『前田建設ファンタジー営業部』:2020、日本

2003年。前田建設の広報グループで働く土井航は、グループ長の浅川輝之から「これ知ってる?」と『マジンガーZ大図鑑』を見せられた。「スパロボとかで」と土井が答えると、浅川はスパロボを知らないのに知っているフリをした。彼は『マジンガーZ』の格納庫について、「ウチの技術なら作れるんじゃないかなあって」と話す。そこへ主任の別所駿太が通り掛かり、再々放送で『マジンガーZ』を見ていたと話す。元土木設計部の別所は格納庫が作れるかと訊かれ、ダム建設の技術を応用すれば行けるだろうと答えた。
江本千紗も「昔のアニメだから作れると思います」と軽く告げるが、近田博樹は格納庫とダムの構造の違いを指摘して難しいと反論した。別所と近田の口論を面白がって見ていた浅川は、ウェブの広報企画にしてはどうかと提案した。既に彼は「前田建設ファンタジー営業部」という企画提案書を作成しており、設計や見積りは出すが実際には建設しないと説明した。土井たちは呆れるが、浅川が熱い思いを語ると全員がやる気になった。

[PART.1 検討]
ファンタジー営業部の活動がボランティアだと知らされた別所と江本は、すっかりやる気を無くした。土井が画像を使ったホームページを作成すると、別所は「全部テキストでいいんだよ」と文句を付けた。浅川は事前に周囲に根回しし、外堀を埋めていた。アニメオタクの近田だけは企画に前向きで、マスコットキャラクターも用意した。土井が版権を取れないだろうと言うと、別所と江本は企画が中止になると確信して喜んだ。しかし交渉に出向いていた浅川が戻ってきて、無償で使っていいと言われたことを報告した。
近田は私物のDVDを持参しており、格納庫が登場する『マジンガーZ』の冒頭シーンを流した。彼は詳しく解説するが、いちいち土井たちが設定に文句を付けるので激しく苛立った。別所は土木営業部・第一営業部長の入江雄一郎から、「ふざけた形で見積もりを出して責任を取れるのか」と凄まれた。土井は技術部の先輩から、「いい加減な設計でウチの評判を落としたらどうするんだ」と詰められた。食堂に行った2人は、浅川が経営管理部長から厳しく非難されている様子を目撃した。しかし浅川は全く気にしておらず、能天気な態度で軽く受け流した。それを見た別所は、「俺、言うわ」と土井に告げた。
会議に参加した別所は浅川に抗議せず建設的な意見を述べ、土井は落胆した。残業していた別所は、警備員の河野保から声を掛けられた。河野は実際に格納庫を作ると思い込んでおり、興奮した様子で握手を求めた。帰宅した別所が『マジンガーZ』のDVDを見ていると、息子が起きて来た。息子は別所の隣に寝転び、一緒に『マジンガーZ』を鑑賞した。翌日、浅川と近田は、話数ごとに格納庫のデザインが違うことに気付いた。土井と江本が企画の中止を促すと、別所が現れた。彼は自身の考えを熱く語り、設計図を見せた。別所のプレゼンを外で聞いていた入江は、「世界を救うデカい仕事なんだから、気を抜くなよ」と応援した。

[PART.2 掘削]
別所と近田が光子力研究所の場所を特定するために話し合っていると、退屈した江本は眠りに落ちた。別所たちは過去の工事から使えそうなデータを引っ張り出そうと考えており、土井と江本は技術研究所に派遣された。土質担当の山田純平は掘削について詳しく解説するが、全く理解できない江本は眠りに落ちた。土井と江本が去ろうとすると、山田が追って来てブレーカー掘削を勧めた。現場へ案内した彼は、そこでも詳しく説明した。
やる気になった江本はデータをまとめるが、浅川から「掘削は、そんなに要らないかな」と軽く告げられた。江本が技術研究所へ行くと、山田はファンタジー営業部の企画のために残業していた。江本は「掘削は地味なので、このままでは割愛される」と言い、もっと派手な内容を出すよう求めた。山田は自分の考えた派手な内容を語るが、今まで以上に地味だった。しかし彼は油圧ジャッキでマジンガーZを出動させる装置を考えており、それを江本から見せられた浅川たちは「面白い」と気に入った。

[PART.3 ゲートの開閉]
ホームページのアクセス数は全く増えていないが、土井は気にせずに淡々と仕事をしていた。彼は機械グループ・土木部長の不破俊美から、「機械のことで困ってることがあったら相談に乗る」と告げられた。土井は「大丈夫です」と遠慮するが、不破が執拗に付きまとうので仕方なく「プールの底を水が入った状態で開閉させたい」と相談した。すると不破は構造的な欠陥を指摘し、ダム建設の専門書を渡して考えるよう促した。一晩の勉強で導き出した答えを土井が説明すると、彼は「ダムのセンスがある」と称賛した。
不破は別の問題点を指摘し、また専門書を渡して考えるよう指示した。土井が勉強して答えを出すと、不破は休日にバイクでダムへ連れて行く。不破の解説と熱い思いを聞いた土井は専門書を読んで勉強し、スライド方式でゲートを開閉する方法を浅川たちにプレゼンした。しかし別所は河野の指摘を受け、69話でマジンガーZを横移動させて出撃させるシーンがあることを知った。別所や近田が頭を抱えると、土井はジャッキごと台車に乗せる方法を提案した。別所たちは無理だと考えるが、土井は「だったら諦めるんですか」と熱く訴える。浅川は土井たちに、横移動ジャッキアップの実現に向けた再検討を指示した…。

監督は英勉、原作は前田建設工業株式会社『前田建設ファンタジー営業部1「マジンガーZ」地下格納庫編』(幻冬舎文庫)&永井豪、脚本は上田誠(ヨーロッパ企画)、エグゼクティブプロデューサーは濱田健二、企画・プロデュースは佐治幸宏、プロデューサーは森重宏美&西川朝子&坂口慎一郎、撮影は小松高志、Bカメラは大嶋良教、照明は蒔苗友一郎、美術は金勝浩一、録音は加来昭彦、編集は相良直一郎、VFXスーパーバイザーは大萩真司、特殊造型は星川保、アニメーションプロデューサー・演出は梅澤淳稔、音楽は坂本英城、主題歌は氣志團『今日から俺たちは!!』。
出演は高杉真宙、小木博明、上地雄輔、本多力、岸井ゆきの、六角精児、町田啓太、山田純大、鈴木拓、鶴見辰吾、濱田マリ、高橋努、水上剣星、永井豪、松崎謙二、西原純、藤本浩二、中野順一朗、浦野博士、江端英久、竹内陸、黒田光彦、福田航也、來島光羽大、大藪雄汰、渡辺龍真、渥美麗、川上望美、江口純、小原輝、櫻井エミ、鈴木絵里加、鈴木タカラ、橋信二朗、中岡さんたろう、成神誠大、波多野翔、藤牧優花、三崎栞、宮川太一、森きゅーり、匆山剛志ら。
声の出演は柴田秀勝、田中秀幸、庄司宇芽香。


架空の土木施設の建設計画を立てる前田建設工業の同名プロジェクトをモチーフにした作品。
監督は『3D彼女 リアルガール』『映画 賭ケグルイ』の英勉。
脚本は劇団「ヨーロッパ企画」の上田誠が手掛けている。
土井を高杉真宙、浅川を小木博明、別所を上地雄輔、近田を本多力、江本を岸井ゆきの、不破を六角精児、山田を町田啓太、入江を山田純大、河野を鈴木拓が演じている。
『マジンガーZ』の原作者である永井豪が、本人役で出演している。

浅川から「格納庫の設計や見積もりは出すけど実際には作らない」と説明を受けた土井たちは、呆れた様子を見せる。
ところが浅川が「公共事業は頭打ちで見通しが立たず、建設業界は明るい未来が見えなかった。だが、アニメや漫画の世界に俺たちのブルーオーシャンがあった」などと熱く語ると、他の部署の面々も含めて全員の感情が高ぶって前向きになっている様子が映し出される。
ものすごく大事なシーンだが、説得力は皆無。
そもそも、なぜ急に浅川が『マジンガーZ』の格納庫を作る架空の企画を進めようと言い出すのか、そこからして大いに引っ掛かる。

大事な導入部からして、かなり強引に物語を進めようとしている。
そこを正面突破しようとするのなら、浅川のポジションには「その人物が話すだけで納得させられる」というぐらいの役者を当たるべきだろう。
にも関わらず、そこに役者ではない人物を起用している。
しかも、よりによって小木博明を起用するとは、どういうつもりなのか。のっけから、完全に力不足が露呈している。
誰がやってもキツいとは思うが、それにしても小木博明は無いわ。

浅川の熱い弁舌で全員がやる気になり、熱血モードのタイトルロールに突入する。ところが、それが終わると、ボランティアだと知った別所と江本がやる気を失っている様子が描かれる。
それ、ギャグとして全く成立していないからね。そこをギャグにしたいなら、浅川の弁舌に対する周囲の反応の描写も、タイトルロールを挟むのも、演出として完全にやり過ぎだからね。
あと、ボランティアと知って愕然としたのなら、そのシーンを見せた方がいいでしょ。
なんで「そんなことがあった」とセリフで触れるだけなのよ。

ただ、ボランティアか否かに関わらず、別所と江本の態度が急変しているのは不可解だ。
浅川が『マジンガーZ』の格納庫を作れるかと言い出した時、2人ともノリノリだったでしょうに。別所はアニメを見たことがあると言い、「作れる」と断言していたでしょうに。
それなのに、タイトルロールが終わった途端に「浅川さんに近付き過ぎたら危険なんだよ」と言い出すんだよね。
でも、それを知っていたのなら、なんで浅川が話し始めた時点で「これは乗っかったらヤバい」と気付かないんだよ。

あと、土井の立ち位置が良く分からないんだよね。
たぶん前向きではないはずだけど、ホームページは浅川が喜ぶような物を仕上げている。別所と江本はハッキリとした態度で嫌がっていることを示すが、土井は淡々と仕事をしている。
キャラクター設定として、「あまり感情を前に出さない」ということにしてあるのかもしれないよ。
だけど、むしろ彼を使って「最初は企画を嫌がっていたけど次第に変化して」という風に見せていくべきじゃないのか。

それとは逆に、浅川はやたらとハシャギすぎている。これは演技の付け方として明らかに間違いで、もっと抑えた方がいい。ただ疎ましいだけで、まるで笑えないぞ。
この映画における浅川のキャラは、ものすごく重要なのよ。
ここが身勝手で不愉快なパワハワ上司に見えたら、そこで試合終了みたいなモンなのよ。「やってることはパワハラだけど、なぜか憎めない」という風に見えなきゃ困る。
でも小木博明が演じると、マジで不愉快なパワハワ上司のド真ん中なのよね。これは大きな欠点になっている。

別所や江本は浅川の企画を嫌がっているのに、なぜ反対意見を述べないのか。そりゃあ相手は上司だけど、周囲から白い目で見られたり詰め寄られたりしているわけで。
しかも別所に至っては、浅川が経営管理部長から批判されるのも見ているのだ。だったら、せめて「中止にした方がいいのでは」という程度の意見ぐらいは言えないものかと。
「俺、言うわ」と決意したはずなのに、それが簡単に萎えて建設的な意見を出しちゃうのは、段取りをスムーズに運ぶための手順も説得力も全く足りていない。
っていうか浅川って周囲に根回ししていたんじゃなかったのかよ。なんで企画が始まってから、やたらと批判を浴びるようになってんだよ。

話数ごとに格納庫のデザインが違うことが判明してから、ようやく土井と江本は企画の中止を提案する。そこへ別所が現れ、熱いプレゼンで設計図を見せる。
だが、彼が急に熱い気持ちになる理由がサッパリ分からない。
その前にあるのは、河野から握手を求められるシーンと、幼い息子とDVDを見るシーン。だから、どちらかがきっかけになっているんだろうけど、別所の気持ちに大きな変化が生じるような気配は全く見られなかったぞ。
なので、ただ唐突で不自然なだけの熱血シーンになっている。
っていうか別所の熱血モードも、やっぱり演技が過剰だと感じるなあ。こちにも浅川と同様、もう少し抑制した方がいいよ。

[PART.2 掘削]に入った途端、「話の内容を理解できない江本が眠りに落ちる」というギャグを天丼で描く。しかし、そのパート限りのネタなので、話の流れに上手く馴染んでいるとは言い難い。
あと、そんな風に退屈していた江本が、急にやる気になるのは不自然。
山田が現場で熱く解説するのを聞いた後、急に前向きになるんだけど、どうやら「山田に惚れた」ってことらしいんだよね。でも山田は最初から熱く語っていたので、現場に移動してから江本が急に惚れるのは不自然だよ。
何なら、「顔を見て一目惚れした」ってことでもいいでしょ。軽薄かもしれないけど、上手く描けばコメディーとしては成立するでしょ。

[PART.3 ゲートの開閉]に入ると、土井が不破と出会ってダムを見学し、やる気スイッチが一気に入る展開がある。別所と江本に続いて、最後に残った土井も熱い思いに目覚めるわけだ。
「最初は嫌がっていた面々が、どんどん前向きになって」という展開を描きたかったんだろうってことは、痛いほど良く分かる。
一度に全員を前向きにさせるのではなく、章ごとに1人ずつ変化させていく構成も、間違っているとは思わない。
でも、その見せ方が下手なのよ。心情が変化するドラマに説得力が乏しく、拙速で無理がありすぎるのだ。

根本的に、演出の方向性を間違えているように思えて仕方が無いんだよね。 「大勢の大人たちがバカなことに対して真剣に取り組む」という物語を描こうとする余り、BGMも含めてマジなテイストが強くなり過ぎているように感じるのだ。基本はコメディー映画だってことを、もっと強く押し出した方がいいんじゃないかと。
早い段階から、感動させようとしていることが露骨に見えてしまう。
「1人ずつ順番に、やる気になる」という構成に引っ張られている部分は否めないけど、そこをコメディーとして上手く演出するのが、この映画では大切だったんじゃないかと。

完全ネタバレだが、ラスト直前にはファンタジー営業部が『マジンガーZ』の弓教授と通信して正式な発注を受けたり、ミケーレ軍団の復活が報じられたりする展開がある。弓教授やミケーレ軍団はテレビに映るアニメとして描かれるが、これに土井だけが困惑し、他の面々は平然と「実際に起きている出来事」のように受け止める。
この展開は、明らかにやり過ぎで冷める。
ここから「実は土井の見ていた夢でした」というオチに繋げているが、それは冷めた気持ちに追い打ちを掛けるだけだし。
ラストシーンで浅川の前に実写のデスラー総統(水上剣星がコスプレして演じている)が登場して仕事を依頼するのも、「そういうの じゃないんだよ」と言いたくなるし。

(観賞日:2022年12月2日)

 

*ポンコツ映画愛護協会