『麻雀放浪記2020』:2019、日本

1945年。戦後、焦土と化した日本は生きる術を失い、わずかな金を求めて博打に群がる男たちで溢れ返っていた。そんな無法地帯に生きる坊や哲は、その日も賭け麻雀に没頭していた。しかし気が付くと彼は五筒を右手に握ったまま、煙草屋の前に倒れていた。起き上がった彼は、そこが浅草だと理解した。しかし自分の知っている浅草とは景色が大きく異なっており、「国軍化絶対反対」のプラカードを掲げたデモ隊がスピーチを行っていた。
そこへ警官隊が駆け付けてデモ隊を殴り始め、仲間だと誤解された哲も襲われる。慌てて逃亡した彼は、街に設置されている監視カメラが「登録なし」「出生不明」というデータを出していることを全く知らなかった。彼は自分がいた麻雀クラブ「オックス」へ行くが、「浅草バッティングスタジアム」という別の建物に変わっていた。近くの壁には2020年の東京五輪のポスターが貼ってあり、ゴミを捨てに来た男が「あんだけ税金使って、全部パー」と中止になったことを話した。
哲は1940年の東京五輪だと誤解し、「5年前に開催されたんだったな」と口にした。男が「今年の夏の開催予定だった」と言っても、まだ哲は自分がタイムスリップしたことに気付かなかった。男は終戦についても「3月3日」と言い、今年が2020年だと哲に教えた。同じ頃、東京五輪組織委員会は会合を開いていた。委員の高山は、「日本が世界最大のAI輸出国となれば、あらゆる問題が解決されます」などとプレゼンする。「再来年に予定されている自衛隊の国軍移行も含めて」と彼が話を続けようとすると、委員長の杜は「そんなことはお前に言われなくても分かってるんだよ」と結論を急がせた。
平山は「世間にAIをアピールするために、中止になった五輪を別な形で復活させます。麻雀五輪です」と言い、空前の麻雀ブームが世界で起きていると告げる。彼は「AIが人間に勝てば宣伝になる」と主張し、建設が中断した新国立競技場に特設会場を作る計画を明らかにする。「それで、AIは人間に勝てるのか」と杜が問い掛けると、林田教授が現れた。彼はAIは必ず人間に勝てると自信満々に告げ、互角に戦える人間を見つけることさえ困難だろうと述べた。
当ても無く街を歩いていた哲は、コスプレ麻雀店「てん・パイ」のチラシを配っているドテ子と出会う。コスプレ女子と麻雀が出来る場所だと聞かされ、哲は店へ赴いた。全自動麻雀卓を見た哲は驚愕するが、学ラン姿の彼を見たドテ子と同僚は何かのキャラに成り切っていると思い込んだ。ドテ子たちが安い手で上がるのに憤慨した哲は、「もっと命懸けて上がったらどうなんだ」と声を荒らげた。彼が金を払うよう要求すると、賭博は犯罪だと男性店員が注意した。
ゲーム代の支払いを求められた哲は、昔の百円札を麻雀卓に叩き付けた。彼は近所の交番に突き出され、警官がスキャナーを使って個人データを確認しようとする。しかしマイナンバー登録されていないため、何のデータも読み取れなかった。ドテ子は交番に駆け付け、哲を連れて逃げ出した。哲は「礼は言わねえぞ」と冷たく去ろうとするが、空腹で倒れてしまった。ドテ子がどじょう鍋を御馳走すると、哲は「空襲で店が焼けちまったけど、一度食ったことがある。この味だ。懐かしい」と泣き出した。
キャラ設定だと思い込んだドテ子がスマホで昭和20年の東京の風景を見せると、彼は「俺がいた時代だ」と告げた。普段の仕事を問われた哲は、「博奕打ちだ」と答える。彼は『オックス』という店で九蓮宝燈を出したこと、体に電気が走って気付いたら路地に倒れていたことを説明する。ドテ子は東京第24特別地区へ哲を連れて行き、自分が所属する芸能プロダクションの事務所に招き入れた。そこは住居と兼用になっており、ドテ子と社長である大恩寺クソ丸が住んでいた。
そこは零細プロダクションで、クソ丸はドテ子のマネージャーも務めていた。クソ丸は哲に、ドテ子は誰とでもセックスする女だと教えた。クソ丸は最近まで戦争が続いていたこと、日本が敗れたこと、その影響で五輪が中止になったことを哲に説明する。哲は『オックス』のママであるゆきの家で居候していた頃の出来事を振り返る。彼はゆきに惚れていたが、完全に子供扱いで体は許してくれなかった。なぜ体を許してくれないのかと哲が尋ねると、ゆきは一流の雀師になることを要求した。
ドテ子はアイドルが対戦する麻雀番組に出演するが、なかなか勝てなかった。見学に来ていた哲は、「次に負けたら終わりだ」と口にする。機材トラブルで停電が起きたため、収録は中止になった。クソ丸はプロデューサーに「また呼んでくださいね」と頼むが色よい返事は貰えず、ドテ子に枕営業を指示した。哲たちがスタジオを出るとドテ子の熱烈なファンであるドクが待っており、「ドテ子のために、電磁パルスでスタジオの機械を壊してやったんだ」と満足げに告げた。
事務所に戻ったクソ丸は、VRゴーグルを装着してドテ子とセックスした。哲が呆れて事務所の外へ出ると、ドテ子が追って来た。VRでシマウマとセックスしていたことについて、彼女は「普通のセックスじゃ感じなくて。相手が人間じゃダメなの」と弁明した。「だったらやらなきゃいいだろ」と哲が声を荒らげると、彼女は「やりたいって言われたら断れないんだもん。もし断って嫌われたら怖いから」と漏らす。彼女は「でもチューは誰ともやらないから。シマウマともやらないから」と言い、立ち去る哲を追い掛けた。
林田が新型AIのユキを紹介する映像を見た哲は、ゆきと瓜二つなので驚いた。事務所に戻った彼は、落雷でタイムスリップしたのだとドテ子に話す。詳細を問われた彼は、タイムスリップした日の出来事について語る。その日、哲は『オックス』へ行き、博奕打ちのドサ、女衒の達、出目徳と卓を囲んだ。哲が手を貸して出目徳が天和を上がり、腹を立てたドサ健は青天井ルールを提案した。達は断って店を去り、ゆきが代わりに参加した。
また出目徳がイカサマを仕掛けたと睨んだドサ健だが、証拠を見つけることは出来なかった。出目徳は天和で上がり、負け続けたドサ健は土地の権利書を奪われた。勝負が続く中、出目徳は九蓮宝燈で上がるが心臓発作で命を落とした。ドサ健は「死んだら終わりだ」と冷たく言い放ち、出目徳の稼ぎを3等分して勝負を続ける。哲は狙い通りに九蓮宝燈を上がろうとするが、五筒を卓に出そうとした時に落雷でタイムスリップしたのだった。
ドテ子は哲の話が真実だと感じ、また九蓮宝燈を出せば元の時代に戻れるのではないかと言う。クソ丸は「やるだけ時間の無駄だ」と一蹴するが、哲は「勝負しねえで生きる奴に出来ることはな、長生きだけだ」と感情的になる。彼は2人と麻雀をやって九蓮宝燈を出すが、何も起きなかった。クソ丸は哲を「良く見りゃイケメンだ」と評し、自分のプロデュースでデビューするよう持ち掛けた。「俺はヒリヒリした麻雀が打ちたい。それで九蓮宝燈を出すんだ」と哲が言うと、クソ丸は学ランにふんどし一丁の「昭和哲」というキャラで売り出すことにした。
麻雀番組に出演した哲は見た目の滑稽さと裏腹の圧倒的な強さを見せ付け、たちまち人気者になった。一気に稼ぎの増えたクソ丸は喜ぶが、強い相手と麻雀が打ちたい哲は苛立ちを募らせた。調子に乗ったクソ丸は豪遊し、ふんどししゃぶしゃぶ店もオープンした。哲はドテ子から麻雀アプリを教えてもらい、ずっとランキングの1位に君臨するミスターKと戦いたいと考える。2千万人の中で10位以内に入らないと対戦できないと知った彼は、寝る間も惜しんでネット対戦を重ねた。
2位に入った哲はミスターKと勝負し九蓮宝燈をテンパイする。外では雷が鳴り、哲は元の時代に帰れるのではないかと期待する。しかしミスターKがピンフのみで上がるという逃げの手に出たため、哲は敗北した。日本人工知能研究所でユキを視察した杜は、麻雀五輪での対戦相手について林田に尋ねた。するとユキは、哲とミスターKを指名した。一方、ネット対戦に落胆した哲は捨て鉢になり、賭博場でチンチロリンに加わる。ドテ子が止めに来ても、彼は耳を貸さなかった。
哲が札束を出すと他の面々は尻込みするが、左腕の無い老人だけが勝負を受けた。老人は最初の対決に勝つと、さらに続けるよう要求した。哲が今ので全額だったことを告げると、老人は「何でもいい。そこの女でも。俺は賭けれる物があれば、何でも賭けて来た」と言い、腹部の手術跡を見せた。そこへ警官隊が突入し、賭博場にいた連中に殴り掛かった。哲も捕まりそうになるが、ドテ子が警官を殴って彼を連れ出した。
ドテ子がラブホテルに駆け込むと、哲は先程の老人のことを思い出して「俺は怖かった。何が博奕打ちだ」と呟いた。ドテ子は「哲さんに元気になってほしい。哲さんとなら出来るかも」と言い、哲とセックスしようとする。哲もその気になったが、ドテ子が嘔吐したので中止した。マイナンバー登録していたドテ子の居場所は簡単に露呈し、警官隊がラブホテルに突入して2人は逮捕された。高山は哲の面会に赴き、麻雀五輪でミスターKと勝負するよう持ち掛けた。ただし条件として、謝罪会見を開くよう要求される。哲はドテ子の釈放を条件に出し、その要求を受け入れた。
留置所で左腕の無い老人と再会した哲は、チンチロリン対決を迫られた。「お前は何を賭ける?」と問われた彼は、「何でもいい」と言う。敗北した老人は自分の右目を抉り取り、哲は絶叫した。哲は会見を開き、低姿勢な態度で謝罪した。ドテ子は釈放され、事務所に戻った。哲が麻雀五輪に出て九蓮宝燈を狙うと知った彼女は、「そんなに昭和に帰りたいの?」と腹を立てる。「俺は博奕打ちだ。勝負できるんだったら、どこへでも行く」と哲が言うと、ドテ子は昭和20年の新聞記事を見せる。そこには「オックス」の落雷事故で3名が死亡したと書かれており、ドテ子は「昭和に戻ったとしても、哲さんも死んじゃうかもしれないよ」と話す。ドテ子が麻雀五輪への出場に反対しても、哲の考えは変わらなかった…。

監督は白石和彌、原案は阿佐田哲也「麻雀放浪記」(文春文庫・刊)、脚本は佐藤佐吉&渡部亮平&白石和彌、プロット協力は片山まさゆき、製作は村松秀信&市原高明&丸橋哲彦&和田倉和利&後藤明信&中部嘉人、エグゼクティブプロデューサーは紀伊宗之、プロデューサーは谷島正之&甘木モリオ、アソシエイトプロデューサーは神保友香、撮影は馬場元、美術は今村力、照明は鳥羽宏文、録音は浦田和治、編集は加藤ひとみ、音楽は牛尾憲輔、主題歌「Feel the BEAT」はCHAI。
出演は斎藤工、もも(チャラン・ポ・ランタン)、ベッキー、的場浩司、竹中直人、小松政夫、堀内正美、吉澤健、舛添要一、ピエール瀧、村杉蝉之介、岡崎体育、音尾琢真、井口成人、土屋和彦、信太昌之、矢島健一、ウダタカキ、ささの翔太、竜のり子、森優作、田村優祈、水口美香、松永拓野、川又静香、郁美、菅原健、岡部尚、本木幸世、岡本智礼、塚本舞、加藤康雄、青山ひかる、鈴木ふみ奈、倉持由香、懸豪紀、一條恭輔、紺野真、駒田裕亮、橋本侑哉、佐藤聖也、藤田晋之介、樋口大起、安藤彩華、松隈達彦、小豆畑雅一、全力少女R、生島勇輝、沖原一生、大沢直樹、冨永竜、西原誠吾、柴田鷹雄、大津尋葵、平原テツ、黒田大輔、野中隆光、緑川静香、白井美空、藤原一生、仁科あい、ヴァニラ他。
ナレーションは伊武雅刀。


阿佐田哲也(色川武大)の小説『麻雀放浪記』を基にした作品。
監督は『孤狼の血』『止められるか、俺たちを』の白石和彌。
脚本は『彼岸島デラックス』『蠱毒 ミートボールマシン』の佐藤佐吉、『3月のライオン』『ビブリア古書堂の事件手帖』の渡部亮平、白石監督による共同。
ドテ子をもも(チャラン・ポ・ランタン)、ゆき&ユキをベッキー、ドサ健&ミスターKを的場浩司、クソ丸を竹中直人、出目徳&中国人のヤンを小松政夫が演じている。

『麻雀放浪記』は1984年に和田誠が監督を務めて映画化されており、かなり評価が高い。
同じ原作を再映画化するに当たり、白石監督は「1984年版のリメイクにしたくない」という思いがあったらしい。そこで「大胆にアレンジし、全く新しい作品にしよう」と考え、まずはルックに特徴を持たせるために全編をiPhoneで撮影している。
それで映画が安っぽくなっているとか、そんなことは全く無い。時代の変化や技術の進歩によって、もはやスマホでも映画を撮影できるようになったわけだ。
ただし、じゃあiPhoneで撮影したことが優れた効果を発揮しているかというと、それも感じないけどね。

当初、白石監督は1984年版が原作の第1巻「青春編」を基にしていたのに対し、第2巻「風雲編」を映像化することも考えたらしい。
だが、決して予算が潤沢とは言えない制作環境だったため、「戦後の雰囲気を出すのは無理」という理由で断念した。
そんな中、映画を制作したシネバザールのプロデューサーがタイムスリップする設定を提案し、その方向で企画が進んだそうだ。
タイムスリップと書いた時点で分かるかもしれないが、つまり原作を換骨奪胎した全くの別物ってことだ。

原作や1984年版を知った上で本作品の粗筋を読めば、いかに原作と似ても似つかぬ内容であることはハッキリと分かるだろう。
タイトルとキャラクターの名前を借りただけであり、世界観やテーマが共通しているというわけでもない。何から何まで違うし、原作へのリスペクトも感じさせない。
ここまで違う作品に仕上げるのなら、もはや『麻雀放浪記』を映画化する意味なんて無いんじゃないのか。
色川武大夫人は再映画化を希望していたらしいが、こういう内容を期待していたわけではなかったはずだ。原作を無視したタイムスリップ物という企画になった時点で、映画化は中止すべきだったんじゃないか。

白石和彌監督は本作品について、「おバカなブラックコメディー」とコメントしている。
たぶん原作を読んでいなくても大抵の人は分かると思うが、もちろん『麻雀放浪記』はおバカなブラックコメディーではない。ではパロディー的に扱っているのかというと、それも違う。
いや、そもそもパロディーだとしても完全にアウトなんだけど、まだ「苦肉の策」「他の選択肢は無かった」ってことなら理解は出来なくも無い。
でも、他にも色々と手はあったはずなのに、なぜかおバカなブラックコメディーという方針を立てちゃってるのよね。

さらに困ったことに、じゃあ「原作を無視している」ということをひとまず脇に追いやって観賞してみたらどうなのかというと、ハッキリとした「どうしようもないポンコツ映画」でしかないのだ。
「おバカなブラックコメディー」として面白いのかと問われたら、「ちっとも面白くない」と即答できてしまうのだ。
まず「おバカ」ではないし、「ブラックコメディー」にもなっていない。
風刺に使えそうな要素は幾つも盛り込まれているが、全て「表面だけ軽く食い散らかして放り出す」という状態になっている。

「第三次世界大戦で日本が敗北している」とか、「東京五輪が中止になっている」とか、「再来年に自衛隊の国軍移行が予定されている」とか、「マイナンバー制度によって国民は徹底的に管理されている」とか、色々と風刺になりそうな要素はある。
だが、いずれも「そんな設定ですよ」「そんな世界観ですよ」というだけで、掘り下げようという意識は全く見えない。
風刺ってのは、初期設定を用意するだけでは成立しないのよ。
その設定を利用して、いかに真正面とは異なる角度から掘り下げるかってのが重要なのよ。

架空の2020年の世界観や映像表現は、超か幾つも付くぐらい適当。
戦争で敗北したんだから街は荒廃しているのかというと、実際の東京と何も変わらない。
「場末の賭博場」みたいな場所を映すシーンもあるが、それは「敗戦の街」のアピールには繋がらない。敗戦によって日本が貧しくなったり人々が苦しい生活を送っていたりする様子も無いし、最先端AIの開発も滞りなく進んでいる。
敗戦の影響なんて、「東京五輪の中止」という部分以外では何一つとして感じられない。

東京五輪が中止になったからと言って、代わりに麻雀五輪を開催すると決定するのは、ものすごくバカバカしい。それがAIのアピールを目的にしたイベントってのも含めてね。
でも、最初から「おバカな作品」を狙っているのだから、「東京五輪の代わりに麻雀五輪」という設定は構わない。
問題は、そこのバカさ加減が足りていないってことだ。
徹底して振り切らないと、こういうのって陳腐になってしまうだけなのよ。でも、そこの開き直りが全く足りないし、「こんなバカなことをやってますよ。どうです、バカでしょう」という安い感覚も伝わってくる。

哲はドテ子から仕事を問われた時、『オックス』という店で九蓮宝燈を出したこと、その瞬間に体に電気が走って気付いたら路地に倒れていたことを説明する。その後、今度はAIユキを見て事務所へ戻った後で「落雷でタイムスリップした」と言い、その時の回想シーンが挿入される。
これって、完全に二度手間になってるよね。最初の説明の時点で回想シーンを入れて、説明しちゃえば済むことだよね。そこを分割する意味って、何も無いよね。
もちろん、最初の方の手順を無くして、「落雷でタイムスリップした」と言ってからの手順だけにしてもいいけど。
ともかく、2つに分ける意味は無い。

監督は意図的にタイムスリップ物のパターンを使って話を構築しているようだが、その扱いも雑。だからタイムスリップ物としての面白さは乏しい。
例えば「過去から来た主人公が未来の技術や道具に驚いたり困惑したりする」とか、「過去から来た人物の言動に周囲の面々が翻弄される」とか、そういうネタは色々と用意されているが、全く笑いに繋がらない。
「とりあえず持ち込んでみた」というだけで、そこを活用して喜劇を膨らませようという意識が薄弱だからだ。
また、タイムスリップと関係の無いトコで持ち込まれる喜劇としての趣向も、完全に外している。クソ丸の放屁によるネタも、ただ寒々しいだけ。

麻雀のシーンにも、まるで引き付ける力が無い。
例えば『オックス』での勝負を描く回想シーンにしても、ロマンも無ければ情念のドラマも無い。緊迫感も無ければ、高揚感も無い。
ゆき、ドサ健、女衒の達、出目徳は揃いも揃って中身が空っぽのキャラなので、そいつらのキャラで引き付けることも出来ていない。
クライマックスとなる麻雀五輪も、まるで盛り上がらない。そこに参加するユキ&ミスターK&ヤンが、ゆき&ドサ健&出目徳と瓜二つなのも、ただバカバカしいだけ。
なぜ瓜二つなのかという理由は無くて「単なる偶然」なのだが、それも含めて全てが安っぽい。

(観賞日:2021年2月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会