『野球狂の詩』:1977、日本

53歳の岩田鉄五郎は、プロ野球の弱小チームである東京メッツの大ベテラン投手だ。その年の最終戦は、彼にとって35年の現役生活に別れを告げる試合となるはずだった。しかし、岩田は試合終了後のセレモニーで現役続行を言言する。
メッツのスカウトマンをしている尻間は全国各地を回っていたが、有望選手は全て他の球団に目を付けられた後だった。そんな中、彼は誰も注目していない有力な左腕投手・水原勇気を武蔵野高校で発見する。ただし、水原は女だった。
ドラフト会議の当日、メッツはビリクジを引いてしまい、狙いを付けていた投手を全て他の球団に指名されてしまう。そこで岩田と尻間は隠し球として水原勇気を指名する。水原に野球を続ける気持ちは無かったが、岩田の説得で入団の意志を固めた。
ただし、プロ野球協約で女子選手は認められていない。そこで岩田は、オープン戦で南海ホークスの野村に水原との勝負を持ち掛ける。野村が三振する場面を見た犬神総裁は、水原の出場を許可する特例措置を認めた。
正式に入団の決定した水原は、捕手の武藤から決め球を習得するよう言われる。水原はドリームボールの特訓に取り掛かるが、武藤がトレードで広島カープに移籍してしまう。やがて水原は、大阪アパッチとの試合で初登板することになった…。

監督は加藤彰、原作は水島新司、脚本は大工原正泰&熊谷碌朗、プロデューサーは樋口弘美、企画担当は佐々木志郎、撮影は前田米造、編集は井上治、録音は福島信雄、照明は新川真、美術は川船夏夫、音楽は高田信。
出演は木之内みどり、小池朝雄、桑山正一、藤岡重慶、高木均、高田敏江、山科ゆり、水島新司、高岡健二、犬塚弘、アパッチ、鶴田忍、沢田勝美、石井富子、五條博、高橋明、丹古母鬼馬二、池田まさる、笠井一彦、日吉としやす、鶴岡修、五代守、谷啓、野村克也、藤田学、豊田康光ら。


水島新司の人気漫画を映画化した作品。
当時のアイドルだった木之内みどりが水原勇気を演じている。
それだけでオールOKにしたいような気もしてしまうぐらい、このキャスティングはベリーナイスだったと思う。

日活ロマンポルノ出身の加藤彰が監督を担当していることもあって、虎谷役の高橋明、武藤役の鶴田忍、その妻を演じる山科ユリなど、ロマンポルノで活躍した面々が出演している。また、当時の南海の選手だった野村克也が本人役で出演している。

主題歌「恋のブロックサイン」(作詞が伊藤アキラ、作曲が森田公一)を当時の女性3人組アイドルグループであったアパッチが歌っているので、特に意味も無く彼女達が国立玉一郎の追っ掛けをやっているシーンが挿入される。

水原以外のキャスティングも、なかなかグーだ。
鉄五郎の小池朝雄を筆頭に、五利監督の桑山正一やオーナーの藤岡重慶、力道玄馬の丹古母鬼馬二など、完全に見た目重視のキャスティング。
ただし、国立玉一郎役の五代守や王島役の森徹など、あまり合っていない面々もいるが。

野球選手達のドラマなのだが、みんなマトモに野球なんか出来ていない。
思いっきり草野球レベルである。
練習の時のジャージも、みんなバラバラという状態だ。
だから、ちゃんとした野球映画として見ればサイテーだ。

最初のシーンを過ぎると、野球をやってるシーンはしばらく出てこない。
さすがにヘタクソな野球シーンで観客を引き付けるのは不可能だと判断したのだろう。
しかし、これは「マトモな野球映画」として見るべき作品ではないのだ。

この映画は、完全に遊びの世界なのである。
「ソックリでショー」である。
「アニメキャラクター成りきりショー」である。
「役者が正月の隠し芸大会でパロディー・ドラマをやっている」といったような感覚で鑑賞するといいだろう。
えっ、ストーリー?
どうでもいいよ、そんなモン。

 

*ポンコツ映画愛護協会