『ホットギミック ガールミーツボーイ』:2019、日本
高校2年生の成田初は中学3年生である妹の茜に頼まれ、妊娠検査薬を購入した。茜と合流した彼女は、小田切梓がモデルを務める大きなポスターに目をやった。梓は初の幼馴染で、かつては同じマンションで暮らしていた。初は妊娠検査薬と一緒にコンドームも購入したが、茜は「こんなの要らないよ」と突き返した。そこへ大学生である兄の凌が来たので、初は慌ててコンドームを隠した。凌が去った後、茜は鞄を激しく振り回し、妊娠検査薬が飛んで行った。八木すばるが漕ぐ自転車の後ろに乗って近くを通り掛かった橘亮輝は、妊娠検査薬をキャッチした。梓は車に乗り、初の近くを通過していった。
茜は生理が来たため、妊娠検査薬を使わずに済んだ。初がマンションを出て学校に向かおうとすると、亮輝が来て妊娠検査薬を突き付けた。彼は「淫乱」と冷淡に罵り、すばるが来ると妊娠検査薬のことを話そうとする。初は慌てて彼の口を塞ぎ、幼馴染のすばるを先に学校へ向かわせた。初が「誰にも言わないで。何でもするから」と頼むと、亮輝は「じゃあ奴隷。ずっと奴隷が欲しかったんだよね」と告げる。昔から変わらず意地悪を続けていることを初が指摘すると、彼は「馬鹿は生き辛くて大変だ。何のために生まれて来たの?」と見下した態度で言い放った。
そこへ梓が現れ、「いじめっ子のままなんだな」と亮輝に言う。彼が父と暮らすためにマンションへ戻って来たことを話すと、初は喜んだ。凌が出て来たので、初は梓が戻ったことを伝えた。初は梓を連れて、学校へ向かう。亮輝は凌と別れ、成田家の郵便受けに妊娠検査薬を入れた。梓が教室に入ると、ギャル軍団が張り付いた。梓から「インテリア見るの手伝ってよ」と誘われた初は、単なる幼馴染だと慌てて弁明する。しかしギャル軍団は彼女を許さず、聞こえるような声で陰口を叩いた。
帰宅した初と茜は、母の志保子から妊娠検査薬のことを訊かれる。茜は何食わぬ顔で、「悪質なイタズラじゃない?」とシラを切った。初は梓に誘われて散歩に出掛け、「男と付き合ったことないでしょ?」と訊かれて焦る。「カッコイイいいとか思ってる奴いないの?」と問われた初は、明確な返答を避けた。そこへ亮輝が現れて鞄を初に放り投げ、塾まで付いて来いと命じた。仕方なく命令に従った初は亮輝を責めるが、激しく罵倒された。亮輝は公衆の面前でキスするよう要求し、初は嫌がりながらも仕方なく応じた。
塾の模擬試験を受けた亮輝は、馬鹿な女子を見下している仲間たちから合コンに誘われる。「くだらねえ」と断った亮輝だが、彼らと一緒に行動する。初と茜を見つけた仲間たちは、すぐにナンパする。初が嫌がっていると、亮輝は相手をするよう命じた。しかし仲間の様子を見ていた亮輝は、「やっぱり貸さない」と初を連れ出した。電車で初が痴漢の標的になると、彼は間に立った。「私で良かったら、貴方様の彼女にしてくださいと言ってみろ。そしたら奴隷じゃなくて彼女にしてやってもいい」と亮輝が言うと、初は拒否した。
マンションに戻った初は、梓の父である実と遭遇した。実は急な出張が入ったと話し、梓にパスポートを渡してほしいと初に頼んだ。初が撮影スタジオへ行くと、モデルの女性たちは彼女を馬鹿にする。そこへ梓が現れ、初を彼女だと紹介した。梓と2人になった初は、亮輝と交際していないこと、弱みを握られて従っていることを話す。「なんで俺に分かってほしいの?」と問われた彼女は、「好きだから」と答えようとして慌てて「幼馴染だから」と言い換えた。すると梓は「好きって言えよ」と告げ、彼女にキスをした。
梓は初に、両親が離婚して母が家を出たことを話す。週末の夜デートに誘われた初は、喜んでOKした。週末、梓は彼女をパーティー会場に連れて行き、睡眠薬を入れたカクテルを飲ませた。彼は仲間に初を連行させようとするが、バイトで会場に来ていた凌が発見する。凌は初を会場から連れ出し、タクシーに乗せて帰らせた。帰宅した初は騙されたと気付かず、梓からの電話を喜んだ。梓から「裸が見たい」と言われた彼女は、戸惑いながらも服を脱いで動画を送った。
翌朝、凌は初を起こし、梓が送って来た裸の動画を見せた。驚いた初は、梓からの電話を受けた。梓は母が初の父である徹に孕まされて精神を病んだと話し、復讐のために初を陥れたことを告げる。近くで聞いていた亮輝が激怒して「こいつは関係ないだろ」と言うと、梓は冷徹な言葉を初に浴びせて非難した。彼が動画を拡散させる計画を語ると、近くにいたマネージャーの葛城リナが初に謝罪してデータの消去を約束した。
電話を切った初は梓の裏切りを受け入れられず、彼を擁護するようなことばかり語った。亮輝は腹を立て、「俺の奴隷のくせに、他の奴の名前ばかり呼ぶなよ」と怒鳴った。彼が「騙されてたんだぞ。お前は世紀の愚か者だ」と罵ると、初は不意にキスをした。亮輝が「舌を絡めろよ」と要求すると、彼女は「分かった。橘くんの言う通りにする。こんなことされたんだもん。何したって同じだよ」と口にすると、亮輝は「梓と一緒にするな」と怒る。「同じだよ。誰の体でもいいんでしょ」と初が去ろうとすると、彼は「違う。俺はお前だけの裸が見たいんだよ」と声を荒らげた。
初が帰宅すると、凌が「今から梓と話してくる」と言う。徹が梓の父を孕ませたという話を初がすると、彼は「ホントにゴメン」と詫びた。凌と茜の気遣いを悟って家に居辛くなった初が非常階段へ行くと、亮輝がいた。「どうしたらバカじゃなくなるの?」と初が訊くと、彼は「そんなのも分かんねえからバカなんだよ」と罵る。初が腹を立てて責めると、亮輝は「お前、元気じゃん」と軽く笑う。「バカじゃなくなりたい」と初が漏らすと、彼は「明日の放課後、中央公園に来い。面倒見てやる」と告げた。
初はリナから電話を受け、梓のことで話したいと言われる。リナはマンションの近くまで来ており、すぐに初は会いに行く。凌は梓を発見し、徹の件は何かの間違いではないかと告げる。彼は初が産まれる前の徹が不妊治療で金に困っていたことを語り、「金と引き換えに誰かを庇っていた気がするんだ」と言う。「本当のことを知りたくないか?」と凌が口にすると、梓は「知ってるよ、調べたから。遠縁の養子なんでしょ、初が産まれる前から」とニヤニヤした。
リナは初に、梓とは一緒に暮らしていたこと、血の繋がらない姉弟のような関係であることを語る。彼女は「貴方とお兄さんみたいな関係なの」と言い、凌が養子だと初に教えた。凌は梓から「初のこと閉じ込めて、やっちゃいたいって目、してるじゃん」と言われ、「そんなこと、あいつに言っても幸せにはならない。だからお前の挑発には乗らない」と告げて去った。梓は初から「凌と血が繋がっていないかもしれない」と聞かされ、「文化圏が違えば養子なんて当たり前だろ」と軽く語った。
翌日、初はリナと遭遇し、梓が行方をくらましたと知らされる。リナは冷静さを失っており、「彼の未来を壊さないで。貴方の色恋に巻き込まないで」と初を責めた。初が電話を掛けると、すぐに梓が出た。初は梓の元へ行き、リナが心配していたことを教えた。彼女は梓に、「私の初恋は消えちゃったんだね」と語った。初は亮輝から「お前は俺の物になってほしい。お前といると宇宙って感じがする」と言われ、「意味分かんないけど、すごく嬉しい」と微笑んだ。一方、凌は初への恋心を隠したまま、マンションを出て行こうとする。しかし故障したエレベーターに初と2人きりで閉じ込められた彼は、思わずキスをしてしまう…。監督・脚本は山戸結希、原作は相原実貴「ホットギミック」(小学館「ベツコミ フラワーコミックス」刊)、製作は多田憲之&瀬井哲也&潮田一&水野道訓&久保雅一&針谷建二郎&秋元伸介&安部順一、エグゼクティブ・プロデューサーは岡本東郎、プロデューサーは橋直也&山尾海彦&川田亮&長井龍&平林勉、協力プロデューサーは備前島幹人、ラインプロデューサーは田口聖、製作統括は木次谷良助、撮影は今村圭佑、照明は海道元、録音は冨田和彦、美術は三ツ松けいこ、編集は平井健一、音楽プロデューサーは津島玄一&本谷侑紀、音楽は坂本秀一&泉まくら、主題歌「夜が降り止む前に」は花譜。
出演は堀未央奈、清水尋也、板垣瑞生、間宮祥太朗、吉岡里帆、反町隆史、桜田ひより、上村海成、黒沢あすか、高橋和也、吉川愛、志磨遼平、八木アリサ、上杉柊平、本多響矢、磯田龍生、鈴木健斗、田中偉登、吉沢太陽、長屋和彰、小宮一葉、古賀哉子、さいとうなり、千北雅楽、渡邉梨香子、藍染カレン、竹内ももこ、空美、風見梨佳、坂田遥香、糸原美波、古矢航之介、朝倉滉生、後藤ユウミ、大西翼、柳英里紗、川村安奈、飯島みなみ、浜中くるみ、上埜すみれ他。
『Betsucomi』で連載された相原実貴の少女漫画『ホットギミック』を基にした作品。
監督&脚本は『溺れるナイフ』の山戸結希。
初を演じているのは、当時は乃木坂46のメンバーだった堀未央奈で、これが映画初主演。
亮輝を清水尋也、梓を板垣瑞生、凌を間宮祥太朗、リナを吉岡里帆、実を反町隆史、茜を桜田ひより、すばるを上村海成、志保子を黒沢あすか、徹を高橋和也が演じている。ドレスコーズの志磨遼平が、凌の友人の島崎役で出演している。監督が山戸結希なので、きっと王道の「少女漫画」は作らないだろう、一筋縄では行かない映画になるんだろうとは予想していた。
ただ、「それにしても」と言いたくなるぐらい、人気の少女漫画が原作とは思えないような仕上がりになっている。
ザックリ言うと、無名役者ばかりが出演する単館上映の自主制作映画のような印象だ。
私は未読だが、ホントに原作はこんな感じなんだろうか。演出はともかく内容に関しては、もしも原作を踏襲しているとすれば、少女漫画誌で人気が出そうな匂いが薄いんだけど。山戸結希が少女漫画を基にした他の映画と一線を画した作品に仕上げようとしていることは、最初の1カットから顕著に表れている。
初の姿をバストアップで捉えるカットから入るのだが、堀未央奈はほぼノーメイクで、ちっとも可愛く見えない。
彼女は乃木坂46という大人気アイドルグループのメンバーだったのに、ものすごく野暮ったい。
その辺りに普通にいるような、まさに自主制作の低予算映画に主演する無名の新人女優みたいな雰囲気なのだ。実際の初は、ギャル軍団が「ちょっと可愛いからって」と陰口を叩いているし、複数の男子から好意を抱かれるようなヒロインだ。
なので、「どこにでもいるような野暮ったい少女」ってのは、キャラに合っているとは思えない。
もっと華のある。明らかに他の女子とは異なる輝きを放つようなヒロインでないとダメなはずなのだ。
例え陰気なキャラであっても、亮輝からイジメを受けて辛い思いをしていても、それはそれとして、「少女漫画のヒロインらしい華やかさ」は見えていないと困るのだ。初と茜の序盤の会話劇も、まるでスウィングしていない。
エッジの効いた演出を狙っているんだろうとは思うが、のっけから独特の雰囲気を作ろうとして多くの観客を拒絶しているように感じる。
茜が「初ちゃんにはこういう気持ち、分からないよ」「初ちゃんみたいないい子ちゃんには全然分からないよ」と言って鞄を振り回すが、言動が不自然で全く馴染んでいない。「こっちが全然分からないよ」と言いたくなる。
茜が性に奔放な少女に全く見えないし、「見えないけどビッチ」というキャラを上手く造形できているわけでもないし。茜が鞄を振り回して妊娠検査薬が飛ぶと、たまたま近くを通った亮輝がキャッチする。この御都合主義が、そこまでの演出と全くフィットしていない。
ここでスナップショットを幾つも挿入する演出があるが、これも完全に外している。
教室のシーンになると、女子たちが話す様子を目元や口元の極端なアップで表現している。
こういう奇をてらったような演出が最後まで盛り込まれているが、マトモに娯楽映画を作る気が無いのかと思ってしまう。
前衛の上澄みを掬った落書きみたいになっちゃってんのよ。序盤で初は梓のポスターを見ているが、これだと梓のキャラ紹介が充分とは到底言えない。「みんなのアイドル」と茜は評しているが、具体的な職業は良く分からない。
そんな梓が現れた時、初が誰だか分からない反応を示すのだが、「なんでだよ」と言いたくなる。
亮輝が「梓」と口にして初は「梓?」と気付いた様子なのだが、ポスターで見ていた通りの見た目でしょうに。
恋愛劇としても、久々の再会としても、そこの淡々とした処理は見せ方を間違っているとしか思えない。男がヒロインを馬鹿にしたり、酷い言動を取ったりするのは、少女漫画では良くあるパターンだ。
「身勝手な主義の男に目を付けられたヒロインが最初は嫌悪するが、たまに優しさや意外な一面を見せるので次第に惚れていく」というのは、定番になっている。
それは、たまに優しさを見せるDV男に依存してしまう女性の心理と大して変わらないと思うので個人的には全く好きになれないが、少女漫画では何度も用いられているフォーマットなのだ。
ただし、それはコメディーだからこそ、「漫画だから」と言い訳の中でキュンキュンする恋愛劇として成立する部分は大きいじゃないかと思う。ところが本作品の場合、それをシリアスなテイストで描いている。コミカルな要素が入り込む余地は微塵も無い。
そうなると(いや実際はそうじゃなくて充分にキツいのだが)、初を奴隷扱いして罵倒する亮輝は、ただのクズ野郎にしか見えなくなる。
そして、そんな男に初が惚れるようになる展開も、「あくまでも少女漫画だから」というフィルターを通しても甘受できなくなってしまう。
単なる悪質なパワハラ案件になってしまうのだ。もちろん、亮輝が初に惚れていること、嫉妬心による苛立ちが余計に奴隷扱いや罵倒をエストレートさせていることは、早い段階で明確に伝わるようになっている。
しかし、それが歪んだ恋愛感情だからって、全てがOKになることなんて絶対に無いのだ。
例え惚れていようが惚れていまいが、亮輝がクズであることに変わりは無い。
「惚れていればOK」ってことなら、世の中のパワハラやDVは全て許されちゃうからね。亮輝が「やっぱり貸さない」と初を仲間の元から連れ去るシーンなんかは、本来の「少女漫画」映画の手法であれば観客がキュンキュンするポイントになるはずだ。しかし、そういう手法で作っていないので、ただの自己中心的で不愉快な行動でしかない。
あと、その場に茜は残されたままなので、それも含めて無責任に思えるし。
まあ「危険な連中の元に茜が残されているのに無視している」という意味では、初に対しても「それでいいのか」と言いたくなるけどね。
亮輝は初を騙した梓に激怒するシーンで好感度アップを狙っているが、まるで足りていない。そもそも、奴隷扱いを反省しているわけでもないし、贖罪を済ませているわけでもないし。あと、それ以外にも恋愛映画としては致命的な欠陥があって、それはヒロインに惚れる男たちが言動も見た目も全くカッコ良くないってことだ。
いや先に言うと、そんなに出番の多くない間宮祥太朗だけは、ちゃんと「イケてる男子」として存在している。
しかし清水尋也と板垣瑞生は、恋に恋する女性の観客を引き付ける力が圧倒的に不足している。
清水尋也は見た目からして、ただのモテないギークになっている。板垣瑞生は大人気モデルのはずだが、その設定に説得力は皆無。
これは役者の資質の問題よりも、メイキャップや演出の問題の方が遥かに大きいんだろうと思われる。梓も途中で本性を現し、亮輝に負けず劣らずのクズ野郎であることが判明する。母親が徹に孕まされたからって初を復讐の標的にするって、同情の余地がゼロだからね。
で、そんな本性が明らかになった時点で、2人の卑劣なクズ野郎がヒロインを取り合う恋愛劇だったことも明らかになるわけだ。
すげえ三角関係だな、それって。もしも「恋愛劇じゃない」と言われたら、「じゃあ何だよ」ってことになるし。
他のジャンルとして楽しめるような要素も、全く見つからないよ。
例えば「辛い体験をする中でヒロインが成長する物語」として解釈しても、やっぱり引き付ける力は著しく弱いし。梓が凌に「遠縁の養子なんでしょ、初が産まれる前から」というシーンがあるが、そのタイミングで触れるのは不自然。一方、それと同じタイミングでリナが初に「貴方とお兄さんみたいな関係なの」と凌が養子であることを明かすのも、これまた不自然。
どこかのタイミングで「初と凌は血が繋がっていない」と明かしておく必要があるのは、もちろん理解できる。だけど、そこへの導入が下手すぎる。
ひょっとすると山戸結希監督って、興味の無いことは適当に済ませるデヴィッド・リンチ的なタイプの人なのかな。
っていうか、120分という上映時間の中で、ヒロインとの恋愛劇に絡む3人目の男として凌を本格参入させるのは、どう考えても処理能力をオーバーしているんだよね。
それが原作通りの展開だから仕方がないんだけど、いっそのこと凌を排除して話を作った方がいいんじゃないかと思うぐらいだ。初とリナの間で、「梓のこと、もっと大事にしてください」「初さんは不遇な人の気持ちが分からないんですね。家族みたいに、お互いに励まし合って、やっと普通のスタートラインなんです、私たち」という会話シーンがある。
でも、「分からないんですね」と言われても、「そりゃ分かんねえよ、何の説明も無かったんだからさ」と言いたくなる。
リナと梓の不遇な家庭環境なんて、全く触れていなかったわけで。
だから、そんなことを急に言われても「知らんがな」って話なのよ。リナは初に「この世界で自分にしか見つけられない夢はありますか」と問い掛けるが、何が言いたいのかサッパリ分からない。
深いことを言おうとして、上滑りしているだけにしか思えない。
それは「リナが深いことを言おうとしている」ってことじゃなくて、登場人物に深いことを言わせようとして上滑りしているって意味ね。
それにしても、なんで吉岡里帆は、こんな役を引き受けたんだろう。特別出演とか友情出演みたいな立場でもないし、もはや外れクジみたいなキャラなのに。初が梓に電話してから会いに行き、そこで繰り広げられる会話劇も、前述した初とリナの会話劇と似たような感想になる。
ザックリと内容を書き出そうかと思ったが、「面倒だし、いいや」と思ってしまうぐらいバカバカしい。
深みのある会話を描こうとしたのかもしれないが、「結局のところ、何がいいたいのか」と疎ましくなるだけ。その台詞は、まるで心に響かず右から左へ通り過ぎて行く。
とりあえず、あちこちに飛んでいて収拾が付かなくなっていたようような印象だけは残っている。初は亮輝とキスして以降、彼女のような扱いを何の否定もせず受け入れるどころか、嬉しそうな様子を見せる。その一方、梓と会う時には、まだ未練があるような様子も見せる。そこを過ぎると、もう完全に亮輝へのラブ満開といった態度になる。
その辺りになると亮輝の態度も大きく変化しており、奴隷扱いで罵倒するようなことは無くなっている。
しかし、だからと言った2人の関係を応援したり祝福したりという気持ちになるわけではない。
亮輝みたいな男に初が惚れるのは、「なんでだよ」と言いたくなる。で、そこからは初と亮輝の恋愛劇が続くのかと思いきや、初が凌に体を委ねようとする展開があるんだよね。
揺れる想いとか、未熟な年齢であるがゆえの危うさとか、そういうのを表現しているつもりなのかもしれないよ。でも映画を見ている限りは、ただのバカなビッチ候補にしか思えないのよ。
そんで初は凌を選ぶのだが、すぐに「やっぱりやめた」ってことで亮輝の元へ走る。そして亮輝が他の女子と話している様子を見ると、「馬鹿」と怒鳴
もうさ、キテレツの極みじゃねえか。
文学的だったり芸術的だったりを狙ったのかもしれないけど、ただの分裂症になっちゃってんのよ。粗筋では全く触れていないが、途中で「茜がすばるに片想いしているが、すばるは初に惹かれているので失恋する」というエピソードが描かれる。
でも、すばるの存在感がものすごく薄いし、茜が彼に惚れているってのもヌルッとした形で途中から出てくる要素。
すばるが初に惚れているってのも、茜との会話の中で雑に触れている。
ビッチだったはずの茜が、途中から「すばるへの一途な愛」ってのをアピールするのも、「なんだかなあ」と言いたくなる。(観賞日:2021年11月2日)