『昼顔』:2017、日本

木下紗和は海辺にある三浜という町へ引っ越し、アパートで独り暮らしを始めた。彼女は近所のカフェダイニングへ履歴書を持参し、面接を受けた。オーナーの杉崎尚人から三浜へ来た理由を問われた彼女は、「一度は海辺に住んでみたかった」と嘘をついた。杉崎は試用期間として、日中だけ厨房に入ってもらうことにした。店では年配の田尻絹江と、若い松本あゆが働いていた。杉崎は女性陣に仕事を任せきりで、ウィンドサーフィンに興じることもあった。
ある夜、紗和は市民会館で開催される夏休み公開シンポジウムのチラシに目を留め、横浜理科大学理学部講師の北野裕一郎がゲストで来場することを知る。気になった彼女は、ポスター貼りの作業が行われている市民会館へ赴いた。しかし職員が気付いてチラシを渡そうとすると、彼女は逃げるように走り去った。アパートへ戻った彼女は、チラシを丸めて窓から投げ捨てた。しかし夕食を作った後、紗和は外に出てチラシを拾った。
シンポジウムの当日、紗和はめかしこんで出掛けようとするが、鏡で自分の姿を見て思い直す。ラフな格好に着替えた彼女が市民会館へ行くと、既にシンポジウムは始まっていた。紗和は席に座り、気付かれないようにしながら裕一郎の姿を眺めた。裕一郎はホタルについて話し、質疑応答の時間になった。紗和の前に座っていた子供たちが挙手して指名されたため、裕一郎は彼女の存在に気付く。市民会館を後にした紗和は、シンポジウムで話題になった三浜自然の森へ赴いた。彼女はホタルを探すが、一匹も発見できなかった。
バスで帰路に就いた紗和は裕一郎を目撃し、窓を開けて大声で呼び掛けた。彼女は途中でバスを降り、裕一郎の元へ戻ろうとする。しかし裕一郎は紗和に気付き、軽トラに乗せてもらってバスを追っていた。そのために2人はすれ違いとなり、会うことが出来なかった。帰宅した裕一郎の様子が普段と違うことに、妻の乃里子は気付いた。紗和は夜になっても眠れず、客としてカフェダイニングを訪れた。杉崎は彼女の隣に座り、東京で働いていたが妻の死を契機に帰郷して店を始めたことを語った。
次の日、再び三浜自然の森へ赴いた紗和は、ホタルの幼虫を探す裕一郎を目撃する。しばらく紗和が様子を眺めていると、裕一郎が彼女に気付いた。紗和は裕一郎と会話を交わした後、「これは独り言」と告げる。それ以降、2人は連絡先を教え合わないまま週に1度のペースで森での密会を重ねた。乃里子は頻繁に三浜自然の森へ行く裕一郎に、「最近、多いね」と告げる。休みの日も森へ出掛ける裕一郎に、彼女は「早く帰って来てね。まだ赤ちゃん、諦めてないの」と笑顔で告げた。
裕一郎が予定より遅れて森に着くと、紗和は帰ろうとしていた。バス停のベンチに座った裕一郎が「ごめん」と詫びると、紗和は「もう二度と会えないかと思った」と言う。裕一郎が「もう会うのはよそう」と切り出すと、紗和は「私もそう言おうと思ってた。こんなことを続けてたら、もっともっとって思ってしまう」と告げる。2人はバスに乗り込み、無言のまま駅前へ到着した。紗和と裕一郎がバスから降りると、乃里子が待ち受けていた。
乃里子は車のクラクションを鳴らし、紗和と裕一郎をビジネスホテルに連れて行く。彼女は紗和に、なぜ示談書の約束を簡単に破ったのか説明を求める。紗和はホタルを見ていただけだと釈明するが、乃里子は「純愛ごっこのつもり?」と非難する。彼女は「そんなに好きなら別れてあげる」と述べ、条件として自分の前でセックスするよう迫った。紗和と裕一郎が拒んで抵抗すると、乃里子は「結局、私が悪者になる」と苛立った。乃里子は裕一郎に、一緒に帰るなら今日のことは忘れると告げる。しかし紗和が部屋を飛び出すと、裕一郎は彼女を追う。紗和は駅に着くと、「送ってくれてありがとう」と裕一郎に告げて去ろうとする。裕一郎は彼女に「今度こそ、ちゃんとする」と約束した。
数ヶ月後。裕一郎はマンションを出て、紗和との同棲生活を始めた。紗和は弁当を作って森へ行き、裕一郎との時間を楽しむ。裕一郎は弁護士を通して離婚手続きを進めており、出来るだけ早く紗和と籍を入れたいと考えている。彼は坂上教授から、「身辺だけは綺麗にしておいてね。じゃないと常勤に推薦できないから」と告げられる。杉崎は紗和が裕一郎と楽しそうに過ごす様子を目撃するが、それでも平気で彼女を口説いた。
杉崎が「男は幾つになっても人の物が欲しい。女は奪われると、すごく愛されてると勘違いする。だから不倫が止められない馬鹿が多いんじゃない?」と言うと、紗和は自分の交際相手に妻がいること、かつては自分も結婚していたことを明かした。夕食を準備していた紗和は、大学から届いたファックスで裕一郎が休暇中だと知った。しかし裕一郎は毎朝、大学のゼミだと言って出掛けていた。帰宅した裕一郎はファックスを見ると慌てて隠すが、それに紗和は気付いた。だが、彼女は裕一郎に何も訊けなかった。翌朝も裕一郎は、ゼミがあると嘘をついて出掛けた。紗和は尾行し、裕一郎が乃里子を車の助手席に乗せて楽しそうに出掛ける様子を目撃した。
紗和はカフェダイニングで仕事に集中できず、調理のミスを犯して絹江に叱責される。紗和が謝罪すると、絹江は「壊すのは家庭だけにしてほしいわ」と告げる。あゆは紗和がW不倫している噂が広まっていることを明かし、「だっせ。だって不倫って恋じゃないでしょ」と述べた。杉崎は紗和に、「2人が幸せになれば、誰も何も言わなくなる。そういうもんでしょ」と言う。まだ相手が妻と会っていることを紗和が話すと、彼は「酷い男だね」と口にする。紗和は即座に「いえ」と言い、杉崎は「それでも好きなんだ?」と問い掛けると「だから困ってるんです」と語った。
紗和は裕一郎に真実を問い質すことが出来ず、不安を抱えた日々が続く。彼女は杉崎に誘われ、サーフィンを教わる。相変わらず口説き文句を口にする杉崎だが、紗和はやんわりと受け流す。紗和が口説き文句を相手にせずにいると、杉崎は苛立った様子を見せる。彼は紗和に、不倫の噂を広めたのは自分だと明かす。杉崎は妻の死が嘘であること、実際は自分の部下と不倫して去ったことを話し、「お前たちが楽しんでる裏で、全てを失う人間がいるってことだよ。そういう人間の痛み、考えたことないだろ」と紗和を責めた…。

監督は西谷弘、脚本は井上由美子、製作は小川晋一&市川南、プロデューサーは大澤恵&三竿玲子&稲葉尚人、ラインプロデューサーは森賢正、撮影は山本英夫、照明は小野晃、美術は清水剛、録音は藤丸和徳、編集は山本正明、音楽は菅野祐悟。
主題歌『Place Of Love』LOVE PSYCHEDELICO 作詞・作曲:LOVE PSYCHEDELICO。
出演は上戸彩、斎藤工、伊藤歩、平山浩行、黒沢あすか、中村育二、萩原みのり、志賀廣太郎、三浦誠己、渋川清彦、松居大悟、花戸祐介、出口哲也、加藤裕、田上ひろし、屋敷紘子、尾碕真花、古川慎、未来、新山はるの、斉藤明日美、長谷川愛悠、渡辺聖花、阿部桃子、麻璃恵、原田千枝子、erica(エレクトリックリボン)、三浦元則、山尾麻耶、松田和彦、奈良田武志、高島健一、佐野宏晃、吉本ヒロ、河内結衣、横山歩、根本真陽、深田真弘、木村皐誠、大竹悠義、菊池飛向、生出陽葵、佐藤秀美、長家柄、岩井証夫、小路さとし、豊田将大、赤山健太、安井絵里、桑野未緒ら。


2014年にフジテレビ系で放送されたTVドラマ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち』の劇場版。
ドラマ版のラストから3年後の話が描かれる。
監督の西谷弘、脚本の井上由美子は、いずれもドラマ版からの続投。
キャストでは、紗和役の上戸彩、裕一郎役の斎藤工、乃里子役の伊藤歩がドラマ版からの続投。乃里子の父親役の中村育二は、TVシリーズ最終話にも出演していた。
他に、杉崎を平山浩行、絹江を黒沢あすか、あゆを萩原みのり、坂上を志賀廣太郎が演じている。

チラシで裕一郎が来ることを知った紗和は、市民会館へ赴く。なので、てっきりシンポジウムへ行ったのかと思いきや、まだポスターを貼っているだけ。
まるで無意味にも見える行動だが、それは「チラシを差し出された紗和が慌てて逃げる」というシーンを描くための手順である。
その後、アパートへ戻った紗和はチラシを丸めて窓から投げ捨てるが、「なぜ?」と首をかしげたくなる奇妙な行動だ。チラシを捨てるにしても、丸めて窓から投げ捨てるのは変でしょ。
ただ、それも「外へ出て拾う」という行動を見せたいがための手順だ。
かなり大げさで不自然に思える行動も多いのだが、それがTVシリーズの時は受けたわけだ。

紗和は裕一郎がシンポジウムへ来ることを知り、市民会館を訪れている。
弁護士が入った上で「二度と面会しないし連絡も取らない」という同意書に署名しているのだから、それは絶対にやってはいけない行動である。
これが「たまたま再会してしまった」ってことなら理解も出来るが、声を掛ける気が無かったとは言え自ら様子を見に行っているのだから、この段階で完全にアウトだ。
しかし、これを否定的に捉えず、「その気持ち、分かるわあ」と感じ取ることが、この映画を観賞する上では求められる。

ドラマ版では紗和に夫がいて、裕一郎とはダブル不倫の関係だった。紗和の夫の母親も登場し、「マザコン夫との関係や姑からの重圧」という要素があった。紗和には結婚して子供のいる友人がいて、その女性の不倫や夫のDVも描かれた。紗和の夫が会社の若い女性から誘惑されたり、友人が若い男から好意を寄せられたりという要素もあった。
しかしドラマ版のラストを受けて、この映画で登場するのは紗和と裕一郎と乃里子だけになっている。完全に「紗和と裕一郎の恋愛」に絞り込んでいるわけだ。
ドラマ版に比べると時間が少ないので、同じボリュームを盛り込むのは不可能だろう。だが、あまりにも削ぎ落とし過ぎて、引き付ける力が弱くなっている。
映画版の新キャラも何人か登場するが、メイン2人とは初対面という関係性になっていることもあり、物語を牽引する力は発揮できていない。

この映画を端的に表現するのに、ピッタリの言葉がある。それは「蛇足」という言葉だ。
ドラマ版は最終回で、ちゃんと綺麗に終わっていた。「弁護士が入り、紗和が2度と連絡をせず不貞行為もしないことを約束する同意書に署名して離婚し、裕一郎は乃里子とやり直す」というラストを「綺麗」と呼ぶかどうかは異論があるかもしれないが、不倫の後始末としては、ちゃんと片が付いていた。
そこから「焼け木杭に火が付いて」という話を続けるのは、明らかに蛇足だ。
大まかに言うと、同じことの繰り返しになるし。
しかも、ドラマ版より2人の恋路を邪魔する要素が増えることは無くて、むしろ大幅に減っているわけで。そういうトコで視聴者を食い付かせていたドラマなので、そこの大幅な減少ってのは痛手も痛手だ。

TVシリーズの時は、紗和にはマザコンで厄介な性格の夫がいたし、子供を作るようプレッシャーを掛ける姑がいた。なので、「息苦しさを抱える日常の中で、穏やかな性格の裕一郎と出会って癒やしを感じる」という形になっていた。
また、裕一郎は高校の教師であり、生徒の姿も見えていたことで、「許されない恋、禁じられた愛」のドキドキ感が演出されていた。
それが映画版だと、紗和は離婚してフリーになっている。裕一郎は大学の非常勤講師に転職し、教え子との関係も見えない。
それによって、彼の放つ「女を惹き付ける特別な魅力」は大幅に減退している。

紗和がシンポジウムの後で森へ行くのは、「ひょっとすると裕一郎に会えるかも」という期待が含まれていることを感じさせる。そしてバカから彼を見つけると、何の迷いも無く大声で呼び掛けている。
一方の裕一郎も、すぐにバスを追い掛ける。
もはや同意書で交わした約束のことなど、完全に無視している。
だが、そんな2人の行動を、この映画は決して批判的に描かない。徹底的に寄り添い、不倫を否定せずに描いていく。
不倫カップルを「純愛」として描く話なので、そこを否定しちゃったら全てが終わるのだ。

紗和がカフェダイニングで杉崎と話した後、「いっそのこと、あの人(裕一郎)も死んでしまえばいいのに。そうすれば会いたいと思わずに済むのにと、身勝手な言葉が浮かんでは消えました」というモノローグが入る。
その直前に杉崎から妻の死を聞いているから、何の脈絡も無いとは言えないが、かなり不自然なモノローグだ。
終盤に入ると、それが伏線として用意されていたことが明らかになる。
だが、そこに「伏線が回収された」という満足感や、腑に落ちるモノは何も無い。ただ「無理しすぎだろ」と感じるだけだ。

紗和は森で裕一郎を見つけると、嬉しそうにノリノリで近付いている。「会いたかったのは事実だけど、実際に会ったり話し掛けたりすると同意書に違反するから躊躇する」みたいな意識はゼロ。しばらく声を掛けずにいるのは、ただ「じっくり眺めたいから」というだけだ。
裕一郎が気付くと、同意書なんて完全に無視して普通に喋っている。正面から互いに向き合うことは無いものの、明確に「会話」としての言葉を交わしている。
その後で紗和は「私たち、もう会っちゃいけないんだよね。話してもいけない。連絡も取っちゃいけない。だから、これは独り言」と話すけど、「いやいや、その直前まで普通に会話していたじゃねえか。バカなのか」とツッコミを入れたくなる。
それに「会っちゃいけない」と言うながら、その後も週に1度のペースで会い続けるんだから、もはや「独り言」という言い訳をしたところで無意味。それを「会っている」と言わずして、何と言うのかと。

乃里子はビジネスホテルで紗和と裕一郎にセックスを要求した時、「貴方たちのやってることは崇高な愛でも何でもない。ただの薄汚い不倫なんだから」と言う。
薄汚いかどうかはともかく、「崇高な愛でも何でもない」ってのは、そんなに大きく外れちゃいない。
乃里子は「結局、私が悪者になってる。何も悪いことしてないのに」と苛立つが、それは正しい。
彼女が悪いことをしたわけじゃなくて、裕一郎が裏切っただけだ。

紗和と裕一郎の不倫を肯定したいのなら、乃里子を悪妻にしておけば分かりやすい。そうすれば「裕一郎が他の女に走るのも仕方がない」という風に共感させることが容易になる。
だが、それだと安易すぎるという判断だったのか、乃里子は何も悪いことをしていないのに夫に裏切られるという形を取っている。
この作品は紗和と裕一郎の不倫を否定しないが、だからと言って乃里子を全面的に悪く描こうともしていない。
バランスを取っているのかもしれないが、それによって紗和と裕一郎を素直に応援しにくくなるという弊害も生んでいる。

TVシリーズで裕一郎への執着を見せていた乃里子だが、この映画では急に物分かりが良くなって離婚を承諾する。
しかし、それが「このまま素直に離婚して紗和と裕一郎が幸せになるのは許せない」という気持ちへ変化する展開への前フリってことは、たぶん多くの人が容易に推測できるだろう。
乃里子がおとなしく引き下がったままだと、「紗和と裕一郎は平穏で幸せな生活を送る」という描写が続くことになる。
そんなの、面白くもなんともないからね。

とは言え、乃里子が「やっぱり許せない」と変貌するまでには、しばらく時間が掛かる。なのでドラマを盛り上げるため、「裕一郎が妻と会っていることを隠していると知った紗和が不安を抱く」というネタや、「不倫の噂が広まって紗和が嫌な思いをする」というネタを用意している。
ただ、1つ目に関しては、そのために「裕一郎が紗和に対して不誠実な奴になっている」「乃里子と会うにしても、楽しそうにしているのは変」など幾つか引っ掛かる点がある。
2つ目に関しては、たぶん魚屋が紗和に釣銭を渡す時に「嫌いじゃないでしょ」とニヤニヤしながら言ったり、周囲の買い物客がクスクスしたりするのも、たぶん「噂を耳にしたことを受けての反応」ってことなんだろう。だけど、そんな陰湿なイジメみたいな行動を町民たちが取るのは不自然だよ。そこまで閉鎖的なド田舎ってわけでもないんだし。
噂を聞いたとしても、もっと露骨に嫌悪感を示すか、距離を取ろうとするか、そんな感じじゃないかと。嘲笑の対象みたいな扱いにするのは、不可解だわ。
あゆの「だっせ。だって不倫って恋じゃないでしょ」という発言も、駒として無理に動かしている印象だわ。

紗和が杉崎に誘われて一緒に海で遊ぶのは、「裕一郎のことで不安を抱え、誰かと話したかったから」ということなんだろうとは思う。
ただ、杉崎が自分を口説きに掛かっていることは知っているわけで、それでもホイホイと誘いに乗って2人きりで遊びに行くのは、軽い女だなと感じる。「それは偏見だろ」と批判されるかもしれないが、「不倫に走ったのも、そういうことじゃないのか」と言いたくなる。
っていうか、「さっさと裕一郎に真実を問い質せばいいじゃねえか」と。
それが出来ない関係性には思えないのよ。
ここも不倫カップルの関係に波風を立たせるために、「裕一郎に真実を尋ねない」「杉崎に誘われてホイホイと付いて行く」ってトコで紗和の行動を不自然にさせている印象を受けるんだよな。

後半、紗和は杉崎から、「お前たちが楽しんでる裏で、全てを失う人間がいるってことだよ。そういう人間の痛み、考えたことないだろ」と責められる。しかし彼女は罪悪感など全く抱かず、「非難される私は可哀想」という気持ちになる。
裕一郎が杉崎の元へ乗り込むのも、自分が間違ったことをしているという感覚はゼロで、相手を責めようとしている。
紗和がマンションの暗証番号を片っ端から押して乃里子の部屋を突き止めるのも、自分が間違ったことをしているという意識はゼロ。乃里子の事情を知ると謝罪するものの、相手の「1つだけ」のお願いは冷淡に却下する。
乃里子には何一つ与えず、全てを奪い取ろうとするのである。

完全ネタバレを書くが、最終的に乃里子は裕一郎と別れることが我慢できず、事故を起こして彼を死なせてしまう。
紗和は裕一郎の死を知ってショックを受けるが、そんな彼女のお腹には彼の子供がいる。
つまり乃里子は精神的に追い詰められたせいで愛する夫を自らの手で死なせた上、自分は授かることが叶わなかった赤ん坊を、自分から夫を奪った憎き相手が孕んでしまうわけだ。
なので乃里子の側から見た場合、ある種のサイコ・ホラーみたいなテイストも漂う話になっている。

(観賞日:2018年9月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会