『パラノーマル・アクティビティ 第2章 TOKYO NIGHT』:2010、日本

2010年9月3日、東京都杉並区。 大学を目指して浪人中の山野幸一は買ったばかりのビデオカメラを構え、アメリカ旅行から帰宅した姉の 山野春花を撮影した。旅行先で事故に遭った春花は両足を複雑骨折しており、1人では車から降りることも出来なかった。幸一は撮影に 夢中で何も手伝わず、父の繁幸が春花を抱き上げて2階へ運んだ。料理が得意な幸一は、鯛を使って夕食を作った。繁幸は幸一と春花に、 明日の朝一番に20日間の出張でシンガポールへ行くことを話した。
翌日、幸一は春花を撮影しながら質問し、完治までに半年ほど掛かることを聞く。春花はビデオカメラを借り、幸一を撮った。春花は昼食 を取っている時、目を覚ましたら部屋の車椅子が移動していたと話す。部屋を調べた幸一は「たぶん目に見えない何かが出るんだよ」と 言い出し、床に盛り塩を置いた。春花は気味悪がって片付けるよう頼むが、幸一は聞く耳を持たなかった。翌朝、春花に呼ばれた幸一が 部屋に駆け込むと、盛り塩が散らばっていた。幸一は春花に内緒で部屋に隠しカメラを設置していたことを明かし、盛り塩を写した映像を 再生した。すると深夜に塩が一瞬で散らばり、その後も少しずつ動いていた。幸一は改めて春花の部屋にカメラを設置し、パソコンに繋ぐ 。春花は腹を立てるが、一日だけという条件で承諾した。

[第1夜 2010年9月5日]
世紀の大発見を期待した幸一は徹夜で監視しようと考えるが、いつの間にか眠り込んでしまった。その夜は何も起きず、映像を確認した 春花は「終わりです」と明るく言う。しかし幸一は姉に頼み、あと一日だけという条件で撮影させてもらうことにした。

[第2夜 2010年9月6日]
深夜3時17分に、足音のような不自然な音が2度鳴った。朝になって映像を確認した幸一は、春花に教えてポルターガイスト現象の一種だ と説明する。春花は「バカバカしい」と一蹴し、もう撮らないと約束するよう要求した。幸一は諦め切れずに食い下がるが、春花はカメラ の前で約束させた。しかし幸一が夕食の時に改めて頼み込むので、春花は不快感を示す。口論の最中、幸一のコップが急に割れた。不安を 覚えた春花は、部屋の撮影を許可した。

[第3夜 2010年9月7日]
深夜2時27分、前夜と同じような音が鳴った後、ドアが開いた。深夜4時3分、レースカーテンが揺れ、布団が見えない力で引きずられた。 午後、幸一の友人の名越潤と彼の恋人の矢口麻衣、2人の友人の呉美鈴が遊びに来た。霊感のある美鈴が「何か感じる」と口にしたので、 幸一は盛り塩の散らばる映像を見てもらう。美鈴は幸一の案内で春花の部屋に入るが、黙り込んだまま居間へ戻る。 彼女は激しく苦悶 して逃げるように家を出て行き、潤と麻衣は慌てて後を追った。幸一はホームページを調べ、御祓い師に電話で依頼した。夜、幸一は物音 に気付き、廊下に出た。彼が1階に向かいながら呼び掛けると、居間の電球が点滅した。幸一が台所に入ると、ラジオが大音量で流れた。 部屋に戻った幸一は、写真のガラスが割れて自分の目の部分が潰されているのに気付いた。翌朝、幸一は春花に「ヤバいよ、この家。早く 出た方がいい」と告げた。その夜から幸一は、自分の部屋も撮影することにした。

[第7夜 2010年9月11日]
深夜2時57分、廊下の電気が付いて消え、足音が響いた。深夜2時58分、春花が悲鳴を上げ、幸一が慌てて彼女の部屋へ赴いた。幸一が声を 掛けると、春花はパニック状態で「誰かに触られた」と叫ぶ。部屋に近付く足音が聞こえ、ドアが急に閉まった。向こうからガタガタと いう音がするが、幸一がドアを開けると誰もいなかった。午後、幸一は繁幸に電話を掛け、「幽霊とか生易しいモンじゃないから」と早く 戻るよう訴えた。彼は春花に、父が「4、5日で戻るから、家を出るとかバカなこと言うな」と話していたことを伝えた。御祓い師と助手 が来たので、幸一と春花は御祓いの儀式に参加した。御祓い師は悪霊が退散したと告げ、家を後にした。

[第11夜 2010年9月15日]
御祓いの儀式を終えてから怪奇現象は何も起きなくなり、幸一と春花は安堵した。春花はアメリカで巻き込まれた交通事故について、運転 していた車に女性が飛び込んで来たこと、その女性は恋人を殺して逃げていたことを幸一に語った。繁幸が帰宅したので、姉弟は御祓いを 受けてから何も起きていないことを話す。繁幸は2人に、明日からシンガポールに戻ることを告げた。

[第12夜 2010年9月16日]
深夜3時43分、春花の部屋に置いてある車椅子が動いた。幸一と春花が起床すると、繁幸の姿は無かった。幸一と春花は車椅子が動く映像 を見て、まだ終わっていないと確信した。幸一は御祓い師の家に電話を掛け、御祓いを受けた夜に心筋梗塞で亡くなったことを知った。

[第13夜 2010年9月17日]
深夜3時12分、春花は見えない力で頭髪を引っ張られ、悲鳴を上げた。目を覚ました幸一は駆け付けようとするが、ドアが開かなかった。 春花は床に転落し、ベッドの下へ引きずり込まれそうになる。ようやくドアが開いたので、幸一は姉の部屋に駆け込んだ。夜が明けてから 春花は繁幸に電話を掛けるが、応答は無かった。幸一が家を出ようと促すと、春花はアメリカの病院でも変な現象が何度も起きていたこと を打ち明けた。春花は自分がクルマでひき殺してしまった殺人犯がケイティーという名前であること、彼女の周辺でも怪奇現象が起きて いたことを幸一に教えた。「何が言いたいんだよ」と幸一が問い掛けると、春花は「悪魔はさ、この家じゃなく、私に取り憑いてんのかも 。彼女みたいに」と告げる…。

監督・脚本は長江俊和、企画・プロデュースは花田康隆、プロデューサーは中山賢一&加瀬岳史、アソシエイト・プロデューサーは栗村実、撮影は平尾徹、VEは山田実、録音は久連石由文、美術は井上心平、編集は掛須秀一、VFXスーパーバイザーは大萩真司。
出演は中村蒼、青山倫子、津村和幸、吉谷彩子、鯨井康介、守永真彩、山田登是、松林慎司。


2007年のアメリカ映画『パラノーマル・アクティビティ』の日本版の続編。
本家の『パラノーマル・アクティビティ』を手掛けたオーレン・ペリが、日本で配給したプレシディオに「日本版を観てみたい」と言ったことから企画が立ち上がったそうだ。
監督・脚本はフジテレビの「放送禁止シリーズ」シリーズを手掛けた長江俊和。
幸一を中村蒼、春花を青山倫子、繁幸を津村和幸、美鈴を吉谷彩子、潤を鯨井康介、麻衣を守永真彩、御祓い師を山田登是、御祓い師助手を松林慎司が演じている。

冒頭、「この記録映像は、山野家の悲惨な事件の後に、住居から発見されたものである。この映像には複数の超常現象が記録されている」という文字が出る。
わざわざ説明しなくても、その説明がフィクションであることは分かるだろう。
しかも、全く無名の役者を使っていた本家と違い、こちらは既に数多くの作品に出演して知名度のあった中村蒼と青山倫子を「弟と姉」として起用しているわけで。
その時点で、モキュメンタリーとしては完全に間違っている。

本家と同じく、っていうかPOV方式のモキュメンタリーでは常に付きまとう問題だが、この映画でも「なぜカメラを回し続けるのか」という疑問は全く解消できていない。
幸一は興味のある対象がある時だけでななく、ただ食事をしているだけでも自分に向けてカメラを回す。
なぜか春花も、部屋を調べる弟を撮影している。友人たちが来た時も、ずっと幸一はカメラで撮っている。
そして潤も、来訪時にカメラで撮影する。

ただ部屋で勉強しているだけの時も、ずっと幸一は自分を撮影している。春花の部屋で異常が起きて悲鳴を耳にしても、必死で彼女を捜索する時も、幸一は絶対にカメラを手にして撮影する。
姉が悲鳴を上げたら、すぐさま駆け付けるべきだろうに、そんな時でもカメラを抱えて撮影することは忘れない。自らが命の危険を感じ、慌てて逃げ出す時でさえ、カメラを回し続ける。
そんなアホな。どんだけジャーナリズム精神、もしくはパパラッチ根性の旺盛な奴なのかと。
さらに困ったことに、これは「山野家の住居から発見された記録映像」のはずなのに、霊安室に設置された監視カメラの映像もあるのだ。

幸一は変なことがあったから自分の部屋も撮影すると決めたのに、そこから第7夜まで時間が飛んでいる。
そこは絶対に、撮影を始めた日を描くべきでしょ。そして、そこでも何か起こすべきでしょ。
そこから2つの部屋を当時に撮影することになるんだし、その初っ端から見せるべきでしょ。
全ての日を描く必要なんて無いよ。途中で何日か飛ばすのは、一向に構わない。
だけど、そのタイミングで第7夜まで飛ぶってのは、構成として間違ってるぞ。

幸一から電話で事情説明を受けた繁幸は、家に留まるよう指示する。
そんな繁幸の助言も軽いが、それを愚直に受け入れてホントに家に留まり続ける姉弟の判断がアホすぎる。
ホントにヤバいのは自分たちで良く分かっているんだから、家を出ればいいだろ。ホテルなり友人の家なりで、父が帰国するまで過ごせばいいだろ。
それで何か問題があるかって、何も無いでしょ。家を出るのは、父が言うような「バカなこと」ではないだろ。

御祓いの儀式が執り行われるシーンは、5分ほど使ってバカ丁寧に描いている。
でも、そんな必要は全く無い。それを幸一がカメラで撮影している間、何も変なことは起きていないんだから。「御祓い師は悪霊が退散したと言っているけど、カメラには怪奇現象が写っている」みたいな趣向は無いんだから。
この映画に限らず、モキュメンタリー・ホラーって無駄にしか思えない時間帯が結構あるのよね。
それって、ただの時間稼ぎにしか思えないんだけどね。

後半、春花は幸一に、アメリカでも怪奇現象が起きていたことを打ち明ける。
彼女は「もっと早くに言おうと思ってたんだけどね」と言うが、そもそも最初に怪奇現象が起きた時点で病院の出来事を連想するのが普通だろ。それなのに、なぜ「何も気にならないですよ」みたいな能天気な反応だったんだよ。
それは「ホントは不安だけど気丈に振る舞っている」ってのとは明らかに違っていたぞ。
何度も怖い目に遭って、ベッドの下へ引きずり込まれそうになって、ようやく打ち明けるって、不自然極まりないだろ。

春花がアメリカでの事故について話すシーンで、ケイティーの名前を出している。これは『パラノーマル・アクティビティ』のヒロインであるケイティーのことだ。
ただ、そうやって『パラノーマル・アクティビティ』との関連性を持たせても、やはり春花が「悪魔はさ」と言い出すのは、ものすごく不自然。
クリスチャンでも何でもないような日本人の口から、「自分に悪魔が憑依している」という表現がスッと出て来るかね。
やっぱり日本が舞台の作品だと、基本的に「悪魔が憑依する」という設定は馴染まないんだよね。

(観賞日:2021年12月28日)

 

*ポンコツ映画愛護協会