『南の島のフリムン』:2009、日本

沖縄のコザ。30歳になる栄昇は、向かいの家の父親であるマサルや弟分のヒトシたちと共に、自由気ままな生活を送っている。栄昇は養豚場で働き、ヒトシは母が営むタコス店「クィーンタコス」を手伝っている。マサルの娘・りみは栄昇の幼馴染で、翔南病院の看護師をしている。栄昇は両親を亡くしており、夕食はマサルの家で食べさせてもらうのが日課になっている。マサルの妻は栄昇に、早く結婚するよう持ち掛ける。彼女が栄昇とりみを結婚させようとするので、2人とも即座に拒絶した。
栄昇はヒトシが男になったお祝いとして、マサルと3人でポールバーへ出掛ける。栄昇の友人である店の受付係は事情を知ると、料金をタダにしてくれた。ポールバーに入った栄昇は、これまた友人である従業員からオレンジという新人ダンサーが入ったことを聞かされる。栄昇たちが最前列でステージのショーを見ていると、アメリカ人ダンサーのオレンジが登場した。栄昇はオレンジに一目惚れしてしまい、じっとダンスを見つめる。そこへオレンジに好意を寄せる米兵のマックスが現れ、栄昇を荒っぽく追い払った。
翌日、栄昇はマサルのアドバイスを受け、街を歩くオレンジに声を掛けた。彼は花束を抱え、マサルが用意したラジカセの歌に合わせて口を動かした。するとオレンジは感激した様子を見せ、「今夜のステージにも来て」と誘った。そこへマックスが現れて、オレンジを強引な態度で口説いた。オレンジが嫌がっても、マックスはお構い無しだった。マックスは栄昇を威嚇し、オレンジに近付くなと警告した。彼の屈強な肉体を見た栄昇は、すっかり萎縮してしまった。
ヒトシは栄昇のために1人でポールバーへ出向き、オレンジと会って電話番号をゲットした。マックスの車を見つけたヒトシは、照明を破壊する。そこへマックスが戻り、ヒトシは暴行を受けた。ヒトシは栄昇の家へ辿り着いてオレンジの電話番号が書かれたメモを渡した後、入院する羽目になった。栄昇とマサルはポールバーへ乗り込み、マックスと仲間を発見した。マサルはマックスに、オレンジを賭けて栄昇と勝負するよう持ち掛けた。
余裕のマックスは対決を快諾するが、オレンジは困惑した。しかしポールバーのママが現れ、勝手に承諾した。マサルはヒトシが退院する1ヶ月後に、安慶名の闘牛場で勝負することを決定した。マサルの家へ戻った栄昇は「殺されるよ」と嘆き、りみは呆れて対決を中止してもらうよう頼みに行くべきだと忠告する。するとマサルは「何の作戦も無く言ったわけではない」と告げ、40年前は空手をやっていたことを明かした。疑いを抱く栄昇、りみ、妻の攻撃を受けたマサルは、全て防御してみせた。
マサルは対決までの1ヶ月で栄昇を鍛えてもらうため、師匠である金城先生の元へ赴いた。金城は全く強そうに見えない老女だが、その実力は確かだった。金城は一番弟子からの要請を快諾し、栄昇の特訓を開始する。金城は栄昇をボートで海へ連れ出し、潜って大きな石を引き上げるよう命じた。さらに彼女は、1日でサトウキビ500本を刈る作業もノルマとして課した。クタクタになって家へ戻った栄昇は、りみのマッサージを受けた。
栄昇の特訓が始まってから2週間ほど経過すると、ヒトシが退院した。彼が「マックスに仕返しとか、しなくていいよ」と言うと、栄昇は「何言ってんだよ。あいつにも、痛い思いさせないと」と告げる。りみは栄昇がベタ惚れしているオレンジのことが気になり、変装してポールバーへ出掛けた。栄昇は金城から、視線を逸らして注意を引き付けた隙にパンチを入れるテクニックを教わった。りみはオレンジへの対抗心で派手な格好をしてみるが、栄昇と家族から「キジムナーみたい」と笑われた。マサルとヒトシはマックスの様子を観察するため、米軍基地へ潜入した。マックスがボクシングのチャンピオンだと判明し、それを知らされた栄昇は頭を抱える…。

監督はゴリ、脚本はゴリ&杉本嘉一、企画はゴリ、プロデューサーは片平秀介&仲良平&内田弦&菊井徳明&小西啓介&代情明彦、チーフプロデューサーは水谷暢宏&岡本昭彦、エグゼクティブプロデューサーは橋爪健康&水上晴司、制作統括は白岩久弥、製作代表は吉野伊佐男&大崎洋&井上泰一、監督補は杉本嘉一、撮影は今井孝博、照明は上原進、録音は深田晃、美術は濱田智有希、編集は大重裕二、VFXスーパーバイザーは小田一生、音楽は矢野憲治。
エンディング曲『ウンジュの原点(ふるさと)』作詞:ゴリ、作曲:玉城千春、編曲:石塚知生、唄:夏川りみ。
出演はゴリ(ガレッジセール)、平良とみ、照屋政雄、諸見里大介(ハム)、ボビー・オロゴン、AKINA、レイラ、吉田妙子、福田加奈子、田仲洋子、松本参士郎、川田広樹(ガレッジセール)、夏川りみ、ISSA(DA PUMP)、KEN、エリオ・モラノ、ボー・ジェファー、ラシー、ナタリー・アレン、真栄田賢&内間政成(スリムクラブ)、玉城泰拙&宮平亨奈緒(セブンbyセブン)、じゅんぼ&ともや&モーリ&マコト&704(ZUKAN)、島袋あやか、村山靖、玉城満、山城ルミ、ソーニャ、マーク・スティーブンス他。


お笑いコンビ「ガレッジセール」のゴリが監督&脚本&企画&主演を務めた作品。
共同で脚本を担当したのは、『Go Ape』で第1回WOWOWシナリオ大賞を受賞している杉山嘉一。
栄昇をゴリ、金城を平良とみ、マサルを照屋政雄、ヒトシを諸見里大介、マックスをボビー・オロゴン、りみをAKINA、オレンジをレイラ、ポールバーのママを吉田妙子、マサルの妻を福田加奈子、ヒトシの母を田仲洋子、ツヨシを松本参士郎が演じている。
占い師役で夏川りみ、試合のレフェリーを務める東風平役で川田広樹(ガレッジセール)、ママの息子役でISSA、ポールバーの受付役でKENが出演している。

よしもとクリエイティブ・エージェンシーは2007年から2008年に掛けて、所属する100人のタレントが100本の短編映画を撮る「YOSHIMOTO DIRECTOR'S 100」という企画を立ち上げた。
その後、2009年には沖縄国際映画祭に協賛の形で参加するなど(実質的には主催と言ってもいい)、映画産業への進出に積極的な姿勢を見せて来た。そして、沖縄国際映画祭に合わせて、吉本の芸人が監督や主演を務める数多くの映画を製作するようになった。
よしもとクリエイティブ・エージェンシーの製作した長編映画では、これまでに松本人志、品川ヒロシ、板尾創治という芸人たちが監督を務めて来た。そして、それに続いたのがゴリである。
ゴリは前述した「YOSHIMOTO DIRECTOR'S 100」の企画で、『ボギー☆ザ・ヒーロー』という短編を撮っている。たぶん吉本興業としては、それが面白いと思ったから彼の長編映画にゴーサインを出したんだろう。
だけど『ボギー☆ザ・ヒーロー』って、そんなに面白くなかったけどね。

冒頭、ベンチで座る栄昇とマサルは、豚小屋を覗き込んで不安そうにしているヒトシに目を向ける。ヒトシが豚小屋に入り、豚の鳴き声が聞こえて来ると、栄昇とマサルは満足そうにハイタッチする。カットが切り替わると3人は車に乗っており、ヒトシは「これで初体験って言えるのかな」などと口にする。
つまり冒頭のシーンは、「ヒトシが豚を相手に初体験を済ませました」ってことを描いているわけだ。直接的な描写は無いが、かなりの下ネタだ。
で、そういうシーンから始めるんだから、その後も下ネタを連発するのかと思ったら、それほどでもない。
だったら、オープニングに観客を引かせるリスクがあるようなネタを配置するのはどうなのかと。

りみが病院から出て来ると、マサルが栄昇を助手席に乗せた車で迎えに来る。しかしブレーキが壊れているので、りみに軽くぶつかってしまう。
このシーン、かなりのロングショットで、りみが車にぶつかって倒れる様子を描いている。そしてカットが切り替わると、りみが車内でマサルと栄昇にキレる様子が写し出される。
自宅に戻ったマサルは、今度は妻に車をぶつけてしまう。
いわゆる「天丼」のネタをやっているのだが、2度目は「車がぶつかったので慌てるマサルと栄昇」を捉える映像を使っている。
天丼としてやるのなら、そこは同じようなアングルやカットで見せた方が効果的なんじゃないの。

ヒトシがマックスたちの暴行を受けて入院したことで、怒りを覚えた栄昇とマサルはポールバーへ乗り込む。
だけど、そもそもヒトシが車の照明を壊したのが悪いわけで。だから殴られたのは自業自得であって、それで腹を立てられてもなあ。
そこまでにマックスは荒っぽい態度を取ったり脅したりしていたけど、実際に殴ったり蹴ったりという暴力を振るったことは無かった。だから、先に手を出したのはヒトシという形なのよ。
それはダメでしょ。

りみは入院したヒトシの病室を訪れ、「なんでこんなことしたの?」と問い掛ける。するとヒトシは「栄昇の役に立ちたかった」と言い、中学時代に野球部の連中からイジメを受けていたことを話し始める。
だけど、そんな過去の説明なんて要らんよ。「友達だから協力した」というだけで事足りる。
そこは単純に「栄昇にイジメから助けてもらった」ってことを語るだけじゃなくて、「ゴルフボールを尻に入れろと脅されていたら、栄昇は自分が入れると言い出し、ゴルフボールじゃなくて野球のボールを尻に入れ、しかも部室のボールを全て挿入したので、野球が出来なくなった野球部は廃部になった」というネタにしてあるけど、それも含めてモタついている。
途中で栄昇とマサルがポールバーへ乗り込むカットを挟んで、さらにヒトシの話が続くんだけど、すんげえテンポが悪くなってるわ。

「栄昇が野球のボールを尻に挿入して云々」ってのは、下ネタの部類に入る。冒頭の「ヒトシが豚小屋で豚を相手に初体験する」という描写や、「帰宅したヒトシが豚小屋の体験を思い出してパンツを脱ぐが、母親が部屋に来たので何も無かったように振る舞う」という描写など、幾つかの下ネタはあるが、「忘れた頃にやって来る」という感じだ。
つまり、他のネタと同列で下ネタを扱っているわけだ。
だけど下ネタって、もうちょっとデリケートに扱った方がいい。
下ネタを持ち込むなら、もっと「下ネタだらけ」にした方がいい。

マサルはポールバーへ乗り込んだ時、ビール瓶を手刀で真っ二つにしようとして骨折している。ところが家に戻ると、かつて空手で米兵をビビらせていたことを告白する。口から出まかせなのかと思いきや、ホントに強いトコを見せる。
だったら、ポールバーでカッコ悪く骨折しちゃう描写を入れたら整合性が取れないでしょ。
そういうキャラ設定を用意するなら、ポールバーに乗り込んだ時点で「ヘタレのように見えていたけど、実は手刀でビール瓶を真っ二つに出来る男」という見せ方にしておいた方がいい。
目先の笑いを1つ欲しがったせいで、キャラがブレちゃうのは上手くないよ。

っていうか、「かつて空手を学んでいたマサルが、師匠である金城に栄昇を預ける」という展開そのものに、あまり賛同できないのよね。
そこに来て、急に『ベスト・キッド』的なスポ根物のノリを持ち込まれても、今一つ乗り切れない。
そこまでのグダグタっぷりが好ましいとは決して思わないけど、「いい歳こいてバカばっかりやっている男ども」という設定に関しては、そんなに悪くないと思うのだ。
だから、そこを使った話を続けた方がいいんじゃないかと。

特訓がスタートしても、栄昇と金城の絆が深まっていくドラマが描かれるわけではない。それどころか、すぐにダイジェスト処理を入れるなど、ものすごく雑に片付けられている。
そもそも、その訓練だけに物語が集中しているわけではないしね。
また、特訓によって栄昇の格闘能力が次第にアップしていく様子も見られない。精神的な変化が描かれているわけでもない。
何となく『ベスト・キッド』っぽい要素を入れてみたものの、まるで使いこなせていないのだ。

それと、「栄昇がマックスと対決する」というイベントに向けて、話を盛り上げるための作業が全く見えないのよね。ただ淡々と進めているだけで、観客を引き込むためのパワーが何も無い。
そもそも、その対決の動機からしてボンヤリしているんだよね。
当初は「ヒトシを病院送りにされたので怒りに燃える」ということでマックスの元へ乗り込んだのに、そこで「オレンジを賭けて対決」と言い出したことで、「ヒトシの仇討ち」と「オレンジの争奪戦」という2つの目的が生じてしまった。
そして、そこを上手く処理できていない。

マサルとヒトシは米軍基地へ潜入する際、顔を白塗りにして米兵の服を着用する。つまり「白人に化けている」ってことだ。もちろん誰が見てもバレバレの安っぽい変装だが、それが全くバレないことも含めてのネタになっている。
だけど、それは笑えるかどうかという以前に(ちなみに全く笑えないが)、現代の感覚では好ましい表現と言えない。
言ってみりゃミンストレル・ショーの逆バージョンみたいなモンだけど、人種差別的な問題に関わるネタだよね。たぶんアメリカだったら、かなり問題になるんじゃないかと。
別にアメリカで上映されるような映画じゃないから気にする必要は無いかもしれんけど、もうちょっとデリケートに考えてもいいんじゃないかと。
あと繰り返しになるけど、それが笑えないってのが何よりの問題だわな。

これが沖縄地区で放送される深夜30分枠の連続ドラマなら、お気軽に見られるユルい作品として、「それなりに有り」という評価になったかもしれない。
出演者の顔触れを変更すれば、全国区の深夜ドラマとしても、同じような評価になったかもしれない。
でも全国公開される劇場映画としては、かなり厳しいと言わざるを得ない。コメディーとしてのノリが古臭いし、ものすごく安っぽい。
「予算的な事情」という部分とは別の意味で、安っぽさがハンパないのよ。

「幼馴染から密かに好意を寄せられている主人公が、それを知らないまま他の女に一目惚れする。主人公は恋のライバルと戦うが、本当に好きな相手は幼馴染だと気付く」というプロットからして、かなり使い古されたモノだ。
ブラット・パックが出演した1980年代の青春映画を、個人的には連想した。
ただ、それは今の時代でも通用しないプロットじゃないので、現代に合うようにアップデートすればいいだけだ。
だけどシナリオを飾り付ける部分でも、演出の部分でも、やっぱり古臭い感覚が強いんだよね。

キャスティングにも大いに問題がある。沖縄出身の面々を揃えていることについては、そんなに否定的に捉えていない。っていうか舞台が沖縄なので、それは悪いことでもないし。まあネームバリューを考えれば少し考えた方がいいかもしれないが、ネイティヴな沖縄弁を喋るという強みはあるしね。
むしろ、外から起用したメンツの方が問題だ。
まず諸見里大介は「滑舌が悪い」というネタを使いたかったのかもしれないけど、それしか無いのよね。それだけで準主役のポジションに起用するのは、デメリットの方が遥かに大きい。
もっと問題なのはボビー・オロゴンで、彼が恋のライバルを演じている時点で、陳腐になることは約束されたようなモンでしょ。

(観賞日:2017年1月5日)

 

*ポンコツ映画愛護協会