『星を追う子ども』:2011、日本

アスナは学校帰りに山へ行き、洞窟に作った秘密基地に入った。彼女は基地に置いてある鉱石ラジオを持ち出して崖へ行き、適当に周波数を合わせる。そこへ猫のミミが来ると、アスナは肩に乗せる。アスナは持参したサンドウィッチを食べて、ラジオがキャッチした不思議な音楽を聴いた。彼女が帰宅すると、まだ母は戻っていなかった。アスナは幼い頃に父を亡くし、母は看護師として早朝まで仕事をしていた。アスナは洗濯物を片付け、夕食を用意して1人で食べた。歯を磨いて就寝しようとした時、彼女が窓の外に目をやると山で何かが光った。しかしアスナは気のせいだろうと考え、そのまま就寝した。
翌日、学校では女性教師の池田が期末テストを生徒たちに返し、成績優秀で学級委員長のアスナは1位だった。池田は熊のような動物を見たという情報があったことを語り、気を付けるよう生徒たちに告げる。放課後に山へ向かったアスナは、途中の鉄橋で熊のような怪物に遭遇した。そこへシュンという少年が現れ、ペンダントを掲げて怪物をなだめようとする。しかし怪物は襲い掛かり、シュンは右腕に怪我を追う。彼が窮地に追い込まれるとペンダントが閃光を放ち、怪物は即死して鉄橋から川へ落下した。
鉄橋に列車が来ると、シュンはアスナを抱き上げて飛び降りた。気を失っていたアスナが目を覚ますと、そこはいつもの崖だった。アスナが視線を向けると、シュンは背中を向けて泣いていた。シュンはアスナが起きたことに気付くと、「もう危険は無いから。安心して家に帰って。この山には、もう近付かない方がいい」と言う。シュンが立ち去ると、ミミが後を追った。モリサキ中佐は部下2人と共に鉄橋へ行き、列車の運転士から子供を見たという証言を得た。
次の日、アスナは学校を休み、山へ向かった。モリサキは川で怪物の死骸を発見し、部下たちに「何者かが地上に来ている。捜せ」と指示した。アスナが秘密基地へ行くと、その前にシュンが座っていた。アスナは基地に置いてある救急箱を持ち出し、彼の怪我を手当てした。彼女はシュンにラジオを聴かせ、「前に一度だけ、不思議な曲が入ったことがあるの。まるで誰かの心がそのまま音になったみたい」と語る。その言葉を聞いたシュンは、ハッとした表情になった。
シュンはアガルタという遠い場所から来たと言い、「どうしても見たい物と、どうしても会いたかった人がいたから。でも、もう思い残すことは何も無い」と語る。彼は「祝福をあげる」と告げ、アスナの額にキスをした。アスナが顔を赤らめていると、シュンは「ただ君に、生きていてほしい。それだけでいいんだ」と述べて去った。翌朝、アスナは2人分の弁当を用意し、仕事から戻った母と会話を交わした。彼女が登校すると、出産のために休職する池田が代理教師のモリサキを紹介した。
放課後にアスナは弁当を持って山へ行くが、シュンは現れなかった。雨が降り出す中、アスナが帰宅すると、母は「貴方のスカーフを腕に巻いた男の子が河原で見つかった。その子は亡くなった」という警察からの情報を伝える。アスナは動揺するが、「それは違うよ」と否定する。次の日、アスナは山へ行ってシュンの名を呼ぶが、彼は現れなかった。アスナは父が亡くなった日に、必死に耐えていた母が眼前で泣き崩れた出来事を思い出した。
モリサキは授業で古事記について解説した時、地下世界の呼称として「アガルタ」と口にした。アスナの表情が変化するのを見たモリサキは、職員室で池田に彼女がどんな生徒なのか尋ねた。アスナは友人のミキから、モリサキが妻を亡くしていることを聞く。放課後、アスナはモリサキのアパートを訪れ、「アガルタから来た少年に会ったというのは君か」と言われる。モリサキは「ミゾノフチ・レポート」というファイルを差し出し、アスナは怪物の写真を見て驚いた。
モリサキは怪物がアガルタを守る門番であること、アガルタには死者の復活さえ叶う場所があることを語り、そんな伝説を研究しているとアスナに告げる。アパートを出たアスナはミミを見つけ、後を追う。ミミを見失った彼女は山の光に気付き、急いで向かう。するとシュンがいたので、アスナは泣いて喜ぶ。しかし少年は冷淡に、「あいつはもういない。起きたことは全て忘れろ」と述べた。そこへ武装ヘリと武装した3人の男たちが現れると、少年は「アルカンジェリか」と口にした。
3人組のリーダーは少年に対し、クラヴィスを渡すよう要求した。少年はアスナを連れて逃亡し、洞窟に入る。ヘリが攻撃して来たので、彼はアスナを連れて奥へ進む。門番と遭遇した少年はクラヴィスをアスナに預け、殺さずに眠らせようとする。しかし門番が暴れ、少年は窮地に陥る。そこへ3人組が現れ、怪物を射殺した。リーダーは少年に銃を向け、アスナにクラヴィスを持って近付くよう命じた。アスナが近付くと、リーダーはクラヴィスの力で地下世界へ入る扉を開けた。
リーダーはアスナを連れて地下世界に入ると、部下たちに銃を向けて「ここからは私だけで行く」と告げる。扉が閉じる寸前に少年が滑り込むと、リーダーはアスナを解放した。彼がヘルメットを外すと、その正体はモリサキだった。モリサキは少年に、「ここまで来たら君と敵対する理由は無い。私はアガルタに行きたいだけだ」と言う。少年が「お前たちアルカンジェリが期待するような物は何も無い」と語ると、モリサキは「私は妻を生き返らせたいだけだ」と述べた。
少年は「勝手にしろ」と言い、アスナからクラヴィスを回収する。彼は自分がシュンの弟のシンだと明かし、「シュンは死んだ。地上では長くは生きられないことを覚悟で、掟を破って外に出たんだ」と話す。彼はクラヴィスが無くても出口は開くことを教え、その場を去った。モリサキはアスナに、自分がアルカンジェリという組織の一員だが、目的は妻のリサを蘇らせることだけだと明かす。彼がアガルタへ向かおうとすると、アスナは「私も行きます」と口にした。
モリサキはアスナの手を取って湖に足を踏み入れ、水の底にある都市へ向かった。アスナのリュックにはミミが隠れており、その姿を見た門番はアスナたちを襲わずに通過させた。アガルタに着くと、アスナのポケットに入っていた鉱石が光を放った。それは父の形見であり、モリサキはアスナがクラヴィスを持っていると知って驚く。2人は空飛ぶ船を目撃し、その後を追って旅をする。一方、クラヴィスを回収してカナン村へ帰還したシンは長老と会うが、「地上人をアガルタに招いてしまった。大きな過ちだ」と叱責を受けた。
かつて繁栄を誇ったアガルタだが、今では黄昏を生きていた。しかし長老は生命の終点に溶け込むことを望んでおり、「地上人が来れば、かつての苦しみが繰り返される」と語った。長老はシンに、地上人を見つけてクラヴィスを奪う新たな使命を与えた。シンは幼馴染のセリから、危険な使命だと心配される。しかしシンは、両親を亡くした自分とシュンを育ててくれた村への恩義を果たすつもりだった。彼はセリに別れを告げ、村を出発した。
モリサキは野営した夜、妻であるリサの夢を見た。モリサキが兵士として戦地へ赴いている間に、リサは患っていた病気が悪化して死んでいた。アスナも悪夢に見舞われ、夷族と呼ばれる怪物たちに拉致された。翌朝、アスナが目覚めると、そこは夷族の巣である廃墟だった。廃墟にはマナという幼女もいて、アスナは2人で出口を探すが見つからなかった。2人は夷族の群れに襲われるが、クラヴィスのありかを探知したシンが駆け付けて救出した。
シンはアスナに「奴らはお前たちを汚れた血だと言って、食い殺したがってる」と教えた後、クラヴィスの引き渡しを要求した。彼は夷族に追われると、アスナとマナを連れて川へ飛び込んだ。シンは夷族に襲われて怪我を負い、マナを抱いたまま川を流された。アスナは後を追うが、意識を失った。次の朝、モリサキは岸辺へ漂着している3人を発見した。目を覚ましたアスナはシンを手当てし、彼がクラヴィスの引き渡しを要求したことをモリサキに語った。
意識を取り戻したシンはモリサキに気付き、鋭い形相で襲い掛かる。モリサキはシンを軽く昏倒させ、マナが指差した方向を目指すことにした。アスナがシンを連れて行くことを主張すると、彼は「好きにしろ」と告げた。アスナたちがアモロートの村に近付くと、男たちが行く手を塞いだ。彼らは村の出身であるマナだけを引き取り、地上人のアスナたちを追い払おうとする。そこへマナの祖父である老人が姿を見せ、孫を救ってくれた礼がしたいと言い出した。彼の頼みを受けて、男たちは地上人の受け入れを承知した。
マナは母親を殺され、夷族に連れ去られていた。老人はアスナたちに、マナの父親が地上人だったことを話す。それから彼は、地上の王や皇帝たちが数百年に渡ってアガルタの富や技を奪い続けてきたこと、争いを持ち込んで多くの町が滅びたことを語る。今では幾つかの村が残るだけとなっており、アガルタの人々はトラヴィスを使って扉に鍵を掛けたのだ。モリサキが死者の復活について質問すると、老人は「アガルタでは禁じられている」と告げる。モリサキは老人に考えを改めるよう諭され、激しく反発した。アスナはシンの様子を見に行くが、「お前たちはここにいちゃいけないんだ。夷族に殺させてクラヴィスを奪えば良かった」と拒絶された。
翌朝、アスナとモリサキが小舟で村を出発しようとすると、ミミは留まることを選んだ。アスナはマナにミミのことを頼み、村を後にした。彼女はモリサキに、授業で聞いたイザナギとイザナミの神話が気になって結末を調べたことを明かす。神話の最後は、「イザナギが地の底で見たのは、腐って恐ろしい形相になったイザナミだった」という内容だった。「それでも死んだ人を生き返らせることは正しいことなの?」とアスナが尋ねると、モリサキは「旅の終わりは近い。生死の森で何を求めるかは自分で決めなさい」と告げた…。

監督は新海誠、原作・脚本は新海誠、脚本協力は松田沙也、エグゼクティブ・プロデューサーは川口典孝&永田勝治&安田正樹&太布尚弘&喜多埜裕明、プロデューサーは伊藤耕一郎&岩崎篤志&堂下律明&小川智弘、キャラクターデザインは西村貴世、絵コンテ・演出は新海誠、絵コンテ協力は西村貴世&丹治匠、作画監督は西村貴世&土屋堅一、美術監督は丹治匠、色彩設計は新海誠、撮影監督は新海誠、編集は肥田文&新海誠、アフレコ演出は三ツ矢雄二、録音は住谷真、音楽は天門、編曲(一部作曲)は多田彰文。
主題歌「Hello Goodbye & Hello」作詞・作曲:熊木杏里、編曲:清水俊也、歌:熊木杏里。
声の出演は金元寿子、入野自由、井上和彦、竹内順子、折笠富美子、島本須美、大木民夫、金田アキ、洞内愛、堀籠沙椰、土屋真由美、齊藤智美、下崎紘史、増田俊樹、大藪重樹、本道崇、藤原和博、日高里菜、伊藤かな恵、浜田賢二、勝倉けい子、前田剛、水野理紗、稲村優奈、寺崎裕香ら。


『ほしのこえ』『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』に続き、新海誠の4作目となる劇場用アニメーション映画。
新海誠は監督&脚本だけでなく、絵コンテ、演出、色彩設計、撮影監督、編集と多くの仕事を兼ねている。
有名声優を多く起用し、アフレコ演出で三ツ矢雄二が参加している。
アスナの声を金元寿子、シュン&シンを入野自由、モリサキを井上和彦、ミミを竹内順子、アスナの母を折笠富美子、リサを島本須美、アモロートの老人を大木民夫が担当している。

一言で表現するならば、「宮崎駿作品の露骨すぎる模倣」である。
何かの要素を一部分だけ使うとか、大枠だけを使うとか、そんなレベルではない。具体的な類似点を幾つも列挙できるほど、宮崎アニメに寄せている。
宮崎アニメの色々な要素を抽出し、それを寄せ集めて完成したのが本作品だ。ご丁寧なことにキャラクターデザインまで宮崎アニメ寄せている。
物真似だと指摘されるのを求めているのかと邪推したくなるほどだが、そんなことをしても何の得も無いはずだ。
新海誠は前述した作品によって、「新世代のアニメ作家」として高い評価を受けて注目を集めていた。そんな人が、なぜ宮崎アニメの模倣に走ってしまったのか理解に苦しむ。

新海誠自身が、宮崎駿の影響を受けたことを認めている。
っていうか、宮崎アニメを見て育った世代のアニメクリエーターで、その影響を受けていない人など皆無と言ってもいいだろう。
俳優界における松田優作とか、お笑い界におけるダウンタウンとか、ある一定の世代に強烈な影響を与える人物ってのは存在する。
そこから影響を受けることは当然だし、それが悪いわけではない。完全なるオリジナリティーなんて、誰も持ち合わせちゃいないんだしね。

ただし、強い影響を受けたからと言って、じやあモロパクリしてもいいのかっていうと、それは全く別の話だ。
パロディーとしてやっているわけではなく、真正面から臆面も無く堂々と真似ている。ここまで模倣だけで覆い尽くすと、さすがにオマージュとは言い難いだろう。
それに、無理してオマージュとして受け入れたところで、それで映画の評価が上がるわけでもない。
学生が内輪で楽しむ自主製作映画であれば、これでも全く問題は無い。むしろ、良く出来たファンムービーとして高く評価されたことだろう。
しかし商業ベースで劇場公開される映画として、これじゃあダメでしょ。

鉄橋で事件が起きたのだから警察が動くはずだが、その気配は全く無い。そして、なぜかアルカンジェリという謎の組織が、当たり前のように警察のような行動を取っている。
だけど事件が鉄橋で起きたからって、そこで運転士が列車を停めたままモリサキたちの事情聴取に応じているのも変でしょ。事件発生から、どんだけ時間が経過していると思ってんのよ。
しかも、翌日になってからモリサキは怪物の死骸を発見しているけど、なんで事情聴取の流れで捜索しないのか。
っていうか、ホントに警察は動いてないんだね。そうじゃなかったら、モリサキより前に怪物の死骸は絶対に発見できているはずだもんな。
っていうかモリサキは怪物の死骸を発見しても処理していないので、その後でも誰かが発見するんじゃないかと。

シュンの遺体が発見されたら警察が身許を調べるはずだが、その気配も無い。
身元を調べたら正体不明なのは簡単に分かるはずで、それによって大きな事件として扱われる可能性もあるだろう。そして正体だけでなく「事故なのか自殺なのか殺人なのか」ってのも不明だから、それを突き止めるためにもアスナが警察の事情聴取を受けることは確実なはず。
ところが、そんな動きは全く無い。
劇中の世界には、警察が存在しないっていう設定だったりするのか。
それと、アスナもシュンが死んだと知らされた後、彼について詳しく知りたいという意識は全く見せていないんだよな。

シュンは自殺であり、本人も納得した上で死んでいる。
だけど、死ぬことを覚悟してまで地上へ出て、何がしたかったのか良く分からない。
シュンはアスナと話した後で満足したような様子を見せているけど、それは「会いたい人」が彼女だったってことなのか。
でも最初からアスナを知っていたわけじゃないでしょ。地上へ出てから初めて彼女の存在を知ったはずでしょ。
それで満足できるってのは、どういう心情なのか全く分からんよ。

シュンは全くワケが分からないし、中身がペラッペラなままで退場してしまう。
そんな男にアスナが惹かれるロマンスには、まるで魅力を感じない。一目惚れってことなのかもしれないけど、観客を引き付ける力は無い。
しかもシュンが早々と死亡し、アスナを助けたり一緒に行動したりする役目はシンが担当するため、こっちでロマンスを作ればいいんじゃないかと思ってしまうし。
何の中身も無いまま死んだ男への思いでヒロインをずっと動かされても、共感を誘わないよ。

っていうか、もはやアスナがシュンのためにアガルタへ向かうことを決めたのかどうかさえ、ハッキリしないんだよね。モリサキに「少年を生き返らせたいのか」と質問されると、「分かりません」と即答しているし。
そのくせアガルタへ行く決心は強いので、モチベーションがどこにあるのか全く分からんよ。
そんなアスナはシンが夷族から救ってくれた時、「貴方に会うためにアガルタへ来た」と言う。それがモリサキに同行を志願した理由なのかよ。まるで分からなかったぞ。
っていうか、なぜ危険を冒してでもシンに再び会いたいと思ったのか、その理由もサッパリ分からないぞ。
アスナの行動理由がずっとフワフワしたままなので、物語にも牽引する力が生まれない。

アスナは幼くして父を亡くしているが、アガルタに死者を復活させられる場所があると知っても「父を生き返らせたい」という気持ちには全くならない。
それどころか、「アスナは幼くして父を亡くしている」という設定そのものが、まるで上手く機能していない。
アスナが旅の途中でモリサキに「お父さんみたい」と言うシーンがあるが、唐突で強引だとしか感じないし。
そもそも、アスナの父親がどういう人だったのかが、全く描かれていないし。

旅が終わりに近付いた頃、アスナはモリサキにイザナギとイザナミの神話の結末を語り、「それでも死んだ人を生き返らせることは正しいことなの?」と問い掛ける。
ここでは「死者の復活」という目的に対してアスナが疑問を呈しているわけだが、自分が死者を復活さるためにアガルタへ来ていて、それに関して迷いが生じているわけではない。
じゃあモリサキを止めようとしているのかというと、そういうわけでもない。
アスナは、ただ確固たる目的も無いまま、何となくモリサキに同行しているだけだ。

だったらアスナは「巻き込まれた」という形にしてしまえばいいものを、アガルタへ来るのは自分の強い意志なのよね。
なのに、その意がフワフワしているので、どう見ればいいのか困っちゃうキャラになっている。
終盤に入って「お前は何のためにアガルタへ来たんだ」とモリサキに問われても、まだハッキリした答えが無い。
その後、ようやく「ただ寂しかったんだ」と気付くけど、それで納得できるわけでもないし。
「寂しかったからアガルタに来た」と説明されても、ちょっと何言ってんのか良く分からんぞ。

(観賞日:2019年9月15日)

 

*ポンコツ映画愛護協会