『ライアーゲーム -再生(リボーン)-』:2012、日本

壊滅したはずのライアーゲーム事務局が復活し、福永ユウジと横谷ノリヒコが「タブーゲーム」というゲームで対決した。福永は勝利を確信し、横谷に対して高飛車な態度を取った。しかしディーラーの「レロニラ」が敗退者として発表したのは、福永の名前だった。福永は事実を受け入れることが出来ず、絶叫して泣き出した。そこに新たな事務局の主催者であるΩが現れ、冷徹な視線を向けた。
帝都大学を卒業した篠宮優が帰宅すると、ライアーゲーム事務局からの手紙と真っ黒い箱が置かれていた。箱を開けると、現金1億円が入っていた。慌てて手紙を読むと、優がライアーゲームにエントリーしたことが記されていた。付属のDVDを再生するとレロニラが登場し、「あなたをライアーゲームに招待します。ただし、招待状開封後の取り消しは一切認められません。参加しない場合、1億円を没収の上、ペナルティーとして、さらに1億円を支払って頂きます」と語った。
「明日の17時、指定の場所にてお待ちしております」というメッセージで、DVDは終わっていた。優が外に出ようとすると、最年少の事務局員であるアリスが立っていた。彼女はライアーゲームについて簡単に説明し、「極限状態における人間の心理を巡る、大変興味深い実験とも言えます」と述べた。優が「警察に行きます」と言うと、彼女は「我々はお金を差し上げただけ。何もしてはもらえません。貴方はゲームに参加するしかないのです」と告げ、その場を去った。
翌朝、悩んでいた優は、応用心理学の書物『極限状態における心理変化の考察』のことを思い出す。優は急いで帝都大学へ行き、講義を受けたことのある応用心理学教授・秋山深一に「私を助けて下さい」と頼む。しかし秋山は「無視しろ。ペナルティーはただの脅しだ。そんなゲームに参加する必要は無い」と冷たく告げた。帝都大学を出た優は、走って来たトラックによって拉致されてしまった。
その夜、秋山の前に福永が現れた。事務局の手先となった彼はライアーゲームの招待状を差し出し、「連れて来いって命令されたんだよ」と言う。彼は「2年前、俺たちはライアーゲームに勝利し、多くの出資者たちに大損害を与えた。今回の主催者は、その時の出資者の中の一人だ。つまり今度のゲームの目的は、俺たちへの復讐なんだよ」と説明する。秋山が「知ったことか」と無視しようとすると、福永は「あの子は既に会場へ向かった。アッキー行かなかったら、あの子、負けちゃうよ。1億の借金背負って破滅だよ」と話す。「俺には関係ない」と立ち去った秋山だが、その様子を見ていたアリスは、彼が必ず来ると確信した。
優はトラックの荷台に乗せられ、見知らぬ廃墟に連れて来られた。優が謎めいた建物に入ると、待ち受けていたアリスと事務職員たちが「ようこそライアーゲヘームへ」と告げる。優は20枚のメダルや専用の腕時計、名札と地図を渡され、ゲーム会場に足を踏み入れた。既に参加者である張本タカシ、桐生ノブテル、月乃エミ、坂巻マイ、赤城コウタ、犬塚エイコ、嶋タカヒロ、安川ノリヒコ、酒井マコト、下原田オサム、和田タツジ、村田テツヤ、横谷ノリヒコ、猿川ケンジ、阿部ユキコ、三家本ミカ、木村ケイ、斉木カケル、津村アキラの18名は会場入りし、ゲーム開始を待っていた。
スクリーンにレロニラが登場し、「ただいまより、ライアーゲームを開始します。勝者は一名のみ。その賞金額は、20億円です。ただし、ゲーム終了後、皆さんには一人2億円を事務局に支払って頂きます」と語った。レロニラがゲーム説明を始めようとしているところへ秋山が遅れて現れ、「俺も参加する」と告げた。顔見知りの坂巻は秋山に声を掛け、優に「私たちはライアーゲームの経験者。そして秋山は、その時の優勝者なの」と教えた。
レロニラは、これから始めるゲームがイス取りゲームだと発表した。プレイヤーは、廃墟のどこかに隠してある15の椅子を奪い合う。ブザーが鳴ったらゲームスタートで、まずは30分の作戦タイム。終了1分前に着座の合図のサイレンが鳴る。タイムアップの瞬間、イスに座っていないプレイヤーは脱落。着座後、10分以内に投票所へ戻り、5分で親決め投票を行う。脱落した人間も投票には参加できる。親になったプレイヤーは、どのイスを消すか決定する。そこで1ピリオドが終了する。
続いてレロニラは、注意事項を説明した。同点の場合は「流れ」で、そのまま新たなピリオドが始まる。暴力行為は一切禁止で、破った場合は即脱落。脱落者が暴力行為を行った場合は、1億円のペナルティー。同じイスに2回連続で座ることは出来ないが、連続でなければ同じイスに何度座っても構わない。最後にレロニラは「優勝者の名が刻まれたメダルを1枚1億円と交換させて頂きます」と告げた。
ゲームが開始され、プレイヤーは一斉にイス探しへ飛び出す。秋山は悠然とイスを発見するが、そこに桐生ノブテルが現れて「これ、俺のイス」と睨み付けた。彼はイスに着座し、挑戦的な態度で「今回勝つのは俺だ」と告げた。ゲームの様子を監視室で見物していた福永の前に事務局員幹部の谷村光男が現れ、ニヤリと笑って「仲間を売っておいて高みの見物か」と告げた。優はイスを発見し、他のプレイヤーに見つからないように隠した。
優は月乃に「お願い、助けて下さい」と涙声で懇願され、慌てて走り去る。すると安川が嘲笑しながら「君ってホント、マヌケだよね。あんな隠し方するから、見つけちゃったよ、君のイス」と言う。優は慌ててイスを隠した場所へ戻り、無くなっていないのを確認して安堵した。だが、尾行していた安川がイスを奪い、「バーカ、あんなの嘘に決まってるじゃん」と告げた。残り1分になり、秋山はイスに着座する。残り10秒となって優が諦めていると、坂巻が2脚のイスを持って現れた。彼女は「もういいよ、アンタで。いいから座りな」と言い、片方のイスに優を着座させた。
坂巻は優から礼を言われ、イスを与えた代わりにメダル1枚を奪う。優が「私のメダル、どうするんですか」と尋ねると、彼女は呆れて「ルール、ちゃんと聞いてた?」と言う。坂巻はディーラーの「優勝者の名が刻まれたメダルを1枚1億円と交換させて頂きます」という言葉を優に思い出させ、「この一枚を持っていれば、私が負けても優ちゃんが優勝すれば、1億円を手に出来るってこと。だから、このメダルを貰った私は当然、アンタに協力をする。つまり、このメダルは仲間を集めるための武器。この武器をどう使うかで、このゲームの全てが決まる」と教えた。
第1ピリオドでは村田、斉木、赤城、和田、下原田、三家本、津村、月乃の8名が脱落した。最初の投票で親になった木村は、外すイスとして7番をコールした。残り12名で第2ピリオドがスタートした。優は出て行く時に、月乃とぶつかる。月乃は「ごめんなさい」と謝り、散らばった自分のメダルを拾い集める。優が手伝うと、彼女は沈んだ表情で「こんな価値の無いメダル」と漏らした。優は自分のメダルを1枚差し出し、「私が優勝すれば賞金が手に入ります」と告げた。
坂巻は組もうと思っていた赤城が暴力行為で脱落したと知り、激しい怒りをぶつけた。彼女は優に八つ当たりし、「こんなとこでボーッとしてていいの?さっき外されたの、私の椅子なんだよね」と言う。優が「私、イス探してきます」と言うと、秋山が来て「待て」と制止した。彼は「イスを探す。最後の一人を目指す。そんなことは、どうでもいい。このゲームの本質は、国取りゲームだ。メンバーでイスを交換し合い、座る椅子を確保。さらにメダルを持ち合うことで、誰が勝っても賞金を受け取れる。いわば運命共同体だ」と語った。
秋山は脱落者である月乃と赤城も仲間に入れるつもりだった。彼は「実はこのゲーム、親決めこそが最も重要だ。親を取り続けることが出来れば、敵国のイスを削り、最後に残るイスを自国のイスにすることが出来る。つまり、このゲーム、イスの数など関係ない。親決めを制した者が必ず勝つ」と述べる。そして秋山は、既に国が2つ出来上がっていることを教える。谷村は、そのことに気付いていた。桐生は猿川と犬塚、カルト教団教祖の張本は信者の阿部、三家本、木村、さらに酒井を仲間にしていた。
秋山は「さっき1位を取った国が5票を取った。俺たちは5人しかいない。このままでは負けてしまう可能性がある」と言い、メンバーを1人増やすことを告げる。彼は「勧誘するのにうってつけの奴がいるだろ」と言い、安川の名を挙げる。優からイスを奪い、死に物狂いで2つ目のイスを探しに行った彼は、どの国にも属していないことが明白だからだ。安川はメンバー全員に1枚ずつメダルを渡すという条件を提示され、仲間入りを断った。しかし秋山に「自分の立場を分かってないんだな。俺たちはお前が持ってる唯一のイスの番号を知ってる。断った時点で、お前は敵だ。ここで断ったら、必ず殺す」と脅され、震え上がって承諾した。
秋山国のメンバーは全員がメダルを交換し合い、互いのイスの場所を教え合った。2回目の投票で坂巻が親を取り、桐生が第1ピリオドで着座していた10番のイスを消した。しかし3回目の投票では、8票を獲得した木村が親になった。張本国と桐生国が手を組んだのだ。だが、木村がコールした9番は秋山国のイスではなく、どの国にも参加していない嶋のイスだった。
焦った優は作戦タイムでガヤの買収を提案するが、他の面々は反対した。優が「私のメダルで買収しましょう」と訴えると、秋山は「好きにしろ」と冷たく言う。優は協力を申し出た月乃と共に、3人のガヤにメダルを渡して協力を要請した。だが、4回目の投票では11票を獲得した木村が親になり、秋山国のイスである12番が外された。狼狽する優たちに、秋山は「簡単なことだよ。あいつらもガヤの買収をしていた」と説明した。さらに彼は、優が買収したガヤの1人が寝返ったことも教えた。
秋山が「誰がガヤ落ちか、くじ引きで決めよう」と言うと、安川は「俺以外の3人から出せ。イスの情報を持って寝返ってもいいんだぜ」と強気に言い放つ。彼は優を脱落者として指名し、メンバーにガヤの買収を命じる。安川は余裕の表情でイスの場所に行くが、見つけることが出来ない。そこへ赤城が現れ、「お前に教えたイスの場所は嘘だ。ガヤ落ちするのはお前だ」と告げる。安川と嶋がタイムアップで脱落した。すぐに安川は桐生の元へ行き、秋山国の情報を教えた。
優が坂巻から「なんでアンタじゃなくて安川がガヤ落ちしてんのよ」と責められていると、秋山が来て「俺が安川を切ったんだ」と教える。とにかく投票に行こうとする優たちに、彼は「俺にはあるんだ。必勝法がな」と言い、投票に行かないよう指示した。5回目の投票で親を取ったのは7票の猿川で、木村は5票だった。2つの国は手を組んでいたはずだが、票が割れたのだ。猿川は張本国のイスである2番をコールした。驚く優たちに、秋山は「桐生が張本を裏切ったんだ」と解説した。
張本と桐生は互いのイス番号を教え合うのではなく、自国のイスではない3つの番号を教え合うという手に出ていた。投票だけ協力する部分的同盟だった。そこで秋山は投票を棄権して桐生の攻撃対象を張本国に向けさせ、あらかじめ張本のイス番号を桐生に教えたのだ。そのために彼は、安川を利用した。安川が桐生に寝返れば、必ず秋山国のイス番号を伝える。そうなれば、桐生は張本たちのイス番号を知ることが出来るというわけだ。
張本国と桐生国が対立してガヤの買収に入る中、秋山は手付かずだった13番のイスを見つける。「俺たちは買収も投票もしない」と彼が言うと、優は「そんなの負けるに決まってるじゃないですか。ちゃんと説明して下さい。そうじゃなきゃ私、買収してきます」と反発する。秋山は「どうしても買収したければ、この国から出て行け」と突き放した。第6ピリオドで阿部が脱落し、親決め投票は同点となった。さらに買収合戦が激しくなるが、秋山は動かない。優は不安と焦りを募らせた。
第7回投票でも同点となり、ようやく張本と桐生は、ガヤが手を組んでいること、そのリーダーが嶋であることを悟った。嶋が他のガヤに説明した「本命メダルを吐き出させるために両国から大量のメダルをせしめる」という作戦は全て嘘で、秋山が裏で糸を引いていた。秋山は嶋に接触し、ガヤ連合を作らせていたのだ。そして、そのことに張本と桐生も気付いた。桐生も張本もメダルを一枚も出さなくなり、ガヤたちが嶋に詰め寄った。すると嶋は笑って「あの2チームから本命メダルを出させるためには窮地に追いやればいい。秋山たちを勝たせればいい」と語る。秋山は自分がガヤチームの黒幕だとバレることまで想定し、作戦を進めていたのだ。
秋山チームは投票に復帰するが、第8回投票結果でトップを取ったのは8票の優だった。秋山には3票しか入らなかった。秋山は鋭い視線を優に向け、「どこに転んだ」と詰め寄った。優は、月乃に頼んでメダルをガヤに配ってもらったことを打ち明ける。優は外すイスとして、秋山国の6番をコールした。彼女は「私は秋山国から独立して、エミさんと、ガヤ連合の皆さんと協力して優勝を目指します」と秋山に告げ、批判する坂巻たちに「しょうがないじゃないですか。秋山先生に裏切られてからじゃ遅いんです」と声を荒げた…。

監督は松山博昭、原作は甲斐谷忍『LIAR GAME』(集英社 週刊ヤングジャンプ)、脚本は岡田道尚&黒岩勉、製作は亀山千広&鳥嶋和彦&市川南、プロデューサーは立松嗣章&高橋正秀&古郡真也、アソシエイトプロデューサーは秋永全穂&大坪加奈、撮影は宮田伸、照明は森泉英男、録音は武進、美術は関口保幸、デザインは坪田幸之、編集は平川正治、CGは笹生宗慶、VFXディレクターは山本雅之、音楽は中田ヤスタカ(capsule)、主題歌は「Step on The Floor/capsule」、挿入歌は「All The Way/capsule」。
出演は松田翔太、多部未華子、船越英一郎、渡辺いっけい、鈴木浩介、新井浩文、小池栄子、江角マキコ、芦田愛菜、濱田マリ、要潤、野波麻帆、池田鉄洋、春海四方、川村陽介、竜星涼、大野拓朗、前田健、鈴木一真、高橋ジョージ、坂本真、斎藤陽子、上野なつひ、桝木亜子、青木忠宏、上原敏郎、松下萌子、MIE、袴田真衣(現・葉加瀬マイ)湯元美咲、齋藤優里奈、堀田理紗、千葉絵梨香、北川千晴、近藤真帆、夏木楓、近野衣里、美波みき、宮島はるか他。


甲斐谷忍の漫画『LIAR GAME』を基にした同名TVシリーズの劇場版第2作。
秋山役の松田翔太、谷村役の渡辺いっけい、福永役の鈴木浩介、安川役の春海四方、横谷役の鈴木一真、大野役の坂本真は、TVシリーズからの出演者。坂巻役の濱田マリは、劇場版1作目からの続投。
篠宮を多部未華子、張本を船越英一郎、桐生を新井浩文、月乃を小池栄子、主催者・Ωを江角マキコ、アリスを芦田愛菜、赤城を要潤、犬塚を野波麻帆、嶋を池田鉄洋、酒井を川村陽介、下原田を竜星涼、タツジを大野拓朗、テツヤを前田健、猿川を高橋ジョージが演じている。

芦田愛菜はミスキャストっていうか、そこのポジションは要らないキャラだよなあ。
そりゃあ『マルモのおきて』で人気絶頂になっていた子役を起用して訴求力に期待する気持ちは分からんではない。
ただ、そうだとしても、そこのポジションってのはどうなのよ。
しかも、あまりにも『マルモのおきて』やバラエティー番組での明るく元気な印象が強すぎるから、組織に属する冷徹でクールな少女を演じていても、「芦田愛菜がそういう役を演じている」というのが強く伝わり過ぎちゃうしなあ。

TVシリーズのシーズン1から劇場版1作目までは、戸田恵梨香の演じる神崎直が松田翔太の演じる秋山深一に助けてもらいながらゲームを進めていくという内容だった。だから戸田恵梨香と松田翔太は、美空ひばりと東千代之介のような関係性だった(例えが古すぎるぞ)。
ところが今回、ずっとヒロインを張って来た戸田恵梨香が降板している。
その段階で、企画としては相当に厳しくなったのではないか。
シリーズのファンからすると、やはり神崎直というのは、それぐらい大きな存在だったと思うのだ。
「秋山さえ残留すれば、その相棒が交代しても、それほど大きな傷ではない」という作品ではないんじゃないかと思うのだ。

優は体を縛られているわけでもなければ、薬で眠らされているわけでもない。
隣に運転手がいて脅しを掛けられているわけでもないし、凶器を突き付けられているわけでもない。
一人でトラックの荷台に乗せられ、運ばれているだけだ。
それなら、車がスピードを緩めたり信号で停止したりした時に、飛び降りて逃げるチャンスはあったんじゃないか。
最初にアリスは「金を渡しただけ」と言っているが、優がトラックに乗せられた時点で、もう誘拐の罪が発生しているから、警察に駆け込んで助けを求めることも可能だろうし。

序盤で福永が「2年前、俺たちはライアーゲームに勝利し、多くの出資者たちに大損害を与えた。今回の主催者は、その時の出資者の中の一人だ。つまり今度のゲームの目的は、俺たちへの復讐なんだよ」と言っている。
そんなに簡単に、目的をバラしてもいいのか。
「組織の目的は何なのか」というミステリーで引っ張ることは無いのね。
潔いというか、無頓着というか。
「実は違う目的が」というドンデンも無くて、ホントに復讐だけが目的みたいなんだよな。

ただ、主催者は秋山への復讐が目的なのに、わざわざゲームを開いて、そこに無関係の人間も参加させてるのは、アホでしかないよな。
しかも、復讐が目的なら、秋山を陥れる罠を仕掛けたり、ゲームに手下を参加させたり、卑怯なルールで追い込んだりしてもよさそうなものなのに、なぜか律儀にルールを順守するのよね。
ゲームに参加させる時は強引で卑劣な手を使うくせに、なんでゲームが始まると行儀がいいんだか。

それと、今回のゲームって、結果がどうであれ、用意された20億円は必ず支払われるんだよね。
「どのプレイヤーが、どれぐらいの賞金を受け取るか」という分配の部分で違いは生じるけど、事務局が20億円を支払うという部分は不変だ。
つまり、どんな結果になろうとも、事務局って絶対に得をすることが無いのよ。
そんなゲームを「秋山に復讐する」という目的のために主催してるって、アホだろ。

映画が始まって30分ぐらいの時点で、秋山が「このゲームの本質は国取りゲームである」ということを優たちに教え、詳しく解説する。
全体の尺を考えると、そのタイミングをあまり後に引き延ばすわけにもいかないのかもしれんが、しかし拙速に感じる。
まだ優は本質を知った上でゲームをやっているプレイヤーの行動に違和感を感じることもなく、そういう人に騙されてもいない。彼女も観客も、まだ何の疑問や違和感も抱いていないのに、さっさと秋山が本質をバラしてしまうので、「あれは、そういうことだったのか」という感覚を味わうことが出来ない。
ただ単に、秋山の説明を聞かされて、「そういうゲームなんだね」と理解して、それで終わりだ。

前作でも思ったんだけど、そもそも1本の長編映画として作るには無理のある題材なんじゃないか。
ルール設定が細かいし、幾つかのピリオドの中で心理戦が繰り広げられるし、参加するプレイヤーも大勢いる。
そうなると、「観客にルールを理解させる」「キャラ紹介をする」「複数のピリオドと、その中で行われる駆け引きを描く」「誰かがルールの盲点を突いたり利用したりする展開が起きる」「実行された作戦がどういうモノなのかを説明する」「変化していくヒロインの心情を描く」「人間関係の変化を描く」など、とにかく処理しなきゃいけないことが多すぎると思うのよ。

特にキャラ紹介に関しては、まるで出来てない。
「互いの腹を探り合ってから手を組むかどうか決める」という時間帯は無くて、すぐに3つの国が出来上がる。顔と名前を一致させることも容易じゃないし、そもそも名前が良く分からん奴もいる。
一応、脱落した時には画面に出るけど、そんな一瞬じゃ覚えられないし。
そんな感じだから、もちろん大半のキャラは中身なんて描写されていない。
良く分からん奴らが騙したり騙されたりという駆け引きを繰り広げても、そもそも基盤となる性格や考え方が見えてないので、例えば裏切り者が出たとしても、それが「意外な裏切り」なのか何なのか、まるで分からんでしょ。

優に全く共感できず、むしろ不愉快なキャラになっているのは痛いなあ。
不安になるのは分かるけど、だからって秋山たちを裏切るのはイカンよ。
「しょうがないじゃないですか。秋山先生に裏切られてからじゃ遅いんです」と声を荒げるが、そこまでに秋山がアンタを裏切ったかね。
「安川を利用したりする秋山の言動に、優は自分も裏切られるのではないかと怖くなった」と解釈させようとしているんだろうとは思うよ。
だけど、安川はそもそもテメエから裏切ろうとして、だから切り捨てただけだ。それ以外の仲間たちに対しては、秋山は決して利用したり騙したりはしていない。

優は秋山を裏切った理由について、「これは自分一人が勝つために他人を蹴落とすゲーム。誰もが人を裏切るんです。だから私も秋山先生に裏切られる前に、裏切ったんです」と吐露する。
それならそれで別にいいさ。
まるで魅力を感じないし、こいつを応援したいという気持ちは沸かないけど、その覚悟だけは認めよう。
だけど、それなら、月乃に裏切られ(っていうか最初から月乃は張本に送り込まれていたスパイだった)、脱落させられた後も、テメエの力で這い上がらないとダメだよ。

優は信用していた月乃に裏切られて脱落するが、テメエも秋山国を裏切っているので、全く同情心は沸かない。
「貴方は最低の人間です。誰よりも国のために戦ってきた秋山さんを裏切り、裏切った理由も秋山さんのせいにする。そういう人間を世間で何と言うか知ってますか。偽善者」と張本が言うが、その通りだよなあ。
だから優が秋山から「俺たちのチームに戻れ」と誘われ、ノコノコと戻るっていう展開は、気持ちが萎えるわ。秋山だけでなく、坂巻と赤城も優を責めず、あっさりと受け入れちゃうし。
そこの甘さは、そりゃあ秋山国の面々が優しいってことなんだろうけど、優に対する不快感を強めることに繋がっている。

で、優は裏切り者の分際で、「仲間を裏切って初めて分かりました。これは仲間の協力があって初めて勝てるゲーム。イス取りゲームは助け合いのゲームなんです。だから全員が争いをやめて助け合えば、誰一人犠牲者を出すことなく終えることが出来るんです。お願いです。争いをやめて、私を勝たせて下さい。私は皆さんを信じてます」とプレイヤー全員に訴え掛ける。
「どの口が言うのか」とツッコミを入れたくなるわ。
それは秋山の作戦じゃなくて、本気の訴えだからね。

ようするに優って、ただ秋山に迷惑を掛けるだけの存在でしかないんだよね。
そういう役回りを受け持つのが脇役ならともかく、ヒロインなんだぜ。
一応、説得作戦が失敗した時のためにプランBを用意しておいた秋山の指示通りに、「脱落した後で熱く訴える」「桐生に挑発されてビンタを食らわせて脱落する」という行動は取っているけど、せいぜい坂巻や赤城たちのように「秋山の指示通りに動くコマ」という程度でしかない。
ヒロインとしての存在感や魅力は、まるで発揮されていない。

優は信者3人が張本を見捨てようとした時、「皆さんが裏切られて悲しい思いをしたことは分かります。でも、皆さんを裏切ってしまった張本さんだって、今は傷付いているはずです。だって私も同じ思いをしましたから。今の張本さんを救えるのは皆さんしかいないんです」と信者を説得しているけど、「裏切った方も裏切られた方と同じぐらい傷付いている」という考えは、ものすごくヌルいぞ。
人を裏切って屁とも思わない奴だって世の中には幾らだっているし、それぐらい図太い神経を持っていないとライアーゲームで勝ち残ることは出来ないんじゃねえのかと。張本国の連中が「優を助けたい」という気持ちで秋山国に協力するという流れは、すげえヌルいし、御都合主義だよ。
それに、もはや「駆け引き」とか「ゲーム性」から完全に外れてるじゃねえか。
その後に待ち受けている「みんなが均等に賞金を分け合いました」という展開も、まあヌルいヒューマニズムだこと。

(観賞日:2012年12月4日)

 

*ポンコツ映画愛護協会