仁科貴、田村貴彦、由良宜子、長曽我部蓉子、谷津勲、土田芽吹、田口主将、入沢サタ緋呼、田村貴彦、浅野宏之、白土光一、谷口智ら。


大ヒットした『リング』の続編。監督と脚本は前作と同じく中田秀夫と高橋洋が担当している。舞を中谷美紀、雅美を佐藤仁美、香苗を深田恭子、玲子を松嶋菜々子、高山を真田広之、川尻を小日向文世、大牟田を石丸謙二郎、岡崎を柳ユーレイが演じている。
『リング』の続編としては、『リング』と同時上映された『らせん』がある。しかし、この『リング2』は、それとは全く別の続編だ。ここでは、『らせん』は無かったこととして話が作られている。だから、玲子と陽一は死んでいないし、舞が出産することも無い。

いきなり死体の髪の毛が伸びるという幻覚で怖がらせようとするので、ちょっとヤバそうな予感はしたのだが、予感が当たってしまった。『らせん』に比べればマシだけど、という作品だった。
舞や陽一らの超能力を全面に押し出して、「困ったら超能力」という展開方法を使っているのは、「うわぁ、やっちまったなあ」という感じである。

呪いというのは、特に日本人にとっては「あるかもしれない」と信じられる可能性が比較的高いと思われる。それに対して超能力というのは、完全にSFの世界になる。呪いに比べると、「身近にある超常現象」というイメージは薄くなるし、少なくとも恐怖の対象ではない。
「近くに存在する恐怖の肌触り」というのは、超能力には無い。

呪いと超能力は、似ているようで全く違う。呪いに関しては、ビデオを通じて伝染するという形を取っている。だから、呪いそのものが直接的に表現されることは無い。
それに対して、例えば陽一の超能力は、念波で人を吹き飛ばすといった形で表現される。つまり、超能力は直接的に表現しようとしている。
これは、まさにコケ脅しという奴だ。

念動力以外の超能力、例えば映像が頭に浮かんだり声が聞こえたりするというのは、映像表現としては幻覚と同じような形になる。そして、幻覚を多用して恐怖を生み出そうとすると、現実にある呪いの怖さが弱くなる。
これは、『らせん』の失敗と同じだ。

中盤以降、科学的な説明をしようとしているのも興醒めだ。
得体が知れないから怖いのに、それを解明したら、怖さを取り除こうとしているようなものだ。「科学的に解明しようとしても分かりませんでした」なら怖さは残るが、そういうわけでも無さそうだ。
しかも、水の浸透圧が云々とか言い出すのだが、正直、何が何やら良く分からない。

意図的なのかどうかはともかく、この映画は完全にチープなB級ホラーの作り方をしている。
それは超能力に頼るシナリオだけではなく、演出もそうだ。
そういう所が『リング』にも無かったわけではないが、コケ脅し的な恐怖演出がかなり多くなっている。

 

*ポンコツ映画愛護協会