『守ってあげたい!』:1999、日本
安西サラサはカラオケボックスでバイトをしている20歳のフリーター。だが、恋人のコージにフラれたことをきっかけに、何となく自衛隊に入隊してしまう。サラサが配属されたのは、落ちこぼれを集めた婦人教育隊3班だった。
サラサ以外のメンバーは、ミリタリーおたくの島馬京子を始め、ファザコンの牛尾衛子、成金娘の桜吹雪鳥子、イジメられっ子の亀田ひろみ、元レディースの鰐渕景子、女子プロレスラー崩れの大熊ゆかりといった面々。
悪魔の三曹と呼ばれる中蜂あやめ班長の厳しい訓練に耐える毎日が続くが、3班は落伍すれすれで何とかついていくのが精一杯。不平不満を口にしながら、それでもどうにか最終訓練までたどり着いた。最終訓練は富士演習場でのコンパス行進だ。
中蜂が指名した亀田を小隊長として、コンパスと地図だけを頼りに目標地点に向かう3班。しかし訓練の途中でどしゃ降りの雨が降り出し、3班は完全に道に迷ってしまった。そして彼女達が偶然行き着いたのは、土砂崩れで人が生き埋めになっている事故現場だった…。監督&脚本は錦織良成、原作はくじらいいく子、製作は日下部孝一&石川富康&錦織良成&山下暉人&布川ゆうじ&高橋一平&加藤哲朗&深谷隆之&加藤肇、プロデューサーは土橋聞多&小林智浩&小林広司、撮影は芦澤明子、編集は掛須秀一、録音は星一郎、照明は吉角荘介、美術は吉田悦子、装飾は松尾文子、衣装は坂本静香&四方田有子、音楽は本多俊之。
主演は菅野美穂、共演は宮村優子、杉山彩子、白川みなみ、池田真紀、氏家恵、本橋由香、野村りの、温水洋一、宮下順子、古尾谷雅人、眞山典子、緒方由美、瑠川あつこ、島田達樹、高野八誠、松風雅也、井川遥、福井裕佳梨、青井絵理香、村松利史、舟田走、鈴木紗理奈、ミッキーカーチス他。
ヤングサンデーに連載された、くじらいいく子の同名漫画を映画化。防衛庁や陸上自衛隊が全面協力しており、使用される装備は全て本物だ。
自衛隊のPRになると考えたのだろうが、こんなヘボい映画で果たして宣伝効果があるのかどうかは不明。軽い気持ちで入隊した普通の女の子が、過酷な訓練の中で自分自身を見つめ直し、成長していく、という作品だと思っていたら、全く違っていた。
過酷な訓練はあるが、主人公は成長しない。では『ポリスアカデミー』のようなノーテンキなコメディかといえば、そういうわけでもない。序盤のノホホンとした感じは良し。しかし、そこから婦人自衛官教育隊WACに入り、教育訓練を受ける中で次第にノホホンが消えていくのかと思いきや、最後までノホホンだった。
緊張と緩和によって面白味が生まれてくるはずなのだが、緊張が無いので緩みっぱなし。3班の面々の性格付けがほとんど生かされない。そのキャラクターを生かすようなエピソードが無いのだ。個性的なメンバーが集まっているはずなのに、個性を強烈にアピールような演出は無く、軽く表面をなぞる程度に終わっている。
中蜂あやめ班長を演じるのは杉山彩子だが、とても「悪魔の三曹」とは感じられず、ミスキャストと言っていいだろう。3班の面々にしても、学芸会でも見ているかのような雰囲気にさせられてしまった。
これは彼女達の責任というよリ、キャラ設定に問題があるのかもしれないが。前半でエリート班らしきメンバーとイザコザを起こす場面があったのだが、そのエリート班はそれだけで姿を消してしまう。彼女達は比較対象として後半も続けて登場させるべきだった。その優秀な訓練ぶりを見せることで、3班がいかに落ちこぼれなのかを見せるべきだった。
中盤、中蜂が幼い頃に飛行機事故から奇跡的に生還したという過去を知ったサラサが、生き方について考える場面がある。彼女の心に変化が訪れる大事な場面だが、その変化を台詞で説明してしまうのは違う。あの場面は映像と表情だけで充分なのだ。
で、考え方が変わったはずのサラサだが、その後も一向に変わっていない。相変わらずダメダメな状態が続く。彼女だけでなく、3班全員が最後まで全く成長しておらず、災害現場でも何の役にも立たない。これまでの苦労は無駄だったようだ。コンパス訓練などは、もっとテンポ良く見せるべき。ずっとノロノロ歩き続けるので、全く盛り上がらない。もっと畳み掛けるような展開が欲しかった。
で、コンパス訓練がクライマックスかと思ったら、まだ次の展開が待っている。そこでもダラダラと話が続く。内容が薄いのに、あまりにも長すぎる。構成や演出にかなり難がある。ノリが非常に悪く、チープすぎる展開も多く見られる。女性隊員達も魅力的には見えてこない。
結局、低調な女の子アイドル映画の枠を越えることは出来ていない。