『マタンゴ』:1963、日本

東京医学センターの精神科に収容された村井研二は、医師たちに話し掛ける。彼は「みんな僕をキチガイだと思ってるんです。でも僕はキチガイじゃありません。あの人は死んだ。仲間も全部。いや、死んだのは1人だけです。みんな生きてるんです。じゃあ、なぜ帰って来ないのかと言いたいんでしょう?でも僕の話を聞いたら、貴方もまた僕をキチガイだと決めてしまうでしょうねえ」と述べた。
時間を遡る。城南大学助教授の村井は、仲間たちと一緒にヨットで大西洋に出た。他のメンバーは、歌手の関口麻美、笠井産業社員で雇われ艇長の作田直之、漁師の小山仙造、推理作家の吉田悦郎、麻美のパトロンである笠井産業社長の笠井雅文、大学生の相馬明子だ。他の面々が楽しんでいる中、初めてヨットに乗った明子は浮かない顔て船室に入る。追い掛けた村井が「どうしたの?」と声を掛けると、彼女は「駄目ねえ、私って。とても付いて行けそうもないわ」と漏らした。
夜になって天気が怪しくなったため、舵を取っていた小山は「早めに引き返しましょう」と作田に進言する。しかし船室に戻った作田が意見を求めると、金持ちの連中は全員がヨット旅行を続けるよう主張した。ヨットの持ち主である笠井は、「このクラスのヨットじゃ最高に金を掛けた」と自信を見せた。しかし激しい嵐が近付いて来たため、笠井は引き返すことにした。村井たちが帆を下ろしている間、笠井は船室で麻美に馴れ馴れしく触れて「大丈夫ですよ」と告げた。
村井は無線を使おうとするが、落雷で使えなくなる。ヨットが大津波に襲われる中、笠井は作田を「君の責任だぞ、エンジンが掛からん」と非難した。村井たちはヨットで漂流したまま、翌朝を迎えた。嵐は過ぎ去ったが、方向探知機は壊れており、どこまで流されたのかも分からなかった。ラジオのニュースを聴いてみると、7人の生存は絶望的だと報じられていた。ニュースが続いている中で、ラジオの音声は途絶えてしまった。電池が切れたのだ。甲板に出た吉田は巨大な船が迫って来るのを見て怯えるが、それは幻覚だった。
ずっと濃い霧が出ていることに、麻美は苛立ちを見せる。濃い霧の中でヨットは漂流を続けていたが、ようやく島が見えた。上陸した7人は、暗くならない内に食料と水を手に入れようとする。密林を進んだ一行は、水が沸き出している場所を発見する。そこに並べられている石を目にした小山は、無人島ではないと確信した。水分を補給した一行は、さらに島の奥地へ向かう。疲れた笠井が「引き返した方がいいんじゃないのか」と言うと、作田は「人間が通った後があるんだ」と述べた。
険しい崖を登った一行は、浜辺に停泊している船を発見した。崖を降りた一行が浜辺を走って行くと、それは難破船だった。村井、作田、小山、笠井の4人は、難破船を調べてみることにした。船内に入ると死体は1つも転がっておらず、大量のカビが窓や壁に付着していた。麻美が「待っていてもしょうがないわ」と言い、明子と一緒に船内へ向かった。船内にあった道具から、村井たちは海洋調査船だろうと推測する。多くの道具が揃っている部屋は、他の船室とカビの色が異なっていた。
村井が棚を開けると、目が無い亀の剥製を発見する。そこには「放射能による突然変異の実例」という注意書きがあった。サンプルの入ったビーカーが並んでいる棚を見た笠井は、「核爆発の海洋汚染調査船か。それにしても、どうしてこの棚だけカビが無いんだろう」と呟いた。作田は「消毒剤が効いてるんだ」と気付く。部屋の隅にあった箱を開けると、中には巨大なキノコがあった。箱には「Matango。キノコの一種。この島で初めて発見された新種」という文字が記してあった。
麻美と明子は洗面所に行き、鏡が外されていることに気付いた。船長室の戸を開けると、室内はカビに覆われていた。悲鳴を耳にして駆け付けた村井は、「航海日誌があるかもしれん」と船長室に入った。カビに埋もれた机に歩み寄った彼は、航海日誌を発見した。別行動を取っていた笠井は、小山が船内にあった缶詰を勝手に食べているのを見つけた。その隣では、吉田も一緒になって食べていた。笠井が腹を立てると、吉田は「先に見つけた者に役得があるんだ」と悪びれずに告げた。
航海日誌を見つけた後、村井、作田、小山、麻美、明子は話し合いを持つ。航海日誌は見つかったものの、船に関しては分からないことばかりだった。国籍も不明であり、村井は「意識的に分からなくしているとしか思えない」と口にする。村井は別の船室で銃を手入れしている笠井の元へ行き、「この船にある食料は、どんなに食い延ばしても、あと1週間だ。肝心の君がこんなトコに閉じ篭もってしまっちゃ困るよ」と苦言を呈す。話し合いに参加するよう促すと、笠井は「こいつを使えるようにしたんだぜ」と得意げに告げた。
全員が集合したところで、会議が始まった。航海日誌によると、その島は無人島だ。食料に出来るような物は少なく、とても生きていけるような場所ではない。何とかして、そこから抜け出さねばならない。作田が「缶詰は1日に1食。魚、海藻、その他、食えそうな物は何でも集めるんだ。ただしキノコだけは触らないようにな」と言い、村井が「実験記録では、麻薬みたいに神経がいかれてしまう物質を含むと書いているんだ」と補足した。
作田が「ヨットをこの浜へ運んで修繕したい。この島はほとんど霧に包まれているから、汽船が通り掛かっても見つけてくれる可能性は少ない。こっちから出掛ける準備をしておく」と言うと、吉田は「ごめんだな、俺は。あんな船じゃどうにもならないってこと、みんなだって知ってるんだよ」と拒絶する。「指導者ヅラはやめてもらいたいな」と言われた作田は腹を立て、「何とかして助かろうと思って、みんなで相談してるんじゃないか」と声を荒らげた。
村井が仲裁に入り、「修繕が嫌なら、食料探し専門でもいいんだ。天気のいい日は山の上でSOSの煙を上げる役だってあるんだしな」と促すと、吉田は受け入れた。笠井はライフルを持ち、村井と共に狩りに出掛けた。だが、島を歩き回っても、獲物は全く見つからなかった。村井が割れた鏡を発見し、笠井は「いったい何のまじないなんだよ、こんな所まで持って来て壊すなんて」と疑問を口にする。鳥を発見した笠井はライフルを構えるが、すぐに飛び去ってしまった。「この島を避けたみたいだな」と村井は告げた。
ヨットを浜へ運んでいた作田と小山は、何隻もの船が海中に沈んでいるのを知った。密林を移動していた村井と笠井は、大量のキノコが生えているのを見つけた。その直後、2人は密林の向こうで何かが動くのを目撃した。笠井が発砲するが反応は無く、歩み寄っても何もいなかった。雨の降る深夜、村井、作田、麻美、明子は、甲板を歩く物音を耳にした。缶詰を盗み出した笠井が寝室へ戻ろうとすると、そこに不気味な何者かが現れた。驚愕した彼は、「誰か来てくれ」と叫んだ。
村井たちが駆け付けると、逃げて来た笠井の向こうで人影が動いた。村井たちは寝室へ戻り、小山と吉田を起こす。ドアを開けて入って来たのは、醜い容貌をした怪人だった。麻美と明子は悲鳴を上げた。翌朝、朝食を食べている最中、小山が「みんな、いいかげんにしたらどうなんだ」と怒り出す。「夜中にお化けを見たり、叫び声を上げたりさ、頭がおかしくなるのは、理由は一つだ。手の届くところに、こんな別嬪さんがいても、どうすることも出来ねえ。つまり、その欲求不満ってやつさ」と彼は吐き捨てるように言う。
小山が「今夜、この姉ちゃん買うとするか」とニヤニヤするので、麻美は他の男たちに向かって「こんなこと言わしといていいの?」と問い掛ける。だが、他の男たちは無言を貫いた。小山が「誰もクスッとも言わねえようだな」と笑うと、吉田がライフルを手に取って「ぶち殺してやる」と吠えた。小山はナイフを構え、「一丁やるか」と対抗姿勢を取る。村井が「やめろ」と仲裁に入り、作田が吉田からライフルを奪い取った。
小山は「この姉ちゃんはな、小説書きとちょくちょくジャングルへお出掛けになるんだぜ」と麻美と吉田の関係を暴露する。麻美が「何をしようと私の勝手さ」と言い放つと、笠井は小山に「麻美がどんな女か、お前なんかに言われなくても分かってる」と静かに述べた。麻美は「そうよ、アンタなんかにチヤホヤしてあげたのはね、ヨーロッパへ行きたかっただけのことよ。こうなったらアンタなんか何の魅力も無いわよ」と笠井を扱き下ろした。
村井は「幻を見たと思ってるのか。来てみろ」と言い、小山と吉田に窓の外の足跡を見せた。「一日も早くヨットを修繕して、この島から逃げ出すんだ」と村井が口にすると、小山は「言いたいことはそれだけかね。アンタら鉄砲担いで山をブラブラして、それで食い物を探しているつもりかね」とバカにしたように告げる。彼は笠井も含め、「もっと体を働かせるんだ」と説教した。これまで全く食料を入手できていない村井たちは、何の反論も出来なかった。
「雨が降るからって、ここでゴロゴロしてて天から食い物が降って来るのかよ」と怒鳴られた村井たちは、食料探しに出掛ける。砂浜でウミガメの卵を発見した小山は、その一部を隠した。吉田が薬用アルコールを飲んでいるのを見つけた笠井は、「恥を知れ」と罵った。吉田は「笑わせんな。缶詰盗みに入ったのは、どこの誰だ」と指摘した後、ライフルを手に取って「俺は今から君たちが見たっていう化け物退治に言って来る」と口にした。
笠井は「あれは人間かもしれない。きっと、この船の乗組員だったんだよ」と笠井は反対するが、吉田は耳を貸さずに密林へ向かう。小山はウミガメの卵を袋に入れて隠すが、その様子を作田が見ていた。船に戻った作田はアルコールを飲んだ笠井から鍵を奪い取り、「これは俺が預かる」と告げる。船に戻って来た吉田は、村井たちの前で「腹は一杯で御機嫌でさ」と言う。村井が「まさかキノコを食ったんじゃないだろうな?」と尋ねると、吉田は薄笑いを浮かべて「さあ、どうだろうなあ」とはぐらかした。
小山は笠井の部屋に行き、隠しておいたウミガメの卵を高値で売った。吉田と麻美が調理室で抱き合っていると、小山が入って来た。小山は「勝手な真似しやがって」と吉田に殴り掛かり、反撃を食らう。争う物音を耳にした村井と作田が駆け付け、喧嘩を制止した。女性部屋に戻った麻美は、明子に勝ち誇ったような態度で「みんな私が欲しいのよ」と告げた。吉田はライフルを手にして村井たちの元へ戻って「みんな殺してやる」と言い、マタンゴを食べたことを明かす。村井たちは吉田の隙を見て取り押さえ、彼を監禁した…。

監督は本多猪四郎、特技監督は円谷英二、原案は星新一&福島正実 ウイリアム・ホープ・ホジスン『闇の声』より、脚本は木村武、製作は田中友幸、撮影は小泉一、美術は育野重一、録音は矢野口文雄、照明は小島正七、整音は下永尚、監督助手は梶田興治、編集は兼子玲子、音楽は別宮貞雄。
出演は久保明、水野久美、小泉博、佐原健二、太刀川寛、土屋嘉男、八代美紀、天本英世、熊谷二良、草間璋夫、岡豊、山田圭介、日方一夫、手塚勝巳、中島春雄、大川時生、宇留木耕嗣、篠原正記、鹿島邦義、伊原徳、林光子、一万慈鶴恵ら。


ウイリアム・ホープ・ホジスンの小説『闇の声』をモチーフにした作品。ただしSFマガジンの初代編集長である福島正実の脚色により、内容は大幅に異なっている。
原案にはホジスンと福島正実の他に星新一の名前も表記されているが、わずかな意見を出した程度で、ほぼ関与していないらしい。
映画脚本は『ガス人間第一号』『妖星ゴラス』の木村武(馬淵薫の本名)。
村井を久保明、麻美を水野久美、作田を小泉博、小山を佐原健二、吉田を太刀川寛、笠井を土屋嘉男、明子を八代美紀が演じている。

村井から「修繕が嫌なら、食料探し専門でもいいんだ」と喧嘩を制止された吉田が山へ行って狼煙を上げた後、彼の回想シーンに入る。
キャバレーで麻美が歌っており、それを作田、吉田、笠井が見ている。吉田は小説を書いており、作田に「よくそんなに書けるもんだな」と言われる。笠井は「自分の頭から捻り出すわけじゃなしさ。無い知恵を絞るより、人の知恵を頂いている。これも一つの才能だよ」と告げ、吉田が「才能を盗むってのは罪じゃないよ」と口にする。
笠井が「大体、文化の発達なんて、そんなもんじゃない?今時書かれてる小説なんか、世界文学全集読んでも、どっかに同じ話が出てる」と話していると、村井が明子を連れて来る。笠井が明子にペンダントををプレゼントして、みんなが拍手する。
なんだ、この回想は。

そんな回想を挿入している意味がサッパリ分からないのだが、そこには映画の内容とは無関係な裏事情が隠されている。
実は、木村武は当時のブルジョアな連中をモデルにして、村井たちのキャラクターを造形しているのだ。
だから例えば、吉田が他の作家のネタをパクってばかりいるというのは、モデルとなった大藪春彦に対する悪口なのだ。
個人的な妬みやひがみで、話を作っているというわけだね。

ボンヤリした情報しか持っていない人からすると、この作品は「マタンゴと呼ばれる吸血モンスターが人々を襲う映画」と思っているかもしれない。
しかし、それは全く違う。
マタンゴってのはキノコの名前であって、キノコ怪人の名前ではない。また、キノコ怪人は血を吸ったりしないし、そもそも人間たちを襲って殺そうとすることも無い。終盤になってキノコの怪人たちが襲って来るが、それはキノコを食べさせて仲間にするためだ。
それに「キノコの怪人が人間を襲う」ってのは、この映画の本筋ではない。
本筋は人間たちの争いであり、そこには「最も恐ろしいのは人間」というテーマがある。

例えば1931年に公開された『フランケンシュタイン』なんかも、同じように「最も恐ろしいのは人間」というテーマを持つ映画だった。
しかし『フランケンシュタイン』と本作品には、決定的に異なるポイントがある。
それは、本作品はマタンゴが登場しなくても成立してしまうということだ。
極端なことを言っちゃうと、どこかの島に辿り着かず、漂流した船を舞台にして物語を最後まで進めたとしても、同じテーマで似たような話は作れるのだ。

天本英世の演じるマタンゴが登場した翌朝、急に小山が麻美への性欲を剥き出しにしたり、村井たちを説教したりする。
だが、それは「マタンゴの影響でおかしくなった」とは受け入れない。小山はマタンゴを食べていないのだから。
もしも「天本マタンゴの胞子を浴びておかしくなった」ということなら、他の連中もおかしくならなきゃ変だしね。
で、マタンゴの影響が無いとすると、そこで小山の態度が荒々しくなるのは、あまりにも唐突だ。「貯め込んでいたモノが破裂する」という前兆も、「少しずつ変化していく」という過程も無い。
島に到着してから、小山が偉そうな態度を取るシーンはあった。ただ、その説教シーンに繋がる導線は描かれていない。

上映時間の半分が過ぎた辺りで、天本マタンゴ(ただし変身途上)が登場する。で、マタンゴが部屋に入って来たところで女性2人が悲鳴を上げ、マタンゴが消えて、それで翌朝になってしまう。
いやいや、その省略は無いわ。
そんで翌朝のシーンでは小山が「夜中にお化けを見たり」と言っているので、「全員が昨晩の出来事は幻覚だと思っている」ということかと思いきや、そうじゃないのね。そう思っているのは小山と吉田だけなのね。
それは明らかに説明不足。
その夜の間に、つまりマタンゴを目撃し、そのマタンゴが消え去った直後に、それなりのシーンを用意しておくべきだよ。

マタンゴを食べた人間がどうなるのかは、航海日誌の記述でしか分かっていない。つまり、かなりボンヤリした情報しか無いはずなのに、なぜか村井はライフルを手にした吉田を見ただけでマタンゴを食べたことを見抜く。
また、吉田は「マタンゴを食ったら人間じゃなくなるって言いてえんだろ」と言い、村井たちも同じ感覚を持っている。
でも、航海日誌には「麻薬みたいに神経がいかれてしまう物質を含む」と書かれているだけで、「人間じゃなくなる」とは書かれていない。それに、あの化け物がマタンゴを食べた船員だということも、その時点では分かっていない。
だから「マタンゴを食べたら人間じゃなくなる」というのは、飛躍した考えにしか思えない。

吉田がマタンゴを食べるのは「他に食べる物が無いので、空腹に耐えかねて」ということではなく、「軽い気持ちで食べてみた」という感じだ。
それは扱いが雑じゃないか。この映画にとって「マタンゴを誰かが食す」というのは、大きなポイントになるシーンのはずなのに。
別に「空腹に耐えかねて」じゃなくて、「ストレスを貯め込み、麻薬的な物質で現実逃避したくなったから」ということで食べる流れでも構わない。どうであれ、もうちょっと意味のある「食べる理由」が欲しい。
そうでないのなら、まだマタンゴの情報が何も無い内に吉田がキノコを見つけて一人で食べて、その後でマタンゴの危険性が判明するという流れにでもした方がいい。

吉田がマタンゴを食べた後も、笠井が作田に「2人で逃げ出そう」と持ち掛けるとか、それに激怒していた作田が一人で食料を持ち逃げするとか、麻美が吉田を部屋から出すとか、吉田が女性2人を自分の物にして男たちを殺そうとするとか、そういう利己主義の描写が連続する。
それとマタンゴは、何の関係も無い。
ようするに、そういう「欲望を剥き出した人間の醜い争い」ってのは、マタンゴという存在を完全に排除したとしても、何の問題も無く描写できてしまうのだ。
マタンゴを「禁断の果実」の如き享楽の象徴として描いているようだが、それと「エゴ剥き出しの人間たちによる醜い争い」という本筋が、まるで上手く融合していないのだ。

残り15分ぐらいになり、麻美に誘われて密林に出た笠井はマタンゴを食べる。
「マタンゴを食べるとキノコになるのよ」と言われた笠井が周囲にいたキノコ人間たちを見て怯えるという展開に至って、ようやく怪奇映画のテイストが出て来る。天本マタンゴを除くと、そこまでは心理サスペンスだった。
ただ、「今さらキノコ人間を登場させても、もう遅いよ」と思ってしまう。
「食べたらキノコ人間になる」と分かった上で、漂流者たちが「それでも空腹よりはマシと考えて、もしくは現実逃避のためにマタンゴを食べるか」「人間であり続けるために耐え忍ぶか」という選択を迫られるという話を膨らませた方が良かったんじゃないかとも思うし。

ただし、もしもキノコの怪人を登場させずに物語を構築していたら、この作品は、せいぜい「良く出来た心理サスペンス映画」という評価で留まっていただろう(っていうか個人的には、そんなに良く出来た映画だとは思わないのだが)。
しかし、キノコの怪人を登場させたことによって、カルト映画として一部マニアから熱烈に支持され、後世に残る作品になったのだ。
マタンゴというネーミングも、どこかマヌケっぽくてインパクトがあるしね。

(観賞日:2013年8月24日)

 

*ポンコツ映画愛護協会