『ママレード・ボーイ』:2018、日本

私立桐稜高校に通う小石川光希は両親から離婚してパートナー交換すると聞かされ、親友の秋月茗子に愚痴をこぼす。幼馴染みの須王銀太からテニスのサーブ練習に誘われた光希は、「今日は無理」と断る。光希は中学時代に銀太に告白して振られたが、その後も仲良くしていた。光希は両親の仁&留美に同行し、顔合わせの場であるホテルのレストランへ赴いた。両親は彼女に、離婚しても仲が悪くなるわけじゃないし、そもそも親友のような関係だったのだと説明する。
相手の夫婦は松浦要士と千弥子で、ハワイ旅行で知り合って意気投合したことを話す。光希は今回の件に反対だと言い、「話し合いの余地なんて無い」と拒絶する。松浦夫婦には光希と同い年の遊という息子がいて、遅れてレストランに現れた。遊は今回の件に全く反対しておらず、「本人同士が良けりゃ、それでいいんじゃないの」と軽く告げた。反対の理由を問われた光希は、「悲しいからだよ。私はどっちに引き取られるの?私はパパもママも選べないよ。どっちも好きなんだもん」と答える。すると仁&留美&要士&千弥子(両親ズ)は、シェアハウスを借りて6人で一緒に暮らす計画を明かした。
両親ズが仲良く引っ越し作業を進める中、苛立つ光希に遊は「一つ屋根の下でそんなにピリピリしたって疲れるだけだよ」と告げる。遊はゴキブリのオモチャで光希を脅かし、馬鹿にして笑った。留美は光希に、「遊くんのこと、好きになっちゃダメよ。これ以上、ウチの中を複雑にしないでよ」と警告した。遊が桐稜高校に転校して同じクラスになったため、光希は不快感を露わにする。銀太は茗子から光希と遊の関係を聞き、「お前らの両親、ぶっ飛んでるな」と笑う。
光希が放課後に銀太とテニス部の練習を始めると、その様子を遊が見つめた。気付いた茗子は、前の学校でテニス部員だった遊に入部の意志があるのかどうか尋ねる。遊は返答せず、「仲いいね、あの2人。彼氏?」と訊いた。茗子が幼馴染だと教えると、遊は「ふーん」と言って立ち去った。その夜、両親ズが楽しそうに夕食を取る中で、光希は険しい表情を浮かべる。早々に食事を終えて自分の部屋へ戻ろうとした彼女は、要士から好きな男性のタイプを質問される。光希が黙っていると、遊が「あのテニス部の奴だろ」と言う。光希は「なんでそんなこと言うの?」と彼を睨み付け、両親ズが一斉に遊を注意した。
すると光希は、「私が耐えられないのは、ここで和気藹々とご飯を食べてる皆さんの無神経さですから」と言い放った。彼女は「これからも一人でご飯を食べます。皆さんと馴染むつもりはありません」と宣言し、寝室へ戻った。遊は自室の窓から外へ出て、光希の部屋の窓をノックした。彼は部屋に入れてもらい、光希に謝罪した。遊は要士が実の父ではないことを明かし、「誰にも言うなよ。俺、知らないことになってるから」と口にした。
次の日、光希と遊が学校に向かっていると、青葉台高校の鈴木亜梨実が待ち受けていた。彼女は遊に「久しぶりね。探したんだよ」と声を掛け、光希に挨拶する。遊は亜梨実に尋ねられ、新しい携帯番号を教えた。亜梨実が去った後、光希が「元カノ?」と訊くと遊は「3ヶ月だけ付き合ったことがある」と答えた。放課後にテニス部の練習へ行こうとした光希は、遊が男と話す様子を目撃した。三輪悟史という男から本を受け取った遊は、「父さんがさ、来月ベルリンから帰って来るのが決まったんだよ」と聞かされた。
光希は茗子とカフェに出掛け、遊がゲイではないかと言う。そこに亜梨実が現れ、「ハッキリさせた方がいいと思って。私がまだ遊を好きだってこと」と光希に告げる。「そんなの私には関係ない」と光希が迷惑そうに言うと、亜梨実は女性に心を開かない遊に「3ヶ月だけ付き合おう」と提案したことを語る。彼女が「私の中では終わってないの。だから邪魔しないで」と言って去ると、茗子は光希に「誰かに自分の存在を知ってほしいんだよ、きっと。それぐらい遊くんが好きなんだよ」と述べた。
翌日、テニス部の練習を終えた光希は銀太に誘われ、一緒に下校する。何か心配事があれば相談してほしいと持ち掛ける銀太に、光希は「今んとこ、まだ上手く行ってる」と返す。「マスカット味はキスの味」というCMが放送されていたお菓子を見つけた光希は、懐かしくなって購入する。「キスの味ってどんな味だよって、突っ込みたくなるよね」と光希が軽く言うと、銀太は「試してみる?」と持ち掛ける。光希が目を閉じてキスのポーズを取ると、銀太は動揺しながらも顔を近付ける。気付いた光希は慌てて飛び退き、「何やってんの。冗談に決まってるでしょ」と走り去った。
遊は図書館へ行き、悟史の父で著名な建築家である三輪由充について調べる。本を返しに行こうとした彼は、茗子が英語教師の名村慎一とキスしている現場を目撃した。茗子は遊に見られたと気付き、誰にも言わないよう頼んだ。休日、両親ズが外出して帰りが遅くなるため、遊がシチューを用意した。光希は遊に、「ホントはすっごく苦いトコあんのに、みんな上辺の甘さに騙されて気付いてないの。ママレード・ボーイだよ」と言う。すると遊は、「じゃあ光希は、ピリピリ辛いばっかりのマスタード・ガールだ」と笑った。
テニス部の試合が行われる日、銀太とダブルスを組んでいる近藤がウォーミングアップで足を挫いてしまった。そこで光希は遊を呼びに行き、試合に出てもらった。シングルスで準優勝の経験を持つ遊が見事な動きを披露すると、銀太は力んでミスを繰り返した。光希が「何やってんの。いつもたいにカッコ良くスマッシュ決めてよ」と叫ぶと、銀太は彼女に駆け寄って「この試合に勝ったら、俺と付き合ってくれ」と唐突に言い出した。
光希が困惑していると、銀太は以前に振った理由を明かした。光希はクラスの男子から人気があり、銀太は抜け駆けするなと釘を刺されていたのだ。光希の返事を待たず、銀太は試合に戻った。勝利を収めた銀太が光希を抱き締める中、遊はコートを去る。光希は頭を打って気を失い、保健室に運ばれた。心配した遊が様子を見に来ると、光希は眠っているフリをした。遊がキスをして去ったので、光希は動揺した。その夜、光希が銀太からの着信を無視すると、遊が「行ってあげたら?答えが欲しいんじゃないの?」と勧める。光希は「遊には関係ないでしょ」と反発するが、銀太の元へ行って「銀太の気持ちには応えられない」と告げる。「他に好きな人いるの?」と訊かれた彼女は、「私にも分からない」と答えた。
次の日、遊を意識しながら登校した光希は、茗子と名村の関係が露呈して2人とも校長室に呼び出されたことを知った。茗子は光希に声を掛けられ、自宅謹慎になったことを告げた。一時的に不和になってしまった2人だが、茗子が正直に気持ちを吐露して和解する。彼女は光希に、広島へ戻って実家の不動産業を手伝うと決めた名村を追い掛けるつもりだと明かす。光希は遊に「見送りに行けよ。あいつだって本当は勇気付けてもらいたいはずだよ」と言われ、茗子の後を追った。彼女が駅に駆け込むと、茗子はホームで名村に抱き付いていた。しかし名村は「俺と広島に行っても不幸になるだけだ」と茗子に残るよう指示し、別れを告げて列車に乗り込んだ。光希は号泣する茗子に駆け寄り、優しく抱き締めた。
両親ズが新婚旅行に出掛け、光希と遊は留守番を頼まれた。落ち込む光希に、「いいかげん、人は人、自分は自分って割り切らないと」と遊は言う。そこへ悟史が車で現れ、遊に「行こうか」と告げる。すると遊は、光希も車に同乗させた。悟史は光希に、千弥子が若い頃に由充の秘書をしていたことを教える。さらに彼は、若いい時の母の日記には2人が不倫関係で千弥子が妊娠していると記されていたことを話し、「自分に弟がいるなら、ほっとけないと思ったんだ」と言う。
由充の元へ赴いた遊は、死んだ祖母が父宛に出した古い手紙を読んで疑念を抱いたことを説明する。「貴方は僕の父親なんですか」という彼の質問に、由充は「大変な誤解をしているようだ。君の父親探しの相手は私ではないよ」と告げた。由充は千弥子に好意を抱いたが、「学生時代から付き合っている恋人がいる」と断れらたことを語った。帰り道、落胆する遊は光希を抱き寄せ、「父さんのホントの子じゃないって知った時、ショックだった。それからは人を信じるのが辛くなった。人を好きになっても、裏切られるかもしれないって思って怖くなった」と語って涙をこぼした。光希は「ちゃんと家族がいるでしょ。血なんて繋がってなくたって、みんな遊のこと愛してる」と優しく語り掛け、彼を抱き締めた。
保健室でキスした理由を光希が尋ねると、遊は「光希が好きだから」と答えた。光希は「私も、遊が好きだよ」と言い、遊とキスを交わす。遊は亜梨実に、好きな相手が出来たことを明かす。「これからは変わりたいと思ってる」と言うと、亜梨実は受け入れた。光希は遊に出会って半年記念のブレスレットをプレゼントし、キスしようとする。そこへ千弥子と留美が帰宅すると、光希は遊は慌ててクローゼットに隠れた。千弥子に見つかった2人は、適当に誤魔化して外出した。
ある夜、遊は学生時代の両親ズの写真を発見し、当時から4人が親しくしていたことを知る。由充の言葉を思い出した彼は、実の父が仁であり、光希と血が繋がっているのではないかと考える。その日から遊は、光希を避けるようになった。突然の変化に光希が困惑する中、遊は京都工芸繊維大学に進学したいと言い出した。さらに彼は、早く京都に慣れるため転校したいと両親ズに語る。光希が「なんで言ってくれなかったの?」と抗議すると、遊は「お前のこと恋人とか、そういう目で見れなくなった。特別な感情が無くなったんだよね」と冷淡に告げて京都へ去った…。

監督は廣木隆一、原作は吉住渉『ママレード・ボーイ』(集英社文庫<コミック版>)、脚本は浅野妙子&廣木隆一、製作は高橋雅美&今村司&井上肇&木下暢起&谷和男&山本浩&高橋誠&鷲尾天&本田晋一郎、エグゼクティブプロデューサーは小岩井宏悦&伊藤響、プロデューサーは松橋真三&北島直明&里吉優也、アソシエイトプロデューサーは平野宏治、ラインプロデューサーは原田文宏、撮影は鍋島淳裕、照明は かげつよし、美術は丸尾知行、録音は深田晃、編集は野本稔、音楽は世武裕子、音楽プロデューサーは安井輝。
主題歌『恋』GReeeeN Music & Words:GReeeeN。
出演は桜井日奈子、吉沢亮、中山美穂、檀れい、谷原章介、筒井道隆、寺脇康文、佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS)、優希美青、藤原季節、遠藤新菜、竹財輝之助、真広佳奈、えのきさりな、夏実萌、三船海斗、吉田翔、小嶋修二、広田亮平、中谷優心、安藤拓哉、山下永夏、植田紗々、鶴亮、池田紫陽、石山美羽、猪又慶子、岩谷さくら、梅津琉那、大内万凛、大橋沙季、加藤拓也、工藤ちろ乃、坂本紗莉奈、坂本貴紀、佐々木天美、佐々木佑輔、佐藤亜美、佐藤瑠伊、佐藤瑠音、菅原亮、鈴木洸輝、潮部陽基、高橋佑太朗、竹村将太、新田明日香、野木碧音、星直輝、守翔吾由利涼真、渡邉夏音、那須亜里奈、阿部麗未、加藤美紅、米倉颯、岩舘緑、宮下柚百ら。


吉住渉による同名少女漫画を基にした作品。
監督は『オオカミ少女と黒王子』『PとJK』の廣木隆一。
脚本は『今日、恋をはじめます』『クローバー』の浅野妙子と廣木監督による共同。
光希を桜井日奈子、遊を吉沢亮、千弥子を中山美穂、留美を檀れい、要士を谷原章介、仁を筒井道隆、由充を寺脇康文、銀太を佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS)、茗子を優希美青、悟史を藤原季節、亜梨実を遠藤新菜、名村を竹財輝之助が演じている。

まず最初に感じたことは、「なぜケンドーコバヤシを何らかの役で起用しなかったのか」ってことだ。
別にメインの役柄で使えってことではない。じっくり見回したところで、ケンドーコバヤシがハマりそうな主要キャラなんて存在しないしね。
でも、小さな役でもいいから、どこかで彼を使うべきだよ。そして、出来ることならアニメ版主題歌『笑顔に会いたい』を歌わせてほしかった。
あるいは出演者じゃなくても、「宣伝部長」とか「応援隊長」という肩書で採用してもいいし。

「なぜケンドーコバヤシなの?」という質問に対しては、「ネットで検索してね」と答えておこう。
で、そんな「ママレード・ボーイと言えば」のケンドーコバヤシを何らかの形で起用すべきだと思うのは、「彼に頼るぐらいのことをやらないと、訴求力の面では相当に苦戦を強いられる可能性が高いでしょ」ってことなのだ。
何しろ、原作漫画が連載されていたのは1992年から1995年、アニメ版の放送は1994年から1995年だ。「なぜ今さら?」という疑問が拭えないタイミングでの、実写映画化なのだ。
何かのきっかけで人気が再燃していたとか、そういうわけでもないんだし。

どうやら「実写化してほしい少女漫画」のアンケートで原作がダントツの1位になったことが、映画化のきっかけになったらしい。
だけど、そこに勝算が全く見えないのだ。
原作を読んでいたファンは、当然のことだが「若い女子向けの恋愛映画」を積極的に見るような年齢をとうの昔に過ぎている。一方で、「少女漫画原作の実写映画」を積極的に見る客層は、その大半が原作を知らないだろう。
もちろん両方を取り込めれば大ヒットに繋がるが、そのための戦略が本作品からは見えて来ない。
中山美穂の起用は、「原作ファンが見ていたであろうトレンディードラマの出演者を起用する」という意図が見えなくもない。
ただ、そういう狙いがあったとしても、他の両親ズ3名の顔触れが違うしね。そこは同じように「当時のトレンディードラマを連想させてくれる俳優」じゃないと意味が無いわけで。

「確実な集客が見込める」ってことで、少女漫画を原作とする恋愛物の実写映画がバカみたいに何本も製作される状況が続いている。安易に企画する映画人と、安易にゴーサインを出す映画人が、それだけ大量に存在しているってことだ。
そんな中、本作品のプロデューサーは「他では見たことの無い組み合わせ」を意識してメインの2人を採用したらしい。
確かに、桜井日奈子と吉沢亮の組み合わせは、これが初めてだ。
そもそも桜井日奈子は『ラストコップ THE MOVIE』に続く映画2本目で、これが初主演だ。一方の吉沢亮も、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』『アオハライド』『オオカミ少女と黒王子』に出演しているが、ヒロインの相手役は本作品が初めてだ。

しかも、単に「今までに無い組み合わせ」というだけではない。
桜井日奈子は岡山美少女・美人コンテストで「美少女グランプリ」に選出され、「岡山の奇跡」としてネットで大きな話題を集めた。吉沢亮は『仮面ライダーフォーゼ』で役者デビューし、イケメンの若手スターとして注目を集めていた。
つまり、新鮮さと訴求力を兼ね備えたキャスティングと言えるわけだ。
ただ、ここで製作サイドに大きな計算ミスがあった。
それは、「岡山の奇跡が、実際はそれほどでもなかった」ということだ。

桜井日奈子は「岡山の奇跡」として話題になり、様々なテレビ番組に出演するようになった。そこで動いたり喋ったりしている姿を見た時に感じたのが、「奇跡と呼べるほどの美少女でもないな」ってことだ。
ここは同じようにネットから人気に火が付いた橋本環奈と大きく異なる点だ。
「千年さん」こと橋本環奈は、さすがに「千年に一度」は言い過ぎだろうけど、動いている姿を見ても美少女で間違いないと感じた。
それに比べると、桜井日奈子は「千年さん」ならぬ「残念さん」になってしまっている。

さらに大きな問題は、桜井日奈子の演技力があまりにも低すぎるってことだ。
この映画でも、そこまで難しい芝居を要求されるような役柄でも作風でもないが、演技力の低さはキッチリと発揮されている。
そりゃあ、ちゃんとしたトレーニングなんて積んでいないし、経験も少ないから、当然と言えば当然だろう。でも見ている側からすると、「そんなん知らんがな」って話だからね。
ただし不幸中の幸いで、周囲のメンツもそんなに演技力が高いとは言えないので、桜井日奈子はそんなに悪目立ちしていない。

とは言え、桜井日奈子だけに全ての罪を背負わせるのは酷というものだろう。それは「彼女を選んだ側にも責任がある」ってことじゃなく(それもあるけど)、他にも問題は色々とあるってことだ。
シナリオ方面でも、問題は多い。まず導入部からして、違和感がある。
最初に光希が登場し、「離婚してパートナー交換って」と茗子に話しているんだけど、そんなに軽く片付けちゃってもいいのかと。
「両親が離婚してパートナー交換する」って、ものすごく重大な出来事だし、異常事態だよね。それなのに、もう光希は知らされているから、淡々と説明している。それに茗子が驚くことも無い。説明が雑なこともあって、こっちも淡々と受け止める羽目になる。
つまり、この話の大きな特徴である「両親が離婚してパートナー交換する」という仕掛けが、何の効果も生まない要素と化しているのだ。

それ以降の展開でも、雑な処理が次から次へと訪れる。
例えば、光希が教室に入ると遊がいて、女子生徒たちに囲まれているというシーン。
まず「光希が遊を発見する」というシーンのカメラワークからして気になるが、そこは置いておくとしても、光希と遊が話す様子を見た女子生徒たちが少し離れて喋っているだけで済ませるのはダメでしょ。
彼女たちはイケメンの遊に浮かれて話し掛けていたわけで、そんな相手が光希と親しげにしていたら、どんな関係なのか即座に尋ねたくならないかね。なんでスルーしちゃうのよ。

それと、そこに引っ掛かる人は少ないだろうが、廣木隆一が監督と脚本を務めているってのも、果たして正解だったのかどうか。
これまで廣木隆一は『ストロボ・エッジ』『オオカミ少女と黒王子』『PとJK』といった少女漫画原作の映画を手掛けている。でも、そっち系のジャンルが得意な人には思えないんだよね。
この映画にしても、そもそもが「両親の夫婦交換によって共同生活が始まる」という荒唐無稽極まりない設定だし、かなり軽妙で誇張したタッチがふさわしいはずなんだけど、そこの振り切り方が甘すぎるんだよね。
例えば6人の共同生活を明かされた光希が驚くシーンでも、もっと弾けないと喜劇としての効果は全く出ないのよ。

どうやら廣木隆一は、この映画を生真面目に描こうとしているみたいなんだよね。しかも、最後は感動的に締め括ろうとまでしている節がある。
だけどね、この作品って、基本設定の部分からして、マジにやったら失敗することが目に見えているでしょ。
だって、両親が「離婚してパートナー交換し、共同生活を始める」と急に言い出すんだぜ。
それは子供への誠実さに欠ける無責任で身勝手な行為なのに、罪悪感を抱く様子も全く見えない。
なので、普通に描いたら、双方の両親がクズどもにしか見えなくなってしまうのよね。

それに、留美の光希に対する「遊くんのこと、好きになっちゃダメよ。これ以上、ウチの中を複雑にしないでよ」という警告も、「お前が言うな」って話でしょ。
あと、同居が始まったばかりの段階で要士が好きな異性のタイプを尋ねるのも、デリカシーの無さを感じるぞ。
遊が「あのテニス部の奴だろ」と言うと要士は「今のは無神経だぞ」と注意するけど、「どの口が言うのか」と言いたくなるわ。
遊は反省して詫びを入れているけど、光希に批判された両親ズは何も行動を取っていないしね。

そんなこんなで「両親ズが身勝手で無責任な連中に見えてしまう」という問題を避けようとしたら、「いかにも漫画チック」にバカバカしく誇張するぐらいしか手は無いんじゃないかと思うのだ。
感動的な恋愛ドラマなんて、もっての他だ。
この作品で感動的な恋愛ドラマを描こうとしても、それはコンビニの食材でフランス料理のフルコースを用意するぐらいの難題だ。
「絶対に無理」とまでは言わないけど、そんな無謀なことに挑戦する意味は全く無いよね。そういう企画ならともかく、そうじゃないんだからさ。

あと、127分という上映時間は長すぎるよ。
それに見合うだけの中身が詰まっているってことじゃなくて、単に間延びしていてテンポが悪いだけにしか感じない。どうせ127分の尺を割いたところで、持ち込んだ要素を全て綺麗に捌いているわけではないしね。
例えば茗子と名村の恋愛劇なんかにしても、何のために持ち込んだのかサッパリ分からない程度の扱いに留まっている。
もちろん「原作にあるから」ってことなんだろうけど、この映画に関しては「まるで要らない要素」と化している。その恋愛劇が、光希の考え方や行動に影響を及ぼすことなんて全く無いし。銀太や亜梨実にしても、恋のライバルとして充分に活用できているとは到底言い難いし。

肝心の両親ズにしても、光希を怒らせた夕食シーンの後、40分ぐらい姿を消しちゃうんだよね。それ以降も「たまにチラッと出て来る」という程度で、すっかり存在感を失っているし。
結局、こいつらって「遊と光希の血が繋がっているかもしれない」と匂わせるためだけの道具になってんのよね。匂わせるっていうか、「絶対に繋がってない」ってのはバレバレだから、「遊と光希が誤解する」ってことだけど。
ともかく、「夫婦交換で全員による共同生活を始める」という初期設定は奇抜だけど、まるで有効活用できていない。
あとさ、最後の会食シーンで6人がマーマレードを回しているんだけど、すんげえ不細工な描写だよね。そこまでして、無理にマーマレードを登場させる意味が全く無いぞ。

(観賞日:2019年6月7日)

 

*ポンコツ映画愛護協会