『まだまだあぶない刑事』:2005、日本

7年前、横浜の海に消えた横浜港警察署捜査課刑事のタカとユージは、横浜の海に消えた。そんな2人は韓国の釜山で、それぞれ別の組織に潜入捜査官として入り込んでいた。小型核爆弾の取引現場で、2人は顔を合わせることとなった。犯罪組織に素性を明かした2人は、核爆弾を積んだトラックに乗って逃亡するが、途中で爆発を起こした。
横浜に戻ったタカとユージは、オープンカフェで狙撃事件に遭遇した。現場に駆け付けた港署の若手刑事・水島と鹿沼はタカとユージに不審を抱き、手錠を掛けて連行する。久しぶりに港署に戻ったタカとユージは、懐かしい仲間と再会する。トオルが捜査課課長、カオルは少年課課長、松村は港署署長に、それぞれ昇進していた。ナカさんとパパによると、水島と鹿沼のおかげで検挙率がグンと上昇したらしい。水島はIT関係の知識が豊富で、鹿沼はガンマニアだ。
タカとユージはトオルから、7年前に逮捕した銀行強盗犯・尾藤が脱獄しとことを聞き出した。水島と鹿沼から尾藤のアジトを探り当てたとの連絡が入り、タカとユージは現場へ向かう。しかしアジトに突入すると誰もおらず、爆破装置が仕掛けられていた。ユージが海に爆弾を投げ込み、彼らは事無きを得た。
7年前の事件では、尾藤に西村と海童という2人の仲間がいるという疑いが強かったが、彼らは逮捕されていない。タカとユージは、今やIT企業の社長となった西村のオフィスを訪れた。すると、そこには同じくIT企業社長となった海童の秘書・美咲涼子の姿があった。涼子が立ち去ろうとした時、西村は防弾ガラスを突き破った銃弾に貫かれて死亡した。
港署へ戻ったタカとユージの元に、尾藤から電話が掛かってきた。尾藤は、「本当の目的はいずれ分かる。お前らも殺す」と告げた。タカは鹿沼と共に海童のオフィスを訪れるが、彼は不在だった。しかしタカは、最初から涼子が目当てだ。オフィスを出たところで、タカは謎の男たちに取り囲まれて拉致される。一方、ユージは水島と共に、尾藤が脱獄した刑務所を訪れていた。刑務所を訪れたところで2人は謎の男たちに襲われ、ユージだけが拉致された。
タカとユージが連行されたのは、同じ場所だった。そこは、警察庁横浜支部の一室だ。2人の前に、神奈川県警察本部長の深町が現われた。深町は、内閣情報調査室の三橋参事官と警察庁の横田警備局長を連れてきていた。三橋によると、タカとユージには韓国で潜入捜査官の立場を利用し、核爆弾を横流した疑いが掛けられているという。
タカとユージは、警察庁の調査が終わるまで監禁されることになった。タカはユージに、涼子が尾藤による西村殺害を手助けしたという推理を告げた。2人は建物から脱出し、助けに来た水島の車で逃亡する。水島は、涼子からタカに話したいことがあると言ってきたことを伝えた。タカは涼子に会い、海童が尾藤に呼び出されたことを聞かされる。涼子によれば、尾藤を脱獄させたのも、狙撃用ライフルを渡したのも海童だという。
タカとユージは、海童が呼び出されたという倉庫へ行く。すると海童は車の中で殺されており、タカとユージも尾藤に襲撃される。逆に尾藤を追い掛けるタカとユージだが、逃げられてしまった。タカとユージはカオルから、尾藤の脱獄2週間前に鹿沼が刑務所を訪れていることを聞かされた。その直後、尾藤から2人に電話が掛かってきた。尾藤は涼子を人質にしたことを告げ、横浜ファンタジア・パークまで来るよう要求する・・・。

監督は鳥井邦男、脚本は柏原寛司&大川俊道、製作は黒澤満&高田真次、プロデューサーは近藤正岳&服部紹男&飯沼伸之、企画は奥田誠治&遠藤茂行&伊地智啓、撮影は仙元誠三、編集は只野信也、録音は柴山申広、照明は井上幸男、美術は山崎秀満、技斗は高瀬将嗣、音楽は遠藤浩二、音楽プロデューサーは津島玄一、音楽監督は鈴木清司、音楽スーパーバイザーは佐久間雅一、オープニング・テーマ「空の庭」はオレンジペコー、挿入歌「RUNNING SHOT ~HysteriCa mix~」は柴田恭兵、エンディングテーマ「貴女と…」は舘ひろし。
出演は舘ひろし、柴田恭兵、佐藤隆太、窪塚俊介、原沙知絵、浅野温子、仲村トオル、木の実ナナ、小林稔侍、水川あさみ、ベンガル、山西道弘、伊藤洋三郎、石山雄大、田中哲司、四方堂亘、大沢樹生、中島知子、成瀬正孝、海一生、衣笠拳次、長谷部香苗、原田佳奈、林統一、神林茂典、森聖二、飯島大介、賀川幸史朗、江連健司、葉戸里奈、町本絵里ら。


1986年から1987年に掛けて放送されたTVシリーズから始まった「あぶデカ」の劇場版第6作。
TVシリーズそのものは1980年代の2シーズンで終了しているのだが、その後も1996年、1998年と映画及びTVスペシャルが作られている。
その1998年に作られた映画『あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE』から、実に7年ぶりの復活ということになる。

タカ役の舘ひろし、ユージ役の柴田恭兵、カオル役の浅野温子、トオル役の仲村トオル、松村役の木の実ナナ、ナカさん役のベンガル、パパ役の山西道弘、瞳役の長谷部香苗といった御馴染みのメンツが再結集。
劇場版第4作から参加した深町役の小林稔侍も続投。少年課の岸本(伊藤洋三郎)、鑑識課の安田(石山雄大)、警ら課から少年課に移った竹田(海一生)、捜査課の筋肉(衣笠拳次)らもレギュラー組。少年課の愛川(飯島大介)と交通課の土橋(賀川幸史朗)は定年を迎え、それぞれ警察庁とパークの警備員として登場する。
他に、水嶋を佐藤隆太、鹿沼を窪塚俊介、涼子を原沙知絵、少年課の結城梨沙を水川あさみ、尾藤を田中哲司、西村を四方堂亘、三橋を大沢樹生、横田を成瀬正孝、捜査課事務の佐伯佳奈を原田佳奈が演じている。
序盤のオープンカフェのウエイトレスをオセロの中島知子が演じているのだが、その見せ方がワザとらしすぎて鼻につく。

最初にタカとユージがアンダーヴァー・コップとして登場するのだが、日本に戻るとトオルたちは2人が生きていたことに驚く。つまり、彼らは港署の面々が全く知らなかったところで潜入捜査官になっていたということになる。
ところが日本に戻ると、すぐに港署の刑事になって行動する。ここが引っ掛かる。
『フォーエヴァー THE MOVIE』のラストで生死不明となって消えたので、そこと繋げたいという気持ちはあったんだろうが、そんな変なことになるぐらいなら、いっそ何事も無かったように登場させた方がマシだ。

水嶋と鹿沼は最初にタカとユージを捕まえるのだが、すぐに2人に連絡して尾藤のアジトへ呼ぶなど、なし崩し的に「仲間」になっている。
タカとユージのことを伝説の刑事と言われても「誰?」と返していたぐらいなんだから、そこは彼らを煙たがったり敬遠したりした方がいいんじゃないのか。
すぐに仲良くなるのなら、最初から「タカとユージに憧れていた」みたいな反応をさせた方がいい。水嶋と鹿沼のキャラクター設定と行動が中途半端に感じる。

その水嶋と鹿沼を演じる佐藤隆太と窪塚俊介の芝居がヘタクソで、御馴染みのレギュラー陣と一緒にいても芝居の部分で全く馴染んでいない。
他のドラマなどで彼らを何度か見たことがあるのだが、そこまでヒドい大根だと思ったことは無かったんだけどなあ。
この映画に限っては、かなりヒドい。
刑事という役柄が合わなかったのかなあ。
それとも、「あぶデカ」のテイストにフィットしなかったのかなあ。

この映画、どう考えても「同窓会のノリ」で企画されているとしか思えない。監督は旧作品の助監督を務めていた人だし。
それが悪いと言いたいのではなく、だったら「同窓会」として盛り上げることを徹底してやればいいのだ。
ところが中途半端に新しいことをやろう、新しいものを見せようとする意識があったようで、それが完全に裏目に出てしまっている。
港署が移動して「神奈川県警察横浜港警察署」から「横浜港警察署」になったのも、スイングドアが無くなったのも、時代の流れとして別にいい。
だけどね、今さら「あぶデカ」を復活させて、そこで新しいことをやろうってのは矛盾してんのよ。「あぶデカ」を復活させてしまった以上は、もう同窓会をやる以外に方法は無いでしょ。
それが大勝利にならないと分かっていても。

タカとユージが仲間と再会する部分にしても、感傷的になっている暇は無いとばかりに、淡白に処理してしまう。御馴染みのメンツはそれほど大きく扱おうとせず、新しいキャラである水嶋と鹿沼と涼子ばかり使って話を進めようとする。
ところが、こいつらのキャラに何の魅力も無いもんだから、話を引っ張る牽引力はサッパリなのである。

無理にスケールをデカくしようとしたのか、韓国やら、潜入捜査やら、核爆弾やら、IT企業やら、賭けサイトやら、まあ色々な要素を詰め込んでいるんだが、それを組み合わせる時にパッチワークがガタガタになっている。
タカとユージが三橋や警察庁に追われる身になるというのも、尾藤の事件とは全く関係が無いし。
だから「警察に追われて逃亡する」という部分と、「尾藤の事件を捜査する」という部分が、全く混じり合わないままになっている。
警察に追われる設定も、いつの間にかフェードアウトしてるし。

1つ1つのシーンの繋ぎ方もギクシャクしていて、例えば深町がタカとユージを助けるために三橋を殴り倒すシーンや、パークでトオルとタカと拳銃を向け合うシーンなど、そこを盛り上げよう、見せ場にしようという意識は伺えるのだが、前フリがなってないもんだから、唐突過ぎて面食らう。
アクションシーンにしても、何となくダラダラと入る感じ。
緊張と緩和の使い分けが上手くない。

クライマックスは、パークの隣にある横浜スタジアムが舞台。
ちょうどサッカーの試合が行われているという設定で、東京ヴェルディとサンフレッチェ広島の対戦なのに、どうやらスタジアムは満員という設定らしい(チーム名は東京Uと広島SWに変えてあるが、観客席で思い切り「東京V」の旗が振られている)。
この2チームの対戦で横浜スタジアムは満員にならんと思うし、そもそも横浜で試合はやらないだろう。
そんな細かいトコでニヤニヤしてしまった私でありました。

それはともかく、クライマックスになると(完全ネタバレだが)、尾藤がパークで死体になっており、事件の黒幕は正義を掲げる団体のメンバーであった涼子と水嶋と鹿沼だと判明する。
最終的に、彼らは横浜スタジアムで兵器メーカーの顧問が大物華僑に武器を売り付けるのを阻止するため、核爆弾を仕掛けるのが目的だったというわけ。
だが、その真相や動機を明かされても、「お前らの行動はデタラメだろ」としか思えない。
その「スタジアムを爆破する」という最終目的と、そこまで彼らがやっていた「尾藤を脱獄させて復讐させ、そこにタカとユージを巻き込み、インターネットの賭けサイトで対決を懸けの対象にして金を稼ぐ」という部分とは、何ら関係が無いのである。
そのハシゴの外しっぷりは尋常じゃない。

そもそも、涼子らの正体にしても、伏線が全く張られていなかったし。

あと、涼子の「賭けサイトで稼いだ金は正義のために使われる」という主張と、水嶋と鹿沼の「いかにもゲーム感覚で殺しを楽しんでいます」という態度は、全く相容れないものだ。
つまり男2人のキャラ設定と、彼らが所属する組織の設定が噛み合っていない。
っていうか、この映画で噛み合っている部分を探す方が難しいけど。

 

*ポンコツ映画愛護協会