『四姉妹物語』:1995、日本

小暮すなみ、ちなみ、こなみ、えなみは四姉妹。母はおらず、父の謙三は札幌へ出張中。すなみの同級生・明日香とリゾート会社を経営する小日向信彦の結婚パーティーの日、すなみはちなみとこなみの同乗する車で会場の豪華客船へ向かった。
すなみを送った後、招待状を間違えたことに気付いたこなみは豪華客船に向かい、小日向の知り合いだという樋口彰と出会い、心を惹かれる。一方、車で帰宅しようとしていたちなみは、港署の刑事・沖田淳一の車とぶつかりそうになり、言い争いになる。
結婚パーティーを妨害するという予告電話が何度も掛かっていたことから、豪華客船には港署の刑事・野崎が警護のために来ていた。そこへ野崎の部下である沖田が駆け付けるが、彼が謝らなかったことに腹を立てたちなみも付いてきていた。さらに、謙三と会う約束を中止にされたえなみも、豪華客船にやって来た。
やがてパーティーが始まるが、明日香がお色直しに行っている最中に火災警報が鳴り響き、沖田は明日香の死体を発見する。彰はちなみを拳銃で脅し、現場から逃走する。凶器のナイフに彰の指紋が付着していたことから、警察は彰を犯人と断定する。
廃墟のビルに身を隠した彰はちなみに対し、自分は小日向を殴ってやりたかっただけで、殺人など犯していないと告げる。彼の所持していた拳銃も、ただのオモチャだった。彰は警官に発見されて捕まりそうになるが、ちなみが警官を妨害して彼を助ける。野崎達と共に現場に来ていたこなみは、彰と共に車に乗って逃走する。
すなみは小日向に会い、明日香が小日向と結婚する前、バー“プライム”でピアノを弾いている西村英二と付き合っていたことを知る。一方、こなみは彰から、小日向が三崎麗子という恋人を捨てて明日香と結婚したことを聞かされる。西村と会ったすなみは、小日向が明日香の父親の持つ財産が目当てで結婚したと聞かされる…。

監督は本田昌広、原案は赤川次郎、脚本は大川俊道、台詞は飯島早苗、製作は伊地智啓&安田匡裕、企画は藤井忠彦&大木達哉、企画協力は村上和義&荒木宏&鬼頭圭二&中嶋康博&平川浩司、プロデューサーは椋樹弘尚、アクション監督は斎藤英雄、助監督は富樫森、撮影は猪瀬雅久、編集は奥原好幸、録音は北村峰晴、照明は牛場賢二、美術は正田俊一郎、音楽は岡田徹、音楽プロデューサーは向井達也&氏家浩一&菅藤理恵、音楽監督は高橋信之、主題歌はL⇔R。
出演は清水美砂、牧瀬里穂、中江有里、今村雅美、橋爪功、竹中直人、伊原剛志、浅野忠信、篠井英介、笑福亭鶴瓶、近内仁子、洞口依子、松尾貴史、近藤敦、吹越満、久野真紀子、梶原善、阿南健治、川平慈英、伊藤智乃、沢村亜津佐、松重豊、宮田早苗、佐竹京子、里井繭子、大竹周作、沢村翔一、大石継太、難波真奈美、吉田朝、苅部園子、古部雅浩、七生和美ら。


グリコのポッキーのコマーシャルに登場した、“ポッキー四姉妹”というキャラクターを使った映画。すなみを清水美砂、ちなみを牧瀬里穂、こなみを中江有里、えなみを今村雅美、謙三を橋爪功、西村を竹中直人、沖田を伊原剛志、彰を浅野忠信、小日向を篠井英介、野崎を笑福亭鶴瓶、麗子を洞口依子が演じている。

いわゆる“企画モノ”というヤツであり、一種のアイドル映画である。
だから、ある程度のコトは我慢すべきなのだろう。
招待状が無いのにすなみ達が平気でパーティー会場に入れるのは妙だし、そこに四姉妹が集まる過程はギクシャクしているし、刑事が殺人現場を長きに渡って放置するのもヘンだが、その辺りは許すべきなのだろう。

こなみが彰とすぐに親しくなるのだって、会ったばかりの彼を「人殺しなんか出来ない人だ」と信じるのだって、あまりに不自然だ。そこは“こなみと彰は昔の知り合い”という設定にでもしておけばクリアできるような問題だが、その辺りも許すべきなのだろう。

最初にちなみ&沖田、こなみ&彰というカップル生み出しておきながら、彰にちなみを誘拐させて、ちなみ&彰が2人きりになる時間を作る。そこは素直にこなみを誘拐させた方が良かったのではないかと思ってしまうが、その辺りも許すべきなのだろう。
ちなみが誘拐されているのに家族はノンビリしていて、すなみはバーに出掛けてしまう。こなみが彰と共に姿を消した後も、やっぱり家族はノンビリしている。こいつらは頭のネジが緩んでいるのではないかと思ってしまうが、その辺りも許すべきなのだろう。

彰を警官から逃がそうとしてちなみが拳銃を構えるのは不自然だし、その現場に刑事がちなみの家族を連れて来ているのも不自然だ。というか、そもそも展開もキャラクターの行動もメチャクチャだ。だが、その辺りは見て見ぬフリをすべきなのだろう。
すなみ、ちなみ、こなみに関しては殺人事件と絡ませているが、えなみだけは上手く絡ませることが出来なかったようで、全く関係の無い父の女性問題を持ち込んでいる。父なんて登場した意味が全く無いのだが、その辺りも見て見ぬフリをすべきなのだろう。

数え切れないほど多くの問題点があったとしても、メインとなる4人の女優が燦然と輝いていれば、それは大きな救いとなったはずだ。しかし、この作品には、「女優さんをいかに魅力的に見せるか」という意欲が、これっぽっちも感じられない。
その時点で、「企画モノです」「一種のアイドル映画です」ということが、言い訳として成立しなくなる。そして、堂々と、何の疑いも無く、「これは駄作です」と断言することが可能になる。
キャラクターの色付け、描き分けは非常に薄いのだが、たぶん性格設定としては、すなみは責任感が強く、ちなみは勝ち気で、こなみは真面目でおとなしく、えなみはお転婆という感じなんだろう。だが、その性格を積極的に生かそうという意欲は見えない。

映像には女優を美しく、可愛く撮ろうという工夫、配慮が感じられない。物語にしても、四姉妹と同じぐらい男が目立っている。というか、四姉妹の目立ち方が足りないと言った方が正しい。沖田が犯人を追うシーンなんて、どう考えたってちなみに任せるべき。四姉妹の活躍シーン、見せ場を作ろうという意識も感じられない。
そもそも、これは推理ドラマにすべきだったのだろうか。どうせ原案が赤川次郎といっても物語はほとんどオリジナルなんだろうし、推理の面白さなんて皆無なんだから、4人の女優の魅力を引き出すためには、姉妹のそれぞれの恋愛を描くラブコメか、もしくは明るいホームドラマにでもした方が良かったんじゃないだろうか。

普通の映画としては死亡寸前で(もしかすると既に死んでいるかも)、女優にも生き生きとした輝きが無いんだから、もはや何も無いのだ。
燃えカスさえも無い。
だって、最初から火が付いていないんだし、そもそも燃えるような材料さえ無いのだから。

 

*ポンコツ映画愛護協会