『プリンシパル〜恋する私はヒロインですか?〜』:2018、日本

女子高生の住友糸真は、父の泰弘が運転する車で札幌へ向かった。鹿や狐に会えるのではないかと期待を膨らませる彼女に、泰弘は「札幌の中心部だから会えないかな」と困惑した表情で告げた。糸真が母の真智から届いたメールを読むと、恋に落ちることを応援する文章が綴られていた。札幌高等学校に転校した糸真が教室で自己紹介すると、担任教師は「席を用意するまで、今日は空いているトコ。舘林の隣に座ってて」と指示した。糸真が着席しようとすると、舘林弦は「そこ、お前の席じゃねえから。和央の席」と睨んだ。
教師が「分かってる。後で席を持って来るから」となだめるが、糸真が席に座ると弦は「無視すんじゃねえ。そこは和央の席だ」と怒鳴る。糸真は我慢できず、「だったらアンタが机でも椅子でも用意したらいいでしょ。私は言われた所にいるだけなんだから。私はもう、どこにも行けないの」と声を荒らげた。我に返った彼女が恥ずかしそうにしていると、隣の国重晴歌が笑いながら話し掛けた。晴歌の友人である工藤梨里と菅原怜英も挨拶し、糸真はホッとした。
かつて糸真は、入学した女子高が肌に合わずに悩んでいた。家では真智が4度目の結婚によって新しい夫を連れ込み、糸真は何となく家がつまらなくなった。友達と一緒にいる内に遠慮が無くなって喧嘩になり、翌日から孤立した。登校拒否を続けていたら真智が泰弘に連絡し、糸真は札幌で暮らすことになったのだ。糸真が帰宅すると、泰弘は近所に住む桜井和央とガレージで話していた。和央は愛犬のすみれを連れており、糸真に挨拶した。そこへ弦が現れ、糸真に気付いて不愉快そうな様子を見せた。糸真が自分の家だと告げると、弦は和央に「帰るぞ」と声を掛けた。
次の日、登校した糸真は、和央が弦と一緒にいる様子を見て微笑した。晴歌は彼女に「和央が弦の初恋の相手」と言い、弦が幼稚園の頃に和央を女だと思っていたことを話す。「和央が病弱だから自分が守らなきゃと思ってるみたい。だから2人の世界に誰も入れなくて」と彼女が語ると、糸真は「なんか勿体無いね。弦って黙ってればイケてるのに」と口にする。すると晴歌は「みんなそう思ってる。弦だけじゃなくて和央もファンが多くてさ。だから抜け駆け禁止になってて」と説明し、2人に近付こうとした女子がハブられて学校に来なくなったことを語った。不安を覚えた糸真は、和央に挨拶されると初対面を装った。
音楽の授業の時、糸真は晴歌から音楽教師の弓が弦の姉だと知らされた。翌朝、糸真は弦と合流して学校へ向かう和央を見つけて声を掛け、昨日の態度を謝罪した。弦が不愉快そうな態度を見せても糸真は意に介さず、和央に下の名前で呼ぶよう求めた。糸真が3人で一緒に登校すると、すぐに女子たちがトイレで取り囲んだ。抜け駆けしないよう要求された彼女は、「みんなの物っておかしいよ。弦も和央も1人の人間なんだから」と反発する。「あいつはなんて言ってんの?」と問われた糸真が「あいつって?」と尋ねると、女子たちは「なんにも知らねえの」と呆れたように笑って立ち去った。
調理実習の時間、糸真は晴歌から「クリスマス、みんなでカラオケに行こうと思って」と誘われてOKした。クリスマス、糸真は泰弘と共にスーパーへ買い物に出掛け、レジ打ちをしているのが和央の母の由香里だと知らされた。彼女は待ち合わせの場所に赴くが、晴歌たちは全く現れない。晴歌は抜け駆け禁止のルールを決めたリーダーで、糸真をハブるために罠を仕掛けたのだ。糸真が家に戻ると、ガレージに和央がいた。糸真が「誰も来なかったんだ。また私、独りぼっちになるのかな」と漏らすと、和央はマフラーを掛けて「大丈夫だよ」と言う。彼に優しく抱き締められ、糸真は泣き出した。
年が明け、糸真は泰弘と初詣に行く予定だった。しかし泰弘に仕事が入り、糸真は和央の家へ借りたマフラーを返しに行く。外で雪かきをしていた由香里は、和央が風邪で寝ていると告げる。そこへ、すみれを散歩に連れ出していた弦が戻り、和央への差し入れを由香里に渡す。弦と共に桜井家を去った糸真は、すみれが元々は彼の飼い犬だったことを聞かされる。弦は糸真は和央に恋心を抱いているのではないかと感じ、「言っとくけど、和央は誰も好きになんねえから」と告げる。糸真が理由を訊くと、弦は答えず「暇なんだろ。いつもは和央と行くんだけど、今年はお前で我慢してやるよ」と言う。
その夜、弦は糸真と初詣に行き、山へ連れて行って美しい夜景を眺めさせる。弦の様子を見た糸真は、晴歌の件を知った彼が自分を慰めてくれたのだと感じる。弦は否定するが、糸真は骨折するまでバレエをやっていたことを明かし、習っていた動きを披露する。糸真は東京でハブられて札幌に引っ越して来たことを語り、「ねえ、プリンシパルって知ってる?バレエで主役のことを言うの。私ね、自分が主役になれる場所、ずっと探してるんだ」と述べた。
3学期が始まると、糸真は梨里と怜英に話し掛ける。罪悪感を抱いていた梨里と怜英が「クリスマスはごめんね」と気まずそうに詫びると、糸真は笑顔で「大丈夫だから」と言う。糸真が晴歌に挨拶して無視され、「言いたいことがあるなら、言ってくれなきゃ分かんないよ。私は晴歌と仲良くしたい」と告げる。晴歌は彼女を怒鳴り付け、教室を出て行った。糸真は後を追い、晴歌が怒りを示しても構わずに話し掛ける。すると晴歌は弦への恋心を認め、糸真と和解した。
糸真は札幌へ来た真智と合流し、一緒にレストランへ向かった。すると真智は、偶然に出会った泰弘と由香里を同席させていた。由香里は家族水入らずで食事を取るよう促し、その場を去る。泰弘と由香里の交際を知った糸真は困惑するが、反対はしなかった。真智が去った後、泰弘は自宅に和央と由香里を招いて4人で会食する。泰弘は糸真と和央の前でプロポーズし、由香里はOKした。泰弘と由香里か結婚し、糸真と和央は一つ屋根の下で暮らすことになった。
和央は弦の豪邸を訪ね、彼の母である琴に挨拶する。琴は取り繕ったように強張った笑顔を見せ、「ご結婚、おめでとうございます」と告げて去った。和央は弦に、「今までありがとうね。何でも持ってる弦に、色々やってもらってた」と言う。「金の話か」と弦が訊くと、彼は「そうだよ。最初から何もかも持ってる弦には分からないと思うけど」と答える。弦が「お前は俺にやってもらうのが嫌だったのか」と苛立つと、和央は「そういう風に囚われてる弦が嫌だ」と告げた。
翌日、弦はクラスの男子たちが「和央が弦から糸真に親子で乗り換えた」と笑っている様子を見て憤慨し、殴り掛かろうとする。糸真が慌てて止めに入ると、弦は誤って彼女の顔面に肘打ちを浴びせてしまった。糸真が保健室で和央と一緒にいると、弓が来て謝罪した。「弦と喧嘩した?」と彼女に訊かれた和央は、「今までありがとうって言ったんだ」と話す。「弦は和央を守ることで自分を支えているの」と弓に言われ、和央は自分が否定すると弦は支えを失うのだと悟った。
和央は弦に「俺が言ったことは全て本当だけど、離れたかったわけじゃないよ」と告げる。弦が「俺には弓ちゃんが付いて来るから」と嫌味っぽく言うと、和央は腹を立てて去った。同席していた糸真は、和央が弓を好きなのだと知って驚いた。「俺はどうすればいい?」と弦が漏らすと、糸真は「彼女でも作って和央から自立しろ」と突き放した。帰宅した糸真に心配された和央は、彼女の肩に顔を寄せた。糸真は弓に、「好きな人はいますか。それって和央のことですか」と質問する。弓は見合いの予定があること、その相手がダメでも他を探すことを話した。
弓がミニコンサートを開き、招待を受けた糸真たちは会場へ行く。コンサートの後、弓が琴から大下という見合い相手を紹介される様子を糸真たちは目にした。和央が嫉妬心を剥き出しにすると、弓は会場を去った。琴が和央に失礼な態度を取ると、弦は母親を怒鳴り付けた。和央は弓を追い掛け、「僕のこと嫌い?」と問い掛ける。弓は好きだと認め、和央と交際することになった。一方、晴歌は弦に告白し、こちらも付き合うことになった。弦と和央は和解し、以前のような関係に戻った。
進路希望調査が始まる中、糸真は晴歌から、みんなで夏休みにキャンプへ行こうと誘われる。晴歌は糸真が1人になると気付き、金沢雄大という中学時代の同級生を紹介する。糸真と金沢が動物園でデートする様子を、弦と和央は密かに尾行して見守った。帰宅した糸真は和央から「あの人と付き合うの?好きなの?」と問われると、「いい人だとは思う」と答えた。糸真は金沢とキャンプに参加し、楽しい時間を過ごす。しかし晴歌が弦にキスする現場を目撃した彼女は、心穏やかではいられなかった。金沢に呼び止められた糸真は、「ごめん」と告げて走り去った。
晴歌は弦が自分との約束に遅れてまで糸真の動物園デートを見に行ったことを知って、「なんで?」と尋ねる。弦は「興味あったから」と軽く答えるが、晴歌は複雑な気持ちになった。日が暮れ始める中、糸真は森の中で足を挫いて倒れ込む。金沢がキャンプ場へ戻り、糸真について問われると「はぐれちゃって」と答える。携帯は圏外で使えず、弦が「女一人にして何やってんだよ」と腹を立てて捜索に赴く。彼は糸真を発見し、背負ってキャンプ場まで連れ帰った。
弦は糸真に花火を渡し、一緒に楽しむ。その様子を和央はスマホで撮影し、後で送ると告げる。晴歌は「私もやりたい」と言い、弦を少し離れた場所へ連れて行く。糸真は金澤と一緒に花火をするが、弦のことが気になった。後日、糸真は金沢と会い、別れを告げる。予想していた金沢は「ホントは弦さんのことが好きなんじゃない?」と指摘し、告白するよう勧める。糸真が尻込みしていると、彼は「このまま諦めるの?そんなんじゃ俺が諦める意味が分かんないよ」と声を荒らげて去った…。

監督は篠原哲雄、原作は『プリンシパル』いくえみ綾(集英社マーガレットコミックス刊)、脚本は持地佑季子、製作は岩上敦宏&村松俊亮&吉崎圭一&藤島ジュリーK.&木下直哉&森谷雄&伊藤亜由美&本間欧彦&片山俊之&岡田美穂&竹田青滋&木下暢起、企画は篠原廣人、エグゼクティブ・プロデューサーは三鍋尚貴、スーパーバイザーは今野敏博、チーフプロデューサーは前田利洋&井口高志、プロデューサーは河村多芳子&梅本美幸&内藤真季子&森本友里恵、アソシエイトプロデューサーは杉山剛、撮影は上野彰吾、照明は赤津淳一、美術は倉本愛子&都築雄二、録音は岩丸恒、衣裳は遠藤良樹、編集は坂本久美子、タイトル・VFXは本田貴雄、音楽は世武裕子。
オープニング主題歌『プリンシパルの君へ』ジャニーズWEST 作詞・作曲・編曲:HoneyWorks。
エンディングテーマ『ギュッと』Little Glee Monster 作詞:KOUDAI IWATSUBO、作曲・編曲:KOUDAI IWATSUBO・TORU HORIKOSHI、プロデュースは森谷雄。
出演は黒島結菜、小瀧望(ジャニーズWEST)、高杉真宙、川栄李奈、谷村美月、森崎博之、白石美帆、鈴木砂羽、市川知宏、綾野ましろ、石川志織、中村久美、河野真也、大下宗吾、山田清美、池田彩夏、杉渕菜々、枝元雷亜(NORD)、舟木健(NORD)、長崎佑亮(NORD)、島太星(NORD)、増田美羽、彩永あいり、黒石海月、市山黎、清水来美、高橋桃子、田川麗捺、塚原樹、横山奈央、大滝あかり、佐藤睦、中川梨奈、安原さゆり、小林香織、小椋安奈、田中雪葉、野尻彩音、阿部なつ美、小野寺きらら、花岡領太(NORD)、安保卓城(NORD)、瀧原光(NORD)、春木大輔(NORD)、星直樹、東瑛児、渋谷渉大流、岩倉望、中澤千磨夫、長沼里奈、松本未希ら。


いくえみ綾の少女漫画『プリンシパル』を基にした作品。
監督は『起終点駅 ターミナル』『花戦さ』の篠原哲雄。
脚本は『くちびるに歌を』『青空エール』の持地佑季子。
糸真を黒島結菜、弦を小瀧望(ジャニーズWEST)、和央を高杉真宙、晴歌を川栄李奈、弓を谷村美月、泰弘を森崎博之、由香里を白石美帆、真智を鈴木砂羽、金沢を市川知宏、梨里を綾野ましろ、怜英を石川志織、琴を中村久美、担任教師を河野真也、大下を大下宗吾、真智の4度目の夫を高杉航大が演じている。

弦は登場した途端、「無視すんじゃねえ。そこは和央の席だ」と糸真を怒鳴り付ける。
それは理不尽極まりない激怒の態度だが、初登場の段階で「嫌な感じの男」ってのをアピールしておくのは少女漫画でヒロインが掘れる男キャラの定番だ。
身勝手な振る舞いでヒロインを不愉快にさせておいて、後で「でも実は優しいトコもあって」みたいなギャップを見せることで読者をキュンキュンさせるってのが作戦だ。
DV男の典型のようなキャラ設定が、少女漫画では「モテる男」の基本形になる。

糸真は弦に怒鳴られた時、「だったらアンタが机でも椅子でも用意したらいいでしょ。私は言われた所にいるだけなんだから。私はもう、どこにも行けないの」と反論する。
このシーン、「用意したらいいでしょ」までの台詞で充分だ。
その後の「私は言われた所にいるだけなんだから。私はもう、どこにも行けないの」という部分は、明らかに不自然極まりない台詞だ。
しかし、どれだけ不自然で違和感が強くなったとしても台詞でキャラの心情を説明させるってのは、少女漫画では良くあることだ。

「漫画なら成立することでも、映像化すると不自然さが際立ったり、陳腐になったりする」というケースは、特に少女漫画の場合は良くある。だから、ちょっと利口な人なら、それを考慮した上で上手く改変したり演出したりするのだ。
しかし、この映画は「少女漫画の持つ独特な感覚」を映画用に変化させたり飾り付けたりせず、ありのままで映像化している。
監督はキャリアの長い篠原哲雄だし、脚本家も少女漫画映画を手掛けた経験のある持地佑季子だから、きっとその気になれば作り変えることは出来たはずだ。なので、あえて加工せずに提供しているとしか思えない。
とは言え、その意図は不明だし、少なくともプラスには全く作用していないけど。

しかも厄介なことに、「少女漫画をありのままで映像化する」というだけでなく、変なトコでは飾りを付けている。そして、その飾りは、ことごとく裏目に出ている。
例えばガレージから弦と和央が去り、糸真は「明日、また学校で」と言いながら手を振るシーン。このシーンをスローモーションにしているが、その意味は全く無いし、見事なぐらいに陳腐だ。
また、この時に弦がアッカンベーをしたのに、糸真が全く気にしないのも不可解。「手を振ってくれた和央しか見ていない」と解釈できなくもないが、かなり強引だ。
それと、「お母さん、心配しないでください。私はこの新しい場所で、必ず主役になってみせるから」というモノローグが入るが、これまた不可解。そこまでに、その台詞に繋がるような伏線が何も無いので、「主役になってみせる」ってのが唐突な宣言にしか聞こえないのだ。

糸真は晴歌から弦と和央の関係について聞かされた時、「なんか勿体無いね。弦って黙ってればイケてるのに」と言う。
この台詞には、かなり困惑させられた。そんなに早い段階で、もう糸真が弦を素直に褒めているからだ。
普通なら、「顔はイケてるかもしれないけど性格に問題がありすぎる」ってことで、不快感を抱きそうなモノだ。ところが、糸真は男として評価しているのだ。
その一方、彼女は明らかに、和央の方に目を向けている。ガレージから去る時も、和央に視線が向いている。
だったら、「最初は和央に惚れて彼のことばかり意識するが、次第に弦が気になって」という流れにするのがセオリーだろう。

っていうか実際、「最初は和央で、次第に弦が」という描写にしてある感じなんだよね(そこさえボンヤリしているという問題はひとまず置いておくとして)。
だったら、さっきのシーンで和央に言及せず、弦を褒めるってのは違うんじゃないかと。
ただ、弦が偉そうな態度ばかり取っているのに、糸真が彼を不快に感じている時間帯って、ほとんど無いんだよね。そこはどういう感覚なのか、サッパリ分からん。
おまけに、そういう手順が用意されていないから「最初は嫌っていたけど次第に気持ちが好意へと変化して」という流れも作れないし、デメリットしか感じないんだけど。

糸真は抜け駆け禁止だと聞いて、和央に「はじめまして」とよそよそしい挨拶をする。ところが翌朝には、彼に自分から声を掛けて一緒に登校する。
そんなトコを見られたらハブられる危険性があるのに、まるで気にする様子が無い。それどころか、彼女は自分を下の名前で呼ぶよう和央に言う。
そんなことを言ったら、学校でも和央が彼女を「糸真」と呼ぶのは確実だ。
それは周囲の女子から明らかに反感を買うことであり、まるで糸真は自分からハブられることを望んでいるかのような言動を平気で取るのだ。

糸真は学校で女子たちに包囲されると、「みんなの物っておかしいよ。弦も和央も1人の人間なんだから」と反発する。
だけど、そんな強気な態度を取るのなら、「抜け駆け禁止を破ったらハブられる」と聞かされて和央と初対面を装ったのは辻褄が合わないでしょ。「勝手なルールに従うつもりはない」という考えがあるのなら、ビビった態度は変でしょ。
っていうか、ホントはビビって距離を取ろうとする方が自然じゃないかと。
前の学校で遠慮が無くなったせいでハブられた経験があるのに、まるで学習していないってことになっちゃうでしょ。「ハブられないために遠慮して過ごす」ってのが正しいかどうかは別にしてさ。

そこでの彼女の行動がボンクラにしか思えないので、ハブられてから「また私、独りぼっちになるのかな」と弱音を吐いても「そりゃあ自業自得だからね」と突き放したくなってしまう。
ハブられないように気を付けて行動していたのにハブられたのなら、それは同情するよ。でも、自分からハブられる方向へ突っ込んでおいて、そのせいでハブられたら寂しそうにするって、どういうつもりなのかと。
あんな行動を取ったらハブられることなんて、最初から分かり切っていたはずでしょうに。
だから強気に突き進むのかと思ったら、「また孤独になるのは嫌」って、アホすぎて呆れるだけだよ。

序盤で「前の学校でハブられた糸真が、新しい学校でも弦&和央と仲良くしたせいでハブられる」という展開がある。そこから「それをきっかけにして糸真と和央の距離が縮まる」という展開に繋がるが、弦を含む三角関係の図式になることは誰でも確信できる。なので当然のことながら、今度は糸真と弦の距離を縮めるための手順も用意されている。
ただ、段取りとしては当然のことをやっているのだが、拙速という印象が強い。なぜなら、弦が糸真にツンデレ的な優しさを見せる理由が見当たらないからだ。
一方、糸真が彼に心を開いて素直な気持ちを吐露するのも、これまた違和感が強い。
どっちの側も、そこに至るための流れが全く足りていないのだ。

「糸真が女子からハブられる」という問題は、糸真が晴歌に真正面からぶつかると簡単に解決されてしまう。
安易で雑な処理ではあるが、そこの要素を前半で片付けるのは別にいいとしよう。問題は、それを終わらせた後の展開だ。
そこからは「ハブられ問題を排除した上で、改めて三角関係をじっくりと描いていく」という流れになるのかと思いきや、なんと「泰弘と由香里が結婚し、糸真と和央は同居することになる」という新たな展開が待ち受けているのだ。
もうさ、それって完全に別の話になっちゃってねえか。
かなり長尺の連載で、第二章のような形で「新展開」に突入するならともかく、1本の映画でブチ込むボリュームじゃねえわ。原作の最初から最後までガッツリと描こうとして、明らかに尺が足りていないのよ。だからバタバタして慌ただしく、ツギハギ感に満ちた構成になっちゃってんのよ。

「糸真が晴歌にハブられるが仲直りする」「弦と和央が不和になるが仲直りする」「弦が晴歌、和央が弓と付き合い始める」「糸真と弦が互いの気持ちに気付く」という風に、若者たちの関係性は変化していく。
ハッキリ言って少女漫画では腐るほど使われてきた要素ばかりだが、それは別にいい。で、それを充分に膨らませ、充実したドラマに出来ているのかというと、答えはノーである。
ただ、その要素だけを抽出すると、決して2時間弱で処理できない内容とは言い切れない。集中して上手くやれば、ちゃんと収まるはずだ。
だけど、前述した「親同士の再婚を受けての同居」など余計な要素が絡んで来ること、変に余裕をカマして時間を浪費していることなど、幾つかの原因が複合されて、惨敗に終わっている。
っていうか、肝心の「糸真&弦&和央の三角関係」すらマトモに成立していないんだから、どうしようもないんじゃないかと。

ところでタイトルの『プリンシパル』だが、これは糸真のことを指している。
このタイトルの意味が分かるのは、夜景を見るシーン。弦が自分を慰めてくれたと感じた糸真は場所を移動し、バレエの動きを披露する。で、「自分がプリンシパルになれる場所を探し続けている」ってことを語る。
でも、バレエを習っていたことはそこで初めて明かされるので、「急にそんなことを言い出したな」としか感じないぞ。
そこで踊り出す行動にしても、あまりにも唐突でバカバカしさに満ちている。
おまけに、「糸真の動きに弦は魅了される」というシーンのはずだが、何しろ黒島結菜はバレエなんて未経験なので、「魅了される動き」には程遠くて説得力ゼロなのだ。

(観賞日:2019年8月12日)

 

*ポンコツ映画愛護協会