『リアル鬼ごっこ2』:2010、日本
廃墟と化した街で、佐藤翼はリアル鬼ごっこを続けていた。囮を買って出た彼は大勢の鬼に見つかり、レジスタンス仲間の待つ建物まで必死で走った。リーダーの愛、仲間の洋、美沙、明、勝、篤、貴章たちが鬼を待ち受け、銃で攻撃する。だが、仲間たちは次々に捕まり、鬼のスタンガンアームで始末されていく。翼は仲間を助けるため、鬼たちの前に飛び出して「こっちだ」と外へ走り出した。そこはパラレルワールドの日本だ。彼は半年も前から戦っていた。
一方、元の世界では、喧嘩で怪我を負って入院していた洋が退院の日を迎えた。看護師の美沙が彼に声を掛け、「もう喧嘩で入院なんてやめて下さいよ」と軽く注意する。洋は、向こうから男性看護師に連れられて歩いて来る愛に目を留めた。彼女は両手を拘束されていた。美沙は洋から「あれは?」と訊かれ、「特別病棟の患者さん。良く知らないけど、障害があって産まれてから一度も喋ったことが無いんだって」と説明する。「なんで縛られてるんだ」という質問には、「急に暴れたりするみたい。今日から別の施設に連れて行かれるって言ってたけど」と答えた。
男性看護師が愛をライトバンに連れて行くと、院長の田中修二が待っていた。看護師が「この子、どうするんですか」と尋ねると、田中は「この患者に関しては、何も聞かないように」と告げた。2人が目を離した隙に、愛は逃げ出した。それを目撃した洋は、彼女を連れて逃げる。洋が愛の拘束を外そうとした瞬間、翼が鬼たちに追われているビジョンが頭の中に飛び込んだ。洋が愛を連れて逃走した直後、まばゆい光が出現する。光が消えると、そこには翼の姿があった。
翼が元の世界に戻って喜んだのも束の間、その背後に3人の鬼が姿を現す。翼は慌てて逃げ出した。鬼たちを撒いて一息ついたところへ、愛と洋が走って来た。翼は洋に、「聞いてくれ。鬼が。こっちに連れて来ちまったんだよ。捕まったら殺される」と訴えるが、まるで理解してもらえない。そこへ田中と看護師がやって来た。翼は看護師が勝だと気付き、「気を付けろ。お前の鬼のデータベースに入ってんだ」と警告する。そこへ鬼が現れ、勝を殺害した。
翼は愛の手を取り、洋と共に逃げ出す。洋が「何だよ、あれ」と尋ねるので、翼は「生物兵器だよ。人間と獣を掛け合わせて作られたらしい」と説明する。「さっきの奴は死んだのか」と訊く洋に、彼は「ああ、スタンガンアームだ。右手の指が全部スタンガンになってる。捕まったら即感電死だ」と教える。翼は愛に「あいつらを基の世界に戻してくれ」と訴えるが、何の反応も無かった。
3人は鬼たちに見つかり、慌てて逃げ出した。同じ頃、勝の殺害現場には警部の鈴木新太郎と部下の高橋憲吾たちがやって来た。刑事の中には、明の姿もあった。翼と洋は、勝を殺した容疑者にされてしまった。翼は美沙を目撃し、洋に「あの子も標的なんだよ」と言う。翼はアパートに入ろうとする美沙を連れ去ろうとするが、彼女は必死に抵抗する。そこで翼は美沙の部屋へ避難し、彼女を拘束した。
翼は洋と美沙に、状況を説明する。パラレルワールドでは、将軍と呼ばれる男が佐藤姓の全員を捕まえようとしていた。わずかに残った佐藤姓がレジスタンス活動を続ける中、将軍はリアル鬼ごっこをやろうと言い出した。7日間逃げ切れば、捕まった全員を解放すると将軍は持ち掛けた。残り2日の段階で、翼は元の世界に戻されていた。しかし翼の説明を、洋も美沙も全く信じようとしなかった。
同じ頃、パラレルワールドでは愛たちが消えた翼の行方を気にしていた。愛は仲間たちに、「翼は救世主」という別世界の愛が送って来たメッセージを話したことがあった。美沙から翼の消えた理由を問われた愛は、「向こうの世界の私がおかしくなって、力が暴走して、間違ってお兄ちゃんを元の世界に戻してしまった」と語る。洋から「あいつが救世主ってのは、どういうことだ」と訊かれ、彼女は「お兄ちゃんだけが、運命を変えられる。向こうの私が言ってた」と述べた。
元の世界では、翼たちが美沙のアパートで翌朝を迎えた。目を覚ました直後、刑事たちが踏み込んで来た。美沙が通報したのだ。手錠を掛けられた翼は、明がいるのに気付いた。愛は刑事の一人に触れられると、頭を押さえて苦悶の表情を浮かべる。その途端、佐藤姓全員の脳内には、レジスタンスの隠れ家に鬼が突入する映像が飛び込んできた。その隠れ家には、洋や美沙、明の姿もあった。
翼たちが地下駐車場の車に乗せられた刹那、鬼が襲い掛かって来た。翼は手錠を外し、明に「お前も狙われてるんだぞ」と告げる。洋は愛を連れて逃げ出し、それを鬼3人が追い掛ける。そこに翼が加わり、「愛を頼む」と洋に告げて鬼たちを引き付けた。翼は踏切を利用して誘い込み、1人の鬼を電車にひかせて始末した。美沙は警察署へ行き、翼の説明していたことを語る。明は鈴木に「でも確かに、ここ数日の死亡者は全て佐藤です」と述べる。しかし鈴木は笑って受け流し、明に美沙の身辺警護を指示して去った。
美沙と明が警察署を出ようとすると、テレビで大学生の佐藤篤が死んだニュースが報じられていた。それは、隠れ家で死んだ男だった。明は車で美沙をアパートまで送る。そこに翼が現れ、明を手錠で拘束して「美沙は俺が連れてく。愛と洋は?」と言う。警察無線が入り、翼は2人が緑ヶ丘方面へ行ったことを知る。彼は手錠の鍵を明に投げて「死ぬなよ」と告げ、美沙を連れてその場から走り去った。
洋と愛は廃屋となった工場跡に逃げ込み、そこへ翼と美沙が合流する。翼は愛に「鬼たちを元の世界に戻したいんだ。出来るか。お前が連れて来たんだろ」と訴える。洋は「やめろ。テメエで何とかしろよ」と翼に掴み掛かり、2人は言い争いになった。そこへ鬼が襲ってきたため、慌てて翼と美沙は建物の中に入る。すぐに鬼が追い掛けて来るが、2人は身を隠して息をひそめた。階段の上には愛が隠れていた。洋だけは建物に入らず、別方向へ逃げていた。
翼と美沙は鬼に見つかるが、そこへ洋が駆け付けた。投げ飛ばされた鬼は、すぐに起き上がった。翼は愛たちを階段の上から逃がそうとするが、別の鬼が現れて挟まれる。翼は階段の下から迫る鬼に飛び蹴りを食らわせた。鬼は薬品の入ったドラム缶に突っ込み、アームのショートによって死亡した。だが、最後の鬼が愛を連れ去ってしまう。翼が外に出ると、鬼はライトバンに愛を乗せていた。車が発進したため、翼は必死に追い掛ける。だが、明が銃で立ち塞がって妨害したため、逃げられてしまった。
美沙が「あれ、病院の車だった」と言うので、明は「なら安全だ」と告げる。翼は「鬼が一緒でもか。鬼が愛を引きずり込んだんだ」と声を荒げた。洋が「鬼が愛を殺さなかったのは、なんでだ。どこへ連れてったんだよ」と疑問を呈すると、美沙は「旧施設。病院の昔の施設があるの。あの子はそこへ連れて行かれるはずだった」と語った。一方、パラレルワールドでは、愛たちが夜明けまで何とか耐えようとしていた。だが、もはや銃弾は尽きようとしていた。すると愛は仲間たちに、「一つだけ方法があるわ。シェルターに逃げる。今は使われていない所。昔、お父さんとそこを占拠したことがあるの」と告げた。
明が運転する車で眠る翼は、夢を見ていた。愛の「お兄ちゃん、戻って。みんなを救って」という声が聞こえ、「そんなこと言ったって、愛がいないんじゃ飛べないだろ」と彼は返す。「お兄ちゃんなら飛べるわ。私の力は不安定で、もう限界なの。今度使ったら、二度と使えないかもしれない」という言葉に、翼は相手がこっちの愛だと気付く。「運命を変えられるのはお兄ちゃんだけ。受け入れて」という言葉で、翼は目を覚ました。
洋と美沙も、翼と同じ夢を見ていた。「向こうでは戦いが続いているんじゃないの?」と告げる美沙に、翼は「向こうのことは、向こうに任せりゃいいんだよ」と冷たく言う。洋は「自分だけ楽なところにいて、自由に振る舞ってよ」と批判し、美沙は「なりたくてもなれない人がいるのに、それを放棄するなんて最低だよ」と口にした。4人は旧施設に到着した。明は「警部が来るまで待つ」と言うが、翼は「待てねえよ」と無視した。明は「分かった。何かあっても、お前たちは出しゃばるな」と釘を刺し、中に入った。
翼たちが旧施設を進んでいると、鬼が出現した。そこへ鈴木が愛を連れて現れ、翼たちに銃を向ける。彼は「残念だが、救援は来ないよ。こいつらは元々、支配者だった俺が研究していた生き物だ。向こうで将軍と呼ばれている男の言うことは何でも聞く。すなわち、同一人物である私の言うことも聞く」と語る。鈴木は翼が3歳の頃、パラレルワールドから翼の母・益美によって、こちらに飛ばされていた。出産で精神不安定になっていた益美は、彼女を調べていた鈴木の分身を飛ばし、逆に鈴木がこの世界へ連れて来られた。鈴木は愛の力を利用してパラレルワールドへ戻ろうと考え、かつて益美が入院していた場所へ連れて来たのだ…。監督・脚本は柴田一成、原作は山田悠介『リアル鬼ごっこ』(幻冬舎文庫/文芸社刊)、製作は原田健&遠谷信幸&林朋夫&小西啓介&守安功、企画は林裕之、プロデューサーは山口敏功&大野貴裕&鶴岡智之、アクション監督は横山誠、撮影は富田伸二、照明は田村文彦、VEは吉村博幸、美術は黒川通利、VFXプロデューサーは土井美奈子、VFXディレクターは佐々木一樹、特殊造形は小此木謙一郎、編集は正木良典、音楽は佐東賢一。
主題歌は『△』歌:High Speed Boyz、作詞:High Speed Boyz、作曲:High Speed Boyz、編曲:High Speed Boyz。
出演は石田卓也、吉永淳、三浦翔平、永島敏行、渡辺奈緒子、蕨野友也、内野謙太、草野イニ、山崎将平、霧島れいか、滝藤賢一、中村育二、田中伸一、滝裕次郎、片山依利、松澤仁晶、安田ひろみ、和田三四郎、金子起也、中島厚也、河野真幸、榮高志、服部整治、将一、安藤利幸、伊藤洸市、植田健太郎、牛窪恒久、大矢盛嗣、木場欣之、塚越正貴、シンヤ・イイヤマ、富岡真信、長谷川恒、羽賀雄大、牧島悠斗、山野下裕基、マル☆ボロ、佐々木康吉、野口有花、沼田樹乃、北村美香、飯泉ちさと、中田成美、小形あゆみ、佐藤真緒、神藤祐子、藤田里美、佐々木依里、中井メイヨ、岡部ことも、守田聖正、石井香帆ら。
山田悠介の小説を基にしたシリーズ第2作。
監督と脚本は前作に引き続いて柴田一成。
前作からの続投キャストは翼を演じる石田卓也のみ。愛役が谷村美月から吉永淳に、洋役が大東俊介から三浦翔平に交代している。
他に、鈴木を永島敏行、美沙を渡辺奈緒子、明を蕨野友也、勝を内野謙太、篤を草野イニ、貴章を山崎将平、翼の母・益美を霧島れいか、高橋を滝藤賢一、田中を中村育二が演じている。序盤、翼が元の世界に戻って来るシーンの描写がおかしい。
そのきっかけとなる出来事が、パラレルワールド側のシーンで何も描写されていない。で、こっち側の世界で、いきなり光が出て翼が戻って来る。
それは表現としておかしいでしょ。そこが翼の初登場ということなら、そういう形で見せてもいいけど、そうじゃないんだからさ。
それに、そのタイミングで、その場所に出現させる必要性は無いんだよね。どうせ愛たちは翼に気付かず、翼も愛たちに気付かないんだから。
だったら、愛たちが走り去った後、またパラレルワールドのシーンを描いて、そこで何かあって瞬間移動、という流れでもいい。あるいは逆に、先に翼が戻って来るシーンを描いて、その後に病院のシーンでもいい。
後者の方が、流れとしてはスムーズにいきそうかな。鬼たちは、「佐藤」以外の面々には、邪魔をしない限り何の危害も加えない。
だから元の世界に戻った翼が逃げる途中で民家に逃げ込むと、そこにいた老女が呑気にしていたり、幼女が鬼を見て嬉しそうに手を振ったり、ラーメンを食べていた男が驚いたりという様子で、なんか緊張感が緩和されてしまうんだよね。
わざとやってんのかと思うぐらいだ。わざとだとしてもダメだし。
そこに緩和は要らないでしょ。緊張と緩和によって笑いを作ろうとして、どうすんだって話だし。冒頭、パラレルワールドでは大勢の鬼が追い掛けて来たのに、元の世界に来るのは3人だけなんだよね。
「他にも大勢いる」「次から次へと現れる」という、数の恐怖は全く無い。たった3人しか敵がいないんだから、そんなに怖くないんだよな。
終盤になって、ようやくパラレルワールドから大勢の鬼たちが来るけど、そこまでは「敵がどれだけいるか分からない」という恐怖は全く無いのだ。
あと、鬼は高機能のスコープを装備しているくせに、ただ物陰に隠れているだけの翼たちを発見できないとか、どんだけ都合がいいんだよ。
それと、ライトバンが猛スピードを出しているはずなのに、走って追跡できている翼って、どんだけ足が速いんだよ。今回は翼が民家やオフィスに逃げ込み、それを鬼たちが追い掛けるというシーンがある。前作では無人の街を逃げ回っていたが、今回は一般の人々がいる。
「ありふれた風景の中でリアル鬼ごっこが繰り広げられる」という形になっているんだけど、そこに緊張感や恐怖を全く感じない。
その理由は、周囲の面々が全く怖がっていないからだ。
「佐藤」以外の面々からすると、自分たちは狙われないし、目の前で誰かが攻撃されたり殺されたりすることも無い。
ただ鬼ごっこが行われているだけに過ぎないんだよね。何故そんなヌルいことになってしまうのかというと、標的を捕まえてからでないと、鬼が武器を使って攻撃してくれないから。
鬼たちって、発射武器を持っていないのよ。だから、逃走する標的を攻撃することが無い。ただ走って追い掛けるだけだ。
そうなると、そりゃあ見ている「佐藤」以外の面々からからすると、ただの追いかけっこにしか見えないわな。
鬼たちって、それこそ特撮ヒーロー物に出てくるキャラみたいな格好だから、「番組の撮影?」みたいな感じだろう。っていうか、なんで傍観者の中に一人も「佐藤」がいないんだよ。それって、すげえ不自然だろ。
あと、そもそもパラレルワールドでは、大半の「佐藤」が既に捕まっているんだよね。で、そいつらは、まだ処刑されていないわけだ。
ところが、こっちの世界では、同一人物は普通に生活をしている。
そういう「佐藤」を鬼が発見した場合、殺害する標的になるのか。それとも、そいつらは鬼ごっこの対象者からは外れているのか。その辺りは良く分からんなあ。
もし外れているのであれば、他の面々が全く狙われないのは整合性が取れるけど。
ただ、この映画ってツッコミを入れ始めたら色々とあリ過ぎるので、ドラえもん的な「あたたか〜い目」で見なきゃいけないんだろう。(観賞日:2012年10月18日)