『幕末青春グラフィティ Ronin 坂本竜馬』:1986、日本
時は幕末、慶応2年。土佐藩を脱藩した坂本竜馬は長崎に来ていた。仲間達と共に海援隊を結成した竜馬は、金を貯めて黒船を買い、みんなでアメリカ国へ渡るという夢を持っている。しかし周囲の者達は勤皇の志士として戦うことを願っており、戦いに消極的な竜馬とは意見の相違がある。
竜馬の元を長州藩の桂小五郎が訪れた。幕府が本格的に長州を攻撃してきたという。桂は竜馬に武器の購入と運搬を依頼。竜馬は武器商人グラバーから安価で武器を購入し、桂や高杉晋作のいる下関へ向かう。
高杉晋作は農民達を集めて奇兵隊を結成し、戦いに備えていた。しかし幕府は15万の軍勢で攻めてきており、まともに戦っても勝ち目は無い。そこで高杉は夜中に奇襲を掛けることを決め、艦隊を動かす役目を竜馬に任せる。
夜襲を仕掛けた高杉達だが、幕府軍に待ち伏せされ、大失敗に終わってしまった。陸に戻ってきた竜馬の元に土佐からの手紙が届く。それは土佐勤皇党が藩主の山内容堂に死罪を申し付けられ、全滅したという知らせだった…。監督は河合義隆、脚本は片山蒼、製作は弘田惣弥&服部庸一、企画は勝田祥三、撮影は押切隆生、編集は宮田英昭、録音は加藤一郎、照明は秦野和人、美術は西村伸明、音楽監督は加藤和彦。
主演は武田鉄矢、共演は吉田拓郎、柴俊夫、川谷拓三、竹中直人、伊武雅刀、原田美枝子、阿藤海、原田大二郎、榎木孝明、内藤剛志、古尾谷雅人、石田純一、加藤健一、三浦浩一、本田博太郎、山西道広、村田雄浩、陣内孝則、浅野温子、南果歩、菊池桃子ら。
売れっ子になる前の有名俳優達が多く出演している。竹中直人、榎木孝明、内藤剛志、石田純一、陣内孝則、浅野温子などなど。
無理に見せ場を作ってもらったと思える出演者も多く、例えば菊池桃子が歌う場面など、全く作品に必要無い。色んな人間に見せ場を作ろうとしたためか、余計な部分が多すぎる。そのため、何ともまとまりの無い映画になってしまった。
当然のことながら坂本竜馬が主役のはずなのだが、主役としての魅力を発揮する場面が少ない。状況や人物配置が分かりにくいのもいけない。人物が登場したら名前のテロップを入れてみるとか、説明のためのナレーションを入れるとか、そういう配慮があった方が分かりやすかったのではないか。
どの役者が誰の役なのか、イマイチ把握できなかった。土佐勤皇党が全滅したと竜馬が知る場面は重要なポイントのはず。しかし語りで説明されるだけで、実際に勤皇党全滅を映像で見せるわけではない。それ以前に勤皇党が登場することも無いので、竜馬達の悲しみが充分に伝わってこない。
話がバラバラで、繋がっていかない。戦闘シーンにも迫力や緊張感が見られないし、なんとなくダラダラと物語が進んで行く。
例えば薩長同盟をメインにして、幾つかのエピソードが底に向かって集約されていくという形にした方が良かったのでは。クライマックスの見せ場は竜馬の演説。そこまでの流れで竜馬がそれなりの動きをしていれば説得力もあるが、いきなり演説をしても白けるだけ。
いくら武田鉄矢が大好きな坂本竜馬を熱演しようとも、完全に空回りしているのである。吉田拓郎が高杉晋作役で出演。その吉田拓郎の他、オフコースや海援隊、井上陽水など音楽界のビッグネーム達が楽曲を提供している。
しかし、映画がこれではねえ。