『UFO学園の秘密』:2015、日本
ナスカ学園は、男女共学の全寮制進学校である。高等部2年のレイ、アンナ、タイラ、ハル、エイスケは、文化祭で発表する探究創造科の研究テーマが決まっていない。レイとタイラが「最強のテーマを見つける」と約束したのに、作業が進んでいないのだ。レイとアンナ、タイラとハルは、それぞれ交際している。ハルの妹である夏実が食堂で倒れ、その場に居合わせたレイ&アンナ&タイラが保健室へ運ぶ。知らせを受けて駆け付けたハルに、保健医は貧血を起こしたのだろうと告げた。
ナスカ学園では塾に行くことが禁じられているが、内緒で通う生徒がいるという噂が広まっていた。教師の鷹峰は生徒たちに、「ウチは全寮制の進学校として、全国でもトップを走っている。塾なんか必要ない」と告げた。レイたち5人は授業に遅刻した罰当番として、体育用具室の掃除を命じられた。ハルはレイたちに、成績優秀だった夏実が下がっていることを話す。エイスケは仲間たちに、天才塾の存在を教える。トイレの個室に入っていた時、3年の男子生徒たちが「寝てるだけで天才になれる。頭に色んな物を付けると眠たくなり、記憶力が抜群になる」と話しているのを聞いたのだと言う。
後日、夏実の成績は上昇するが、それは天才塾に行ったからだとハルはレイたちに明かす。しかし塾に行って以来、夏実は夜になっても眠れず、寮を抜け出すようになっていた。ハルは夏実から、目で見た物が録画したように記憶されるのだと聞き出した。アンナは解決法を考え、何年も使われていない深夜の部室に仲間と夏実を集合させる。そこはエイスケが隠れ家として使っている場所で、アンナは小学生時代に家庭教師をしてもらっていた夜明優を心理カウンセラーとして呼び寄せた。
夜明はハルに退行催眠を掛け、過去の記憶を呼び出した。ハルの証言を聞いた夜明は、彼女が宇宙人によってUFOへ拉致され、手術で脳にチップを埋め込もうとしたのだと確信した。しかし途中で何らかのトラブルが発生し、手術は中断された。夜明はレイたちに、「彼らはチップを使って情報を収集するためではなく、その人間の感情や行動をコントロールしようとしている可能性もある」と語る。ナスカ・ユニバーシティの宇宙科学部教授を務める夜明はナスカ学園の卒業生であり、探究創造科の特別講演に招かれた。彼は生徒たちに、「宇宙のメカニズムを作り上げた意志に基づいて、宇宙や地球が出来ていると考える方が自然なのではないか」と語った。
「人間の知能を超えた意志」という彼夜明の言葉に、レイは立ち上がって「宇宙人のことですか」と質問する。生徒たちが馬鹿にする中、夜明は「宇宙人の存在は証明できていません。しかし証明できていないということは、存在しないということと同じではありません。今の科学では、まだ証明できないだけということかもしれない」と語った。レイは発表テーマを「UFOと宇宙人の実在」に決定し、「俺たちは未来に挑戦するんだ」と仲間たちに言う。するとアンナは、チームの名前を「チーム・フューチャー」と付けた。
レイたちは宇宙人の目撃情報を集めるためのチラシを用意するが、職員会議で問題視された。夏休み、チーム・フューチャーは寮に留まり、天才塾を調べようとする。タイラは不審な生徒たちを目撃し、尾行して盗撮する。用務員の丸井に見つかったタイラは慌てるが、「宇宙の研究をしているんだろう?そういうの昔から大好きなんだよ」と告げられる。見失った生徒たちを捜しに林へ入ったタイラは、UFOの光に吸い込まれた。
タイラは無事にレイたちの元へ戻り、アブダクションした宇宙人がグレイ型ではなく金髪の美女だったと話す。彼は「美女はテレパシーを使い、自分はプレアデスから来たと話した。霊界を使ってプレアデスへ連れて行き、悪い宇宙人ばかりではないと聞かされた」と語るが、レイは「お前は騙されてる」と告げる。他の面々も怪しむと、タイラは「自分たちはチーム・フューチャーのミッションを見ている。夏実を誘拐したグレイはサイボーグのような存在で、それを操っている悪い宇宙人がいる」と説明されたことを明かす。
するとハルは悪い宇宙人がレプタリアンだと言い、自分もアブダクションされたと告白する。ハルは「猿のような宇宙人にアブダクションされ、ケンタウルス座アルファに連れて行かれた」と語り、「レプタリアンは他の星を侵略し、その星の生物を食料にする。レプタリアンは地球にも入り込んでいる。ナスカ学園にも潜入している」と聞かされたことを説明した。すぐにレイは、天才塾の裏でレプタリアンが糸を引いているのだと確信した。レイは「奴らは学園を乗っ取ろうとしているんだ」と言い、「学園を守ることがチーム・フューチャーのミッションだ」とタイラは口にする。
夏休みが終わり、文化祭の日がやって来た。チーム・フューチャーは予定通り、研究テーマを発表しようとする。しかし直前になって、エイスケが持っていたデータが全て消されてしまう。レイは不審な行動を取っていた鷹峰やルームメイトのことを思い出し、レプタリアンに違いないと感じる。自分たちの順番が来たため、レイは何のデータも無いまま壇上に立つ。彼は「宇宙人は実在します。いい宇宙人は少なくとも2種類。悪い宇宙人は何種類かが地球に来ているんです。この学園を乗っ取ろうとしているんです」と訴えるが、まるで信じてもらえなかった。
憤慨した校長は、発表の制止に入る。すると窓の外にUFOが出現し、レイと校長をアブダクションした。2人を誘拐したのはヤギ型の宇宙人で、レイと校長を月の裏側へ案内する。そこには地球へ向かう宇宙人のために中継基地が設置されており、地球人に気付かれないよう秘密裏に調査が行われていた。そこは惑星連合の基地であり、参加していないレプタリアンはいなかった。夏実の手術を妨害して彼女を救ったのは、惑星連合だった。
レプタリアンも月面で独自に基地を作り、地球へ移住するチャンスを狙っていた。すぐに地球へ攻め込まないのは、「他の惑星の文明には無闇に介入してはならない」という宇宙協定があるからだ。ヤギ型宇宙人はレイと校長に、「心の波長が合えば通路が出来て入り込める。レプタリアンは同じような心を持った地球人や国家と通じ合い、地球に入り込もうとしている」と教える。それを聞いたレイは、「平和的な心を持てば平和的な宇宙人と交流できる」と気付いた。
ヤギ型宇宙人は、チーム・フューチャーのミッションが「惑星連合と波長を合わせる状況を整えること」だと告げ、「そうすれば地球は平和を愛する宇宙の一員として、新たな宇宙時代を迎えることが出来る」と述べた。レイと校長は地球に戻されるが、その間は時間が停止していたため、誰もアブダクションには気付いていなかった。ヤギ型宇宙人はインカール司令官に「彼らは気付くでしょうか」と問い掛け、「信じるしかありません。自分たちで気付き、行動しない限り、私たちには何も出来ないのだから」と告げられた。
レイはアブダクションされたことを仲間に打ち明け、証拠としてヤギ型宇宙人に貰った月の石を見せた。それが本物かどうか、彼らは夜明に調べてもらうことにした。校長はレイたちに謝罪し、協力すると申し出た。箱に入れておいた月の石が無くなり、レイはレプタリアンの仕業だと確信した。タイラが内部犯行を疑うと、夏実は「きっと私よ」と泣いて飛び出した。レイもタイラに同調したため、アンナは激怒する。エイスケもレイやタイラと距離を置き、チームは空中分解の危機を迎えた。
夜明はレイたちを集合させ、宇宙人とコンタクトする装置と、見た物を同時に中継できる装置を披露した。心の波長を増幅させ、宇宙の一定方向に発射するというのが装置のメカニズムだ。夜明は最初の被験者として、チーム・フューチャーを選んだのだ。5人は手を繋いで装置を囲み、UFOへ移動した。すると巨大な虫のような形のウンモ星人が出現し、以前からエイスケの体内に魂を同居させていることを打ち明けた。ウンモ星人は彼らに、プレアデスへ向かうと告げる。「金髪美人がいる所?」とタイラは喜ぶが、ウンモ星人は「あそこは5番惑星です。これから行くのは3番惑星です」と告げる。3番惑星に到着すると、チーム・チューチャーはエリートを育てる学校の見学に案内される…。監督は今掛勇、製作&脚本は松本弘司、製作総指揮は大川隆法、視覚効果クリエイティヴ・ディレクターは粟屋友美子、キービジュアル・デザイナーは大坪恵子、美術監督は渋谷幸弘、色彩設計は野地弘納、撮影監督は佐藤光洋、CGIディレクターはScarlett Woo、編集は大畑秀明、アニメーション・プロデューサーは守屋昌治、音楽は水澤有一。
声の出演は逢坂良太、瀬戸麻沙美、柿原徹也、金元寿子、羽多野渉、浪川大輔、銀河万丈、伊藤美紀、千菅春香、藤原貴弘、白熊寛嗣、二又一成、田丸篤志、松本拓也、三宅麻理恵、坂東美咲、斉藤次郎、仲野裕ら。
幸福の科学出版が製作する劇場用映画の9作目。長編アニメーションとしては7作目になる。
『太陽の法 エル・カンターレへの道』『永遠の法 The Laws of Eternity』『神秘の法』の今掛勇が監督を務めている。
原案を担当したのは、もちろん幸福の科学の大川隆法総裁である。
レイの声を逢坂良太、アンナを瀬戸麻沙美、タイラを柿原徹也、ハルを金元寿子、エイスケを羽多野渉、夜明を浪川大輔、丸井を銀河万丈、司令官を伊藤美紀、夏実を千菅春香、鷹峰を藤原貴弘が担当している。細かいことかもしれないが、最初に注意事項を述べておくと、「UFO」と「宇宙人の乗り物」はイコールではない。
「UFO」ってのは「unidentified flying object」の略であり、日本に訳すと「未確認飛行物体」という意味だ。つまり、飛行機あろうが鳥であろうが、その正体が未確認の間は「UFO」だ。そして正体が宇宙人の乗り物だと分かった段階で、もはや「UFO」ではなくなる。
もちろん大川総裁は賢明な人だから、そんなことは百も承知だろう。
間違った解釈が一般的に普及していることを考慮し、伝わりやすさを優先して、「UFOは宇宙人の乗り物」という形で使っているはずだ。この映画は、単に幸福の科学出版が製作した作品というだけでなく、「幸福の科学」という宗教団体のプロバガンダ映画である。これに限らず、幸福の科学出版が製作した映画は全て、幸福の科学の広報活動だ。
宗教団体のプロバガンダ映画なのに、『永遠の法』や『神秘の法』のような大川総裁の教えを説く話ではなく、宇宙人を題材にした作品ってのは、どういうことかと思う人がいるかもしれない。
しかし幸福の科学においては、「宇宙人は存在する」というのも大事な教義の1つだ。
だから本作品も、「UFO後進国である日本の目を覚まそう!」というキャンペーンの一環として製作されているのだ。宗教団体のプロパガンダ映画なので、もちろん大川総裁の説法を基にした内容が色々と盛り込まれている。
そんな風に聞くと、小難しいんじゃないか、取っ付き難いんじゃないかと考える人がいるかもしれない。
しかし、そんな心配は要らない。
大川総裁は、常に親しみやすさを重視している。だから私のように幸福の科学の信者ではない人間が見ても、ちゃんと付いて行ける内容に仕上がっている。
幸福の科学出版が製作する映画が信者以外の人々にも受け入れられているのは、親しみやすさがあるからだ。若者が主役のアニメーションだから、若い観客だけをターゲットにしているのかと思いきや、そういうわけでもなさそうだ。
何しろ、遅刻したエイスケが教室に入ろうとする時には、「お呼びでない?こりゃまた失礼いたしました」という植木等のギャグを口にするのだ。
それが分かる年代を考えると、高齢者の観客にも受けることを意識しているのだろう。
「なぜ高校生のエイスケが、そんな古いギャグを知っているのか」という疑問を持つ人がいるかもしれないが、気にしないように。
きっと、それも宇宙人の仕業だろう。「天才塾に行くと成績が上がる」「夏実は塾に行って成績が上昇した」ということは台詞で説明されるだけで、実際に「塾に行った誰かの成績が急上昇した」ってことを示す描写は無い。
なので、「天才塾に行けば成績が良くなる、記憶力が良くなる」という設定は、説得力に乏しい。
しかし、それでいいのだ。天才塾は悪玉のポジションなので、「記憶力が良くなる」というメリットが強く伝わるのは望ましくないからだ。
まあ、「だったら、そもそも天才塾で記憶力が良くなるという設定を持ち込まなきゃ良かったんじゃないのか」と言われたら、何の反論も思い付かないが。ハルはレイたちに、夏実のことを相談する。
しかし、その時点では、ハルが台詞で「夏実は夜になるとうなされて、眠れなくて寮を抜け出して」と語っているだけだ。当事者である夏実が、いかに悩んでいるかってのは分かりにくい。
ハルが妹から事実を聞き出したのなら、本人である夏実がレイたちに悩みを相談する形にした方が伝わりやすい。
ハルから相談を受けたアンナは、「先生には相談できない」ってことで、あるアイデアを思い付く。それは夜明に退行催眠を掛けてもらうという方法だ。
急に夜明というキャラクターが登場し、まるで紹介も無いまま唐突に退行催眠を掛けるので、慌ただしいったらありゃしない。ハルに退行催眠を掛けた夜明は、彼女が宇宙人にアブダクションされたと断定する。彼の話を聞いたレイたちは、すぐに全員が受け入れる。
夜明にしろ、レイたちにしろ、誰一人として「宇宙人とか、アブダクションとか、バカバカしい」という意見を持つ奴は存在しない。天才塾に行った奴は宇宙人に誘拐されて脳にチップを埋め込まれるという話を、全面的に信じている。
ここで「なんでだよ」とツッコミを入れたくなる人がいるかもしれないが、それは大きな間違いである。
なぜなら、「宇宙人は存在する」ってのは確固たる事実だからだ。
そういう大川総裁の教義に基づいて作られているので、レイたちが宇宙人の存在に疑問を抱くようなことは無いのだ。タイラをアブダクションしたのはグレイ型宇宙人ではなく金髪の美女という設定だが、そのキャラクターは明らかに『銀河鉄道999』のメーテルがモデルだ。
普通の感覚だと、仮にメーテルっぽい宇宙人を思い付いても、安易なパクリだと指摘されるのが嫌で別のデザインに変えるだろう。
しかし、この映画では、それは絶対に有り得ない。
なぜなら、そのメーテル型宇宙人は「この映画のためのキャラクター」ではなく、大川総裁が実際に目撃した宇宙人をアニメ化しているからだ。そんなメーテル型宇宙人は、タイラをプレアデス星団へ連れて行く。
地球から4百光年以上も離れているので、普通なら絶対に無理だ。しかしタイラは、「霊界を通ると、時間を超えて移動できるんだって」と話す。
それで簡単に納得しちゃうのは、何しろ「宇宙人は存在する」ってのが揺るぎない事実であり、「だから宇宙人の言うことは絶対」ってことになるからだ。
ちなみに、宇宙人の話をしていたのに「霊界」という異分子のような要素が絡むことへの引っ掛かりを感じる人がいるかもしれないが、大川総裁の教えでは宇宙人も霊界も同じフィールドにあるので、何の問題も無い。チーム・フューチャーは発表テーマを「UFOと宇宙人の実在」に決定するが、具体的に何をするわけでもない。本を調べている様子がチラッと写るが、それ以外は特に何も無い。宇宙人の目撃談をポスターで募集しているが、それで目撃者が来る様子も無い。
しかし都合のいいことに、宇宙人の方からアブダクションしてくれるので、こっちが動かなくても情報が集まる。しかも、良い宇宙人がアブダクションしてくれて、有益な情報をくれるのだ。
そんな都合のいいことが起きるのは、レイたちが宇宙人の存在を信じているからだ。
それは「幸福の科学の教えを信じている」ということにも繋がる。
信じる者は救われるのである。ハルは猿型宇宙人から聞いた情報としてレプタリアンが地球に入り込んでいることを話し、「アメリカとか、ロシアとか、中国の軍の中とか。絶対に秘密を守るという約束で、軍事技術を提供してる」と言う。
アメリカにロシアに中国と、ちゃんと幸福の科学が敵視している国を並べている。
「絶対に秘密を守るという約束で、軍事技術を提供してる」ってのは都合のいい設定、というかバカバカしい設定に思えるかもしれない。
しかし大川総裁の教えに基づいているので、紛れもない事実なのだ。主人公のレイは文化祭の会場で、「宇宙人は実在します。いい宇宙人は少なくとも2種類。悪い宇宙人は何種類かが地球に来ているんです。世界ではUFOに関する研究が国家レベルで行われている中で、我が国はまさにUFO後進国です。でも、宇宙人がいるのは事実です」と語る。
しかし何の証拠も無いので、もちろん全く信じてもらえない。どれだけレイが熱く語っても、虚しいだけだ。
でも、幸福の科学も「宇宙人は実在する」と訴えているだけで、それを裏付ける証拠があるわけではない。
つまり、証拠があろうとなかろうと、大切なのは「宇宙人は実在する」と信じることなのだと、この映画は言いたいのだ。
なぜなら、証拠が無くても事実は事実だからだ。チーム・チューチャーが宇宙人とコンタクトする装置を囲むと、夜明は「お互いに個性を認め合い、信じ合い、愛し合う心。真実をどこまでも追い求める心。間違ったら反省し、さらなる成長を求める心。この世界の本当の平和と繁栄を願う心」と語る。
プレアデス3番惑星の見学に行くと、ウンモ星人は「人間学全般を通して高貴なる義務を果たすことが出来る存在として成長するために、ここで学ぶのです」「自分のためではなく、人々のため。国や世界のために。ここで行われている教育は、そんな精神を磨く魂の教育とも言われています」などと語る。
この辺りは、幸福の科学の教えが明確な形でアピールされている。チーム・チューチャーが地球へ戻る前にベガへ寄り道すると、アンナは心の声で「心が変われば、世界が変わる」と聞かされる。
続いて幼い頃の自分や前世の自分が出現し、「目に見える自分が全てだと思い込んでるから、本当の自分を思い出すことが出来ない。本当の自分に目覚めたら無敵なのに」「地球では自分が霊界から生まれたと気付かない内に人生が終わる人がいる」「人は様々な時代、様々な地域に何度も生まれ変わりながら新しい経験を積み、成長する」「地上に生まれる時は全て忘れるが、それでも人生のどこかで真実に気付けるかどうかだ」とレイたちに語り掛ける。
その辺りも、全て幸福の科学の教えについて観客に説くためのシーンだ。チーム・チューチャーが装置を使って宇宙へ行ってからの展開は、完全に「説法の時間」と化している。
なので普通の娯楽映画として解釈した場合、無駄にダラダラしているし、余計な寄り道をしているだけってことになるだろう。
でも宗教映画なので、そこは必要不可欠だ。
大川総裁は、その時間を使って「神様は人生の途中で、霊界や前世を思い出せるチャンスを何度も与えている。それなのに、多くの人間は気付こうとしない。だから前世では愛し合っていた家族や友人が、思想や民族の違いで戦争したり憎しみ合ったりする。本当の自分を忘れているからだ。地球に限らず、人間は様々な星に生まれ変わっている。魂の真実を思い出せば、世界は平和になるのだ」ということを人々に訴え掛けているのだ。そんな説法を聞いた5人は、なぜか「自分が何をやりたいのか」ってことに目覚める。理屈は良く分からないが、それは幸福の科学の教えが持つ力なんだろう。
そしてタイラは「UFOを作る」と、アンナは「映画を作って人々に夢や希望を与えたい」、エイスケは「学校の先生になり、新しい時代を作るヒーローやヒロインを送り出したい」と語る。
最初の「UFOを作る」は珍妙にも思える目標だが、実は前半から彼が語っていたことだ。
続くハルは最後に回して、レイは「どこまでも真実を探求したい」と言う。でも、それは具体的な目標になっていない気がするぞ。さて、残しておいたハルだが、「いつも自分が他の人と違っていると感じて、浮いていると思っていた。でも、人と違っていいんだって分かった。だって、それが私だもん」と語る。
で、そう思った彼女が将来の目標として掲げるのは、「私、もっとちゃんと宗教の勉強がしたい。世界中のみんなが仲良く魂を成長させていけるような、そんな世界を作るために、自分の人生を捧げてみたい」というモノだ。
かなり唐突で違和感があるけど、宗教映画なので仕方が無い。ナスカ学園に潜入していたレプタリアンが巨大UFOを召喚すると、インカール司令官もやって来る。
司令官は「地球の皆さんは、霊的宇宙も含めた宇宙の真実を知る必要があります。そのために、科学と宗教の融合を大きなテーマとして、新しい宇宙時代を開かなければなりません」と語る。
実はレプタリアンだった丸井が本性を現すと、「(レプタリアンの競争を邪魔しているのは)神の願いのためだ」「神は心の幸福を求める」などと口にする。
宇宙人が神や宗教について語るのは、奇妙に思えるかもしれない。しかし大川総裁の考えに基づけば、何の不思議も無いことだ。丸井は邪魔なレイたちを裏宇宙へ送り込み、「我々は中国軍と手を組んだ」と言う。
宇宙の邪神のエネルギーによって地球は消滅の危機を迎えるが、レイが「本当の自分に目覚めたら無敵なのに」という言葉を思い出すと、急に獣人へと変貌してレプタリアンと戦い始める。
さらに鷹峰がドラゴン型宇宙人だったことも判明し、彼がチーム・チューチャーを裏宇宙から脱出させてくれる。
この映画は何の伏線も張っていない唐突な展開が多いが、その中でも特に、その2つは唐突の度合いが高い。それと、今までの作品は全て「その1作で完結」というスタイルを取って来たが、今回はクロージング・クレジットの途中で「サタンと手を組んでいる中国の国家主席がアメリカ大統領からの電話を受ける」というシーンが入る。
つまり、続編を想定しているってことになる。
何しろ、この映画の英語タイトルは「The Laws of The Univerese Part0」だ。
パート0ってことは、まだ序章に過ぎないのか。ここから、どんどんシリーズ化されるのか。
いやあ、オラ、ワクワクしてきたぞ。(観賞日:2017年2月16日)