『レイトン教授と永遠の歌姫』:2009、日本

考古学者のレイトン教授と弟子のルークは、出口の見当たらない「空の間」にいた。しかしレイトンは事件の謎を解き明かしたことを告げ、「犯人はここから脱出したんだ」と言う。彼はドアを開け、ビッグベンから脱出した。そしてレイトンは、変装していた科学者のドン・ポールが犯人であることを指摘した。ドン・ポールは逃亡したが、事件を解決したレイトンはロンドン・タイムスの一面を飾った。彼は考古学者であると同時に、世界中の謎を解明している謎研究家でもあった。
レイトンはルークに、元教え子であるオペラ歌手のジェニスが歌っているレコードを聴かせる。「もう3年も経つんですね、その不思議な事件に遭ってから」とルークは呟く。その事件は、レイトンとルークが協力して解決した初めての謎解きである。3年前、レイトンたちはジェニスのオペラ公演を観劇するため、クラウン・ペトーネ劇場を訪れた。ジェニスから手紙を貰ったからだ。その手紙には、1年前に病死した親友のミリーナが7歳の少女となって生き返ったことが記されていた。少女はジェニスとミリーナしか知らない秘密も全て知っており、「私は永遠の命を手に入れたのよ」と語ったのだという。
レイトンは劇場へ行く前に、助手のレミに調査を頼んでいた。レミによれば、永遠の命を手に入れたと証言している人物が、他にも存在しているらしい。それに伴い、永遠の命を取り引きする怪しい者たちがいるという噂もロンドン中に広まっていた。ジェニスがヒロインを務めるオペラのタイトルが「永遠の王国」であることを、レイトンは連想する。ミリーナの父親であるオズロ・ウィスラーが、娘に捧げるために久々に書き上げたオペラである。そして、それはレイトンの師匠であるシュレーダーが調査している不老不死の王国アンブロシアの伝説を基にしている。
アンブロシアは紋章の一部が発見されているだけで、未だに正確な位置さえ分かっていない謎に包まれた王国だ。その昔、音楽を愛する女王が王国を治めていた。民に慕われていた女王は、重い病に倒れた。民は必死に薬を作り続けたが、女王は亡くなってしまった。その直後、不老不死の秘薬が作り出された。女王が再び生まれ返るまで自分たちを永遠の存在にしようと考えた民は、不老不死の薬を飲んだ。アンブロシアは、今もどこかで女王が蘇る日を待ち続けている伝説には記されている。
上演が終わってレイトンとルークは拍手するが、他の観客は冷たい反応だった。直後、舞台上に仮面を付けた男が現れ、「皆様は実に運がいい。これから始まる奇跡に立ち会うことが出来るのですから」と語る。すると観客は、一斉に拍手を送った。男が「チケット購入時にお約束致しました通り、ここにいる皆様の中から一名の方に、永遠の命を差し上げることにしましょう」と話したので、レイトンは何も知らないのが自分たちだけだと悟った。
男は観客に「1つ条件があります」と言い、ゲームへの参加を求めた。「勝ち残った一名に永遠の命を。それ以外の人にはご自分の命を提供して頂かなければいけません」男が説明するので、ゲームへの参加を嫌がる客も少なくなかった。しかし男の手下たちが立ちはだかり、逃げ出そうとした観客は開いた床に飲み込まれた。スコットランドヤードのグロスキー警部が客席から飛び出し、男に手錠を掛けた。しかし男は人形だった。仕掛けられていた風船が膨らみ、グロスキーは開いた天井から外へ飛ばされた。
劇場は船に形を変え、海へと出てしまった。岸まで泳ごうとしても、海には鮫の群れがいた。海に落ちていたグロスキーは船に這い上がるが、背後から現れたミリーナに「私の邪魔をしないで」と突き落とされた。オズロがパイプオルガンの演奏を始めたので、それを耳にした観客のスターバックたちが「呑気に演奏なんかしている場合か」と文句を言いに行く。「全てアンタが仕組んだことじゃないのか」と指摘されたオズロは、「私は頼まれてオペラを作った。それだけだ」と告げた。
レイトンの元にジェニスが現れ、「ごめんなさい、先生まで巻き込んでしまって。まさか。こんなことになるとは」と詫びる。その時、あの男の声が船内に響いた。男は「これより謎解きゲームを始めます」と言い、謎ナンバー001として最も古い物に集合するよう告げた。音楽が終了するまでという制限時間が設定され、参加者は船内を歩き回る。すぐにレイトンは答えが「夜空に輝く星たち」だと見抜き、ホールに戻った。ホール以外の場所にいた参加者たちは、床下に落とされた。
謎ナンバー002は、「一番大きな王冠が見える場所に集まって下さい」という内容だ。ルークは「今、乗っている船の名前はクラウン・ベトーネ号です」と叫び、入り口が王冠の形をしていたことを思い出した多くの参加者がロビーへ向かう。だが、レイトンはルークとジェニスを引き連れ、反対方向へ歩いて行く。レイトンは入り口のデザインが囮であることをルークに教え、甲板へ向かう。すると数名の参加者が、避難用ボートを下ろしていた。彼らもレイトンと同様、正解に辿り着いていたのだ。
ジェニスはオズロに気付き、声を掛けた。オズロの後ろには、ミリーナの姿もあった。ミリーナはジェニスに、「どうしてレイトン先生を呼んだの?先生を勝たせては駄目。貴方は私の親友でしょ。私たちの望みを叶えさせて」と言う。レイトンたちはボートに乗り込むが、まだルークは答えが分かっていなかった。参加者の中にはアムリーという若い女性もおり、レイトンは疑問を抱く。するとオズロは「娘の代わりに若い女性たちに聴いてほしいと思い、特別な何人かに招待状を送ったのだ」と告げる。
既に多くの参加者が脱落し、残りは12名となっている。レイトンとルーク、ジェニス、オズロ、ミリーナの他には、元サッカー選手のスターバック、有名女流作家のアニー、交易船の船長を務めるオルドネル、巨大商社の社長であるバーグランド、歴史愛好家のブロック、ゴシップ誌を騒がせている美女のレイドリー、チェスの全英チャンピオンであるアムリーといった面々がボートに乗り込んでいる。
レイトンはオズロに、ミリーナが永遠の命を得て生まれ変わったという話について質問する。オズロは同じ名前の子を養女にしただけだと言い、その話を否定した。ルークが船の方に目をやると、王冠の形になっていた。直後、ボートは自動操縦に切り替わって勝手に走り出し、船は爆発炎上した。同じ頃、レミはニナという7歳の娘が行方不明になった夫婦の元を訪れていた。レミは夫婦に頼んで、ニナの写真を見せてもらった。テレビのニュースでオズロやジェニスたちが失踪したことを知ったレミは、すぐに行動を起こした。
レイトンたちがボートで連れて来られたのは、ある島だった。石碑の紋章を見たブロックは、かつてアンブロシアだった場所だと気付いた。浜辺にはテーブルと椅子、軽食とワインが用意されていた。ルークがミリーナに話し掛けると、彼女は歌を口ずさんで「海が教えてくれたの」と言う。狼の遠吠えが聞こえ、ルークが気にしている内に、彼女は姿を消した。狼の群れが森の中から現れ、レイトンは誰かに操られているのではないかと推理した。
参加者は狼の群れから逃げ出すが、川によって行く手を塞がれる。川の向こうには、黒い城が見えた。男の声が響き、謎ナンバー003として「この川を渡り、城までおいで下さい」と言う。木の上に仕掛けられた檻を見つけたレイトンは、そこに自分たちが隠れることにした。狼たちを閉じ込めるために使おうとして失敗したアニー、オズロ、オルドネル、バーグランドは、慌てて檻の上に避難した。だが、そこへ男の部下たちが現れ、ゲームから脱落することになった。
レイトン、ルーク、ジェニスは小屋へ逃げ込み、そこにあった道具で小型飛行機を作った。3人は空を飛び、川を渡って城に辿り着いた。スターバック、ブロック、レイドリー、アムリーは、先に城へ来ていた。一行の集まった場所には、4つの塔への入り口があった。男の声は謎ナンバー004として、王の寝室に繋がる正確な道を見つけるよう促した。床にはK、G、H、Iという文字が記されている。
ルークはレイトンに、「KとGの間にINを入れればキングになるので、その間の入り口を行くのが正解です」と告げた。するとレイトンは「どうしもて調べたいことがあるんだ。このゲームの目的は永遠の命ではないのかもしれない」と言い、ルークとは別行動を取ることにした。ルークとジェニスの他に、ブロックとアムリーも同じ入り口を進んだ。レイトンがHとIの間の入り口を選ぶと、スターバックとレイドリーも後に続いた。
塔の中に入ったレイトンは、スターバックとレイドリーに「待って下さい、ここは」と話し掛けようとする。だが、すぐに床下が開き、2人は落下した。レイトンは「必ず助けに来ますので」と言い、塔を出て行った。一方、ルークたちは王の寝室に辿り着くが、牢に閉じ込められてしまう。そこに仮面の男、デスコールが現れた。彼は「主催者の意向により、ゲームはここで終了とさせて頂きます」と言い、手下たちにアムリーを連行させた。
小型機で海上を飛んでいたレミは、救助を求めるグロスキーを発見した。彼女はグロスキーを同乗させ、脱落者が救命艇で戻って来たことを話す。するとグロスキーは、もう1つの救命艇が別方向へ行くのを見たことを告げた。城の中を調べたレイトンは、ミリーナが住んでいた形跡を発見した。背後から近付く気配に気付いたレイトンは、「君に会いに来たんだ、ミリーナ」と告げた。「私の邪魔をしないで」とミリーナが逃げ出そうとすると、レイトンはピアノを弾いて「君は、いつまでここに暮らしていたの?」と問い掛ける。最初は質問に答えていたミリーナだが、途中で頭を押さえ、混乱した様子を見せる…。

監督は橋本昌和、企画・プロデュース・ストーリー原案は日野晃博、原作はLEVEL5、脚本は松井亜弥、エグゼクティブプロデューサーは濱名一哉&久保雅一、Co.エグゼクティブプロデューサーは阿部秀司&藤巻直哉、プロデューサーは臼杵照裕&岡田有正&山内章弘&堀川憲司&奥野敏聡&大村信&高瀬一郎、Co.プロデューサーは橘田寿宏&五郎丸弘二&菊池宣広&阿蘇博&細谷まどか、ナゾ制作協力は多湖輝、キャラクターデザイン原案は長野拓造、世界観設定原案は鈴木純、キャラクターデザイン/総作画監督は杉光登、演出は宮脇千鶴&山本秀世&本郷みつる&志村錠児&高橋ナオヒト&外山草、美術監督は竹田悠介&篠原理子、色彩設計は井上佳津枝、撮影監督は福士亨、編集は辺見俊夫、タイトル/ポスターデザインは塩田亜紀子、CGIプロデューサーは坂美佐子、CGIスーパーバイザーは小林雅士、CGIディレクターは鈴木玲央奈、音響監督は三間雅文、テーマ音楽プロデューサーは古川陽子&磯山敦&大島靖、永遠の歌姫テーマ音楽は斉藤恒芳、音楽は西浦智仁。
主題歌「永遠の歌姫」歌:ジェニス・カトレーン(CV:水樹奈々)、作詞:日野晃博、作曲・編曲:斉藤恒芳。
声の出演は大泉洋、堀北真希、水樹奈々、渡部篤郎、相武紗季、山寺宏一、出川哲朗、LiLiCo、河北麻友子、鈴木サチ、河野真也(オクラホマ)、藤尾仁志(オクラホマ)、安東弘樹(TBSアナウンサー)、田中みな実(TBSアナウンサー)、家弓家正、飯塚昭三、中田譲治、折笠富美子、三宅健太、納谷六朗、大塚芳忠、井上喜久子、豊口めぐみ、諸星すみれ、稲葉実、能登麻美子、斎藤志郎、杉野博臣ら。


ニンテンドーDS用ゲームソフト「レイトン教授シリーズ」を基にした長編アニメーション映画。
『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』の演出担当だった橋本昌和が、映画初監督を務めている。
脚本は『劇場版 金色のガッシュベル!! メカバルカンの来襲』の松井亜弥。
レイトンの声を大泉洋、ルークを堀北真希、ジェニスを水樹奈々、デスコールを渡部篤郎、レミを相武紗季、スターバックを山寺宏一、リッチマンを出川哲朗、アニーをLiLiCo、会場アナウンスを河北麻友子が担当している。

ハッキリと言えるのは、この映画はゲームをプレイしている人でなければ楽しめないってことだ(だからってゲームをプレーしている人が必ず楽しめるということではない)。
何しろ、冒頭シーンからして、ゲームをプレーしていない私のような門外漢からすると、何をやっているんだからサッパリ分からない。
たぶんゲームに登場するエピソードなのではないかと思うのだが、レイトンが「空の間」なる場所にいて「そもそも、この事件は盗まれるはずのない物が盗まれることから始まっている」と語り出しても、どんな事件なのかは分からない。
それを後から教えてくれるわけではない。

レイトンは一見さんを置き去りにすることなど全く気にせず、悠然と「あの脅迫状が届き、鐘の音が消えてしまったが、鐘自体が盗まれたわけではないんだ。今回の事件を解決する最大のヒントは塔の入り口にあったメッセージだ。空にある物が1つに集まる時、未来への歩みが刻まれる」などと語り、床の絵に埋め込まれていた太陽と月と星の歯車を取り出してドアにセットし、ドアを開ける。
だが、そんなのを見せられても「さすがはレイトン教授、素晴らしい推理」とは思えないよ。
事件の詳細が全く分からないし、ドアを開ける謎解きのためのヒントも全く与えてもらっていないんだから。
だから、そこがビッグベンだったことが明らかとなっても、何の驚きも無いし。

その後で「この中で唯一、鐘の音を止められた人物、それは貴方だ」と犯人を指摘する手順もあるが、「知らねえよ」「どうでもいいよ」という感想しか出て来ない。
最初にレイトンのキャラクターを紹介しようってのは、構成としては悪くない。ただし、謎を解いたり犯人を指摘したりする様子を見せても、事件の詳細が不明だから、「謎を解く鍵は何なのか」「彼を犯人とする証拠は何なのか」ということも分からないし、ってことはレイトンが頭脳明晰な名探偵だということも伝わって来ないのよ。
だから、その冒頭シーンは観客の心を掴む力を持っていない。
そんなことよりも、例えばレイトンが考古学者としてのデスクワークをしている最中、ルークが頭を悩ませているクイズを簡単に解いてしまうような描写から入った方が、遥かにキャッチーだ。

オープニング・クレジットでポールが「レイトンはこういう人で、自分は助手としてこういう仕事をしていて」というのをナレーションで説明した後、レイトンがルークにジェニスのレコードを聴かせるシーンに移る。で、ルークが「もう3年も経つんですね、その不思議な事件に遭ってから」と呟き、そこから回想に入る。
つまり、今回の映画は、3年前の出来事を描いているのだ。
そんな構成にしているのも大失敗。なぜ現在進行形の物語にしないのかと。回想劇にしていることもメリットなど何も無い。
たぶん「現在発売中のゲームより以前に起きた出来事という設定だから」ってことで回想劇にしてあるんだろうが、そこは気にし過ぎだわ。
っていうか、ゲームと比べて過去の出来事であっても、映画は映画なんだから、現在進行形の物語でもいいだろうに。

まず「永遠の命を求める大勢の人々が劇場に集まる」という設定の段階で、ものすごく無理がある。
「そんな胡散臭い話に、なぜ大勢の人々が集まるのか」とツッコミを入れたくなってしまう。
また、そういうプレゼントを与えるためのイベントなら、オペラ公演を装う意味も無い。集まる観客は最初から「永遠の命が貰えますよ」ということで呼ばれているのであり、本来の目的を隠蔽する必要性など無いはず。
グロスキーが男を逮捕しようとしているので、「警察が動くのを避けるための配慮」ってことだろうが、それにしたって無駄に金を使い過ぎているでしょ。そのイベントのためだけにオペラの劇場を建設しているし。

無関係な出演者の処遇はどうなっているのかってのも気になるぞ。ジェニスはともかく、他にも大勢のスタッフは必要なはずだし。まさかスタッフの全てを、デスコールの部下がやっていたというわけでもあるまいに。
それと、ジェニスは最初から、永遠の命が目的のオペラ公演だと知っていたのか。その辺りがハッキリしない。知っていたのなら、なぜ協力したのかってのも良く分からないし。
終盤になって「実は」というのが明かされるが、それが明かされるまで、前述したジェニスに関する疑問にレイトンやルークが言及しないってのも不自然だ。
真相が明かされた時、「お前が早く真相を告白していれば、もっと簡単に問題は解決していただろうに、なぜ今まで黙っていたんだよ」と言いたくなるし。

劇場が船の形になって海へ出た時点で、「ああ、マトモにミステリーをやろうという気は全く無いんだな」と気付かされた。
そういうことが有りの世界観ってことだと、真っ当な謎解きは成立しない。
なぜなら、現実世界では有り得ない解決方法であっても、「非現実の世界観だから」ってことでOKになってしまう。
極端な話、「どうやって密室殺人が実行されたのか」という問い掛けに対して「特殊な殺害装置を作った」ということでも有りになっちゃうからね。

私は原作のゲームをプレーしたことがないのだが、プレイヤーが本筋となる推理アドベンチャーの解明に参加することは出来ず、その途中でストーリー展開には無関係なパズルやなぞなぞを解いて行くというスタイルになっているらしい。
そういうゲームのスタイルを映画版でも取り入れており、レイトンと観客たちは仮面の男が仕掛ける謎解きゲームに参加することになる。
それは「ゲームの映画化」としては正しい方向性かもしれないが、それが映画としての面白さに繋がっているのかと問われれば、答えはノーだ。
むしろ、明らかにマイナスとして作用している。

「愉快犯が主人公に対してゲームを仕掛ける」という類のサスペンスやミステリー作品は、世の中に幾つもある。
しかし本作品の場合、その謎を解いても、仕掛けられた爆弾の場所が明らかになるとか、人質の場所が判明するとか、そういうことには繋がらない。
「勝者は永遠の命が得られる」という、まるで真実味の無い商品が用意されているだけだ。
成功報酬に何の期待感も興味も持てないようなゲームだから、そこでの高揚感は無い。

それに、デスコールが次々に提示する謎解きは、本筋とも全く関係が無いのだ。その謎を解いても、犯人の正体が明らかになるわけでもなければ、永遠の命の秘密が明らかになるわけでもない。
そんな謎解きに対して、まるで興味をそそられない。
そもそも、黒幕が強制的に参加させた面々に対して、謎解きゲームを仕掛ける必要性が全く無い。
黒幕の目的は「保存しておいたミリーナの記憶を植え付けるための優秀な人材を見つける」ってことなんだけど、だったら最初からアムリーを拉致すれば済む話だ。
謎解きゲームで優秀な人材を選ぶのかと思ったら、結局は若い娘じゃないと除外なんだし。

クイズを解くためのヒントは観客に全く与えられず、いきなりレイトンが「分かったよ」と言って答えを出してしまう。
だからレイトンが答えを出しても、「ああ、なるほど」という気持ちにならない。
「最も古い物に集合しろ」というクイズで、その答えが「船の天井から見える星たち。何億年も前から輝いているから」と言われても、謎が解けたという爽快感は味わえない。むしろ、まるで腑に落ちないよ。
それ以降のクイズも同様で、謎が提示された途端にレイトンが答えを出してしまう。何のヒントも与えてもらえないので、観客は全く謎解きを楽しめないし、レイトンの謎解きに唸ることも無い。
「勝手にやってれば」という感じだ。

おまけに、そこで用意されている謎解きというのは、ホントに「ただのクイズ」でしかない。
これがニンテンドーDS用ゲームであれば、「ストーリーは謎解きクイズをさせるための仕立てに過ぎず、無くても成立する」という形でも構わないだろう。
しかし、映画で同じ状態になっていたら、それは「映画としての意味を成さない」ということになるのだ。
これは、もはや映画である意味が無い。
例えばテレビで「ストーリー仕立てにした中でクイズを楽しんでもらう」という番組として作るのであればOKだが、映画にしちゃダメ。

「ゲームを解いて優勝しないと自分の命が奪われる」という部分で緊迫感を用意しているはずなのだが、そういう緊迫感は全く張り詰めていない。
何しろ、風船で飛ばされたグロスキーが怪我一つせずに海から這い上がってきて、鮫の群れのいる中に突き落とされても殺されずに済んでいる描写があるので、「ああ、誰も死なない世界観なのね」ってことも見える。
謎が解けなかった人々が床下へ落とされていく中でも、レイトンやルークたち落ち着き払っており、何の危機感も抱いていないし。
しかも、レミがテレビの緊急ニュースを見るシーンで、脱落者全員が救命艇で岸に辿り着いたことが判明するし。

レイトンが劇場へ行く際、アンブロシアの伝説について長々と語っている。
そこまで丁寧に語るぐらいだから、もちろん本筋に大きく関わってくるんだろうと思っていたら、まるで意味が無い。
そんな伝説なんてバッサリと削除しても、この映画は余裕で成立してしまう。
残り時間が少なくなった辺りで、「デスコールはアンブロシアの復活を目論んでいる」という設定が明かされるのだが、「心底から、どうでもいいわ」としか思えないし。

ぶっちゃけ、デスコールの存在自体、取って付けた感が否めない。
謎解きゲームを仕掛けた黒幕と目的を解き明かすだけでは派手な見せ場が作れないので、デスコールを絡ませて「レイトンが彼の野望を阻止する」というクライマックスを用意しようという狙いがあったんじゃないだろうか。
ところが、そんな風にクライマックスとして派手なアクションを用意した結果、突如として巨大ロボットが登場するという、ものすごくバカバカしい展開になっている。
もうね、アホかと。
結局のところ、これは「ゲームを宣伝するための道具」でしかないように思えてしまうが、それは単なる邪推ではなく、レイトン教授よりもズバリと真実を言い当てているような気がしてならない。

(観賞日:2014年6月30日)

 

*ポンコツ映画愛護協会