『MONSTERZ モンスターズ』:2014、日本

1993年、女は幼い息子に目隠しをして、大雨の中を歩いていた。息子の右脚は、先端から壊死が進んでいた。アパートに戻ると女は息子に昼食を用意し、絶対に外へ出ないよう言い含めて漫画『AKIRA』の1巻を渡した。そこへ女の夫が現れ、「こんなバケモンは捨てて、2人だけでやり直すんだよ」と声を荒らげた。彼は傘で女を殴り付け、外へ連れ出した。すると目隠しを外した息子が男に歩み寄り、じっと凝視した。すると後ずさりした男は、自らの首を捻って死んだ。母親は泣きながら「もう、無理」と漏らし、息子を絞殺しようとする。しかし少年は超能力で母親も殺そうとするが、結局は生かしたまま立ち去った。
20年後、成長した男は銀行で行員や客を操り、バッグに金を入れさせた。男はバッグを持って立ち去り、我に返った行員や客たちは混乱に陥った。フリーマーケットや屋台で賑わう公園へ赴いた男は、そこにいる人々の動きを停止させた。タコ焼きを食べたり幼女たちに話し掛けたりしていた男は、引っ越し会社のトラックから荷物を運び出している田中終一が動き続けているのに気付いた。男は改めて動きを止めようとするが、終一は動き続けた。
終一は同僚のジュン、晃と依頼主の部屋へ荷物を運び込み、トラックに戻った。男は改めて力を使うが、ジュンと晃の動きしか停止させることが出来なかった。ジュンと晃超能力から解けて動き出した直後、終一は車にはねられた。その様子を見た男は、終一が死んだと確信して安堵した。男は右脚の壊死が進行し、義足を使っていた。一方、大怪我を負った終一は退院し、車を運転していた雲井繁の元を訪ねた。雲井は古いビルの一角を借り、中古ギター販売&修理会社を娘と2人で経営していた。
全治4、5ヶ月と聞いていた終一が3日後には元気で現れたので、雲井は驚いた。彼が慰謝料について、10年ローンで何とかならないかと頭を下げた。すると娘の叶絵は、退職金の入っている預金通帳を差し出した。彼女は本を出すために退職したのだが、父のために土下座で詫びた。その金は貰えないと感じた終一は、慰謝料代わりに雲井の会社で働かせてほしいと持ち掛けた。終一と叶絵は互いに地図マニアだと知り、あっという間に意気投合した。
閉店時間が来たので終一が看板を片付けに行くと、その様子を目撃した男は驚愕した。終一は雲井親子と一緒に夕食を取り、9歳の時に両親と弟が交通事故で亡くなったことを話した。終一も同じ車に乗っていたが、彼だけは助かったのだ。ジュンと晃が訪ねて来たので、終一は笑顔で迎え入れた。ドアの外にいた男が力を使うが、やはり終一には効かなかった。男は部屋に入り込み、終一を除く面々の動きを止めた。男は終一の動きが止まらないと分かり、ジュンと晃を操って押さえ付けようとした。終一は2人を振り払い、男に掴み掛かった。取り押さえられた男は力を使い、叶絵に包丁で終一を突き刺させた。
終一は背中の包丁を抜き取り、男にパンチを浴びせた。男は力で雲井を窓際まで移動させ、叶絵に突き落とさせた。男は叶絵を操って終一をスタンガンで気絶させ、その場から逃亡した。終一は病院で意識を取り戻すと、もう元気になっていた。しかし雲井は手術の甲斐なく、息を引き取った。終一は刑事の柴本孝雄と押切奈々に、変な男が雲井たちを操ったのだと説明した。柴本は警官時代から、終一と知り合いだった。終一の家族が事故死した時、現場で優しく声を掛けたのが柴本だった。
店に戻った終一は、I-Padに事件の映像が録画されているのを見つけた。彼はジュンと晃を呼び、その映像を見せた。ジュンは「これがあれば警察も終一の言うこと信じるわよ」と言うが、映像には操られた叶絵が終一を襲って雲井を突き落とす様子が記録されている。それを知ったジュンは「こんなの見せたら彼女、逮捕されちゃうわよ」と困惑し、終一は「ここだけ編集しといて」と2人に頼んだ。そこへ男が現れ、格闘家2人組を操って終一を襲わせた。
終一はドアを塞ぎ、ジュンと晃に隠れるよう指示した。2人が窓の外へ隠れた直後、格闘家たちはドアを壊して乗り込んで来た。終一は1人に首を絞められ、激しく抵抗した。男の顔に物が命中したことで、格闘家たちは正気に戻った。その隙に終一は格闘家たちを閉じ込め、逃げ出す男を追った。男は工事現場の作業員たちを操り、終一を取り押さえた。しかし終一は男が隙を見せた瞬間に脱出し、腹にパンチを浴びせて昏倒させた。
警察署に連行された男は、頭から袋を被せられた。しかし同部屋の刑事2人は「騙されないで下さい。僕の目を見てくれたら嘘をついてないって分かりますから」という男の言葉を受け、すぐに袋を取ってしまった。男に操られた刑事2人は、終一に発砲した。終一は銃撃をかわして刑事たちを叩きのめすが、男に操られた押切が手錠を掛けた。男は押切の拳銃を終一に突き付けるが、引き金をひくことに恐れを見せた。終一が部屋を真っ暗にすると、力の使えなくなった男は逃げ出した。
終一は押切に手錠を外させ、男を追い掛けた。男は周囲の人々を操り、終一の動きを封じようとする。終一が人々を押しのけていると、男は赤ん坊を抱いた女を操った。女が赤ん坊を投げ捨てたので、終一は慌ててキャッチした。すると男は人々を操り、ベンチを投げ落とす。終一がかわすと、次の男は石で出来たプランターを落とさせた。終一は赤ん坊を脇へ起き、花壇の下敷きになった。男は大量出血する終一の姿を確認し、その場から立ち去った。
芝本や押切たちは監視カメラの映像を確認し、署内で何が起きたのかを知った。芝本は部下たちに、指示があるまで秘匿とするよう命じた。テレビでは署内の発砲事件について報じられるが、終一と男が2人組の犯人として指名手配された。男がホテルに戻ると刑事たちが室内を調べていたのですぐに動きを止めた。男は刑事たちを操り、同士討ちで全滅させる。しかし、物陰に隠れていた芝本には気付かないまま、男は金を持って部屋を去った。
終一は1日で回復し、晃やジュンと約束していたスパへ赴いた。終一は2人に、「あいつを止めるのは俺しかいないと思う。俺はそのために生まれて来た気がする」と告げた。彼は「あいつ、光に弱いんだ。あと暗闇も。とにかく視界を奪えばいい」と言い、協力を要請した。晃やジュンは戸惑いながらも、手を貸すことを承知した。しかし終一は携帯に「やっぱりお前ら足手まといだわ。一人で戦うよ」というメッセージを残し、彼らの前から姿を消した。一方、叶絵の元には男の母親が現れ、「犯人は私の息子です」と告げた…。

監督は中田秀夫、脚本は渡辺雄介、製作は城朋子&久松猛朗&堀義貴&藤門浩之&柏木登&阿佐美弘恭&下田淳行&遠藤真郷、エグゼクティブプロデューサーは奥田誠治、企画・プロデュースは佐藤貴博、プロデューサーは下田淳行、ラインプロデューサーは及川義幸、アソシエイトプロデューサーは北島直明、撮影は林淳一郎、照明は磯野雅宏、美術は原田恭明、録音は柿澤潔、VFXスーパーバイザーは立石勝、編集は青野直子、アクション監督は下村勇二、音楽は川井憲次。
出演は藤原竜也、山田孝之、石原さとみ、木村多江、松重豊、田口トモロヲ、川尻達也、三浦誠己、落合モトキ、太賀(現・仲野太賀)、藤井美菜、、森下能幸、平山祐介、松岡恵望子、金聖香、佐藤貢三、金橋良樹、林田直樹、伊藤悌智、財田ありさ、佐藤詩音、土師野隆之介、深谷風帆、武政裕也、永衣美貴、加藤さや香、加藤あゆ香、藤原希、阿部翔平、田中伸一、五十嵐麻朝、朝香賢徹、河野マサユキ、後田真欧、植木祥平、加藤貴宏、津村和幸、平野靖幸、桜井聖、中村無何有、満田伸明、岸田タツヤ、沖田裕樹、今城文恵、内田量子、岩崎優里菜、横田美紀、金沢きくこ、大久保運、太田恭輔、渋谷謙人、室積蒼樹、伊住聰志、福満景子ら。


キム・ミンソクが監督&脚本を務めた2010年の韓国映画『超能力者』をリメイクした作品。
脚本は『GANTZ』『ガッチャマン』の渡辺雄介、監督は『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』『クロユリ団地』の中田秀夫。
男を藤原竜也、終一を山田孝之、叶絵を石原さとみ、男の母を木村多江、柴本を松重豊、雲井を田口トモロヲ、格闘家の1人を川尻達也、男の父を三浦誠己、ジュンを落合モトキ、晃を太賀(現・仲野太賀)、押切を藤井美菜が演じている。

冒頭、母親は息子に『AKIRA』の1巻を渡しているんだけど、どう見ても小学生低学年なのに、それは読ませる漫画を間違えてないか。少なくとも推奨されるような漫画ではないぞ。
もちろん、少年が超能力を使う本作品の内容と『AKIRA』の内容を重ねる意味があることは分かるのよ。だけど、息子が超能力を持っていることで辛い思いをしているのに、なぜ彼が「これは自分だ」と感じるような漫画を与えているのかと。
むしろ遠ざけた方がいいような漫画じゃないのか。成長した男が自分の意思で『AKIRA』を読むなら、それは分からんでもないけどさ。
あと、大人になった男も『AKIRA』の1巻を読んでいるけど、2巻以降には興味が無いのかよ。

序盤、引っ越しの荷物を運び込むシーンで、ジュンがマッチョな男にウットリしている様子、晃がトレーディングカードのコレクションに興奮している様子が描かれる。
ここで一気に雰囲気がユルくなるので、「これってコメディーだっけ?」と思ってしまう。この映画に、コメディー・リリーフなんか要らないでしょ。
緊張に対する緩和として受け取るにしても、あまりにも余計な情報が多すぎるし。
しかもジュンはゲイ、晃はカードマニアという設定は、後の展開には全く影響を及ぼさない。
そもそも存在意義からして薄い。「男は孤独、終一には仲間がいる」という対比としても、上手く活用されていない。

男は目立たないように暮らそうとしているはずなのに、銀行から金を盗んでいるんだよね。
なぜか劇中では全く報道されている気配が無いけど、普通なら大きな事件として報じられるはずだぞ。
男は外でバッグを受け取っているけど、防犯カメラに変な行動を取る行員と客の姿が写るし、関わった面々は不可解な証言をするわけで、「謎の事件」ってことで報じられちゃうでしょうに。
そりゃあ男が犯人ってことはバレてないけど、そこから派生して「不審な出来事が色々と起きている」ってトコに繋がるリスクは考えられるでしょ。

男は普通に働いて金を稼ぐことが出来ないので、盗んで金を手に入れるってのは分からんでもない。
ただし、その金を使うには人と接触する必要があるわけで。
ホテルに宿泊する時だって、ホテルマンと会わずに済ませることは無理なわけで、そうやって何かしらの形で他人と接触するケースは色々とあったはずで、でも接触した相手を全て殺してきたわけではないでしょ。
そういう「男の日常生活」について少し考え始めると、疑問点は色々と出て来るんだよな。

男は銀行で金を盗む時に大勢の人々を操っているけど、相手が増えれば増えるほど、右脚へのダメージもデカくなるんじゃないのか。
で、それだけダメージを負うのなら、もっと効率的に大金を手に入れる方法がありそうだぞ。
銀行を狙うにしても、ATMから金を下ろさせる方法はどうなのかと。ATMだと引き落とせる限度額があるから一気に大金を手に入れることは出来ないわけで、その手口は違うだろ。
あんまり頭が良くないのよね、この男。

男は超能力を使う度に壊死が進行することを、自分でも分かっているはずだ。
だったら、ホントに必要でない限り、なるべく力を使わずに暮らそうとすべきじゃないのか。
ところが男は、まるで必要性の無い状況でもホイホイと超能力を使っている。
公園で超能力を使う時なんて、カップルのタコ焼きを食べたり、幼女たちにお面を渡したりするだけなんだぜ。そんなことで右脚の壊死を進行させるって、ただのバカじゃねえか。
これまでに力を使い過ぎて義足生活を余儀なくされているのに、学習能力が無いのか。

男は終一が車にひかれる様子を見た後、「心配ない、あいつは死んだ」と呟いている。
だが、何が心配だったのか、それが全く分からない。男の力が効かなかっただけで、それ以外は特に何も無いのだ。
終一が男の存在に気付いたわけでもないし、攻撃しようと目論んだわけでもない。
向こうは全く気付いておらず、男が今まで通りに暮らしていれば二度と会うことも無いだろう。
だから、ただ放置しておけば何の問題もないわけで。

ところが男は、何度も終一に近付き、何度も力を使って動きを止めようとする。看板を片付けに外へ出て来た終一に力を使う時なんて、なぜか道を歩いている人々の動きを止めている。
そいつらを止める必要性なんて全く無いだろうに。
で、男は雲井の部屋に上がり込んで、また終一に力を使う。
もう効かないことぐらい分からんのか。しつこいわ。
しかも、姿をさらして力を使うから「怪しい奴」として終一に知られちゃうし、何をやってんのかと。
自分から積極的に関わろうとするのは、ただのバカでしかないわ。

男は雲井を殺しているけど、何がやりたいのかと言いたくなる。
そんなことをしたら終一の怒りや怨みを買う可能性があるし、どういう形であれ警察が動き出すのは確実だし、テメエからトラブルを招いてどうすんのかと。
終一のことなんて放っておけば、何も起きなかっただろうに。
「心配の種を摘もうとしたら裏目に出た」ということじゃなくて、最初から心配の種なんか存在しなかったのに、自分から無駄に動いて心配の種を撒いているのよ、このバカは。

男は叶絵を操って終一を包丁で突き刺させ、雲井を突き落させる。
でも、「なぜ全ての犯行を叶絵に委ねるのか」という理由がサッパリ分からない。
雲井を操ったのなら、そのまま転落させることも出来たはずでしょ。
後で映像を見た終一が「このままだと叶絵が犯人として捕まる」と考え、映像を編集させているけど、そういう展開にするための段取りなんだよね、そこは。
男が叶絵に雲井を殺させる理由は、何も無いのよ。段取りからの逆算に失敗して、不格好な御都合主義になっているってことよ。

終一に驚異的な回復能力があることを、序盤でバラしている。
だけど、これって後半まで秘密にしたまま引っ張った方が使える要素なんじゃないのかねえ。
「実は男の力が効かないだけでなく、終一も別の種類の化け物だった」ってのを明かすことで、物語を盛り上げることが出来るんじゃないかと思うんだけどね。
そこを序盤で簡単に明かして、それでも他で話を盛り上げる要素があれば別にいいんだけど、特にこれといって見当たらないし。

それと、終一って戦闘能力に長けているんだよね。屈強な格闘家2人に襲われても、それなりに戦えている。刑事たちに発砲された時も全てかわしており、おまけに上手く立ち回ってKOしている。
でも、やたら戦闘能力に優れている設定だと、別の意味で半ば超人化してないかと。
こいつは「戦闘能力の高いヒーロー」じゃマズいでしょ。
男の能力が効かないこと、超回復力を持つことの2点以外は普通の人間にしておかないと、話がブレちゃうでしょ。

男は見た相手を操れるようだが、一度に大勢を操る時はどうなっているのか。
狭い箇所で密集していれば一度に全員を見ることも出来るだろうけど、例えば公園のシーンにしても、警察署から逃げ出したシーンにしても、かなり広範囲にいる人々を一気に止めているのよね。
それは視野が広すぎねえか。ホテルのシーンなんて、自分の背後にいる刑事まで操っているけど、どうなっているのか。
そのくせ、なぜか柴本には気付かす立ち去っているけど、都合が良すぎるだろ。

終一がプランターの下敷きになった後、正気に戻った母親が赤ん坊を見つけて駆け寄る。ところが、すぐ近くで終一が血を流して下敷きになっているのに、彼女は無視して走り去るのだ。
いやいや、幾ら赤ん坊のことで慌てているとは言え、それは無理があるわ。
しかも彼女だけでなく、他の誰も終一に気付かないって、んなアホな。
そんで男は終一に近付いて話し掛けているけど、「プランターの下敷きで出血している奴に話し掛ける」って、周囲から見たら怪しい奴でしかないぞ。
そんな目立つ行動を取っておいて、「ずっと誰にも気付かれずに生きて来た。死ぬまで生きる。それが俺の人生だ」って、どの口が言うのかと。

男や終一もバカだけど、警察も負けず劣らずのバカだ。まず雲井が死んだことで現場検証を行ったはずなのに、なぜか映像の記録されているI-Padを見落としている。
せっかく男が袋を被せられて警察署へ連行されたのに、あっさりと袋を外すのもバカ。
ホテルを捜索する時も、そこへ男が戻って来た時の対応策なんて全く考えていない。拳銃を向けて検挙しようとするから、当然の如く男に操られる。母親のアパートへ乗り込んだ時も、せっかく背後から迫ったのに、「警察だ」と言って知らせるから操られる。
学習能力が無いのか。
ホテルで都合良く男に気付かれなかった芝本が、撃たずに見逃すのも不可解。撃つチャンスはあったはずだろ。

警察署で事件が起きた後、警察が終一と男を2人組の犯人として指名手配するのはメチャクチャだ。
映像を見たんだから、終一が犯人じゃないことぐらい分かったはずでしょうに。
もしも保護する目的があるのなら、公開指名手配する必要は全く無いんだし。そんな風に犯人としてテレビでも報道されちゃったら、終一の名誉回復なんて無理なわけで、人権問題だろ。
何か裏があるのかと思ったけど最後まで全く言及が無いし、ホントに警察が終一を指名手配した意味がサッパリ分からないんだよな。

警察は男のホテルや母親のアパートへ乗り込んでいるぐらいだから、途中で名前は分かったはずだ。
それなのに、最後まで男の名前を一度も呼ばないのは不自然極まりない。
包囲したSWATの隊長が「化け物は近くにいる」と言ってるけど、それは不自然だわ。
一方の男も、動きを止めた刑事たちに向かって「俺の名前を知ってるか。俺はちゃんと名前だってある人間だ。化け物じゃない」と訴えているけど、だったら名乗ればいいだろ。

終一はプランターの下敷きから回復した後、ジュンたちと約束したスパヘ遊びに出掛けているが、「何をやってんのか」と言いたくなる。
そんなトコに緩和なんか要らんよ。
ジュンたちと喋って協力を求めるシーンが欲しいのなら、遊びの場じゃなくてもいいし。
それと、彼は「あいつを止めるのは俺しかいない」と使命感を抱き、「あいつ、光に弱いんだ。あと暗闇も。とにかく視界を奪えばいい」と弱点も突き止めているのに、対策を何も用意せずにノコノコと出掛けているんだけど、やっぱりバカだわ。

終一は雲井家へ戻り、映像の記録されたI-Padを抱えたまま眠り込む。で、帰宅した叶絵がI-Padの映像を見て、自分のやったことを知る。
そういう事態を避けるために映像の編集を頼んだはずなのに、テメエのミスで見られるんだから、やっぱり終一はバカだ。
っていうか、そこで終一が眠り込むという不自然な展開を用意するのは、すんげえ下手な御都合主義だ。
とにかく、出て来る奴らが不用意な行動ばかり取っている。
頭の悪い奴らによる戦いを描かれても、そこに緊迫感なんて出ないのよ。

終盤、終一は男に決着を要求し、大勢の人々がいることが分かり切っている劇場へノコノコと出掛ける。当然の如く、男は大勢の人々を操る。
まずは大勢を身投げさせるのだが、そこで終一が「やめろ」と叫ぶのがバカでしかない。どういう形であれ、男が劇場に来た人々を操るのは分かっていたはずだろ。
で、そこに芝本が現れて背後から男に拳銃を突き付けるが、ベラベラと無駄なお喋りをした上、わざと狙いを外して発砲する。で、またベラベラと喋っているもんだから、男に操られて死亡する。
こいつもバカだ。

男は劇場にいる大勢の人々を一度に操っているが、すんげえ視野が広いのね。
ただ、そのくせ、なぜか叶絵だけはコントロールされない。
すぐ目の前にいたんだから、視野には入っているはずでしょ。実際、彼女のすぐ近くにいた面々は動きが止まっているんだから。
で、妙なタイミングで発動した御都合主義によって動きの止まらなかった叶絵は拳銃を構えるが、こいつも男の正面に立ってベラベラと喋るもんだから、すぐに操られてしまう。

そんで男は他の観客に終一を襲わせ、叶絵を連れて劇場を出るんだけど、「なぜ?」と言いたくなる。そこで急に男が叶絵だけ特別扱いし、連れて逃げる意味がサッパリ分からん。
しかも、そのまま連れて逃げるわけじゃなくて、劇場の外で待機していた警官隊には叶絵と自分の影武者を見せるんだよな。つまり劇場を出た途端、男は叶絵と離れているのよ。
だったら最初から叶絵を連れて逃げた意味も無いだろ。支離滅裂じゃねえか。まあ、それは最初からそうなんだけどさ。
そんで警察も遠方からの狙撃という方法を取らないから、また男に動きを止められちゃうし。
叶絵の本がフリマで売れまくっているラストシーンも含めて、全編に渡ってバカ満開な映画だったわ。

(観賞日:2015年10月19日)

 

*ポンコツ映画愛護協会