『土竜(モグラ)の唄 香港狂騒曲』:2016、日本

菊川玲二は日浦匡也や黒河剣太と共に大阪へ乗り込み、蜂乃巣会の若頭である鰐淵拓馬を追い詰める。日浦は鰐淵と交渉し、五分の盃を交わした。玲二がサウナに入っていると、猫沢一家の連中が乗り込んで来た。それは日浦の仕掛けた罠であり、サウナは檻になっていた。日浦はヘリコプターで檻を吊り上げ、河原のキャンプファイヤーに下ろした。日浦が去った後、轟周宝と数寄矢会の組員たちは檻の前でフォークダンスを始めた。玲二が叫んでも、彼らは全く気にしなかった。
警視庁組織犯罪対策部では、兜真矢が30代の若さで新任課長に赴任した。警視庁内の浄化作戦を宣言した兜は谷袋警察署署長の酒見路夫を呼び出し、玲二のことを尋ねた。酒見は全く覚えていないとシラを切り、婦人警官の若木純奈は玲二の指名手配ポスターを慌てて剥がした。日浦は玲二を伴って轟の元へ行き、直参の盃を求めた。幹部たちは日浦が鰐淵を殺さず五分の盃を交わしたことを批判し、彼が轟の座を狙っていると指摘して破門するよう進言する。しかし轟は日浦が自分の座を狙っていると知りつつ、日浦組の看板を与えた。
純奈は兜に、玲二が誰よりも正義感のある警察官だったと告げる。兜は玲二がヤクザに取り込まれたと断言し、接触して来たら報告するよう指示した。轟は日浦に、縄張りの裏カジノを立て続けに襲っているチャイニーズ・マフィアの仙骨竜を駆除するよう命じた。玲二は轟から、自分のボディーガードとして屋敷に住み込むよう指示した。日浦は玲二に、轟が自分に大仕事を押し付けて身動きが取れないようにしたこと、ボディーガードの仕事は人質代わりであることを語った。
玲二はメイドに化けた厚労省麻薬取締官の福澄独歩に拉致され、留置所へ連行される。酒見、潜入捜査官養成係の赤桐一美、福澄は玲二から仙骨竜について質問され、蜂乃巣会を破門された「はぐれヤクザ」の連中が手を組んでいることを教える。さらに彼らは、兜が玲二を追っていることも伝えた。兜が小学2年生の時、警察官の父がヤクザに殺されて殉職していた。それが原因でヤクザを憎むようになったのだと、酒見たちは玲二に告げた。
酒見たちは自分で脱出するよう玲二に告げ、ヤスリを渡して立ち去った。玲二は留置所から脱走し、轟の屋敷へ赴いた。すると轟は留守で、2階のベッドには妻の毬子がいた。彼女は出張エステの男を呼んでおり、玲二にも手伝うよう指示した。全裸に近い毬子の姿を見て、玲二は勃起した。日浦は黒河から、破門された組長クラスの5名に関する情報を受け取った。その中で日浦は、厄介な先輩である桜罵百治が怪しいと睨んだ。日浦が組事務所へ乗り込むと、桜罵は仙骨竜との関係を否定した。しかし日浦はクロだと確信して轟に報告し、桜罵のケツ持ちがいると見抜いて調査を続行することにした。
轟が娘の迦蓮と共に帰宅すると、毬子が勃起した玲二への制裁として陰毛の剃髪を始めていた。迦蓮を見た玲二が再び勃起すると、轟は娘に出を出さないよう脅した。迦蓮は高飛車な態度で玲二を呼び出し、車を運転させる。彼女は男を知らないから教えてくれと要求し、「なんで俺なんだ?」という玲二の質問に「私が出会った人の中で、アンタが一番怖いもの知らずでドスケベだから」と答えた。迦蓮は過去の恋人が父に怯えて去ったり、父に襲われたりしたことを語った。
迦蓮が上に乗って腰を動かしたため、玲二は性欲が爆発しそうになる。しかし妄想の中に純奈が現れたため、何とか我慢して「好きでもねえ男に捧げるのは良くねえ。お前が俺に本気で惚れたら、喜んで抱いてやる」と告げた。迦蓮は玲二を蹴り落とし、車を運転して去った。純奈は兜に誘われてディナーに出掛け、玲二はバカなので癒着や情報提供など無理だと告げる。彼女が「ヤクザにカブれているだけで、捕まって罪を償えば」と言うと、兜は「無理だね」と言葉を遮った。彼は父がヤクザを更生させようとして逆恨みで殺されたことを話し、「悪に手を染めた者に挽回のチャンスは無い」と断言した。
迦蓮が男たちに拉致され、責任を問われた玲二は轟に「俺が便所から戻るまでに、どうするか考えろ」と告げた。轟はトイレへ行き、同行していた胡蜂に外で待つよう指示した。黒河は玲二や数寄矢会の幹部たちに、仙骨竜の総本山は香港であること、そこに世界中の富豪を集めて人身売買を仕切っていることを教える。轟は仙骨竜の殺し屋だった胡蜂に襲われ、ワイヤーで首を絞められて宙吊りにされる。玲二は「落とし前の付け方は1つしかありません。迦蓮お嬢様を救って、仙骨竜を全員退治します」と宣言し、トイレへ向かった。
轟の置いていった携帯が鳴り、幹部が取ると掛けて来たのは桜罵だった。彼は「あれ?まだ生きてんの?まあいいや」と軽く言い、迦蓮を拉致したことを明かす。彼は周宝の引退と数寄矢会の解散を要求し、拒否すれば迦蓮のレイプ地獄を生配信すると脅した。玲二はトイレへ駆け込んで轟を救うが、胡蜂には逃げられた。轟は部屋へ戻って携帯を取り、桜罵は改めて要求を告げる。彼が手下たちに迦蓮を囲ませている倉庫へ日浦が現れ、玲二たちに場所を教えた。玲二は黒河のバイクに乗せてもらい、倉庫へ向かった。
桜罵は日浦に、轟から武器の密輸を指示されたこと、兜のガサ入れで逮捕されたことを話す。轟が釈放してくれると信じていた桜罵だが、クーデターの罪を着せられて破門にされてしまったのだ。桜罵は日浦に手を組もうと持ち掛け、仲間になれば自分のバックにいる大物の名を教えると告げる。しかし日浦は拒否し、「真実は1つじゃない。結果が全てだ。武器を押収される下手を打ったお前がマヌケなだけだ」と言い放った。そこへ玲二と黒河が到着し、桜罵組との戦いが勃発した。
兜が警官隊を引き連れて倉庫へ駆け付けたため、日浦は玲二に迦蓮を連れ出すよう命じた。桜罵との戦いで義足を失った日浦は、黒河の肩を借りて逃亡した。倉庫から脱出した玲二は、迦蓮に礼を言われてキスされる。その様子を純奈に目撃されたため玲二は狼狽するが、事情を説明することは出来ない。彼の様子を見た迦蓮は呆れ果て、近くにパトカーを止めた婦警を見つけて保護を求めた。玲二は婦警が胡蜂だと気付くが、迦蓮はパトカーで連れ去られてしまった。
玲二は純奈に「正義のためだ」と告げ、パトカーを追い掛けようとする。そこへ兜が警官隊を引き連れて現れたため、純奈は人質になっている芝居をする。しかし兜は全く気にせず、不敵な笑みを浮かべて玲二に発砲した。玲二は左肩を打たれて海に転落し、意識を失った。彼が目を覚ますと、日浦の操縦するセスナ機に乗せられていた。日浦は桜罵たちが香港へ渡ったこと、迦蓮を高級美女オークションに出品することを玲二に教えた。
黒河は先に香港へ入り、情報を集めていた。セスナ機はガス欠で香港の町に墜落し、玲二と日浦は脱出した。玲二は闇医者の茂呂里寛に麻酔無しで銃弾を摘出してもらい、日浦は新しい義足を入手した。2人は黒河と合流し、高級美女オークションに関する情報を聞かされる。3人は変装し、オークション会場である高級ホテルへ潜入することにした。玲二は女装する羽目になり、出品される人間としてステージに上がる。彼は迦蓮に近付き、周囲に気付かれないよう自分の存在を知らせた…。

監督は三池崇史、原作は高橋のぼる『土竜の唄』(小学館刊『週刊ビッグコミックスピリッツ』連載中)、脚本は宮藤官九郎、製作は小川晋一&久保雅一&藤島ジュリーK.&市川南&奥野敏聡、プロデューサーは上原寿一&坂美佐子&前田茂司、撮影は北信康、照明は渡部嘉、美術は林田裕至、整音は中村淳、録音は小林圭一、編集は山下健治、セットデザイナーは郡司英雄、特殊美術デザイナーは佐久嶋依里、スーパーバイジングサウンドエディターは勝俣まさとし、スタントコーディネーターは辻井啓伺&出口正義&高槻祐士、アソシエイトプロデューサーは小川英洋、ラインプロデューサーは今井朝幸&善田真也、企画協力は柳沢智夫、音楽は遠藤浩二。
主題歌は関ジャニ∞『NOROSHI』作詞:高木誠司、作曲・編曲:Peach。
出演は生田斗真、堤真一、上地雄輔、仲里依紗、岩城滉一、鈴木砂羽、瑛太(現・永山瑛太)、本田翼、古田新太、菜々緒、吹越満、遠藤憲一、皆川猿時、渡辺哲、高杉亘、國本鍾建、菅田俊、坂東工、有薗芳記、久松郁実、吉田侑生、遊屋慎太郎、福山翔大、小林凌磨、田井中将希、仁科貴、富永竜、松田沙紀、土井志央梨、田邊和也、小林潔、Gil、Anatoli、Chris、BradleeGray、Rafi、GREGORY、孫士武、SYDNEY、Johan K、Sheryl I、Mbiru Peter Kimani、山崎夕貴(フジテレビアナウンサー)ら。


高橋のぼるの漫画を基にした2014年の映画『土竜(モグラ)の唄 潜入捜査官 REIJI』の続編。
今回は原作の「チャイニーズマフィア編」を基にしている。
監督の三池崇史も脚本の宮藤官九郎も、前作から引き続いて参加している。
玲二役の生田斗真、日浦役の堤真一、黒河役の上地雄輔、純奈役の仲里依紗、轟役の岩城滉一、酒見役の吹越満、赤桐役の遠藤憲一、福澄役の皆川猿時、備禅役の渡辺哲、鰐淵役の菅田俊、茂呂里役の有薗芳記は、前作からの続投。
他に、毬子を鈴木砂羽、兜を瑛太(現・永山瑛太)、迦蓮を本田翼、桜罵を古田新太、胡蜂を菜々緒が演じている。

映画の冒頭、玲二が股間に新聞紙を貼り付けただけという「ほぼ全裸」の姿で檻の上に乗り、それを吊り下げた日浦のヘリが飛んでいる様子が描かれる。
前作も「フルチンの玲二が暴走する車のボンネットに縛られている」というシーンからスタートしていたので、続編として同じパターンを使っているわけだ。
で、そこから始めて「そういう状況に至るまでの経緯」を回想として描くのかと思いきや、前作の粗筋を玲二のナレーションと補足映像で説明する手順に入る。
しかし、かなり慌ただしいダイジェストなので、前作を見ていない人にとっては何の意味も無い不親切なおさらいに過ぎない。

そんな一見さんには無意味な「前作の粗筋」を入れているのは何なのかと思ったが、そこには驚くべき理由があった。その流れのままで、今回の物語に突入してしまうのだ。
「玲二たちが大阪へ乗り込み、日浦が鰐淵と五分の盃を交わした」ってことが語られた時に「そんなこと、前作であったかな?」と困惑してしまった。
それが初めて語られる出来事だと気付いた時、さらに困惑させられた。
つまり前作の粗筋を慌ただしく説明するのは、同じペースで序盤を処理するための仕掛けだったのだ。

そのままバタバタとオープニングシーンに入って行くのは、観客を舐めているとしか思えない。
でも考えてみれば、三池崇史と宮藤官九郎のコンビなので、そういうことも想定しておく必要があったのだ。
そんな2人は、初めて描く出来事を「前作のおさらい」の如く雑なダイジェスト方式で片付けただけでなく、同じペースで兜の紹介まで済ませてしまう。こいつは今回の新キャラの中で最も重要な奴のはずなのに、その紹介を雑に片付けてしまうんだから、恐るべきセンスだ。
で、そんなにバタバタと序盤を処理しておきながらもトータルの上映時間は132分もあるんだから、どんだけ無理に詰め込んでいるのかと。もしくは、どんだけ計算能力が無いのかと。

っていうか、実は「玲二たちが大阪へ乗り込み、日浦が鰐淵と五分の盃を交わした」という出来事って、無理に触れなくても大して支障は無いんだよね。
今回の話には、まるで関係の無い出来事なんだし。
そこを除外しても、「日浦が轟に直参の盃を要求し、組の看板を貰う」という手順を消化することは可能だ。
また、日浦は轟から仙骨竜の駆除を命じられたことについて「鰐淵と組んで自分を狙わないように大仕事を押し付けた」と説明しているが、そこも「鰐淵と組んで」という部分を外せば問題なく成立する。

轟は日浦に組の看板を渡した後、玲二には日浦組の頭として支えるよう指示する。しかし日浦に仙骨竜の駆除を命じた後、玲二には自分のボディーガードとして屋敷に住み込むよう告げる。
日浦組の頭として支えるよう指示したんだから、一緒に仙骨竜の駆除をさせるのかと思ったら、まるで別の仕事を任せるのだ。
だったら、日浦組の頭になるよう命じた手順の意味が無くなってないか。
日浦がボディーガードの仕事は人質代わりだと言っているけど、それは頭に任命しなくても同じことでしょ。

前作では、ヤクザの事務所で酒見、赤桐、福澄が集まり、組員役の刑事たちをバックに従えて「土竜の掟を今から言うよ」などと振り付けもありつつ熱唱するシーンが、ナンセンスな面白さを感じさせた。
「そこだけを抜き取っても面白い」というシーンではあったが、唯一と言ってもいいぐらいの笑い所だった。
今回も「2番が出来た」ってことで、同じ歌を披露するシーンがある。ただし、今回は3人だけだし、しかも小声で囁くように歌いながら静かに去っていくという形なので、これっぽっちも面白くない。
そんな形でしか使わないのなら、歌わない方がマシだわ。

酒見たちは留置所に玲二を拉致し、「全国指名手配のお前と人目を気にせず会おうと思ったら、こんな所しかねえだろ」と言う。
だけど、留置所に入れる必要性は無いでしょ。
「兜に追われているから手を貸すわけにはいかない」という理由で、自力で抜け出すよう告げて立ち去るのも意味不明。喜劇としてやっているのは分かるが、笑いは生み出せていない。
その後で玲二が脱出する手口に笑いがあるわけでもないし、彼の脱走が後の展開に影響を与えるわけでもないので、留置所に入れている意味が全く見えない。普通に密会すればいいだけだと思うぞ。それで事足りるでしょ。

存在意義が乏しかった純奈だが、今回も相変わらずだ。しかも今回は新たに迦蓮というヒロインが登場するため、ますます「要らない子」と化している。
一応は作品のヒロインなので、それじゃあマズいと思ったのか、玲二の妄想に登場させたり、兜とレストランで食事を取るシーンを用意したりと、様々な形で出番を与えている。でも、それも「無理に出番を設けている」と感じるだけで、余計に「要らない」と思わせる逆効果になっている。
厄介なことに、迦蓮を演じる本田翼がエロ可愛くて魅力的なのよね。
仲里依紗には申し訳ないんだけど、「本田翼がいれば、それで良くねえか?」と思っちゃうんだよね。

迦蓮が拉致されるシーンを、そこだけ独立させて10秒にも満たない尺で見せるのは構成として不細工だ。迦蓮が玲二を蹴り飛ばして車で去った後、その流れで拉致される手順まで進めば良かったんじゃないかと。
で、そんな拉致事件があった直後、轟が玲二に「どうするか考えろ」と告げてトイレへ行くのだが、その時に初登場の胡蜂が当たり前のように同行しているので「お前は誰だよ」と言いたくなる。
胡蜂が「轟の秘書」みたいなポジションに潜入している設定なんだろうとは思うけど、だったら襲撃するシーンで初登場させるんじゃなく、その前に紹介しておくべきでしょ。
そんな不細工な形で登場させるぐらいなら、潜入して近付いているんじゃなくて、「その時に屋敷へ忍び込んで轟を襲う」という形にでもした方がマシだ。

玲二は轟から「どうするか考えろ」と命じられるが、それを彼が考える様子に移るのではなく、黒河が仙骨竜について説明する様子が描写される。
一応、その話を聞いた玲二が「迦蓮を助けて仙骨竜を倒す」と宣言する流れに繋げているけど、ここも不細工な構成という印象が強い。
そこは順番を並べ替えるなりして、別々に処理した方がいい。
その後、桜罵が轟に電話を掛けて「あれ?まだ生きてんの?」と言うけど、胡蜂によって既に殺されている予定なんだから、その行動は変だろ。

っていうかさ、桜罵は胡蜂を送り込んで轟を始末しようとしたんだから、「お嬢さん、ウチが預かってっから」と言って脅しを掛けるのも変だろ。行動が支離滅裂だわ。刺客を送って殺そうとするなら、娘を拉致して脅す必要性が全く無い。
その2つをカットバックで描いているけど、デタラメっぷりを感じさせるだけ。桜罵の目的は轟への報復だが、殺したいのか、引退と組の解散を実行させたいのかボンヤリしている。
しかも日本での作戦が失敗すると迦蓮を香港のオークションに出品しちゃうので、ますますデタラメになる。
一応は香港から改めて轟に要求を出しているけど、もう迦蓮をオークションに出した時点で彼女の持つ意味合いが変わってきてるわけでね。

玲二が迦蓮を倉庫から連れ出した後、そこへ純奈が現れる。「ここに来たら会えると思ったけど」と彼女は言うけど、何故そう思ったのかサッパリ分からない。
婦警に化けた胡蜂がパトカーを近くに停めるのも、どうやって迦蓮の居場所が分かったのか良く分からない。
また、婦警に化けてパトカーを停めるってのは、「迦蓮が保護を求める」ってことが事前に分かっていなきゃ成立しないような罠だ。
そのシーンは、下手な御都合主義が連続する形となっている。

タイトルに「香港狂騒曲」とあるぐらいだから、後半の舞台が香港になるのは当然の流れだろう。だが、わざわざ香港を舞台にしている意味を全く感じない。
香港と言いつつ国内ロケで済ませているが、それがダメってことではない。「香港を総本山とする中国マフィア」を敵として設定しているのに、そいつらが全く存在感を示さないのが問題なのだ。
敵として対峙するのは桜罵であり、仙骨竜は「名も無き奴ら」が出て来るばかり。ボスどころか幹部さえ登場せず、殺し屋の胡蜂がようやく名前と顔の見えるキャラとして出て来るだけ。
つまり中国マフィアが敵なのに、キャラとして姿が見えるのは偽物の中国人が1人だけってことだ。

中国マフィアが登場しないので、香港を舞台にしたところでスケール感など出ない。では黒幕を兜にしたことで代わりのスケール感が出ているかというと、これもゼロ(兜が黒幕ってのは完全ネタバレだけど、どうせ誰でも簡単に分かるよね)。
警視庁の組織犯罪対策部課長なんだから、ホントは大物っぽさが出なきゃいけないはずだけど、全く無い。
それは演じているのが瑛太だからってのが、まず1つの要因。その他にも、こいつの側近として動いてくれる奴が皆無ってのが影響している。
わざわざオークション会場まで出張し、自ら姿を見せて玲二を始末しようとする辺りは、小物感がハンパない。

あと、兜の行動理由がデタラメ。
「父親を殺したのが悪に染まった潜入捜査官で、だから土竜を憎んでおり、玲二を目の敵にした」というトコまでは分かる。「みんな正体を隠して生きてる。それをパパが命を懸けて教えてくれた。だから私は警察やヤクザを使って、その正体を暴いている」という主張は無理を感じるが、何とか受け入れよう。
だが、「そして教えてやるんだ。この世はシミだらけ。正義なんて存在しないとな。あるのは血と肉と金だ。その究極の形が人身売買だ」ってことで人身売買を仕切っているのは、ワケが分からん。
論理が飛躍しまくっていて、っていうか破綻していて、まるで付いていけないわ。

(観賞日:2018年2月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会