『プロゴルファー織部金次郎2 パーでいいんだ』:1994、日本

織部金次郎、通称“織金”は、プロ生活17年目でようやく1勝を上げたゴルファーだ。スナックを経営している正村周と妹のOL・桜子、オカマの新珠新三郎といった仲間に支えられ、練習場でアマチュアにレッスンしながらプロ生活を続けている。
織部の師匠は、中島常幸プロだ。ある時、織部は中島プロや兄弟弟子の名場巣寛治と共に、練習ラウンドを回った。その途中、織部は秋月という老人がラウンド中に倒れて亡くなった話を聞く。秋月の残したボールを打って供養した織部は、彼の幽霊に感謝された。
織部はトーナメントの予選会を26位で突破するが、17番と18番ホールでボールを引っ掛けたことを気にしていた。織部は名場巣に頼み、フォームをチェックしてもらう。名場巣は織部に、体の衰えを考えない無理なスイングをしていると告げた。
トーナメント本選に出場した織部だが、途中で腰を痛めて棄権してしまう。医師の多古久伴は、完治には1年掛かるだろうと織部に告げた。織部に惚れている桜子は、ゴルフが出来なくなって落ち込んでいる彼を励まそうとするが、バカにするなと怒られてしまう。
織部の前に、1度の優勝経験も無いというシニアのゴルファー、勝又勝成が現れる。勝又から指導を申し込まれた織部は、仲間に置き手紙を残して姿を消した。織部は勝又と共に、弟・銀三郎がペンションを営む鹿児島の種子島に飛んでいた。勝又の妻・花枝から織部の居場所を聞かされた桜子は、仲間に説得されて種子島へ向かう…。

監督&脚本は武田鉄矢、原作は武田鉄矢(作)&高井研一郎(画)、製作は名島徹&黒木照美&中村俊安、プロデューサーは小坂一雄&小野文彦、アソシエイトプロデューサーは田村潤三、監督補は須藤公三、撮影は矢田行男、編集は福田憲二、録音は本田孜、照明は大石弘一、美術は西村伸明、ゴルフ指導は堀田大介、音楽は原田末秋、音楽プロデューサーは中川孝一、主題歌『君は拍手をくれないか』は武田鉄矢。
出演は武田鉄矢、財前直見、阿部寛、柴俊夫、川谷拓三、中島常幸、平田満、小倉久寛、萩尾みどり、浦田賢一、下川辰平、ケーシー高峰、八名信夫、堀内孝雄、山本正義、日下貴和子、綾田俊樹、ラサール石井、桜金造、坂本長利、関敬六、ミッキー・カーチス、室田絢子、村山真夏、金子研三、大川朋子、重松収、関野リサ、崎山勇、加藤めぐみ、佐藤正行、渡辺久美、小森英明、小田草之介、
中村俊安、田中敬司、高野光弘、松山英樹、遠藤正、守谷銀次郎、西村孔伸、藤吉次郎ら。


『ビックコミックオリジナル』連載の同名漫画を映画化した作品。武田鉄矢が初監督を務めている。
織部を武田鉄矢、桜子を財前直見、周を阿部寛、名場巣を柴俊夫、勝又を川谷拓三、新三郎を平田満、銀三郎を小倉久寛、花枝を萩尾みどりが演じている。

1作目の織部は、「プロ生活17年間で1勝もしたことのないダメなゴルファー」という男だった。だが、今回は「つい最近になって1勝したゴルファー」という、インパクトの弱い中途半端なキャラクターとなってしまっている。続編を作るという点から見た場合、1作目で安易に織部を優勝させてしまったことは、大きな失敗だと言えよう。
映画的には、既に織部の存在価値はほとんど失われていると言ってもいいぐらいだ。彼は長いプロ生活で全く勝っていないらこそ、「ダメ男だが応援したくなる愛すべきゴルファー」という形で生きていた。優勝してしまったら、もうダメ男じゃなくなってしまう。
しかしながら、1作目を作った段階でシリーズ化まで頭に入れていたわけではないだろうから、今さら「1作目で優勝させたのはマズかった」と言っても遅い。大きなハンディーを抱えた中で、どうやって主人公を生かし、話を面白くするかを考えねばならない。

冒頭、織部は中島プロと練習ラウンドを回り、そこで秋月という老人の残したボールをグリーンに乗せて、幽霊に感謝される。では、このエピソードに何か意味があるのかと言うと、まるで無いのだ。後で秋月の幽霊が再登場することも無い。
予選会を突破した織部だがミスが気になり、名場巣にチェックしてもらったら「肉体が衰えている」として引退勧告のような言葉を告げられる。だが、そういう流れにするならば、最初に“織部が予選を突破した”という良いニュースだけを伝えるのではなく、その予選会で彼が腰を痛める様子を見せるなど、体にガタが来ていることを示すべきだろう。

織部が予選会を突破した情報を聞いて喜ぶスナックの仲間の中に、見慣れない顔がある。彼は桜子達に、自分もプロをやっている勝又だと自己紹介する。だが、ここで勝又の顔がアップになることも無く、彼の存在はサラリと流されてしまう。
その後も、勝又がいない所で別の話を進めてしまうため、新キャラクターとしての登場時の印象が薄い。なかなかフォローしないのであれば、初登場シーンを遅らせるべきだろう。結局、勝又はレッスンを申し込むまで、チラッと顔を見せる程度の扱いだ。彼の話を進めるのはそこからでいいとしても、その前から存在をもっと主張すべきだろう。

気持ちが萎えていた織部が、勝又からの個人レッスンの依頼を簡単に引き受けるのが納得できない。「腰を悪くしてゴルフが出来なくなった」という部分と、「勝又に個人レッスンを行う」という部分を繋ぐ接着剤が無く、ただ並べているだけになっている。
「自分がゴルフを出来なくなったので他人に教えます」と、そんな簡単なことではないだろう。そう簡単に割り切れるぐらいなら、桜子の励ましに怒ったりしないだろう。個人的に教えるぐらいだから、よほど心打たれる何かがあったのだろうが、それが分からない。かつての自分を重ね合わせたのかもしれないが、それは表現されていない。

織部が勝又と共に種子島に飛んだ後、この2人ではなく、残された桜子をクローズアップしてしまう。その後も、勝又という人物を描くことより、桜子に目を向けてしまう。今回の話では勝又が大きな鍵を握る人物となるべきなのに、印象が薄い。
織部と勝又の関係を軸にして、「勝又に教える内に織部がゴルフへの熱い気持ちを取り戻す」という流れになるべきなのに、織部と桜子&仲間達との関係を軸に据えてしまう。そのくせ、最後は織部ではなく勝又の競技を持って来る。だが、勝又が「燃え尽きたので、これでゴルフをやめられます」と言っても、ちっとも燃え尽きたように感じないのだ。

 

*ポンコツ映画愛護協会