『人でなしの恋』:1995、日本

昭和5年、美術学校に通う京子は、講師である画家の門野に対して密かに恋心を抱いていた。門野が講師の職に馴染めず、学校を去ることになった時、京子はその思いを二階堂先生にだけ打ち明けることが出来た。
二階堂の仲人により、京子は門野と結婚することになった。大きな屋敷に住み、幸せな結婚生活を始めた京子。だがある日、京子は門野が夜中に寝床を抜け出したのに気付く。それ以来、門野は毎晩のように夜中になるとどこかに出掛けるようになる。
不審に思った京子は門野の部屋を調べる。すると、人物画を描かないはずの門野の部屋に、美しい女性の人物画が隠してあるのを発見する。門野は誰かと浮気をしているのだと考え、ショックを受ける京子。
いつもと同じように夜中に寝床を抜け出した門野を、京子はこっそり尾行した。門野は離れにある蔵の中に入って行き、2階へ上がった。蔵の1階で様子を伺う京子の耳に、門野が女性と愛を語り合う声が入ってきた。やはり門野は浮気をしているようなのだが…。

監督&脚本は松浦雅子、原作は江戸川乱歩、製作は奥山和由、プロデューサーは中川好久、撮影は佐々木原保志、編集は川島章三、録音は紅谷愃一、照明は安河内央之、美術は部谷京子、音楽は中村幸代。
主演は羽田美智子、共演は阿部寛、竹中直人、加藤治子、岡田英次、吉村実子、藤田敏八、入江若葉、蜷川有紀、堀江奈々、上村淳、高田裕子ら。


勢いがあった頃の奥山和由さんが、自分の寵愛する羽田美智子を主演させて作品を作ってしまったという、公私混同の映画に思えてしまうのは、下衆の勘繰りってヤツなのだろうか。羽田さん、主題歌も歌ってるし、作詞まで手掛けてる。
なんか勘繰ってしまうよなあ。

その羽田美智子は確かにキレイなのだが、それだけで映画が成立するはずも無く。でも、この作品はそれだけしか無いんだよね。他に評価すべき点が何も見つからない。
大金を掛けて作った羽田美智子のPR映画にも思える。

“間”の多い作品だが、その“間”は映画を生かすものではなく、映画を殺す“間”である。短時間で済むものを引き伸ばしているだけで、冗長にしか感じられない。
様式を大切にしているような演出だが、退屈なだけである。

官能美の世界を描いているように感じられるが、中途半端。人形と生身の人間の差を引き立たせるためにも、流れとしては羽田美智子は脱ぐべきじゃなかったのかねえ。
そもそも乱歩作品を上品に仕上げようと思ったのが失敗かもね。もっとグチャグチャでドロドロにした方が面白いのに。

 

*ポンコツ映画愛護協会