『ピーチガール』:2017、日本

神奈川県藤沢市、泉琳高等学校。安達ももは校内一のビッチと噂されており、岡安浬(カイリ)は校内一のモテ男子で常に親衛隊が取り囲んでいる。柏木沙絵は校内一の小悪魔で、人気ファッションモデルとして活動している。東寺ヶ森一矢(とーじ)は校内一の爽やか男子で、ももとは中学時代からの同級生だ。ももをアバズレ扱いで馬鹿にする男子生徒たちがいると、とーじが睨み付けて「つまんねえこと言ってんじゃねえよ」と凄む。ももは彼に恋しているが、その気持ちを伝えられずにいる。
とーじは色白で小柄な女子が好きだと聞いている彼女は、日焼け止めクリームを異常に塗り込む。沙絵はももの親友として振る舞っているが、実際は腹黒い言動ばかり取っている。ももが気に入った商品があると、「ダサいからやめた方がいい」と言っておきながら自分が購入するような女性である。彼女はももの前でも買った商品を平気で持ち歩き、全く悪びれない。沙絵は食堂で昼食を取っている時、「ももちゃんの好きな人、東寺ヶ森でしょ」とニヤニヤしながら指摘する。本心がバレたら沙絵がとーじを欲しがるとすると確信したももは、慌てて「違う」と否定した。彼女は自分の好きな相手として、咄嗟にカイリを指差した。
カイリにウインクされたももは、彼の親衛隊に因縁を付けられた。「カイリがキスをした運命の人と言い回っている」と知ったももは、激怒して彼の元へ出向いた。説明を要求する彼女に、カイリは「1年前に海岸で溺れていたら、ももちゃんに助けられた」と人工呼吸してもらったことを嬉しそうに話す。ももは呆れた様子で、人工呼吸したのは長髪のライフセーバーだと教えた。狼狽したカイリは責任を取るようももに詰め寄られ、いきなりキスをする。「噂が広まらないようにするには、噂をホントのことにすればいい」と言われたももは、ショックで走り去る。その様子を沙絵は密かに動画に収め、満足そうな笑みを浮かべた。
帰宅したももは花屋を経営する母の桜子から、「最高の恋の見つけ方って分かる?いずれその時が来たら分かるから」と告げられた。次の日、登校したももは紗枝から、前日のキス動画がネットに公開されていることを聞かされる。もちろんアップしたのは紗枝だが、ももはカイリの仕業だと思い込んだ。カイリに隠し撮りだと指摘され、ももは自分の誤解に気付く。とーじも動画を見たと知り、ももはショックを受けた。とーじはカイリに会い、「安達と付き合ってんのか。もし遊びだったらやめろ」と警告した。彼がももに恋していると察したカイリは、彼が去った後でだったら俺もマジになろうかな」と呟いた。
カイリはパティシエになるため、放課後は三ツ星レストランの厨房で修行を積んでいる。卒業後は留学したいと考えているが、父の崇史は一流企業に就職した兄の涼とも比較し、いい大学へ入るよう要求している。恋人の安芸操と結婚を控えた涼は、カイリの夢を応援している。次の日、ももはとーじが登校していないことを知った後、沙絵から「あんな動画さらす奴とは思わなかった。もう顔も見たくない」ととーじが言っていたと嘘を吹き込まれた。
沙絵は盲腸で入院したとーじの見舞いに赴き、クラスメイトの寄せ書きを差し出した。ももの名前が無いことに気付いたとーじに、彼女は「拒否られたカイリとデートあるからって」と嘘をついた。カイリはとーじを心配するももに、彼が盲腸で入院していると教えた。カイリは「誰かを思う気持ちは、我慢しなくていいんだよ」と言い、ももを藤沢中央病院へ連れて行く。2人が来るのを見つけた沙絵は、とーじに抱き付いてキスを迫る。病室に飛び込んだももは、その様子を見て動揺する。立ち去ろうとした彼女はカイリから「とーじに伝えたいこと、あるんでしょ」と言われ、入院を知らなかったことを話して謝罪する。
嘘を重ねて保身に入ろうとする沙絵だが、カイリは寄せ書きの件も動画をアップした件も彼女の仕業だと暴露した。カイリは「あのキスは、俺が無理やりしちゃっただけ」と言い、ももはとーじに告白する。彼女は「信じてもらえないなら死んだ方がマシ」と病室の窓に飛び乗り、誤って転落しそうになる。とーじはももの腕を掴んで救助し、自分も好きだと打ち明けた。病室を出た沙絵は「好きな人が笑ってくれたら、それで幸せ」と言うカイリに憤慨して「いい人ぶってんじゃねえよ」と声を荒らげた。
ももはとーじと交際を始め、彼女を好きなカイリは応援する立場で見守ることにした。ももはとーじから、「今週の土曜、誕生日だよな。家で祝わないか。親は仕事でいないから」と誘われる。2人が楽しそうに歩く様子を、モデルのジゴローと仕事中の沙絵が目撃する。自分より幸せそうなももに苛立ちを覚えた彼女は、絶対に引き裂いてやろうと決意する。彼女はももへの誕生日プレゼントを買いに出掛けたとーじに声を掛けて謝罪し、桃の香水を勧めた。
土曜日、とーじはももに香水をプレゼントし、沙絵が詫びていたことを教えた。2人がキスしようとした時、沙絵からももに電話が入った。ストーカーのジゴローに追われていると言われ、ももは急いで助けへ向かう。現場に到着した彼女は、背後からジゴローにスタンガンで失神させられた。沙絵はとーじの元へ行き、「ももちゃんの代わりに来たの。このままじゃ、とーじくんが可哀想で。見掛けたの、ももちゃんが男とホテルに入るの」と告げる。
とーじが「お前から電話があって」と告げると、沙絵は「掛けてないよ」と否定する。そこへももの携帯から、「実はあたし、もう一人好きな人がいて、彼と一緒に過ごすことにした」というメールが届く。沙絵はとーじに、「場所は分かってるから、一緒に行こう」と持ち掛ける。カイリは2人を目撃し、後を追う。ももが意識を取り戻すとホテルのベッドで裸にされており、傍らにジゴローがいた。カイリ、とーじ、沙絵が部屋に飛び込むと、ももは「出て行って」と叫んだ。
カイリはジゴローを脅し、真相を聞き出した。翌日、カイリは沙絵を呼び出し、「ももちゃんのことが羨ましいんだよね。でも今の沙絵ちゃんは、ももちゃんより幸せになれない」と挑発するように告げる。感情的になった沙絵が「ももが不幸になれば、私は幸せなの」と言うのを、カイリが隠れさせていたももととーじが聞いていた。「もう忘れよう」とカイリは明るく言うが、ももはとーじから別れを告げられる。ももが動揺すると、「何も無かった、って証拠は無いだろ」と冷たく言う。
納得できないももはとーじの家まで押し掛けるが、目の前で香水を割られる。駆け付けたカイリはとーじを非難し、泣き出すももを抱き締めた。ももはショックで学校を休み、心配したカイリが「カメラを買ったからモデルになってよ」と強引に外へ連れ出した。カイリは得意のケーキを作り、ももは元気を取り戻した。久しぶりに登校したももは、とーじと沙絵が親密になっているのを見て落ち込む。カイリは彼女を教室から連れ出し、花壇に種を植えさせた。彼の優しさに触れたももは、交際するようになった。
カイリはももとデートしている途中で、涼と操に遭遇する。涼が2人を来週の異業種交流パーティーに誘うと、カイリは不愉快そうに「ももちゃんにまで、いいカッコしたいの」と告げる。カイリは学校で体育館を出る時に携帯を落とし、それを沙絵が拾った。彼女は操の写真に気付き、それをももに見せた。異業種交流パーティーに参加したももは操と2人で話し、彼女がカイリの家庭教師をしていたこと、涼との関係が悪化した時に辞めたこと、家を出たカイリが泳げないのに海へ行ったことを聞く。カイリが操と楽しそうに話す様子を目撃したももは、彼の思いを見抜いた。雑誌の編集部員に誘われてパーティーに来ていた沙絵は、涼に出会って好意を抱いた。
数日後、カイリと一緒に夏祭りへ行こうとしたももは、が操とタクシーで去るのを目撃する。沙絵は涼に呼び出され、「寂しかったんだろ。俺が君を認めてあげる。全部受け止めてあげる。一緒に幸せにならないか。2人で儲けて、ヨーロッパ辺りで暮らすんだ。ビジネスパートナーになってほしい」と言われて快諾する。ももが待ち合わせ場所で待っていると、カイリから「バイトが終わらなくてちょっと遅れる」というメールが届く。そこへとーじが現れ、ももは驚いた。後からカイリが来ると、ももは「もういいよ。操さんと会ってたんだよね。カイリが好きなのは操さんだよね」と指摘する。
カイリは否定し、「じゃあなんで操さんと会ってんの?」と質問されると「兄さんとの結婚を考え直してほしいと思って。操さんには幸せになってほしいから」と弁明する。ももは「そういうの、好きって言うのよ」と突き放し、とーじは「安達は、俺が幸せにする」と告げる。カイリが「ももちゃんを返せ」とももの腕を掴むと、彼女は「カイリの優しい所が好き。でもね。わがままかもしれないけど、私だけを見ててほしいって思っちゃうの」と口にした。しかしかの自余は「裏切られて傷付くのは、もう嫌」と言い、とーじとヨリを戻すことも拒んで立ち去った…。

監督は神徳幸治、原作は上田美和『ピーチガール』(講談社「別冊フレンド」刊)、脚本は山岡潤平、製作総指揮は大角正、製作代表は高橋敏弘&吉羽治&木下直哉&藤島ジュリーK.、エグゼクティブプロデューサーは武田功、企画プロデューサーは吉田繁暁&森川真行、プロデューサーは新垣弘隆&石塚清和、制作プロデューサーは清家優輝、撮影は小松高志、照明は蒔苗友一郎、録音は石貝洋、美術は磯田典宏、編集は下田悠、協力プロデューサーは宇高武志、音楽は蔦谷好位置(agehasprings)、音楽プロデューサーは高石真美、主題歌は「コール・ミー・メイビー」カーリー・レイ・ジェプセン。
出演は山本美月、伊野尾慧(Hey! Say! JUMP)、真剣佑(現・新田真剣佑)、永野芽郁、菊池桃子、升毅、本仮屋ユイカ、水上剣星、菊田大輔、本村健太郎、内間一彰(ブルーセレブ)、中林大樹、笠松将、梅澤寛容、澤村大輔、大平有沙、長谷川里桃、田中明、瑠衣夏、阿久津美咲、森田想、須賀一天、堺部元行、谷まりあ、平子悟、未来弥、池田和樹、吉田健悟、佐伯新、土師野隆之介、松下結衣子、湯本貴大、北尾貢次、田辺歩、目黒紀史、小高直寛、松本大地、澤口奨弥、岡田幸典、富山裕史、槇原啓右、李多韻、前原梨奈、古賀美咲、高木千佳、羽宮千皓、岡田桜、南りほ、桃乃木まゆ、高山智未、大篠瑞希、戸田優里香、朝比奈加奈、牧野華奈、西間瑞希ら。


上田美和の同名少女漫画を基にした作品。
TVドラマ『リバース エッジ 大川端探偵社』や『MARS〜ただ、君を愛してる〜』を手掛けた神徳幸治が、初めて映画監督を務めている。
脚本は『劇場版 仮面ティーチャー』『愛MY〜タカラモノと話せるようになった女の子の話』の山岡潤平。
ももを山本美月、カイリを伊野尾慧(Hey! Say! JUMP)、とーじを真剣佑(現・新田真剣佑)、沙絵を永野芽郁、桜子を菊池桃子、崇史を升毅、操を本仮屋ユイカ、涼を水上剣星、ジゴローを菊田大輔が演じている。

まず最初に感じるのは、山本美月も伊野尾慧も完全にミスキャストってことだ。
どっちも高校生には全く見えない。伊野尾慧は童顔だけど、高校生には見えない。2人とも、学生服を着ている姿がコスプレにしか見えない。
っていうか山本美月に関しては、ほぼイメクラ状態だ。
「高校生の役は実際の高校生が演じなきゃいけない」と言いたいわけではない。ただ、高校生に見えなきゃキツいことは確かなわけで。それを凌駕する役者の演技力とか、強引に突破する演出力があればともかく、そんなのは皆無なわけで。

この映画が公開された時、キャッチコピーに使われていたのは「この恋、どうなっちゃうの!?5分に1度、恋の事件が巻き起こる!」という言葉だった。
実際に、5分に1度は恋愛に関わる何らかの事件が発生する。日活ロマンポルノには「10分に1度は濡れ場を入れる」という条件があったが、それよりも高い頻度でイベントを用意しているわけだ。
でも、「だから何なのか?」と言いたくなる。
ロマンポルノにおける濡れ場は観客の期待に応える意味合いがあったけど、この映画における「恋の事件」は誰の得にもなっていない。

たぶん「5分に1度の頻度で事件を用意して、それで物語を上手く進めていけるのか。ワチャワチャした印象にならないか」と懸念する人も少なくないんじゃないだろうか。
それは正解だ。
きっと製作サイドとしては、「5分に1度、恋の事件が巻き起こる」ってのが売りになると思ったのだろう。だが、そこに縛られたせいで、むしろ映画としての面白さが犠牲になっているのだ。
「策士策に溺れる」という言葉があるが、この映画の場合、「策士じゃないのに策に凝ってしまい、どうにもならなくなっている」という状態だ。

5分に1度の頻度で事件を起こすってことは、裏を返せば「その事件は全て解決する必要がある」ってことになる。事件を起こすだけで全て放置していたら、収拾が付かなくなってしまうからね。
そして「5分に1度は恋の事件が巻き起こる」という条件下で発生した事件を解決しようとすると、おのずと「事件発生から解決」までの時間も短くなる。
単純に考えれば、5分で解決しなきゃいけないってことになるわけだ。
複数の事件を関連付けて解決までの時間を稼ぐ手もあるが、どっちにしろ慌ただしいことは間違いない。

そして、この映画は事件の処理についてどうやっているかというと、「大半は次の事件までに解決し、それ以外は放置する」という形を取っている。
っていうか、「5分に1度」という条件で考えると、実は「それは事件と呼んでいいのか」という出来事まで「事件」として扱っている。
なので、そういうのは、もはや解決もへったくれも無い。
ただ、どうであれ、この映画は最初から最後までバタバタしていて落ち着きが無い。
かつて「ジェットコースター・ムービー」という呼び方があったが、それとはワケが違う。テンポ良くサクサクと進んでいくわけではなく、無闇に忙しいのだ。
全体の流れを考えて構成するとか、どこかでチェンジ・オブ・ペースを設けて落ち着かせるとか、そういう作業は全く実施されていない。

冒頭、もも、カイリ、沙絵、とーじが順番に登場し、それぞれ「校内一のビッチ? 安達もも(もも)」、「校内一のモテ男子 岡安浬(カイリ)」、「校内一の小悪魔 柏木沙絵(さえ)」、「校内一のさわやか男子 東寺ヶ森一矢(とーじ)」という飾り文字が出る。
その文字だけで、主要キャラ4人の設定をザックリと説明してしまうのだ。
その処理方法は、「これってTVドラマの劇場版なのか?」と疑ってしまうほどだ。
しかし、もちろんTVドラマの劇場版ではなくて、ただ処理が雑なだけである。

ももは「中学時代に水泳部だったために日焼けしたり髪の色が抜けたりして、見た目がビッチみたいになっている」という設定なのだが、これはとーじの台詞でサラッと触れるだけ。
ももの悩んでいる心情なんて、まるで触れていないに等しい。
コメディー映画だから、そこを深く掘り下げる必要があるとは言わない。しかし、それにしても1ミリたりとも掘らないのだ。
ももに限らず、他の3人にしても同じような状態だ。
前述したテロップ以降、キャラ紹介はほとんど先へ進まない。

始まった段階で、登場人物は半ば記号化されている。そして、そんな記号たちを使って、前述した「5分に1度は恋の事件が巻き起こる」という構成を成立させようとしているわけだ。
キャラクターの厚みよりも、ドラマとしての充実よりも、「用意した仕掛けを成立させる」ってことが何よりも重視されているわけだ。
「娯楽映画として何を優先すべきか」という考え方を、完全に間違えているのだ。
おまけに、そこまで他を犠牲にして重視するほど、大した事件が連続するわけでもないし。
せめて「5分に1度の事件」が面白ければともかく、その全ては「どうでもいい」と思える内容ばかりなのだ。

他にも指摘しようとすればキリが無くて、例えばキス動画がネットに公開されたと知ったももが「カイリの仕業」と思い込むのは不自然。
沙絵が小悪魔だと知っているのに、なぜ真っ先に彼女を疑わないのか。カイリは不意にキスしているのに、あの角度から動画を撮るのは不可能だろ。
せめて、そこまでにカイリのキャラ描写が充分なら、「迷わずカイリを疑う」という流れも自然に受け入れることが出来たかもしれない(状況を考えると、かなり無理はあるけど)。
しかし、何しろ薄っぺらい記号でしかないので、「マズい段取りのために、キャラを不恰好に動かしている」という印象しか受けない。

そもそも、カイリは1年前に「ももが自分にキスをしてくれた」と思い込み、それで運命の相手だと勝手に決めているんだよね。
それって、モテモテで大勢の女子生徒をはべらせている男子というキャラと合致しないんじゃないか。モテモテ男子なんだから、それまでにも女性とのキス経験はあるはずだし。
ももと同じく「遊び人っぽいのは外見だけで中身は全く違う」というキャラ設定なら、それでもいいだろう。しかしカイリの場合、実際に大勢の女子をはべらせてチャラい言動を取っているわけで。
その後で「放課後は真面目にバイトしており、パティシエになるため留学を考えている」とか「父や兄のことで悩んでいる」という要素が描かれるが、それも「チャラすぎる学校での言動」とは全く合致しないし。
その場その場で、キャラがコロコロと変化しているような印象を受けるのよね。

カイリが遊びじゃなく本気でももを好きになる理由は全く分からないし、「ももはとーじが好き」と知って応援に回る展開は唐突で不自然。
とーじは沙絵がももを陥れる策略を繰り返していたことを病室で知ったのに、その後も再び騙されるのはボンクラすぎる。
交際を始めたもも&とーじを沙絵が引き裂こうとするエピソードが描かれる間、カイリが「要らない人」になっているのはキャラの出し入れが下手すぎる。
崇史や桜子、操、涼たちは全く使いこなせておらず、無意味に近い存在と化している。

序盤はカイリの周囲に親衛隊がいたのに、いつの間にか姿を消している。仕事は序盤の1シーンで終了し、その後はモブの中に埋もれる。ももがカイリと付き合い始めても、なぜか攻撃する様子が無い。
カイリが操を思い続けているという設定は、それが明かされる時まで伏線らしい伏線が何も見当たらない。沙絵が涼に好意を抱くのも、涼が沙絵をビジネスに利用しようと目論むのも、拙速で違和感しか無い。その辺りで急に「沙絵は承認欲求が強すぎる哀れな女」という色付けをするのも、ギクシャク感が半端ない。
とーじが沙絵に脅されて自分を守るために別れたのだと知った後も、ももが彼とヨリを戻さずカイリとヨリを戻すのは流れとしてスムーズじゃない。
色んなことを無理して詰め込んで、何一つとしてマトモに描写できていない。

もも&とーじが最初から両想いなのはバレバレだけど、「互いに告白して付き合い始める」という経緯は薄っぺらい。始まって30分ほどで2人は交際を始めるが、そこがクライマックスでいいんじゃないかと思うほどだ。
それは「それだけ内容が充実している」ってことではなくて、「ホントは2時間掛けて描かなきゃいけないような話を大幅に省略して30分で片付けている」ってことだ。
1つ1つのエピソード、登場人物の心情の揺れ動き、相関関係の変化など、あらゆる要素を丁寧に描く余裕なんて全く無いので、「用意したルートに従い、駒を最短距離で動かす」という作業だけに徹している。
だから、後半は「ももがとーじと別れてカイリとカップルになる」という展開があるが、これも違和感や不自然さや強引さに満ち溢れている。ももが変わり身の早い軽薄な女にしか見えない。

あえて褒めるポイントを探すとすれば、憎まれ役を引き受けた永野芽郁だけは良かった。そこは素直に称賛できる。
NHKの朝ドラで主演に起用されるのも納得の存在感を、キッチリと示している。
この映画を何らかの理由でどうしても見なきゃいけないという人がいるならば(そんな奇特なケースは考えにくいけど)、そこだけに集中することをオススメしておく。
この映画で唯一と言っていい、マトモな魅力を見出せるポイントだから。

(観賞日:2018年7月31日)

 

*ポンコツ映画愛護協会