『ララピポ』:2009、日本

栗野健治がマンションの部屋に佐藤智子という女を連れ込んでセックスを始めると、下の階に住む杉山博が天井に耳を押し当てて聞いて いる。32才でフリーライターの杉山は、しばらく生身の人間と話をしていない。話し相手は、妄想の中で喋る自分のオチンチンだけだ。 杉山は智子の喘ぎ声を聞きながら、股間をまさぐった。そんな彼に、オチンチンは「オナニーばっかりじゃなくて、早く彼女を作って マトモなセックスしようぜ」と語り掛けた。
翌朝、上の部屋を去る智子を、杉山は尾行する。「どうして一流大学を卒業した俺がオナニーばかりで、あんなバカそうな男が色んな女と セックスできるのか」と彼は苛立った。かつて彼は、後輩の女子に執拗に誘いを掛けたことがあった。「我慢してたけど、キモいんだよ」 と言われた彼は、手に触れて近付いたが、悲鳴を上げられた。そんなことが5回ほど続いて、何もかもが嫌になった彼は全て放り出した 。そして今では誰にも会わず、ギリギリ生きている。
その夜も、また杉山は、別の女を連れ込んだ杉山のセックスを盗み聞きした。居酒屋で悪酔いした杉山は、ロリータファッションに身を 包んでいるデブの女・玉木小百合と知り合った。久しぶりに生身の女と出会い、杉山は饒舌に喋った。そして彼女の部屋で激しいセックス をした。しかし「あたしたちって似た物同士じゃない?」と言われると、杉山は彼女を殴り付けて「ふざけるな」と怒鳴った。
杉山は銭湯で自堕落に太った体を確認し、「俺は化け物だ」と心で呟く。彼は小百合の部屋を訪れ、「こないだはゴメン」と謝った。 するとベッドには、中年男の山田がいた。「へえ、彼氏?」とニヤつかれ、カッとなった杉山は「そんなんじゃねえよ」と殴り掛かる。 「クソどもが、何やってるんだ」と山田は呆れたように吐き捨て、部屋を出て行く。小百合は「あたしだって、さみちかった。だから、 あんな男と」と言い、杉山に抱き付いてキスをしまくった。杉山は泣きながら彼女の首を絞め、失神させた。部屋を出た後、オチンチンは 「終わりだな、お前」と告げた。
智子はAVに出演し、インタビューで恋愛について質問された。彼女は栗野のことを思い浮かべながら、明るく答えた。渋谷で栗野に声を 掛けられた時、智子は浮かれた気分になった。「別の扉を覗いてみようよ」と誘われた彼女は、ランパブで働き始めた。下着姿や客に 触られるのは嫌ではなかったが、人と話すことが苦痛で、他の女の子とも合わなかった。そのことを栗野に相談すると、「エッチなのは 平気なんだ?」と彼は言う。平気だと智子が告げると、栗野は「抜きキャバなら喋らなくていいし、他の女の子とも合わなくて済むし」と 店を移るよう持ち掛け、練習として自分のペニスを触らせた。
「遊びじゃないから」と店に通い詰める客が現れると、栗野は「じゃあヘルスに移ろうか」と智子に勧め、練習としてフェラチオさせた。 しかし、その客はヘルスに移っても通い詰めた。栗野は智子に、「あいつはデパートまで調べて、店で働いているのを隠し撮りして、 百万用意しないと送り付けると脅してきた」と嘘をつく。栗野は智子にデパートを辞めさせ、AVに出演させた。だが、智子は騙されたと は思っておらず、本気で栗野を愛していた。ゴミだらけの自宅に戻った彼女、そこで寝ている両親を見てウンザリした。
コスプレ付きのカラオケ店で働く26才の青柳光一はヒーローオタクで、この星は邪悪に汚染されていると感じている。夜になると、彼は ヒーローのコスチュームに着替えて町に出る。銀河連邦軍の秘密捜査官「キャプテン・ボニータ」となり、地球の生命体との接触および 調査が使命という設定だ。彼は「肉欲の虜と化した邪悪なウイルス感染者を抹殺すべき」と言うが、やっていることは隣のセクシーな人妻 を覗き見するぐらいだった。
青柳の働くカラオケ店は、援助交際の場所として利用されていた。ある時、援交の元締めをしている男ポンから、青柳は「本格的に売りを やらせたい」と持ち掛けられ、バレないように窓に目隠ししろと脅される。帰宅した青柳はレシーバーに向かって「ただちに抹殺しろ」と 怒鳴るが、自分では何も出来なかった。店で援助交際の女子から「アンタもやる?」と誘われると、意気込んで上に乗った。そこへ他の 女子からトラブルが持ち込まれた。ある客がアナルでやらせろと要求してきたのだ。青柳が何もせずに傍観していると、ポンたちが来て客 をボコボコにした。ポンは青柳にケツを出させて、その客とアナルセックスをさせた。
23才の栗野は、風俗専門のスカウトマンだ。嘘で女を吊り上げ、風俗店やAVに送り込む。女が稼いだギャラの30パーセントを、事務所と 彼で分けている。彼は多くのギャラが稼げるAVに多くの女を送り込み、高く登り詰めようと野心を抱いている。風俗店を辞めたがる女も いるが、そういう時は部屋に連れ込んでセックスし、考えを変えさせる。彼はスカウトした女に対して、嘘ばかりを並べ立てた。
ある時、栗野は社長から、取り分5パーセントでAVに出ている女のマネージメントを指示された。淫乱な熟女とだけ聞かされて、彼は女 と会うことにした。喫茶店に現れたのは、佐藤良枝というオバサンだった。栗野が動揺していると、良枝は「もっと仕事したい。ベッドで 普通にやらせてよ。それとギャラ、少し安すぎると思う」と言う。栗野が「でも、顔出しじゃないと、20万円がいいところだと思います」 と告げると、彼女は「そうなの?じゃあ顔出ししちゃおうかしら」と口にした。栗野が早々に立ち去ろうとすると、良枝は「お互いに知る 必要があると思うの」とセックスを強要した。
智子に付きまとっていた客をボコボコにした栗野は、身分証をチェックし、市役所勤めの彼から金を奪った。さらに後日、栗野は市役所へ 乗り込んで彼を脅し、金を巻き上げた。智子と一緒に親子丼物のAVに出演する女優の手配を頼まれた彼は、良枝をキャスティングした。 栗野は智子に、「一緒に暮らすか、マジで」と持ち掛ける。翌日、刑事が部屋にやって来た。市役所の男が被害届を出したのだ。
栗野は智子に現場の住所を教え、一人で仕事に向かわせた。栗野は男が何通も送っていた変態じみた手紙を刑事に見せ、智子にストーカー していたことを説明した。彼は「手を出したけど、金を要求したことはありません。あっちが勝手に出してきた」と述べた。AV出演の 同意書を見た栗野は、智子と良枝が本物の親子だと気付いた。焦った彼は2人に電話を掛けるが、どちらも通じない。彼はトイレだと嘘を つき、渋谷中央警察署を抜け出す。栗野は撮影現場へ走るが、その途中でトラックにはねられた…。

監督は宮野雅之、原作は奥田英朗、脚本は中島哲也、製作は佐藤直樹&水上晴司、プロデューサーは石田雄治&鈴木ゆたか&松本肇、 アソシエイトプロデューサーは小玉圭太&佐藤三千代、撮影は尾澤篤史、編集は遠山千秋、録音は加来昭彦、照明は藤井隆二、美術は 都築雄二、ビデオエンジニアは千葉清美、特殊造型は百武朋、ビジュアルエフェクトスーパーバイザーは岡本泰之、ビジュアルエフェクト プロデューサーは土屋真治、音楽は笹本安詞、音楽スーパーバイザーは近田春夫、音楽プロデュースは金橋豊彦&茂木英興、主題歌 「people in the World」はAI。
出演は成宮寛貴、村上知子(森三中)、濱田マリ、中村ゆり、吉村崇(平成ノブシコブシ)、皆川猿時、中村有志、蛭子能収、杉作J太郎、 新井浩文、林家ペー&パー子、森下能幸、坂本あきら、勝谷誠彦、渡辺哲、佐田正樹(バッドボーイズ)、大西ライオン、チャド・ マレーン(ジパング上陸作戦(現・チャド・マレーン))、松本さゆき、山口香緒里、インリン・オブ・ジョイトイ、泰みずほ、高橋祐月、 岩本牧子、湯之上知子、原紗央莉、藤浦めぐ、板垣あずさ他。


奥田英朗の同名小説を基にした作品。
タイトルの「ララピポ」とは、「a lot of people」のこと。
『パコと魔法の絵本』の中島哲也監督が脚本を手掛け、同作で助監督を担当していた宮野雅之が長編初監督を務めている。
栗野を成宮寛貴、小百合を村上知子(森三中)、良枝を濱田マリ、智子を中村ゆり、青柳を吉村崇(平成ノブシコブシ)、杉山を皆川猿時 、良枝の夫を坂本あきら、エロDVDショップの店長を勝谷誠彦、刑事を渡辺哲、山田を中村有志、アナルセックスの男を蛭子能収、 市役所の職員を杉作J太郎が演じている。

冒頭、栗野がクレーンゲームをしながら「この世界には2種類の人間しかいない。一生地べたに這いつくばって生きる人間と、そこから 抜け出し高く高く上り詰める人間」と言った後、杉山の視点に切り替わり、彼女が「セックスする奴と、それを覗く奴」と語る。
続いて智子が「違う世界に踏み出せる人と、それが出来ない人」、青柳が「平和を乱すゴミどもと、平和を守る正義の使者」、良枝が 「百万人に愛される人間と、誰にも愛されない人間」と、それぞれの視点、それぞれのモノローグを語る。
これは、いきなり話が散らばっているという印象を受ける。

そこは栗野の語りだけでいいと思うなあ。
大体、それだと「2種類の人間」じゃなくなっちゃうでしょ。
他は何とか「勝ち組と負け組の2種類」ということで納得するにしても、青柳の分類だけは明らかに異質だし。
っていうか、青柳はキャラやエピソードそのものが明らかに異質。全てのキャラをセックスというキーワードで結び付けておきながら、 そこだけ完全に乖離している。彼だけは意識が性的な行為に向けられていない。
こいつはキャラを削除すべきだ。

タイトルの後、栗野が部屋に女を連れ込んでセックスを始めると、杉山が盗み聞きする。
最初に栗野のモノローグから入り、タイトルが開けても彼を最初に登場させたのだから、まずは彼が何をやっていて、どういう人間なのか という紹介を済ませるべきだ。
なぜ栗野ではなく杉山のエヒソードを先に持って来るのか。
彼を最初にするのなら、最初に栗野から始めて、彼が女を連れ込む流れにするのはおかしいでしょ。
あと、ここで智子を出しているのも、構成としては上手くないなあ。

杉山が小百合と知り合った時に「久しぶりにセックスした」というモノローグを語るが、これは気になる。
あんなにキモい扱いをされているような奴だけど、セックスの経験はあるのか。それって違和感があるなあ。
もう一つ引っ掛かるのは、小百合は明らかにデブでブスなのに、杉山が嬉しそうだってこと。
女なら誰でもいいのかよ。
そこは「モテないキモ男だけど、でも相手を選ぶ感覚はある。だけど、なんせ女に飢えていたから、小百合に誘われるとやる」とか、 あるいは「性欲が溜まっていたから、誘われると我慢できなかった」とかいう形の方が自然ではないか。
後から「似た物同士じゃない?」と言われて腹を立てるけど、今さらなのかと感じるぞ。

杉山のエピソードの後、AVのインタビューに答えている智子のシーンに移るが、これは流れとして変でしょ。
なぜ、いきなり彼女なのか。
流れからすると、そこは杉山のエピソードに登場していた小百合視点の話に移行すべきでしょ。
っていうか、ホントは、まず栗野を描き、次が智子、それから杉山、そして小百合へ進むべきだと思うけどね。
5人の絡ませ方も、登場方法や順番も、全て失敗している。

智子のエピソードを回想として描くのも、構成として失敗だと思う。
そもそも、まず智子が「今までは誰にも優しくされていなかった」ということが全く描写されていないのは手落ちでしょ。栗野を後回しに していることで、彼のナンパが風俗専門スカウトだということも最初は分からないが、これは最初に示した方がいいんだし。
で、杉山の時は序盤で「杉山博、32才、フリーライター、月収15万円」と表示されたのに、智子の時はAV出演までを描いてから 「佐藤智子、20才、AV女優、月収100万円」と出るが、これも違和感がある。
まだデパートで働いている時点で、その職種や年齢を出すべき。
あと、月収を表示している意味は、全く無いぞ。

で、ゴミだらけの自宅に戻った智子は両親を見て「この男とこの女がセックスして生まれたのが私。人並みの幸せなんか夢見たって仕方が 無い」と、急にシリアスな感じで言うのだが、スーパーインポーズの後も彼女のターンなのかよ。
それは構成としておかしいし、そこで急に彼女が浮かれモードからシリアスになるのも違和感。
「この地獄から私を救い出してくれる人なら誰でもいい」と心で呟くが、そんなに地獄には見えないし。

智子のエピソードの後、いきなりコスプレ姿の青柳が登場するが、そこまでの物語に全く絡んでいなかった奴のターンにいきなり移るん だよね。
そうじゃなくて、ある人物がメインのエピソードを描いたら、そこにサブとして登場した奴がメインになるエピソードへ移った方 がスムーズでしょ。
で、青柳の後、ようやく栗野メインのエピソードなんだけど、それは順番としておかしいよ。また青柳のエピソードに登場していなかった キャラの登場になってるし。
だから、流れや繋がりが悪いんだよな。なんかバラバラって感じなのよ。

栗野のエピソードでは良枝が登場してセックスを強要するが、そういう形だと、栗野がメインなのに、良枝の存在が強すぎるんだよな。
これもバランスが悪い。
それと、ここだけ急に、「智子に付きまとっている男をボコボコにして、智子には嘘をつく」という序盤で出てきたシーンを別角度から 描くのね。
ただ、別角度から描いても、隠されていた事実が明らかになるとか、そういうのは皆無なんだよね。単に栗野の視点から描いたという だけ。
彼が風俗スカウトなのも、智子を騙しているのも、もう智子視点のエピソードの段階で全て分かっていたことだからね。
繰り返す意味が皆無だ。

栗野は親子丼の撮影現場へ走る途中、トラックにはねられる。
ここで「嘘じゃない、俺は智子をマジで愛していた」と言うが、なぜ智子にだけマジな感情を抱いたのか、それがサッパリ 分からない。
彼女が作ったオムレツを「美味しくない」と笑って言った後、智子が「初めてホントのこと言った」と口にして、その後で栗野が「一緒に 住もうか」と持ち掛けているので、その言葉がきっかけだったのかもしれない。
ただ、なぜ、それがきっかけになるのかは良く分からない。

っていうか、そこで智子に対してマジになったことを語られても、栗野の好感度は1ミリも上がらないよ。
こいつ、ただのクズだよ。
あと、栗野のモノローグから映画を始めたわけだから、こいつがトラックにはねられたら、そこからエンディングへ向かう流れになるべき じゃないのか。
それを見せた後に良枝視点のエピソード、さらに小百合のエピソードを持って来るのは、構成が歪んでいる。

小百合のエピソードに入ると、彼女が声優の学校へ行っていることや、男を連れ込んでセックスを隠し撮りして裏DVDとして売りさばいて いることが明らかにされるが、それは遅いわ。
5人の中で、最後に明かされる事柄が小百合のそれって、それゃ無いだろ。
しかも、そこだけ、なぜか彼女のモノローグじゃなくて、DVDを見たファンがラブレターを朗読する形で説明するんだよな。
それは統一感が取れていない。
そもそも、5人それぞれの語りで進行している時点で失敗じゃなかったかと思うけどさ。

(観賞日:2011年4月5日)

 

*ポンコツ映画愛護協会