『めぞん一刻・完結篇』:1988、日本

古いアパートの一刻館。未亡人で管理人の音無響子と、住人の五代祐作の結婚を明後日に控えた夜。帰ってきた五代の部屋に住人の四谷、一の瀬、朱美が集まり、宴会を始める。響子は遅くなるかもしれないと言い残して外出しており、まだ帰ってきていない。
四谷達は「管理人さんの帰りが遅いのは恋人に会っているからだ」と言って、五代を不安がらせようとする。ここしばらく誰かからの手紙を待っているという話も始めた。いつも四谷達は五代に無責任な推測を吹き込み、彼の気持ちをオモチャにして遊んでいるのだ。
かつて五代が教育実習を行った高校の生徒だった八神が、一刻館を訪れた。彼女は五代に惚れているが、響子と結婚することは知らない。しかし1階の住人である二階堂がやって来て結婚のことを話してしまい、ショックを受けた八神は悪酔いする。
それからしばらく経って、ようやく響子が戻ってきた。八神は酔った勢いで響子に絡み始め、五代と響子の関係がしっくりいっていないと告げる。響子が誰かからの手紙が届くのを気にして落ち着かない様子を見て、五代は不安になってしまう…。

監督は望月智光、原作は高橋留美子、脚本は島田満&望月智光、脚本協力は原口正宏、製作は多賀英典、企画は落合茂一、プロデューサーは松下洋子、キャラクターデザイン&作画監督はもりやまゆうじ、撮影監督は金子仁、録音監督は斯波重治、美術監督は小倉宏昌、音楽は森英治。
声の出演は島本須美、二又一成、千葉繁、青木和代、三田ゆう子、堀川亮、渕崎有里子、神谷明、鶴ひろみ、荘真由美、榊原良子、大竹宏、矢田稔、若本規夫、古川登志夫、富山敬、京田尚子、富田耕生ら。


TVアニメにもなった人気コミックの映画版。
五代と響子の結婚式直前の夜を描くオリジナルストーリー。
もちろん「めぞん一刻」のファンに向けた作品であり、詳しい説明が映画の中で行われるわけでもないので、原作かアニメ版を見ていないとさっぱり分からないだろう。

どちらかと言えば、アニメ版よりも原作の設定を重視している。
例えば、二階堂はアニメ版には登場しないキャラクターだ。
キャバレーのマネージャーである飯岡が、五代の友人である坂本の先輩だということも、原作だけで使われていた設定である。

「めぞん一刻」のファンに向けた作品だということは明らかなのに、なぜキャラクターデザインをアニメ版と大幅に変えてしまったのかが変わらない。
原作に近付けるのなら話は分かるが、むしろ遠ざかっている。
観客のターゲット層を考えれば、大きなミステイクである。

原作にしろアニメ版にしろ、五代は最後になって男らしさを見せて響子と結婚することになったはず。ところが、今作品ではちょっとしたことでアタフタする男として描かれており、完全に昔の姿に逆戻りしている。
せっかく人間的に成長して結婚まで来たのに、退化させてどうするの。

響子が待っている手紙がストーリーの主軸だと思うのだが、実はそれについて触れられている時間は、それほど長くは無い。
脇役の中では八神が最も大きな役割を与えられているが、それでも彼女の関わるエピソードは、主軸というほどの扱いではない。

結局、何のために作られた作品なのかが良く分からない。
「完結篇」となっているが、既に映画を作らなくても完結はしている。
未処理だった五代と八神の関係をフォローするための作品だとしても、それに映画にするほどのモノではない。ビデオ作品で充分だ。

 

*ポンコツ映画愛護協会