『リメインズ 美しき勇者たち』:1990、日本

北国の山村に巨大な熊が現れ、若夫婦の夫を殺して妻の梅を連れ去った。梅を連れ戻しに山へ入った村の男たちは、彼女の腕を食らう熊と遭遇した。人喰い熊に追われた男たちは、慌てて逃げ出した。そこへマタギ衆の頭領である嘉助が射手の鋭治、サブ、次郎、伍平を引き連れて現れ、人喰い熊に発砲する。人喰い熊が去った後、嘉助は村の人々に「赤マダラだ。あいつはオナゴしか食わねえ」と告げた。追跡を開始した嘉助たちは、赤マダラは同じ場所を踏んで後ろ向きに逃げる「戻り足」の策略を使っているのに気付いた。
山を移動しながら赤マダラの捜索を続けていた嘉助だが、吹雪で視界が遮られてしまう仕方なく彼らは、下山することにした。その途中で一行は赤マダラを発見し、遠巻きに包囲する布陣を敷いた。嘉助の合図でサブたちが発砲し、声を発して赤マダラを追い込む。行く先で待ち受けていた鋭治は、猟銃を構えて狙いを定める。赤マダラが立ち上がって吠えたので、彼は改めて猟銃を構え直す。そこへ犬が走ってきて赤マダラに襲い掛かり、鋭治に滑り込んだ女が発砲して仕留めた。
邪魔をされた鋭治が「マタギの仁義さ知らねえのか」と怒ると、女は冷静に熊を観察して「違う。赤マダラでねえ」と言う。その顔を見た鋭治は、幼馴染のユキだと気付いた。しかし鋭治が声を掛けると、ユキは傷付いた愛犬の芽留を連れて走り去ってしまった。1年前の春、鋭治は庄屋の奉公を途中で辞めて村へ戻ったユキと久々に再会していた。村の近くでは、銅山の試験掘りで爆破が行われていた。年季明けを待たずに戻ったユキに、父の浅吉は激昂した。妻のマツがなだめようとするが、浅吉は出て行けと怒鳴った。
ユキは「分かった。出て行ってやる」と声を荒らげ、家を飛び出した。外で待っていた鋭治は自宅へ彼女を連れ帰り、昼飯を食べさせた。鋭治の母であるキヨは、浅吉が本当に怒っているのではなく、村一番の子煩悩だとユキに話す。浅吉は熊に襲われて右脚を負傷し、一番の稼ぎであるマタギの仕事を断念せざるを得なくなった。今も薬で痛みを抑えている浅吉は、ユキには村一番の花嫁になってほしいと頭を悩ませていた。そのことをキヨから聞いたユキは、製紙工場へ奉公に行こうと考えた。
芽留が障子を突き破って鋭治の家へ飛び込み、緊急事態をユキに知らせる。慌てて飛び出した鋭治がユキの家へ行くと、激しく荒らされていた。制止する彼を振りほどいて中に入ったユキは、父と弟が熊に惨殺されているのを目撃した。母の姿は見当たらず、ユキは猟銃を手にして山へ向かう。後を追った鋭治が「気持ちは分かるがオラに任せろ」と止めるが、ユキは耳を貸さなかった。しかし熊が川で匂いを消していたため、発見することは出来なかった。
鋭治の捜索活動によってマツの死も確定し、嘉助や娘であるミツたちはユキの家族を丁重に弔った。嘉助たちが熊退治に出発しようとすると、ユキは自分も連れて行ってほしいと頼んだ。しかし女は山に入れないというマタギの掟があるため、嘉助は許可しなかった。早朝から山に入った嘉助たちは、ユキが芽留を連れて勝手に捜索活動を始めているのを目撃した。嘉助の命令を受けた鋭治はユキの元へ行き、村へ帰るよう説く。するとユキは短髪にした頭を見せ、「オラは男になったんだ」と告げた。
鋭治は「女の匂いを嗅ぎ付けられたらおしまいだべ」と忠告し、女しか食べない赤マダラについて教える。ユキは赤マダラのことを知っており、女の匂いを消すために熊の油を塗って来たと語る。彼女は「優しい娘っこがいいんなら、ミッちゃんと一緒になったらいいだべ」と告げ、自分のことは放っておいてくれと言う。頑固な態度のユキに腹を立てた鋭治は彼女と揉み合いになり、手首に傷を負う。出血を見たユキは大声で泣き出し、その場から走り去った。ユキは村に戻らず、芽留と共に姿を消した。
ある日、倉持巡査が警察署長や県会議員たちを連れて村へやって来た。署長は禁猟区で雉を撃った密猟者を捜していると説明し、居場所を教えるよう嘉助に要求した。その目撃証言から、犯人がユキであることは明らかだった。嘉助はユキが行方不明だという事実を話すが、県会議員は納得しなかった。県会議員の命令で、警官たちは家の中にいる村人を外へ連れ出した。暴力的な警官に腹を立てた鋭治は襲い掛かるが、仲間たちに制止される。県会議員は「マタギか。時代遅れめ。早く立ち退け」と罵って村を去った。
山を歩いていた鋭治は、芽留の鳴き声を聞いた。芽留に導かれた鋭治は、崖下へ転落して倒れているユキを発見する。鋭治はユキを救出して山小屋へ運び、食事を与えて介抱した。優しい言葉を掛けられたユキは、涙をこぼした。翌朝、ユキが赤マダラに襲われる悪夢で鋭治が目を覚ますと、彼女は姿を消していた。嘉助は鋭治たちを連れて、祭りで賑わう里へ出掛けた。よろず屋に入った嘉助たちは獲物を渡し、米と味噌への物々交換を頼んだ。よろず屋は赤マダラの噂を知っていたが、里まで襲うことは無いだろうと楽観視していた。彼の話で、鋭治たちはユキが里へ来たことを知った。一行が里で休息している時、よろず屋の若妻であるヤエが赤マダラに襲われる…。

監督は千葉真一、脚本は佐藤繁子、製作は桜井洋三&千葉真一&石田博、企画監修は深作欣二、企画協力は松橋功、プロデューサーは清水一夫&野村芳樹&星野精三、撮影は藤原三郎、美術は梅田千代夫、照明は中山利夫、録音は広瀬浩一、編集は園井弘一、アクション監督は金田治、音楽は大谷幸、音楽監督は真田広之。
主題歌「リメインズ」作詞 作曲:真田広之、編曲:大谷幸、唄:村松美香。
出演は真田広之、村松美香(新人)、菅原文太、長門裕之、蟹江敬三、夏八木勲、南田洋子、黒崎輝、真矢武、栗原敏、田中浩、鈴木ヤスシ、森田美樹、奈美悦子、高部知子、関時男、三重街恒二、相馬剛三、高月忠、美田健、城春樹、村田功、高橋利道、益田哲夫、井上清和、関根大学、甲斐道夫、山本亨、卯木浩二、高良隆志、西田真吾、青木哲也、塩谷庄吾、夏山剛一、山口祥行、菊池香理、北島佐和子、江尻正美、杉浦明彦、松下絢、岡雄大、代本裕美子、金野隼人、山田裕一、吉見謙一、竹本貴志ら。


ジャパンアクションクラブ (JAC) 創立20周年記念作品。JACの創設者である千葉真一が、初監督を務めている。
脚本は『新入社員(秘)OL大奥物語』『女新入社員 5時から9時まで』の佐藤繁子。
前年にJACを退団した真田広之が鋭治を、JACが売り出そうとしていた新人の村松美香がユキを演じている。
他に、嘉助を菅原文太、県会議員を長門裕之、よろず屋を蟹江敬三、浅吉を夏八木勲、キヨを南田洋子、サブを黒崎輝、次郎を真矢武、伍平を栗原敏、警察署長を田中浩、倉持を鈴木ヤスシ、ミツを森田美樹、マツを奈美悦子、ヤエを高部知子が演じている。

まず最初に思ったのが、「なぜマタギの話にしちゃったのか」ってことだ。
そりゃあ答えは簡単で、「千葉真一が作りたかったから」ってことではあるのよ。
で、サニー千葉が大正四年に北海道苫前地方で起きた事件をモチーフにして映画を作ろうとするのは、別に構わない。
監督を依頼した深作欣二から自身で撮るよう言われて第一回監督作品に選ぶのも、一向に構わない。
だけど、JAC創立20周年記念作品で、これは違うでしょ。

ジャパンアクションクラブは、サニー千葉がスタント・アクションの出来る人材を育成するための団体だ。
だったら、その集大成となるような映画なんだから、スタント・アクションをテンコ盛りに出来るよう題材を選ぶべきじゃないのかと。
つまり、シンプルに「善玉の主人公と仲間たちが、悪の組織と戦う」という徒手格闘を主体にしたアクション映画にするとかさ。
まあ、図式はどうでもいいんだけど、少なくともスタント・アクションの魅力が存分に発揮できる話にすべきだとは思うのよ。

そこの意識が完全に欠如していることは、導入部からしてハッキリと分かる。
主人公である鋭治と仲間たちが登場するシーンは、彼らの能力を披露して観客を引き付ける大切なポイントのはずだ。ところが、彼らが熊に発砲するシーンを見せて、それだけで終わってしまう。
つまり、アクションとしての面白味ってのは皆無なのだ。
まあ猟銃を発砲しているから、一応は「ガンアクション」と言えるのかもしれんけど、そういうことじゃないし。
あと、熊を退治するわけじゃないので、「活躍」ということでもないんだよな。

赤マダラに「女しか食べない熊」という設定がある時点で、ちょっとバカバカしいモノを感じてしまう。
で、追跡した嘉助は「同じトコを二度踏んでる。後ろ向きに戻った証拠だ」と言うが、それぐらい異様に知恵があるという設定も、なかなかの荒唐無稽っぷりだ。
ただ、それならそれで「すんげえ知恵があるから、簡単には見つからない」ってことにすべきだろうに、直後のシーンで嘉助たちは赤マダラの通ったルートを発見しちゃうのだ。
いやいや、それだと戻り足の策略を使った設定が無意味になっちゃうぞ。

で、崖下に足跡を発見した嘉助が「あそこまで赤マダラが飛び降りた」と解説し、そこへ弟子たちを行かせるシーンで、初めてスタント・アクションが用意されている。
崖の上からジャンプして、滑り降りるというアクションだ。
ただ、わざわざスローモーションまで使って描写しているけど、そんなに見せ場としての力が強いわけではない。
これが例えば、「走って誰かを追っていて、その流れで崖を滑り降り、そのまま走って追跡を続ける」という一連で見せていれば、もう少し力を持ったかもしれないけどね。

この映画で何が最も痛いかって、格闘アクションが持ち込めないってことだ。
何しろ相手が熊なので、格闘アクションで戦うわけにはいかないのよね。
だけどジャパンアクションクラブのメンバーが持っている能力をアピールするなら、やはり格闘アクションってのは最も重視すべきじゃないかと思うのよ。それを全く持ち込めないような企画を創立20周年記念作品にするってのは、どう考えても間違ってるよ。
そこはサニー千葉のワンマンぶりが悪い形で出てしまったということなんだろうなあ。

赤マダラじゃなかった熊を追い詰めて仕留めようとするシーンは、もちろん「アクションシーン」と呼べるモノではある。
ただし、そこにスタント・アクションがあるのかと言えば、それはゼロなわけで。
つまり極端な話、そういうのはジャパンアクションクラブの人間じゃなくても、同じぐらいのレベルで演じることが出来ちゃうと思うのよね。
せっかくJACの面々を使っているのに、「JACだからこそ出来るアクション」をやらないってのは、どういうつもりなのかと。

鋭治がユキと再会し、走り去る彼女を見た後、1年前の回想シーンが挿入される。で、そこで描かれるのは、「奉公を辞めたユキと久々に再会する」というシーンだ。
いやいや、「久々の再会」シーンから回想に入ったら、また「久々の再会」シーンってのは、構成としてどうなのよ。
ぶっちゃけ、「庄屋の息子にセクハラされ、殴って辞めた」という設定なんて、まるで必要性が無いわけで。
最初からユキが村にいる状態にして「家族を殺されて怒りに燃える」という回想劇にしておけば、久々の再会を重ねる不格好さは回避できるでしょ。

勝手に熊を見つけようと山に入ったユキは、嘉助の命令を受けた鋭治たちに追われて逃げ出す。
ここでは「雪山を走ったり坂を滑ったりして逃亡する」というアクションがあるんだけど、悪党から逃げているわけでもないし、そういうのを見せられてもねえ。
ただ、そういうトコでも無理してアクションを見せていかないと、なかなか動きのあるシーンを用意することが難しいシナリオなんだよなあ。
で、そんなユキが号泣して走り去り、ようやく回想が終わったのかと思いきや、実はその後も回想シーンが続いている。ヤエが殺された後、「そして一年後の再会だった」という文字が出て、ユキが鋭治の獲物を横取りして仕留めるシーンに戻って来る。
すんげえ回想部分が長いんだけど、その構成は上手くないわ。

どれだけ考えても、「女だけを食べる」という赤マダラの設定の意味がサッパリ分からない。
その場で男は殺して、女は食べるんだけど、「だから何なのか」と言いたくなるのよね。どっちにしろ男も女も殺しているわけだから、女だけエサにしようと、そこに意味なんて無いでしょ。「女だけを食べるから残酷」とか、そういう印象に繋がるわけじゃないし。
これが例えば「男も女も食べる熊」という設定だったとして、大きなマイナスが生じるかと言えば、何も思い付かない。
「オラは男だ」と言うユキに鋭治が「人食い熊は騙されねえ。女の匂いを嗅ぎ付けられたらおしまいだべ」と話すけど、男でも見つかったら殺されるんだから同じようなモンでしょ。
里ではヤエだけ食べて逃走しているけど、その前に男である浅吉と息子が殺される様子を描いちゃってるしね。

県会議員が乗り込んで来ると「警官の暴力に怒った鋭治が襲い掛かる」という展開があるが、あっさりと仲間たちに制止される。
そもそも、その前の動きからして、格闘アクションとして見せようなんて気は全く無いしね。
で、県会議員が「マタギか。時代遅れめ。早く立ち退け」と罵るんだけど、そこで急に人間の悪党キャラを登場させても、困ってしまうわ。
倒すべき相手は人食い熊の赤マダラでしょうに。
しかも、最終的に「悪行を働く県会議員を退治する」といった展開があるわけでもないんだし。

鋭治が崖下に落ちたユキを助けに行くシーンでは、「岩場が崩れて墜落しそうになり、ロープに捕まって宙吊りになる」というスタント・アクションがある。
そんな風に、たまにスタント・アクションも無いわけじゃないけど、物足りなさはハンパない。
あと、そのシーンも、「赤マダラを倒す」という本筋とは無関係なアクションだしね。
とにかく、こっちがJAC創立20周年記念作品に期待するアクション映画と、この作品には、大きな乖離があるわ。コレジャナイ感がハンパないわ。

(観賞日:2015年9月4日)

 

*ポンコツ映画愛護協会