『満月のくちづけ』:1989、日本

高原里絵は高校生。友人の智子、麻美、悦子が家に遊びに来た。里絵は美術教師の澤田恭介に恋しているが、彼に打ち明けてはいない。おまじないが好きな智子は里絵の恋を成就させるためのおまじないをしようと提案する。
智子は恋の精霊メディーヌを呼び出す儀式を開始する。しかし、麻美がイタズラ半分で小道具のワインを飲んでしまったため、儀式は失敗に終わる。智子は儀式の失敗によって悪霊が召還され、誰かに乗り移ってしまうのだと告げる。
翌日、澤田に対して積極的にアプローチする麻美の姿を見て、里絵は思わず「麻美なんか死んじゃえ」とつぶやく。その直後、麻美はトイレで何者かによって殺される。里絵は澤田と体育教師の真弓が付き合っているのを知るが、真弓は体育倉庫で何者かに殺される。
智子は満月の光を集めれば悪霊を退治できることを突き止める。しかし今夜の12時を過ぎると満月が欠け始め、そうなれば悪霊に取り憑かれた者は人間に戻れなくなってしまう。里絵は自分に悪霊が取り憑いたことを確信し、澤田に助けを求めるのだが…。

監督は金田龍、脚本は福士俊哉&金田龍、製作は大里洋吉&山本久&出口孝臣&内藤栄一、企画は渡辺正憲、プロデューサーは渡辺正憲&飯島茂、撮影は斉藤正広、編集は菊池純一、録音は深田晃、照明は石垣悟、美術は丸尾知行、音楽は小六禮次郎。
出演は高原里絵(深津絵里)、寺脇康文、松村亜希子、川嶋朋子、山本照美、三谷悦代、今村明美、三宅裕司、小倉久寛、池内心、西條紀子、八木橋修、山崎大輔、塩ノ谷和康、川添法臣、鶴田史郎ら。


ホラーに恋愛ドラマを絡めようとしているのだろう。
だが、結局はどっち付かずの作品になっている。
基本的にはホラー映画なのに、心理的に怖がらせるような演出が乏しい。
そういう意図の見える演出も無いわけではないが、ほとんどが空回り。
つまり、ちっとも怖くないのである。

冒頭、里絵が夢の中で森にいるという場面が長々と映し出されるが、その時点で既に退屈を感じてしまう。その夢に里絵がこだわるのも、わざとらしさを感じる。
全体的にスローテンポなのだが、それを退屈だと感じさせない工夫が足りない。

麻美や真弓の死体が他の生徒や教師に発見されるようなことはない。
だから周囲の人間は恐怖の中には存在しない。
もちろん、警察が動き出すようなことも無い。
つまり、里絵と友人の少数だけが怖がっているという状況なのだ。

時間が進むにつれて、どんどんストーリーは破綻していく。
どのキャラクターの行動もメチャクチャで、訳が分からない。
この手の話に、それほどリアリティを求めようとは思わない。
が、行動にリアリティが全く無いというのは、大きな問題だろう。

中心軸が非常に曖昧で、どういうポイント、どういう方向性で恐怖を生み出そうとしているのかも不鮮明だ。そもそも、「悪霊が乗り移る」という部分に説得力を持たせるような演出が弱いから、どれだけ登場人物が怖がろうが、観客は怖さを感じないし、ストーリーの盛り上がりも感じないのだ。

 

*ポンコツ映画愛護協会