『ヤマトよ永遠に』:1980、日本

西暦2202年、正体不明の飛行物体が火星基地を襲い、地球へと向かった。地球防衛軍司令部は迎撃ミサイルを発射したが、全て軌道を外れて爆発した。やがて飛行物体は大型ミサイルだと判明し、それは地球の上空で動きを止めた。
第10パトロール隊の艇長・古代進は、火星基地が全滅していたこと、遺体が無傷だったことを司令部にいる兄・守に報告する。その直後、大型ミサイルはゆっくりと地球に効果した。そして、正体不明の降下兵が、地球の人々への奇襲を開始した。
敵は掃討三脚戦車や戦闘爆撃機などを使用し、地球を破壊した。無人艦隊コントロールセンターの島大介も、黒色艦隊旗艦ガリアデスに艦隊を撃滅される。敵の正体は、暗黒星団の地球占領軍総司令官カザンが率いる部隊であった。
古代は司令部で働く恋人・森雪を通じて、司令長官からの司令を受ける。それは、惑星イカルスの天文台にいる真田と連絡を取れという指令だった。古代と雪は、宇宙戦艦ヤマトの初代艦長・沖田十三が永眠する英雄の丘へと向かった。
古代と雪は英雄の丘で、島大介、相原義一、南部康雄、佐渡酒造といったヤマトの元乗組員と再会する。古代は真田と交信し、惑星イカルスにヤマトが存在することを知る。彼らはイカルスに向かうため、高速連絡艇のある司令部の地下へと急いだ。
古代らは大統領用の高速連絡艇に乗り込むが、雪が取り残されてしまう。傷付いて気を失った雪を、暗黒星団の技術部情報将校アルフォン少尉が発見した。アルフォンは雪の美しさに心を奪われ、彼女を処刑せずに自分の館へと連れ帰って介抱した。
カザンは地球連邦政府の会議に出向き、逆らえば重核子爆弾を爆発させると脅迫する。そして彼は、ヤマトの所在を教えるよう要求した。拒否した司令長官は、処刑場へと連れて行かれる。だが、守が自爆して敵兵士を倒し、司令長官を救った。
イカルス天文台に到着した古代らは、かつての仲間である真田や山崎奨と合流する。真田は宇宙戦士訓練学校の生徒1名を連れて来るが、彼は亡くなった加藤三郎の弟・加藤四郎だった。さらに真田は、自分の姪・ミオも紹介した。
訓練学校の校長・山南がヤマト艦長に就任し、古代らは地球へ向かおうとする。そこへ司令長官から連絡が入り、古代は兄の死を知らされる。真田は重核子爆弾の存在を知り、そのコントロールが敵の母星で行われていることを指摘した。
ヤマトは地球ではなく、敵の母星へ向かうことにした。やがて古代はミオから、彼女が守とスターシャの娘・サーシャであることを聞かされる。サーシャは1年で急成長していたのだ。そして彼女は、古代に対する恋愛感情を抱いていた。
ヤマトは敵の前線中間補給基地を撃破した後、連続ワープで暗黒銀河(ブラック・ギャラシクー)と呼ばれる巨大星雲へと辿り着いた。古代らは、回転の緩やかな中心部を目指すが、敵艦隊によってゴルバ型浮遊要塞の前に誘い込まれる。グロータス司令の攻撃を受けたヤマトだが、波動カートリッジ砲を使って要塞を破壊した。
やがてヤマトは、白色銀河と黒色銀河の重なる二重銀河へと到着した。そして小ワープしたヤマトの目前には、地球の姿があった。上陸した古代らは、サーダという女性の案内で聖総統スカルダートと面会する。そしてスカルダートから、ここが200年先の地球であること、ヤマトは2202年に地球には帰還しないことを告げられる…。

監督は舛田利雄、監督&総設定は松本零士、原作は松本零士&西崎義展、脚本は舛田利雄&山本英明&藤川桂介、制作&総指揮は西崎義展、プロデューサーは吉田達、チーフディレクターは勝間田具治、メカニックデザインは辻忠直&板橋克己、キャラクターデザインは宇田川一彦&高橋信也&白土武、絵コンテは白土武&遠藤政治、総作画監督は宇田川一彦、作画監督は高橋信也&金田伊功、SF設定協力は豊田有恒、文芸設定は横山和夫、撮影監督は片山幸男&菅谷信行、編集は千蔵豊、録音監督は林昌平、美術監督は勝又激、美術設定は辻忠直、効果は柏原満、音響監督は田代敦己、作詞は阿久悠&山口洋子、音楽は宮川泰。
声の出演は富山敬、麻上洋子、仲村秀生、野村信次、林一夫、古谷徹、安原義人、永井一郎、緒方賢一、青野武、寺島幹夫、神谷明、小林修、広川太一郎、伊武雅之、潘恵子、上田みゆ起、野沢那智、大平透、寺田誠、田中崇、中谷ゆみ、羽佐間道夫ら。


ヤマトの劇場版第3作。「永遠に」は「とわに」と読む。
オープニングクレジット、最後に1人だけ大きい文字で西崎氏の名前が表示される辺り(しかも彼の名前だけ横書き)、完全に彼の金儲けの道具になってしまった匂いが何となく漂ってくる。
劇場版第3作だが、第2作の『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』とは繋がらない。

ややこしい話だが、『さらば〜』が公開された後、その内容を少し変更したTVシリーズ『宇宙戦艦ヤマト2』が放送された。『さらば〜』では主要キャラクターの大半が死亡したが、TVシリーズでは大半が生き残る。そして、その続きとしてテレビ映画『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』が作られ、それと繋がるのが今作品になる。

個人的には、ヤマトは劇場版第2作の『さらば〜』で終止符を打つべきだったという思いが強い(だからといって『さらば〜』が傑作だったとも思わないが)。それ以降の作品は、燃え尽きることが出来なかった未練か、金儲けの道具か、いずれかだという匂いを感じてしまう。
で、この作品は、金儲けのための道具という匂いが強い。
こっちとしては『さらば』で燃え尽きてしまっているので、よっぽど凄い作品を作ってくれないと気持ちが入らない。そういう意味では、最初に長めの戦闘シーンを持って来たのは正解だろう。圧倒的な兵力を誇る正体不明の敵が、短時間で地球を制圧するという展開には、かなり引き込まれる。
でも、そこが作品のピークになってるのよね。

ただヤマトを旅立たせるだけだと、今までと同じパターンになることを恐れたのか、今回は古代と雪を分断して、宇宙と地球で並行して2つの話を進める。そして、古代と雪に、それぞれ思いを寄せるキャラクターを登場させている。
だけどねえ、ヤマトって人間愛を謳った話だったはずで、あんまり恋愛要素が強くなりすぎるのもなあ。いや、恋愛要素を排除しろとは言わないけどね、メインストーリーの展開に、恋愛要素を深く関わらせるのは勘弁して欲しかった気がするなあ。

いきなり登場した山南が艦長になるってのは、どうなのかねえ。そろそろ古代が艦長でいいんじゃないの。年功序列ってわけでもあるまいに。製作サイドには、ドッシリ構えたオッサンが艦長席に座るべきだという、妙なこだわりでもあるのかねえ。
都合のいい展開が、色々と見える。特にサーシャの設定が凄い。サーシャは1年で古代と恋愛劇を演じられるぐらいの年齢に成長したが、これ以降は地球人と同じ成長度合いになるらしい。1年目だけは成長が早いってのは、アンタは犬なのかと。

ヤマトが敵の母星へ向かうという展開に、無理を感じる。なぜ母星へ向かうかというと、真田が「重核子爆弾のコントロールが敵の母星で行われているはずだ」と言ったから。だけど、それは爆弾の形状を見ての推測に過ぎないのよね。確実な証拠があるわけでもないのに、推測だけで長い旅に出てしまう。アバウトな連中だよなあ。
その場面だけではなく、とにかく困ったら真田に説明させて都合良く展開するというパターンが多い。だから、真田はあらゆることを知っている。そして、誰も真田の出した答えに疑問を挟む者はいない。実際、真田の言葉は常に正しいのである。どうやって敵の母星の位置が分かったんだろうとか、色々と疑問はあるけど、そういうことだ。

スカルダートは古代らに「重核子爆弾は脅しだけで使う気は無い」と断言するんだけど、それによって、重核子爆弾の秘密を知るためにアルフォンに体を許そうとまでする雪の行為が、まるで無意味になるのよね。後になって、「実は未来の地球ではなくデザリアム星でした」ということで、雪の行為が無駄じゃなかったということになるけどさ。
大体、スカルダート達が未来の地球だとウソをつく意味が無いのよね。最初から「ヤマトを引き渡さないと重核子爆弾のスイッチを押すぞ」と脅せばいいだけでしょ。母星がヤマトの波動砲に弱くても、波動砲を打たれる前にスイッチを押すのは可能なんだし。

今回の古代は、とにかく魅力が無い。まず、サーシャをデザリアム星に置き去りにする場面で男を下げる。そりゃサーシャが逃げ出したんだけどさ、だからって彼女を残したままヤマトを発進させちゃダメでしょ。
さらに、サーシャを見殺しにする。というか、テメエの手で殺してしまう。
アンタ、自分の姪を殺すのかい。

大体さ、「若者は生き残らねば」ということで、『さらば〜』とパターン違いの『ヤマト2』を作ったはずでしょ。それなのに、最も若いサーシャを犠牲にしてどうすんのさ。宇宙人とのハーフだから構わないのかい。
そんでサーシャが見殺しにした後に、古代と雪の妄想ラブシーンが入るしさ。
「サーシャより、古代が死ねよ」と思っちゃうよ。

 

*ポンコツ映画愛護協会