『蘇える金狼』:1998、日本

朝倉哲也は少年時代、親友の桜井由紀夫と共に空き地に秘密基地を作って遊んでいた。だが、磯川製薬の土地開発によって、その秘密基地は破壊された。それから20年後、哲也は磯川製薬の経理部に勤めるサラリーマンとなっていた。
磯川製薬の社長の元を、1人の女が訪れた。女は社長の売春を撮影したビデオテープを持ち込み、金を要求する。さらに女は会社が麻薬を扱っている証拠を握っていると話し、立ち去った。その女は榎本ルリ子という名で、哲也の仲間だった。
哲也は優れたコンピュータープログラマーのルリ子に加え、由紀夫も仲間に引き入れた。3人は磯川製薬の第4研究所に侵入し、裏帳簿の入った光ディスクを盗み出す。だが、読み込むためには、研究所のパソコンにアクセスするパスワードが必要だ。
哲也は会長の愛人で社長秘書の永井京子に近付き、パスワードを突き止める。ルリ子は研究所のパソコンへのアクセスに成功するが、逆探知によって社長に居場所を知られてしまう。一方、会長は事件に関わった全員の抹殺を殺し屋に指示していた…。

監督は渡辺武、原作は大藪春彦、脚本は木村雅俊、企画&製作は山地浩、プロデューサーは板谷健一&市原明&佐藤敏宏、撮影は山本英夫、編集は島村泰司、録音は深田晃、照明は田村文彦、美術は尾関龍生、音楽はTorsten Rasch。
主演は真木蔵人、共演は北村康(北村一輝)、安原麗子、内藤武敏、清水昭博、吉瀬美智子、軍司眞人、唐沢民賢、菅田俊、木村栄、山崎りょう、堀尾雅彦、丸橋聡、野口貴史、名取幸政、池上央将、大場俊輔、田辺博之、星野晃、清水進一、小田島隆、鎌田栄治、田渕景也、七瀬ミオら。


松田優作が主演した1979年の同名映画のリメイク。
オリジナルは松田優作の名前によって神格化されているようなところがあるが、実は中身はメチャクチャな作品である。
そのオリジナルから、内容はかなり変更されている。

そのトンデモなオリジナルに比べれば、リメイク版は物語としてのまとまりはあるし、途中で哲也が主役の座から滑り落ちることも無い。
しかし、まとまりはあるが、締まりは無い。
オリジナルより整合性は春かに上だが、パワーやテンションは遥かに下だ。

オリジナル版と違い、今回は哲也の犯行動機らしきものが示されている。
しかし、せっかく動機付けをしたのはいいが、それが「ガキの頃に遊び場所を奪われた復讐」というのでは、あまりに情けない。
そんな動機なら無い方が良かった。

普段は真面目なサラリーマンである哲也だが、裏では野望を秘めた悪党というかおを持っている。
この表の顔から裏の顔への変貌ぶりに、弱さが見受けられる。
これは真木蔵人の芝居よりも、見せ方の問題が大きいように感じられる。

ルリ子や由紀夫の存在理由が、あまり良く分からない。
社長の脅迫は手紙やテープを送り付ければ済むし、コンピュータ操作や研究所に出入りする社員の銃殺は哲也にやらせればいい。
2人とも、トラブル要員としての価値しか無いように思える。
仲間が2人もいることで、哲也のストイックさや強靭さは明らかに薄くなっており、作品自体もソフトなタッチになっている。
金狼は一匹狼であるべきで、群れをなしたら牙を抜かれてしまう。
というか、ちっとも哲也が狼に見えないのだが。

松田優作が強烈な存在感を見せた役を演じろというのは、真木蔵人でなくたって酷な話である。
どうやったって比較されるし、どうやったって勝てないのだ。
そう考えると、この作品をリメイクするという企画自体に、疑問を抱いてしまうのだが。

 

*ポンコツ映画愛護協会