『必殺! 三味線屋・勇次』:1999、日本

時は江戸時代。三味線屋・勇次の裏の顔は、金を受け取って人を殺し、恨みを晴らす仕事人。髪結いの弥助とコンビを組んでいる。弥助の行きつけの夜明かし(屋台)を営むのはおとよ。弥助とおとよはお互いに惹かれ合っている。
おとよの夜明かしに若い兄弟が転がり込んできた。どうやら島抜けをしてきたようだ。おとよに頼まれ、自分の家に彼らを泊めてやることになった弥助。1日だけで追い払うつもりだったが、勇次を通して仕事の世話をしてやることにする。
弥助は街で偶然にも上方時代の元締めだった伝兵衛と出会った。伝兵衛は裏稼業を辞め、大道芸人として全国を回っていた。その夜、弥助は裏の仕事を仕掛けようとするが、内田平内という浪人に先を越されてしまう。内田も弥助と同じく仕事人だった。
街では富貴屋が独占販売する回春丸という媚薬が大人気。元は上総屋が売っていたが、副作用で死者が出たことを知った上総屋は行方不明になっていた。実は上総屋は富貴屋に囚われていたのだ。富貴屋は火盗改役の坂巻重次郎と岡っ引きの浅吉に副作用の隠ぺい工作をさせている。
上総屋には娘がいた。それがおとよだった。身分を隠して生きているおとよだが、勇次や弥助はそのことを知っていた。上総屋は処方箋を明かすことを拒み、自害した。富貴屋は全ての罪を上総屋に被せ、死体を川に流す。
弥助は自ら頼み人となって勇次に殺しの仕事を持ち掛けるが、断られてしまう。弥助は内田平内に協力を依頼し、富貴屋に侵入。だが内田の裏切りによって殺される。おとよは弥助の死に失意して自害。勇次は元締めのお喜和と伝兵衛に弥助の残した頼み料を渡し、闇の仕事を仕掛ける…。

監督は石原興、脚本は野上龍雄、製作は櫻井洋三&北側雅司、プロデューサーは佐々木勇&中島仁、撮影は藤原三郎、編集は園井弘一、録音は中路豊隆、照明は中島利光、美術は原田哲男、音楽は平尾昌晃&長部正和。
主演は中条きよし、共演は藤田まこと、天海祐希、阿部寛、名取裕子、中尾彬、石橋蓮司、清水健太郎、研ナオコ、本田博太郎、淡路恵子、金山一彦、三国一夫、野村沙知代ら。


『必殺!主水死す』で中村主水を殺してしまった必殺シリーズ。
田原俊彦主演作もひっそりと作られたりしているのだが、今回は中条きよし演じる三味線屋・勇次を主役に持ってきた。

しかし、ガッチャマンでいえば“コンドルのジョー”のポジションの男に、主役をやらせるのは違うと思う。三味線屋・勇次ってのは、あくまでも主役の脇でちょっとニヒルに決めている一匹狼タイプのキャラクター。
それを中心にしてしまったものだから、阿部寛演じる弥助にストーリーを引っ張らせ、勇次は主役とは思えないポジションに立つことに。

回春丸の副作用で上総屋が非難されたのに、どうして富貴屋は世間から非難を浴びないのか。いくら裏工作をしていても、ちょっと無理がある。
あと、勇次が弥助の依頼を断るが、それでも弥助が仕事を仕掛けようとするのは誰でも分かる。勇次が彼を見殺しにしたようなものだ。

中村主水役だった藤田まことを伝兵衛として登場させているのは必殺ファンへの配慮かもしれないが、最悪の反則だ。同じ反則技を使うのなら、中村主水を生き返らせるべきだった。
こちらの反則技なら歓迎できたのに。

エピソードは多いが、全てを処理する能力がこの作品には無い。島抜けした兄弟は要らないし、内田平内も無意味なキャラ。
それにしても、映画の割にはスケールの小さい話だ。テレビのスペシャルで充分だったような気がする。

 

*ポンコツ映画愛護協会