『彼岸島』:2010、日本&韓国

深い森の中で、岡崎という男が吸血鬼に追われて必死に逃げていた。ある小屋で岡崎は吸血鬼に捕まり、首筋を噛まれて血を吸われる。 そこへ忍者装束の男・宮本篤が現れた。篤は丸太で吸血鬼の顔面を潰し、殺害した。血が欲しくなった岡崎に、篤は「こいつの血が体の中 に入って感染したんだ。もうすぐ貴方も死ぬ。そして奴らの仲間として復活する」と告げた。その予告通り、岡崎は吸血鬼となった。篤は 丸太で彼の顔面を潰し、殺害した。
高校生の宮本明は神社に捨てられていた仔犬を学校の屋上へ連れて行き、密かに世話をしていた。そこへ友人のポンがやって来た。手の傷 を見つけた明が「また兄貴に殴られたのか」と険しい表情で言うと、ポンは「僕が悪いんだ」と告げる。ポンが「明が羨ましいよ、尊敬 できる兄さんがいて」と口にすると、明は「その話はよせ」と暗い顔になった。彼の兄・篤は行方不明となっていたからだ。
明は不良グループに囲まれた。彼が振った女が、不良グループのリーダーの妹だったからだ。その様子を、近くの建物から青山冷という女 が見つめていた。不良グループに襲われた明は、慌てて逃げ出した。友人の西山が2階から薬品を不良グループの前に落下させ、逃亡を 助けた。幼馴染みのユキが練習している弓道場に入った明は、飛んで来た矢を間一髪でかわした。友人の加藤が女を口説いているところを 通り過ぎ、明は学校の人に出た。魚屋の友人・ケンとぶつかり、明はさらに走った。
明は冷に腕を引っ張られ、ホテルの部屋に連れ込まれた。冷は明の名前を知っており、篤の免許証を持っていた。彼女は「事情は言えない 。でも、ちゃんと生きてるわ。お兄さんに会ってみたいと思わない?」と告げた。明はケンやポンたちの元へ行き、冷のことを話した。 ケンは「その女、俺が問い詰めてやる」と言う。明はユキに好意を持っていたが、彼女はケンに惹かれていた。「好きな子がいるんでしょ 。教えなさいよ。何なら協力するよ」とユキに言われ、明は自分の気持ちを隠した。
帰宅した明は、兄のことを回想した。剣道の稽古をした後、篤は明に「相手に気を遣いすぎる。もっと自分を解放しろ」と告げた。その 稽古を、婚約者の涼子が見学していた。篤は明に、「週末に彼女と旅行へ行く」と告げ、そのまま2人は失踪してしまった。明の父親は 多額の負債を抱えており、おまけに明の進学資金をギャンブルで失った。酔い潰れた父は、「篤さえいれば」と嘆いた。
翌朝、明やケンたちは登校中、冷が昨日の不良に金を渡している姿を目撃した。そこへ謎の男・雷鬼が現れ、冷は彼と共に歩き出した。 明たちは2人を尾行し、廃工場へと入り込んだ。建物の中を覗き込んだ彼らは、テレビのニュースで行方不明と報じられていた女性が監禁 され、雷鬼に血を吸われている現場を目撃した。気付かれた明たちは、慌てて身を隠す。だが、ユキが雷鬼に見つかり、助けようとした ケンが捕まって首筋に噛み付かれた。明たちは、それを呆然と見つめた。
雷鬼は血を吸われたケンを投げ捨て、明に襲い掛かる。そこへ冷がパワーリフトを突っ込ませ、雷鬼を串刺しにした。冷はハンマーで執拗 に雷鬼の頭を叩き潰す。「もう死んでるだろ」と止める明に、冷は「まだよ。こいつは人間じゃない。吸血鬼なの」と言う。ケンが「俺も 吸血鬼になるのか」と訊くと、彼女は「貴方は血を吸われただけよ。あいつの血が体内に入らない限り、感染することは無いわ」とクール に告げた。「あいつはあたしの監視役よ。奴らを裏切らないように見張ってたの」と彼女は説明した。
2年前、冷の住む島に一人の吸血鬼が現れた。そいつは島の人間を次々に襲い、吸血鬼にして島を支配しようとした。その内、血が 足りなくなり、冷は調達係にされたのだ。彼女は「篤の弟なら、自分たちを助けてくれるかもしれないと思った。警察に飛び込んだ子が いたが、彼女の話は取り合ってもらえなかった。なぜなら、島は表向きには存在しないから。篤は彼女の島で吸血鬼たちと命懸けで戦って いる」と語った。冷は明に「あたしと一緒に奴らと戦って。このままだと篤さんも危ないの」と持ち掛けた。
冷は「島の生存者たちと力を合わせれば、何とかなるわ」と言うが、ケンは「アンタの話は信じられない」と口にする。明が「兄貴を 見殺しには出来ねえ」と行くことを決意すると、ケンは「だったら一人で死んで来いよ」と突き放した。しかし早朝、明が冷と共に港へ 行くと、ケンは同行するために待っていた。「お前のために来たんじゃない。このまま放っておいたら犠牲者が増える。ニュースを聞く度 に目覚めが悪くなる」とケンは口にした。
ケンだけでなく、ポン、西山、ユキも港に現れた。ケンはユキに「いざって時に守ってやれるとは限らない」と告げ、帰らせようとする。 しかしユキが「みんなの帰りを心配して待ってろって言うの。あたしだけ置いてけぼりにしないでよ」と反発したので、同行を認めた。 船が出発した後、遅れて加藤がやって来た。加藤も船に乗り込み、一行は冷の故郷である彼岸島へと向かった。ケンはまだ冷を完璧に信用 したわけではなく、「妙な動きをしたら、すぐにみんなを連れて帰るからな」と言い放つ。
彼岸島は地図に載っておらず、コンパスも狂ってしまう魔の海域にあった。一行が島に上陸すると、彼岸花が咲き乱れていた。しばらく 歩くと、村があった。そこは吸血鬼の襲撃を受けて無人のはずだったが、建物の明かりが付いて老婆が家から姿を見せる。さらに、他の 建物からも次々と人々が現れた。しかし彼らは人ではなく、吸血鬼だった。明たちは吸血鬼たちに捕まり、牢に入れられた。
吸血鬼の頭領である雅の元へ戻った冷は、雷鬼の姿を見て驚いた。雅は「雷鬼は改良を重ねた特別な吸血鬼だ」と言う。「フォークリフト で俺をやったのは貴様だな」と激怒する雷鬼に、「アンタを襲ったのは、あいつらの仲間よ。人ことを怪しむ前に自分の失態を恥じたら」 と冷は言う。雅が「人のオモチャに手を出すな」と雷鬼を制した。雅は冷に「本当に私を殺す気だったのか?面白い。ゾクゾクするよ。 憎しみと絶望に染まった血は極上の味だと聞く。ホントか嘘か、試してみよう」と告げ、彼女の血を吸った。
牢の前に老婆が現れ、「エサにしていた人間の一人が死んだから、お前たちの誰かをエサにする。この輪の中に入った奴が餌食だ。誰が 最初の餌食になる?お前たちで決めろ。誰も入らないなら私が決めるよ」と告げた。怯えた加藤はポンを捕まえ、「お前が入れ」と輪に 入れようとする。西山も加藤に協力し、ポンを輪の中に入れた。ケンが立ち上がり、ポンの代わりに自分が行くと言い出した。ユキが一緒 に行こうとするが、ケンは彼女を突き飛ばした。
牢を出たケンは見張り役の吸血鬼たちに抵抗して揉み合うが、それは鍵を手に入れるのが目的だった。ケンは牢の鍵を明たちの前に落とし 、「みんな絶対に生き延びろよ」と言い残して連行されていった。ケンが連行された部屋では、雅の手下である科学者の五十嵐が実験を 行っていた。牢から脱出した明たちは、実験室で血を吸われているケンの姿を目撃した。明は助けに行こうとするが、西山と加藤は 「このまま飛び込んだら全滅する」と反対する。
ユキが勝手に走り出したため、明は後を追い掛けた。明とユキはケンを救出し、アジトを脱出した。一方、ポンは西山と加藤に「いざと なったら僕のことを見捨てるくせに。もうお前たちのことなんか信じない」と言い放ち、2人とは別行動を取った。森に逃げ込んだ明たち は吸血鬼に追われるが、そこに篤が現れて彼らを助けた。しかし再会を喜ぶ明たちに、篤「なぜノコノコ付いてきたんだ。誰が心配して くれなんて頼んだ。余計なお世話だ」と冷淡な態度を取った。
明たちは西山と加藤と合流し、篤の案内で旧日本軍の施設に入った。篤は「しっかり休め、暗くなったら移動する」と告げる。「ポンを 捜しにいってもいいかな」と明が訊くと、「ダメだ、この変は危険だ。無闇に動いたら死ぬぞ」と篤は言い、周囲の偵察に向かう。明たち の前にポンが現われるが、彼は吸血鬼になっていた。「みんな仲間だと思ってたのに。昔から貧乏くじ引かされてたよな」と恨み言を口に したポンは、憎しみに満ちた目で「みんな許さない」と襲い掛かった。
偵察に出ていた篤が施設に戻るが、雅が率いる吸血鬼軍団に包囲される。明はポンが襲ってきても戦うことが出来なかった。必死に「目を 覚ませ」と叫ぶ明だが、ポンの耳には届かない。他の面々が逃げ惑う中、篤は必死で戦う。明はポンに襲われ、絶体絶命のピンチに陥った 。篤が助けに入り、ポンの頭を刀で貫いた。「ポンが死んじゃうだろ」と号泣する明を篤が捕まえ、「早く逃げるぞ」と告げた。篤は全員 を逃がそうとするが、ユキがコウモリ女に変身した吸血鬼・幻鬼に連れ去られてしまった。
「なんでユキを見捨てた」と責める明に、篤は「勝ち目の無い勝負に挑んだって死ぬだけだ。非情でなくては、ここでは生きていけない」 と言う。しかし彼は「一つだけユキちゃんを救う方法がある。知りたければ付いて来い」と告げた。「涼子さんは一緒じゃなかったのか」 と明に問われた彼は、「涼子は俺のせいで死んだ」と告げた。篤は、涼子と共に彼岸島へ来た時のことを話し始めた。
彼岸島は涼子の生まれ故郷だった。篤が結婚の報告にやって来た時、彼女の父は「本土の人間を連れて来て」と激怒した。神社を訪れた篤 は、「この中には絶対入っちゃいけないって言われてるの」と止める涼子の言葉も聞かず、中に入った。人の声を耳にした篤は、奥の扉を 開けた。封印されていた雅は復活し、涼子の血を吸った。そんな出来事があったため、篤は雅を倒そうと戦っているのだ。
雅は五十嵐に命じて、自分を完全な存在にする研究をさせていた。彼は捕まえたユキに「私が究極の力を手に入れた時、人間は知ることに なる。本当の絶望とは、どんなものかを」と告げて不敵に笑う。明たちは篤に案内されたのは、レジスタンスの隠れ家だった。そこでは雅 に家族を殺された島の残党が、吸血鬼を倒すために戦闘訓練を積んでいた。篤は師匠と呼ばれる仮面の男に明たちを引き合わせた。篤や レジスタンスに吸血鬼との戦い方を教えた人物だ。
篤は師匠に、明たちをしばらく預かって欲しいと頼んだ。ユキを助けに行く気が無いと知った明が激しく反発すると、篤は「自分の力を わきまえろ」と諌めた。明は師匠に、「吸血鬼との戦い方を教えてください」と申し入れた。すると師匠は「私を斬ってみろ」と言い、 いきなり襲い掛かった。刀を手にして応戦した明は、驚異的な戦闘能力を発揮した。師匠は「己の力を信じろ」と告げた。隠れ家を去って ユキを助けに行こうとした明は、篤が一足先にユキの救出へ向かったことを師匠から聞かされる…。

監督はキム・テギュン、原作は松本光司、脚本は大石哲也、エグゼクティブプロデューサーは三宅澄&イ・ジュンホ、 プロデューサーは亀田裕子&シン・ション&クォン・ドン&藤田義則、共同プロデューサーは小松万智子&ピョン・ボンギュン、 アソシエイトプロデューサーは堂山優子&ユン・クムスン、撮影は釘宮慎治、編集は森下博昭、録音は野中英敏、照明は田辺浩、 美術は中澤克巳、VFX統括は橋本満明、装飾は大坂和美、衣裳デザインは宮本茉莉、 イメージボード&クリーチャーデザインは満蔵、クリーチャーデザイン&特殊メイクは百武朋、特殊メイクは松井祐一、 アクション監督は齋藤應典、音楽は澤野弘之、音楽プロデューサーは杉田寿宏、主題歌は9mm Parabellum Bullet『命ノゼンマイ』。
出演は石黒英雄、渡辺大、山本耕史、水川あさみ、弓削智久、森脇史登、足立理、半田昌也(フレンチトースターズ)、瀧本美織、 山本龍二、深見元基、阪上和子、パク・トンハ、阿見201(デコボコ団)、大村彩子、金守珍、 金淳次、李愛美、ミョンジュ、アン・ジャンウォン、松崎裕、森摩耶、北原ひとみ、ムンス、竹谷龍人、 崔哲浩、イ・テガン、染谷夏子、眞田恵津子、古屋敷レナ、針原滋、溝口園枝、 岡本良史、重見成人、高野ひろき、石山圭一、中山賢輔、柴田洋助、桝田充則、佐藤洸、佐々井隆史、石丸裕祠、岡山和之、西本篤志ら。


松本光司による週刊ヤングマガジン連載の同名漫画を基にした作品。
日本と韓国のプロダクションによる合作で、ワーナー・ブラザーズ映画が配給した。
監督は『火山高』『オオカミの誘惑』のキム・テギュン。
明を石黒英雄、篤を渡辺大、雅を山本耕史、冷を水川あさみ、ケンを弓削智久、ポンを森脇史登、西山を足立理、加藤を半田昌也 (フレンチトースターズ)、ユキを瀧本美織が演じている。
瀧本美織は、これが女優デビュー作。

冷は登場した途端、明をホテルに連れ込み、掏りガラス越しにシャワーを浴び、バスタオル一枚で出て来るが、そういうお色気サービスを やる役を演じるには、水川あさみは艶が無さすぎる。
彼女ほどではないが、山本耕史もミスキャストだろう。
中性的とか男の色気とか、そういうことで配役したんだろうし、その部分においては何の文句も無いけど、凄味のある怪物、カリスマ性に 満ち溢れた悪の華というイメージは全く無い。単なる快楽殺人者って感じで、奥底の知れない強さは感じない。
っていうか、そもそも雅のキャラ造形に問題がある。雅は五十嵐に命じて、自分を完全な存在にする研究をさせており、「私が究極の力を 手に入れた時、人間は知ることになる。本当の絶望とは、どんなものかを。奴らの泣き叫ぶ顔を見ながら命を吸い尽くしてやるんだ」と 不敵な笑みを浮かべて言うけど、それが目的なのかよ。
なんかボンヤリしてるし、しょっぱいなあ。

明や両親は「篤が行方不明になった」と解釈しているんだけど、篤が涼子と婚約していたことも、旅行に行ったことも知っているはず でしょ。
だったら、なぜ涼子の生まれ故郷である島へ捜しに行こうとはしなかったのか。なぜ、その島のことを知らないのか。
あと、雅は島に豪華なアジトを作っているが(どうやって作ったのかは不明)、なぜ島から出ようとはしないのか。
わざわざ冷を派遣してエサとなる人間を連れて来させるよりも、自分たちが島を出た方がいいんじゃないのか。

『火山高』も『オオカミの誘惑』もヘッポコな映画だったので全く期待していなかったが、やはり本作品もヘッポコな映画だった。
弓道場に入った明が間一髪で飛んで来る矢をよけるという、この段階で普通の人間が人間離れしたアクションを見せてしまう無神経さ。
女を口説く加藤とぶつかった後、校舎の外に逃げ出す不自然さ。それはケンとぶつからせるためだ。そこで主要人物を全て登場させるため には、どうしても校舎の外に出る必要があったわけだ。
でも、序盤で触れた人間関係は、ほぼ無意味に終わる。
明のユキに対する気持ちも全く消化できずに放り出されたまま終わっているし、両親から期待されていた兄に対する複雑な気持ちも同様。

廃工場のシーンで雷鬼の顔がハッキリと見えるのだが、グラサンで真っ青メイクのこいつが、すげえ安っぽい。
完全にコメディーだよ。しかも安いコメディー。
あと、冒頭シーンの岡崎は吸血鬼の血を浴びて感染していたはずだが、島に到着して吸血鬼と戦った明が返り血をたっぷりと浴びている のに全く感染しないのは、どういうことなんだろうか。
感染しない特別な人間だったりするのか。

とにかくキャラの言動が支離滅裂で理解不能。
まず、なぜ冷が、ヘタレな明に「一緒に戦って」と持ち掛けるのか。単に「篤の弟だから」って、それだけで誘ったのか。
だけど、戦闘能力が皆無だったら、ただの足手まといになるだけだ。明の運動能力の高さを見ているとか、秘められた戦闘能力を見抜いた とか、あるいは「実は明が吸血鬼を倒す鍵を握る特殊な人間だった」という設定があるとか、そういうことなら納得できないでもないが、 そんなのは全く無い。
一応、「不良に金を渡して襲撃してもらい、明の運動能力を確かめた」という設定なんだろうけど、あんなモンで運動能力が確認できた とは思わないぞ。戦闘能力は全く発揮していないし。

実際に吸血鬼に女が噛まれる様子を目撃し、ケンも噛まれて血を吸われているのに、冷の「あいつらが吸血鬼で島を云々」という話を、 「そんなのは信じられない」と言うケンたち。
お前らは何を見て、何を体験したのかと。
で、正義感バリバリの熱い男キャラであるケンが島へ行く気になるのはいいとしても、「自分が殺されるかもしれない」という危険が 待ち受けている島に、他の連中がホイホイと行く気になるのは理解不能。
お前ら、楽しい小旅行か何かと勘違いしてないか。
そこを「友情のために」という理屈だけで突破するのは絶対に無理だぞ。特にユキなんて、本人が行きたがっても、絶対に止めなきゃダメ だろ。彼女が泣いて抗議したとしても、船には乗せないようにすべきだろうに。
そこでユキを乗せた時点で、ケンのキャラも崩れている。「みんなからは強く反対されたけど、ユキが隠れて船に乗り込んでいた」とか、 そんな形なら納得しやすいけど。

っていうか、ケンたちが来ることを、なぜ冷は歓迎しているのか。
吸血鬼と戦う上で特に役立ちそうな技能を持っているわけでもない。せいぜいケンぐらいでしょ、役に立ちそうなのは。
で、そいつらを助けるために明やケンが行動しなきゃいけなくなったら、むしろ邪魔でしょ。単なる足手まといにしかならない。
ユキの場面でも、そこまでにクールな態度を示していたことから考えれば、「貴方が来ても足手まといになるだけよ」と、冷が拒絶しても いいぐらいでしょ。

そんで実際、ケンたちは全く活躍しておらず、単なる邪魔者になっている。
西山が化学薬品に詳しいとか、ユキが弓道をやっているとか、それなりに吸血鬼退治に活用できそうな設定も序盤で提示しているのだが、 それも全く意味の無いものとなっている。
最後まで何も活躍せず、ただの足手まといで終わっている。
「仲間の絆」もそれほど上手く活用されていないし、ホントに要らない面々だ。

篤はポンを捜索したがる明に「ダメだ、この変は危険だ。無闇に動いたら死ぬぞ。暗くなってから移動する」と言うけど、むしろ明るい内 に移動した方がいいんじゃないか。
どうやら本作品の吸血鬼は太陽の光も平気なようだが、だからって暗くなってから移動するのは違う気が。
こっちも動きが取りにくいだろ。
夜目が利くわけでもないんだし、ナイトスコープを持っているわけでもないんだし。

レジスタンスの隠れ家(なぜ雅たちがそこを見つけられないのかは謎だ)に到着した明は、あっという間に強くなってしまう。
っていうか、師匠との戦いで潜在能力が覚醒して、フォースを会得したってことなんだろう。
なるほど、そりゃあ冷が島に連れて来ようとするのも当然だよな。って、そんなので納得できるわけねえだろ。時間が無いから、 慌ただしく処理している感じがバリバリだぞ。
で、そんな明の潜在能力を開花させた師匠は、全く活躍の場が用意されておらず、単なる「仮面をしたデカい人」になっている。

慌ただしく戦闘能力を開花させた明はユキを助けに行くが、普通に考えれば、とっくにユキは血を吸われているだろう。
ところが、なぜか雅は「エサに釣られて現われる愚かな人間もいるだろうからな」と、捕まえたユキの血を吸わずに捕まえておくだけ。
いやいや、ユキの血を吸って吸血鬼にしたとしても、それを明たちは知らないんだから、助けに来るでしょ。
分かりやすい御都合主義だこと。

明は戦闘能力を覚醒させるのだが、そんなに活躍していない。一応、クライマックスでは戦っているけど、ほとんど篤が主役のように なっている印象だ。雅と戦うモチベーションも、明らかに篤の方が強いし。
涼子の言葉も聞かずに雅を復活させてしまう篤の行動だけは、あまりにボンクラすぎて呆れ果てるけどね。
そんな篤を演じる渡辺大は、ヘッポコな映画の中で奮闘していた。
まあ他がアレなんで、完全に空回りなんだけど。

(観賞日:2010年10月15日)

 

*ポンコツ映画愛護協会