『PとJK』:2017、日本

高校1年生の本谷歌子は友人の矢口三門に誘われ、路面電車で出掛けた。彼氏が欲しいと思っている歌子は、車内でキスするカップルを見て興奮した。電車を降りて多国籍料理店に着いた2人は、三門の姉である葵と彼女の親友に会った。葵は歌子と三門に、「22歳の童顔大学生っていう設定で。もちろん、お酒は飲んじゃダメよ」と忠告する。困惑した歌子は、そこで初めて合コンの数合わせだと知った。三門は真実を話したら歌子が来ないと分かっており、嘘をついて連れ出したのだ。
合コンが始まると、葵は自分が男と飲むことに夢中で歌子と三門のことなど完全に忘れる。歌子と三門は男2人組から強引に酒を勧められ、逃げ場を失って困り果てた。そこへ2人組の仲間である佐賀野功太が現れ、「飲まないなら俺が貰うよ」と代わりに飲んでグラスを空にした。合コンが終わった直後、店を出た歌子は功太にペットボトルの水を渡し、お酒を飲めないので助かったと礼を述べた。歌子が終電に乗るため歩き出すと、功太は送ると告げて同行した。しかし2人は終電に間に合わず、タクシーを待つことになった。
功太が「少し歩こうか」と誘うと、歌子はOKした。功太は歌子に恋人がいないと知って、「今度さ、2人で会えないか」と問い掛ける。歌子は快諾するが、功太の質問に対する答えで16歳だとバレてしまった。すると功太の態度は一変し、舌打ちして「今すぐ帰れ。二度とふざけた真似すんじゃねえぞ、クソガキ」と冷たく告げた。歌子は「ごめんなさい」と謝り、逃げるように走り去る。彼女は不良グループの伊藤たちに絡まれ、そこに留年した同じ学校の大神平助がいるのを見て驚いた。
そこへ功太が駆け付けて警察バッジを見せ、大神に「お前、何度目だよ」と告げる。大神が反抗的な態度を見せると、功太は警察署に電話を掛けた。不良グループが歌子を突き飛ばして逃げ出したので、彼は1人を取り押さえる。大神が功太をスケートボードで殴ろうとするが、庇った歌子が額に怪我を負う。直後に警官隊が駆け付け、大神は連行された。功太は救急車を呼び、歌子の両親である誠一と陽子に謝罪した。彼は2人を見送り、朝まで歌子に付き添うことにした。
歌子が意識を取り戻すと、功太は「俺は君とは付き合えない。君は女子高生。俺は警察官で」と告げる。歌子は涙目で「女子高生と警察官だからダメなの?子供扱いしないで」と言い、不機嫌そうに「もういい、帰って」と布団を頭から被る。病室を出ようとした功太だが、不意に「結婚しようか」と口にした。狼狽する歌子だが、功太は本気だった。退院した歌子は三門から、大神が謹慎処分になったことを聞かされる。放課後、功太は歌子の両親に会い、結婚の許しを求めた。突然の告白に誠一は怒りを隠せなかったが、陽子は初恋の相手が交番の警察官だったと明かし、娘を応援する立場を示した。
功太は交番の先輩である小森ふみにも事情を話し、卒業まで待てないのかと問われる。「はい」と功太は即答し、巡査部長の山本修一は「説得して、はいそうですかと聞く男じゃないのは分かってる。上には良く言っとく」と告げた。日曜日、功太は歌子とデートに出掛け、防犯ブザーをプレゼントした。夜、誠一は功太と飲みに出掛けて気持ちを確かめ、結婚を承諾した。功太は歌子と観覧車に乗り、結婚指輪を渡してプロポーズした。
歌子は功太と結婚し、結婚指輪をネックレスに通して生活することにした。毎朝、登校前には功太の家へ立ち寄り、朝食を用意した。彼女は洗濯や掃除などの家事も積極的にこなし、新婚生活を満喫する。歌子は三門だけに結婚を打ち明け、内緒にするよう頼んだ。謹慎処分の明けた大神は登校すると、授業中に歌子を見つめた。交番へ愛妻弁当を届けた時、歌子は山本から功太の若い頃の写真を見せてもらい、携帯の待ち受け画面にした。山本は功太がヤンチャで何度も補導されたこと、父親の事件で変化したことを語る。
10年前に連続殺人事件が発生した時、功太の父親は逃亡犯と対峙した。父親が犯人に刺し殺された現場に功太も居合わせたので、警官を目指したのだろうと山本は語った。歌子が買い物袋を落とした時、熊のキグルミでバイト中の男が野菜を拾う作業を手伝ってくれた。その中身は大神で、彼は歌子は「悪かったな、あの時は」と詫びた。大神は本気で殴る気など無かったこと、捕まれば少年刑務所送りになる仲間を救おうとしたことを弁明した。大神と関わらないよう功太から注意された歌子は、涙目で抗議した。
歌子のクラスは、文化祭で「音尾変身写真館」という出し物をすることに決まった。歌子は一緒に衣装デザインをやろうと大神を誘うが、彼は無愛想に断った。功太は巡回中にスナックから出て来た大神を見つけ、「高校生が利用していい店じゃないだろう」と苦言を呈した。大神が「掃除バイトの面接だ。夜中でも雇ってくれるって言うからよ」と話すと、功太は「なんか困ってることあんのか」と問い掛ける。大神は「お巡りなんかに話すことねえよ」と鋭く睨み付け、その場を去った。彼の母の明里は、金をせびって飲み歩き、暴力を振るう男と付き合っていた。明里は「あの人にもいい所があるんだよ」と言い、男と別れようとしなかった。
功太は自宅で歌子に「山本さんから聞いたよ、高校生の頃の話とか」と言われると、険しい表情になった。父親が死んだのは、彼を犯人から庇って刺されたからだった。文化祭の準備が進む中、歌子が三門、長倉二郎と共に作業をしていると、大神が現れた。彼がバイト代で購入したパンを差し入れすると、三門が手伝うよう頼んだ。下校時、歌子は大神と2人になり、「もう罪悪感とか持つの、やめにしよ。普通に、友達になろうよ」と告げる。大神は「分かった、友達な」と言い、彼女と握手を交わした。
翌日、大神が退学届が出すと知った二郎は、文化祭が終わるまで待つよう説得する。「みんな楽しみにしてんだよ、お前と文化祭するの」と言われた大神は、彼の提案を受け入れた。功太は歌子から大神が頻繁に怪我をしている理由を問われ、「仮に何か知っているとしても話せないよ。公務員には守秘義務がある」と真剣な顔で告げる。「でも夫婦だし」と歌子は軽い調子で言うが、彼は「関係ないよ。君は部外者だ」と述べた。
歌子が不機嫌になると、功太は「余計な詮索はやめろって言ってるんだ」と言う。「友達だから心配なの。それがそんなにいけない?」と反発する彼女に、彼は「大神のことは警察に任せろ」と告げる。歌子は「また警察。警察官じゃない功太くんは、どこにいるの?大事なこと、何も話してくれない」と寂しそうに吐露する。「功太くんが何考えてるか全然分かんない。私たち、結婚した意味あるの?」と彼女が言っても功太は答えず、連絡を受けて仕事へ戻った。歌子が泣いているのを見た大神は、思わず抱き締めてから謝罪した。
大神は母の恋人から殴られ、働いて稼ぐよう要求される。近所からの通報で駆けつけた功太は、事実を隠そうとする大神に「一人で解決しようとするなよ。お前はガキなんだよ。ガキならガキらしく頼れよ。そのために警察があんだよ」と告げる。功太は母の恋人に任意同行を求め、大神に「心配するな」と述べた。文化祭の前日に大神が登校しないので、歌子、三門、二郎は彼の家へ行く。すると大神は「明日は行けそうにない文化祭どころじゃない」と言い、部屋で散らかっているのを理由にした。
歌子は「大神さんには見届ける義務があるの」と涙目で訴え、「友達なんだから、何かさせてよ」と告げる。三門と二郎も「友達として助ける」と言って部屋を片付け始め、大神は涙をこぼした。文化祭の当日、非番の功太が様子を見に来たので、歌子はカツラと学ランで変身させて校内デートを楽しんだ。不良グループの伊藤たちは勝手に抜けた大神を捜すため、高校に乗り込んだ。彼らが歌子を学校から連れ去る様子を見た功太と大神は、急いで後を追った…。

監督は廣木隆一、原作は三次マキ『PとJK』(講談社『別冊フレンド』連載)、脚本は吉川菜美、製作総指揮は大角正、製作代表は武田功&中山良夫&古羽治&木下直哉&藤島ジュリーK.&藪下維也&中藪浩&大西賢英、エグゼクティブ・プロデューサーは関根真吾、企画は吉田繁暁、プロデューサーは宇高武志&石田聡子&北島直明、撮影は鍋島淳裕、照明は かげつよし、録音は深田晃、編集は菊池純一、美術は丸尾知行&松本知恵、協力プロデューサーは楠本直樹、音は大橋好規、音楽プロデューサーは高石真美。
出演は亀梨和也、土屋太鳳、田口トモロヲ、村上淳、ともさかりえ、大政絢、高杉真宙、玉城ティナ、西畑大吾(関西ジャニーズJr.)、江口のりこ、川瀬陽太、河井青葉、高橋メアリージュン、瀬戸利樹、小林優斗、松永拓野、松本大志、古谷佳也、坂東工、好井まさお(井下好井)、井下昌城(井下好井)、椿弓里奈、湯舟すぴか、後藤ひろみ、大内唯、辻川慶治、後藤ちひろ、林美玖、高橋優也、土屋姫貴、小林留依、松村和馬、藤原たいち、柳澤圭太、池田晃、福島基輝、阿部一輝、生駒愛佳、石月愛栞、伊藤里帆、糸川耀士郎、牛嶋裕太、江崎美紅、大槻紘照、小野湧太、片山幸希、加藤美里、木村紀咲、香乃ゆうみ、左近充慶太、佐藤龍生、杉渕菜々、谷口理那、種田柊斗、田畑好美、西問瑞希、引谷直彦、平井亜門、本間隆太、松下恵里香、松下芽萌里、村田愛、元村海輝、森タクト、谷島圭祐、山浦ひかり、古尾千慧ら。


三次マキの同名少女漫画を基にした作品。
説明不要だろうけど、タイトルの「P」はポリスマンで、「JK」が女子高生の意味だ。
監督は『ストロボ・エッジ』『オオカミ少女と黒王子』の廣木隆一。
脚本は『RIVER』『過激派オペラ』の吉川菜美。
功太を亀梨和也、歌子を土屋太鳳、山本を田口トモロヲ、誠一を村上淳、陽子をともさかりえ、ふみを大政絢、大神を高杉真宙、三門を玉城ティナ、二郎を西畑大吾、明里を江口のりこ、明里の恋人を川瀬陽太、功太の姉の薫を河井青葉、葵を高橋メアリージュンが演じている。

冒頭、歌子と三門が料理店の前に着くと、葵が「友達がドタキャンしてさ、困ってたんだよ」と言う。なので、てっきり4対4の合コンなのかと思いきや、店を借り切って大勢の男女が集まっての大規模な合コンだ。
だったら、友達2人がドタキャンしたぐらいで、そんなに困ることも無いんじゃないかと。
しかも、わざわざ高校生の2人を、片方には嘘をついてまで呼び出さなきゃいけないってのは、かなり無理がある。
どうやら合コン慣れしている様子だし、他の同級生を捕まえりゃいいんじゃないかと。そんな合コンで「酒を飲むな」と忠告しなきゃいけないような人間を呼ぶのは、よっぽどのことがないと変でしょ。

そんで、いざ合コンが始まると、葵は歌子と三門から完全に目を離しており、2人が強引に酒を勧められていても見ちゃいないし。もしも2人が酒を飲まされて大変なことになったら、間違いなく責任問題になるわけで。
もちろん、「そんなことを全く気にしない無責任な姉」というキャラ設定なら、それはそれで「絶対に無し」というわけではない。ただ、そういう設定だと仮定しても、それなりの後処理は必要になるのよ。
でも、そういうのは無視して、「酒を飲まされそうになった歌子を功太が助ける」という状況を作るためだけに、葵を使っているわけで。
そういう都合のいい使い方をするにしても、もうちょっと上手くやらにゃあダメなんじゃないかと。

しかし、この映画、そんなのは始まりに過ぎなかった。そこから「強引さと不自然さの連続」が、ずっと続くのだ。
まず合コンが終わった直後のシーンで、歌子は功太にを見つけて「功太くん」と呼び掛ける。
まだ彼女は、合コンの時に友人が彼を「功太」と呼んでいたのを聞いただけだ。功太とは一言も話していない状況だ。にも関わらず、いきなり「功太くん」と下の名前に「くん」を付けて呼び掛けるのだ。
例えば、「すぐに誰とでも友達になれる、異常なほどフランクな性格」というキャラ設定なら、それも有りだろう。
しかし、そんな風には到底思えない。

料理店へ来る時、歌子は三門と一緒に路面電車を利用している。ところが、なぜか帰りの際は、三門がタクシーで先に帰ってしまう。歌子が功太と2人になるための環境作りも、なかなか無理のあることになっている。
料理店を出た直後なのに、なぜか歌子が水のペットボトルを持っているというのも不可解な状況だ。で、「終電あるから」と歩き出した歌子だが、発車時間を聞いた功太は「急ごう」と走り出す。
そして2人は全速力で走っても終電には間に合わないのだが、だったら歌子は呑気に歩き出している場合じゃないよね。最初から急ぐべきだよね。ここも歌子と功太の2人きりの時間を設けるために、なかなか無理のあることをやらかしているわけだ。
そもそも、「なぜ歌子は三門がタクシーで帰る時に同乗させてもらわないのか。そして三門も誘わないのか」という部分にも引っ掛かるし。

さらに恐ろしいことに、なんと歌子は、この段階で功太に惚れているのである。「功太が代わりに酒を飲んでくれた」という、それだけで彼女は、コロッとイカれてしまうのである。
なんて簡単な女なのかと。
「そんなことはないはず」と思うかもしれないが、事実なのだ。それ以外に、歌子を功太に惚れさせるための言動など無いんだからね。
「一緒に終電まで走ってくれた」ってのを含めたとしても、「それだけで惚れるんだから、簡単な女だね」という印象は全く変わらないしね。
「功太だって大して変わらんだろ」と思うかもしれないけど、こいつは顔だけで惚れたのが明白なので、いちいち引っ掛かるまでもない。

さて、顔だけで歌子に惚れた功太だが、相手が16歳だと知った途端に冷たくなる。それどころか、「二度とふざけた真似すんじゃねえぞ、クソガキ」と暴言を吐く。
「警官だから16歳とは付き合えない」という事情があるにせよ、「だから暴言を吐く」ってのは筋が通らない。「惚れた相手が16歳だったから残念に思う」ってことでいいはずだからね。
そこでの彼の態度は、ただの性格が悪い奴でしかない。
直後に彼女を助けに駆け付けて誤魔化しているけど、「だったら最初から、あんな態度を取らなきゃいいじゃねえか」と言いたくなる。
そこだけが不自然な言動になっているのでね。

功太が「俺は君とは付き合えない。君は女子高生。俺は警察官で」と告げると、歌子は涙目で「女子高生と警察官だからダメなの?子供扱いしないで」と言う。
いやいや、子供扱いとか、そういう問題じゃないだろ。
で、「こいつは底抜けのバカなのか」思った矢先、功太の「結婚しようか」という言葉が飛び出す。その唐突さに、唖然とさせられる。これが能天気なコメディーなら成立する展開だが、シリアスに描いているので、ただバカバカしいと感じるだけだ。
これって本来なら「PとJKが惹かれ合い、様々な困難を乗り越える」ってのを描いて、「結婚に至る」ってのをゴールに設定してもいいような話なんだよね。でも、「PとJKが結婚した」ってのを序章にしているもんだから、色んな無理が生じている。
「2人が出会った直後に結婚を決め、両親が認める」という構成にするなら、前述したようにコメディーじゃないとキツいよ。

結婚して浮かれモードの歌子をオツム空っぽで楽しめりゃいいんだろうが、そう出来ないようなストーリー展開になっていく。
例えば功太から大神と関わらないよう忠告された歌子が、涙目で「お巡りさんみたいなこと言うんだね。私が功太くんに話してるのに。私はバカな女子高生で、大神さんはただの不良。功太くんはそれしか見てない」と抗議するシーンに、「いやウザいわ」と言いたくなる。
すぐ涙目になりゃあ、全てが許されると思うなよ。
たまたま大神はホントに「気のいい奴」だったけど、功太が警察官か否かを抜きにしても、心配するのは当たり前でしょ。それを「警官だから、ホントのことが見えてない」みたいな言い草は、ただの自己中心的な女にしか見えない。
ヒロインをここまで不愉快な女に見せるんだから、ある意味では大したモンだよ。

歌子が文化祭の準備をしていると、大神がパンの差し入れにやって来る。二郎は笑顔で話し掛け、三門は手伝いを頼む。大神は一緒に作業をして、下校時も楽しそうに喋っている。
いつの間に、こいつは三門や二郎と仲良くなったのか。
歌子が大神を文化祭の作業に誘い、それに関連して三門たちと話すシーンは事前に用意されていた。だけど、それ以降に「最初は敬遠していた三門や二郎が大神に声を掛ける」とか、「大神の方も三門や二郎に心を開く」といった手順は無かった。
なので、文化祭の作業を手伝うシーンで、こいつらが急に仲良くなったような印象を受けるのよね。

歌子は大神が怪我をする理由について功太に「公務員には守秘義務がある」と言われると、軽い調子で「でも夫婦だし」と告げる。功太が「関係ないよ。君は部外者だ」と口にすると、不快感を示す。「大神のことは警察に任せろ」と言われると、「また警察。警察官じゃない功太くんは、どこにいるの?大事なこと、何も話してくれない」と語る。
ホントに面倒な女だわ。
警察官に守秘義務があるのは当然だろ。「大事なことは何も話してくれない」って、そりゃ警察が絡む案件なら当然だろ。
それを「夫婦なんだから私にも話せ」と要求するのは、御門違いも甚だしい。それを受け入れることが出来ないのなら、警察官の妻として失格だぞ。
こいつが「以前の自分は間違っていた」と反省して改める展開でもあればともかく、最後まで彼女が正当化されたままなので、「それは違うだろ」と言いたくなる。

終盤、功太は不良グループから大神を守るため、盾になってナイフで腹を刺される。幸いにも助かった功太だが、歌子は「なんでもっと自分のこと大事にしないの?」と責め、彼に結婚指輪を返して別れを告げる。
いやいや、どういうことだよ。
功太はテメエが「友達だから心配するのは当然」と言っていた大神を救うために、命懸けの行動を取ったんだぞ。感謝こそされても、非難されるいわれは無いぞ。
そこで歌子が別れを告げるのは、キテレツな行動にしか見えないわ。

歌子は「なんでもっと自分のこと大事にしないの?」と言うけど、あの状況で、どういう行動を取れば満足だったのか。大神が刺されて死ぬのを、そのまま見過ごせば満足なのか。
「誰かを守るために自らを犠牲にすることもある」ってのは、警察官なら当たり前のことでしょ。それを全面的に否定するような場所へ着地する話には、違和感を禁じ得ないぞ。
積極的に死を選ぼうとするのは間違っているけど、「職務のために命も投げ出す覚悟」ってのを警察官が持っているのは、決して否定されるようなことじゃないはずでしょ。
「命懸けでとか、そういうの無理」ってのは、ただ「警察官の妻」としての覚悟が無いだけにしか思えないのよ。
なので、「こいつと別れた方が功太は幸せだろ。すぐにメソメソするし、他にも何かと面倒な女だし」と感じるのよね。

ラスト直前、体育館でヨリを戻した功太と歌子が廊下へ出て歩き始めるとBruno Marsの『Marry You』が流れ、生徒たちが次々に集まって手拍子でリズムを取りながら同行する。
そして功太と歌子が校門を出ると、パトカーが「結婚式場からハネムーンへ向かう車」みたいに飾ってある。
『Marry You』はプロポーズのフラッシュモブで世界中の人々が使用した楽曲で、似たようなことを映画でもやろうとしたんだろう。
でも不自然なシーンでしかないし、そもそも世界中で流行したフラッシュモブとは全く違うモノだし。

実際に『Marry You』を使ったフラッシュモブの動画を幾つか見たことがあるけど、やりたくなる気持ちは分からんでもないのよ。ただ、この映画でやるのは違うわ。そこへ向けた流れが全く出来ていないし、全体の雰囲気にも合っていない。
そこがクライマックスのように配置されているけど、陳腐になっているだけだ。
「フラッシュモブとは似ても似つかない別物」ということを置いておくとして、そういうシーンをクライマックスとして配置するなら、極端なことを言ってしまうと、「全てはそのシーンのために」という意識で演出するぐらいの覚悟が必要なのよ。
でも、そういう意識は皆無だから、そこだけが不細工な形で浮いてしまうのよ。

(観賞日:2018年7月17日)

 

*ポンコツ映画愛護協会