『蘇える金狼』:1979、日本
現金を輸送中の共立銀行の警備員が殺され、1億円が奪われた。犯人は現場近くにある東和油脂の経理部で働く朝倉哲也。普段は地味で真面目で気弱な男だ。しかし、彼は会社に内緒でボクシングをしており、銃に関する深い知識も持っている。
現金強奪には成功したものの、実は紙幣の番号が全て控えられていた。それを知った朝倉は金をヘロインに代え、そのヘロインを売って再び現金化しようと考える。朝倉は市会議員の磯川が麻薬売買に関わっているという情報をつかみ、彼に接近する。
磯川の部下達に殺されそうになりながらも、ヘロインの取り引きを成功させた朝倉。その一方、彼は東和油脂経理部長である小泉の愛人・永井京子に近付き、彼女をヘロイン中毒にする。そんな中、彼は次長の金子が脅されている現場を目撃する。
金子を脅迫したのは東和経済研究所所長・鈴本の甥で桜井という男。彼は金子が愛人とベッドインしている写真やテープと引き換えに5千万円を要求。会社は興信所の石井を使って強引に写真とテープを取り返そうとするが、失敗してしまう。
朝倉は京子を使って会社の状況を知り、自分がボクシングをしている情報を役員達に流す。彼の思惑通り、会社は彼に桜井を殺して写真とテープを奪うことを依頼してきた。重役への昇進と引き換えに桜井を殺しに向かう朝倉。だが朝倉が手を下す前に、桜井は何者かによって殺されてしまう…。監督は村川透、原作は大藪春彦、脚本は永原秀一、製作は角川春樹、プロデューサーは黒澤満&紫垣達郎&伊藤亮爾、助監督は小池要之助、撮影は仙元誠三、編集は鈴木晄、録音は高橋三郎、照明は渡辺三雄、美術は佐谷晃能、衣裳デザインは芦田淳、スーパーバイザーは四方義朗、テクニカルアドバイザーはトビー門口、擬斗は高倉英二&松尾悟、音楽はケーシー・D・ランキン、編曲は大森敏之、音楽監督は鈴木清司、音楽プロデューサーは高桑忠男、主題歌『蘇える金狼のテーマ』は前野曜子。
主演は松田優作、共演は風吹ジュン、千葉真一、成田三樹夫、小池朝雄、草薙幸二郎、岸田森、佐藤慶、南原宏治、待田京介、久米明、今井健二、安部徹、結城しのぶ、真行寺君枝、岩城滉一、加藤大樹、加藤健一、中島ゆたか、角川春樹、田畑靖男、猪狩元秀、江角英明、阿藤海(現・阿藤快)、椎谷建治、吉岡ひとみ、村松克己、高橋明、トビー門口ら。
大藪春彦の小説を映画化した作品。朝倉を松田優作、京子を風吹ジュン、桜井を千葉真一、金子を小池朝雄、磯川を南原宏治、石井を岸田森が演じている。また、キックボクサーだった猪狩元秀が、磯川のボディガード役で出演している。
この作品、題名だけは有名で、観たことは無いがタイトルは知っているという人もいるだろう。名作だと言われることも多いようだが、実はトンデモ映画である。話はデタラメもいいところで、展開もメチャクチャである。破綻していると言ってもいいくらいだ。
しかし、先に書いておくが、真木蔵人が主演したリメイク版や、香取慎吾が主演したテレビドラマ版よりは、遥かに高く評価できる。
というか、同じラインに並べて比べる次元に無い。
この映画は、前述の2作品が持っていない異常なエナジーがある。
ただし、そのパワーを上手く制御できずに、トンデモな作品になっているわけだが。まず朝倉の行動理由が明かされない。なぜ彼は大金を欲しがるのか、なぜ彼は犯罪に走るのか、それについの説明が全く無い。
しかも中盤、千葉真一演じる桜井が出てきた辺りで、朝倉は完全に傍観者になってしまう。物語に全く無関係な人になってしまうのだ。朝倉は金をヘロインに交換して、それを再び現金化しようと考える。
だが、この展開が前半だけで消えてしまう。
市会議員の磯川が後半も話に絡むのかと思ったら、前半だけで消えてしまう。
他にも、伏線かと思ったらあっさり消えてしまうモノが多すぎる。例えば、キーになるかのように提示された写真とテープは、いったいどうなったのか?「朝倉が金に執着する」という部分だけで、この作品は何とか繋がりを持たせようとしているように見えるが、実のところはバラバラなのだ。いくら松田優作に強烈なカリスマ性があるといっても、彼の怪演に頼りすぎで、あまりに作りが荒っぽい。
しかし、その荒っぽさの中に、ハイテンションなパワー、煮えたぎったマグマが存在することも確かである。よって、私はあえて、この作品をトンデモ映画として認定する。