『ヘブンズ・ドア』:2009、日本

28歳の青山勝人は自動車工場で働いていたが、やる気は全く無かった。タバコを吸いながら適当に仕事をやっていると、社長は「今日まで でいいから。新しくバイトを入れることにしたから」とクビを通告した。勝人は何の反応も示さず、さっさと工場を去ることにした。彼は 事務員から、今日までの給料と健康診断の結果を渡された。道を歩いていた彼は、頭痛に見舞われた。
病院で検査を受けた勝人は、医師の三宅に「脳に腫瘍が出来ているので入院してほしい。手術は無理で、長くは生きられない。持って 1週間、今すぐ命を失ってもおかしくない状態だ」と宣告される。ロビーを歩いていた彼の姿を、14歳の入院患者・白石春海が見ていた。 同じ頃、K3ホールディングス社長・小久保は、講演で「金こそが文明社会の高潔な存在で唯一無比の力だ。私が道を開いた時、そこを 歩くのは君たちだ」と熱弁を振るっていた。講演の後、社員の辺見と安達は、明日の正午までに車を届ける仕事を命じられた。先代社長の 頃から働いている熟練社員の辺見は、若手の安達に運転を任せた。
勝人は看護師の案内で病室に赴いた。同じ部屋の老人2名が話し掛けてくるが、勝人は無視した。禁煙でも平気でタバコを吸い、注意 されると「あと数日の命だ、ほっとけよ」と告げた。すると春海がタバコを弾いて走り去った。老人たちは「春海ちゃんはこの病院の主。 俺たちよりずっと先輩」と言った。夜中に寝付けずにいると、彼女が現われた。春海は勝人のタバコを手にしており、「どうやって火を 付けるの?」と尋ねた。勝人がタバコに火を付けると、春海も吸おうとした。
勝人が「今から吸ってると肺が真っ黒になるぞ」と呆れると、春海は「関係ないから。先天性疾患に骨肉腫だから」と言う。彼女の余命は 、あと1ヶ月らしい。春海が落としたライターを探した勝人は、ベッドの下にテキーラの瓶が転がっているのを発見した。勝人は春海を 連れて病院の調理場へ行き、テキーラを味わうために塩とレモンを探した。一方、辺見は安達に、「次のボーナス貰ったら会社辞める」と 告げた。驚いた安達は、横断しようとし若者に不注意でぶつかってしまった。
勝人と春海は、テキーラで乾杯した。辺見と安達、怪我を負わせた若者を病院に連れて来た。勝人は春海に、海のことを話した。「体が 解放されて自由な気分になって」などと喋っていると、春海は海に行ったことが無いと言う。彼女は7歳から病院を出たことが無かった。 勝人は「知ってるか、今、天国で一番の話題は海だ。天国じゃみんな海の話をする。昔見た映画で言ってた。可哀想だな、天国で仲間外れ だな。一度も海を見ないまま死ぬなんて」と述べた。
ヤケになったようにテキーラを一気飲みする春海に、「行くか、海」と勝人は告げた。2人が病院を抜け出すと、外には鍵が付いたままの オープンカーが停まっていた。それは辺見と安達が運んでいた車だ。勝人と春海は、その車に乗り込んだ。病院を出て来た安達は、それを 見つけて慌てて止めようとするが、車は走り去った。勝人は「ずっと西へ行った所に、いい海を知ってる」と告げるが、酔っ払った春海は 助手席で眠り込んでいた。
翌日、2人はガソリンスタンドで給油するが、所持金が無い。車内を探った春海は拳銃を発見し、勝人に渡した。店主が強盗だと勘違い して動揺したので、勝人は開き直って「そうだ、強盗だ」と銃を構えた。彼は店主を脅して金を奪い、逃走した。春海は「捕まったら大変 なことになる。懲役とか」と心配するが、勝人は「懲役なんて俺に関係あるの?」と口にした。
県警本部刑事部部長・長谷川は、元妻から「娘の運動会に来ないでくれ」というメールを受け取った。事務員の米沢は、ストーカー被害届 が何度も出されていることを指摘する。捜査二課・御子柴は、いつも長谷川に「オコシバ」と呼ばれている。捜査一課の岸谷は、長谷川に ガソリンスタンドの事件を報告した。車の盗難を報告した安達は、長谷川に殴られた。秘書・百瀬から書類を受け取った長谷川は、辺見と 安達に「車は東京へ向かっている。盗んだ奴も連れて来い」と命じた。
勝人と春海は原宿へ行き、洋服を買い込んだ。所持金が足りないので、勝人は「金を下ろしてくる」と告げて店を出た。辺見と安達は勝人 とすれ違うが、全く気付かなかった。勝人は銀行へ行くが、カードは残高不足で使えなかった。銀行を出た彼は、郵便局で強盗を働いた。 彼はショップに戻ると急いで洋服を購入し、札束を渡して「釣り要らないわ」と去った。車に戻った勝人は、郵便局強盗を春海に明かした。 「自首しよう。今なら謝ったら済む」と春海は言うが、その時、勝人が発作を起こして倒れた。
気を失った勝人が目を覚ますと、もう夜になっていた。「さっさと行かないと死ぬかもしれねえ」と言う勝人に、春海は「なんでそんなに 海へ行きたいの?だって勝人は見たことあるんでしょ」と訊く。勝人は「なんつーか、海ってデカいし、すげえし、日が沈む時とかキレイ なんだよ。人生の最後ぐらい、気の利いたエンディングが欲しくなった。それだけ」と答えた。2人が後ろのトランクを開けると、大量の 現金が入った重箱があった。
長谷川たちは、郵便局の防犯ビデオの映像から勝人を特定した。職を転々としているフリーターで、自転車泥棒で逮捕歴が2度あることも 分かった。逃走車両の名義がK3ホールディングスになっていること、勝人と一緒にいる少女が両親から捜索願の出ている春海だという ことも判明した。勝人と春海は高級ホテルのスイートルームに泊まって豪勢な夕食を取り、楽しい時間を過ごした。
長谷川は岸谷と共に勝人のアパートを捜索した。そこへ、勝人たちがいるホテルの情報が届いた。同じ情報は、小久保から辺見と安達の元 にも届いた。勝人と春海は、死ぬまでにやってみたいことを列記した。勝人は「カッコイイ男の子とキス」という春海の願いを茶化した。 春海も勝人の願いを「幼稚な夢ばっか」と馬鹿にするが、「おふくろに会いたい」という文字を見て真剣な表情になった。
「会ってないの?」と春海が訊くと、勝人は「ビッグになるって田舎出てから10年も帰ってない」と言う。春海は「心配ばかりする母親が うっとおしかった」と明かし、「再婚したし、死んでも安心だよ」と口にした。再び勝人が発作を起こしたので、春海は薬を与えた。翌朝 、テレビのニュースを見た春海は、勝人が強盗と春海の誘拐の容疑で警察に追われていることを知った。ホテルには大勢の警官がやって 来た。辺見と安達もホテルに現れた。
勝人と春海は警官の服を奪い、それに着替えてホテルの外に出た。車の前には辺見と安達がいた。安達が「お巡りさん、これ、僕たちの車 なんですよ」と言うので、勝人はキーを渡して立ち去り、春海をパトカーに乗せて逃走した。御子柴は長谷川に、国税調査官のタレコミに ついて報告した。後援団体の収支報告書は、表向きは不自然な点は無かったが、受注がK3ホールディングスに集中していたという。一方 、辺見と安達は小久保に車を見せるが、トランクには金が無かった。
勝人と春海は遊園地で遊んだ。そこを出た後、雨が降り出す中で、2人は踊った。その時、勝人が発作を起こした。だが、もう袋の中に薬 は残っていなかった。春海は薬局へ飛び込むが、「処方箋が無いと売れない」と店主に告げられる。彼女は拳銃を構え、薬を手に入れた。 持ち直した勝人と春海は、メキシコ料理店で夕食を取ることにした。だが、勝人は疲れた様子で食が進まなかった。
勝人は「もう死ぬって言われて逃げ出しても、同じなんだな。だったら、このまま終わりってのもアリかな」と言い出した。春海は 「行かないつもり?海まで走ろうって勝人が言ったんでしょ」と責めるように告げたすると店主がバンのキーを投げて渡し、スペイン語で 「跪いて生きるより立って死んだ方がいい」と告げた。長谷川と岸谷が店に現れた時、既に勝人と春海はバンで出発していた。だが、 小久保の指示を受けた刺客のトラックが、バンを襲撃する。さらに、行く手には警察の検問が待ち受けていた…。

監督はマイケル・アリアス、原案"KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR" Original Screenplay by Thomas Jahn&Til Schweiger、脚本は大森美香、 プロデューサーは宇田充&関口大輔&原藤一輝、アソシエイト・プロデューサーはTil Schweiger&Tom Zickler、エグゼクティブ プロデューサーは豊島雅郎&亀山千広&藤島ジュリーK.、スーパーバイザーは小川真司&石原隆&長松谷太郎、撮影は小松高志、 編集は武宮むつみ、録音は石貝洋、照明は蒔苗友一郎、美術は岩城南海子、VFXスーパーバイザーは大萩真司、音楽はPlaid、 音楽コーディネーターは加倉井愛子。
主題歌"KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR"日本語詞・歌・編曲はアンジェラ・アキ、編曲は酒井亮介。
出演は長瀬智也、福田麻由子、三浦友和、長塚圭史、大倉孝二、和田聰宏、黄川田将也、田中泯、SACHI、霧島れいか、二宮和也、 吉村由美(PUFFY)、土屋アンナ、阿部知代、薬師丸ひろ子、北見敏之、不破万作、徳井優、井田國彦、柄本佑、今宿麻美、諏訪太朗、 吉野由志子、桃生亜希子、納谷六朗、谷津勲、川口真五、田中栄子、浅川稚広、岡田幸樹、 小川岳男、佐藤宇、吹上タツヒロ、チューチョ・デ・ヒメコ、イタマール、クラウディア、飯田賢治、荒井隆人、中山英樹、北島康平、 柳本将夫、成田一成ら。


1997年のドイツ映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』をリメイクした作品。
監督はアニメ映画『鉄コン筋クリート』でデビューしたマイケル・アリアスで、これが初の実写作品。
オリジナル版では30代のオッサン2人の話だったが、リメイク版では28歳の男と14歳の少女というコンビに変更されている。また、 オリジナル版のギャングのポジションを悪徳企業に変更している。
勝人をTOKIOの長瀬智也、春海を福田麻由子、長谷川を三浦友和、辺見を田中泯、小久保を長塚圭史、安達を大倉孝二、御子柴を和田聰宏、 岸谷を黄川田将也、ホストを二宮和也、ショップ店員を吉村由美(PUFFY)、ホストクラブの客を土屋アンナ、アナウンサーを阿部知代、 春海の母親・鞠子を薬師丸ひろ子、百瀬をSACHI、米沢を霧島れいか、医師を北見敏之、ガソリンスタンド店主を不破万作、薬局店主を 徳井優、春海の義父を井田國彦、車工場の技師を柄本佑、事務員を今宿麻美、社長を諏訪太朗が演じている。

オリジナル版は観賞しているが、「あまりにもメイン2人の行動が大雑把で適当」「哀愁や切なさが足りない」「海を見たいという強い 欲求がまるで感じられず、やけにノンビリしている」などといった感想を抱き、あまり高く評価していない。
しかし裏を返せば、だからこそリメイクする価値があるとも言える。
ダメだった点を改善すれば、傑作に出来る可能性はあるわけだから。
だが、このリメイク版は残念ながら、オリジナル版よりも落ちるという印象だ。
変更点も、全て改悪としか感じない。

勝人は医者から「長くは生きられない。持って1週間、今すぐ命を失ってもおかしくない状態だ」と宣告される。
そんな状態になるまで、入院もせずに済んでいたのかよ。
っていうか、そんな短い余命宣告ってあるのか。余命わずかという設定はともかく、それが発覚した時点で数日の命ってのは、ちょっと 極端すぎないかね。そこは「もう手遅れだ」というだけじゃダメなのか。
それに、勝人みたいなタイプの奴が、おとなしく入院するのも不自然に思える。
一方の春海は、病気でずっと入院している設定はいいとしても、末期ガンである必要性がほとんど感じられないんだよな。

春海が「なんかあと1ヶ月で死ぬらしい」と告げた時、勝人は「ふーん」と言ってから、「えっ?」と、ものすごく大げさに驚く。
ここのリアクションは、ほとんどコントのノリになっている。
なんでそんな芝居にしたんだろうか。
むしろ、驚くにしても静かに驚きを示した方がいいのに。それまでは何があろうと仏頂面で不機嫌そうな奴だったのに、急に喜怒哀楽が 出すぎだろ。
あと、勝人は春海に対しては、すげえあっさりと心を開いて打ち解けるのね。
「同じ余命わずかだから」ということで打ち解けたんだろうというのは、理屈としては分かる。だが、映画を見ていると、そこの説得力が 無くて、話に乗り切れないなあと感じてしまう。

勝人の「アンタもか。アンタも天国のドア、叩いてんだな」というセリフは嘘臭くて、「いかにもセリフです」という感じが強い。
まず「アンタ」より「お前」の方がしっくり来る。その後に「俺は勝人。お前、名前なんていうの?」と、「お前」と言っているん だし。
「天国のドアが云々」は、セリフが全く馴染んでいない。
後の場面で「人生の最後ぐらい、気の利いたエンディングが欲しくなった」というセリフがあるが、そこも、歯の浮くようなセリフが全く フィットしてないんだよな。
大体、今まで適当に生きてきた奴が「人生の最後ぐらい」と言っても、その言葉に重みが無いよ。

勝人がライターを探していたらベッドの下にテキーラの瓶があるのは、見事なぐらいの御都合主義。
その後、テキーラを飲むために調理場へ行くが、タバコもそうだし、飲酒もそうだし、そういう「不良チックな行動」に、春海がフィット してないのよ。
むしろ、そういう行動を嫌悪するようなタイプにした方が馴染んだのではないか。
「未成年に酒を飲ませるなんて不道徳な」とか、映画に道徳観だけでケチを付けるほど健全な精神は持っていないけど、違和感が強い。

冷蔵庫を開けると大量のレモンが転がり落ちるというのは、ファンタジーとしてやっているのかもしれないが、上手くいっているとは 言い難い。
そのつもりだとしたらファンタジーのテイストが醸し出せていないし、ファンタジーとしての狙いが無かったのなら、それ以前 の問題としてアウトだ。
で、タバコは「灰が真っ黒になるぞ」と呆れていた勝人だが、テキーラの飲み方は教えるんだな。
その辺りも、なんかフワフワしてるなあ。
オッサンのキャラを少女に変更したのなら、調理場で酒を飲むとか、その辺りも、それに会わせて改変が必要だったはずなのに、そのまま にするからギクシャクしちゃってるんじゃないの。

勝人は「知ってるか、今、天国で一番の話題は海だ。天国じゃみんな海の話をする。昔見た映画で言ってた」 と言うが、「昔見た」ということなら、今の話題じゃねえだろ。
っていうか、それ以前に、勝人がそういう御伽噺のような話を話すことにも違和感がある。そんなロマンチストなタイプには、全く 見えないのだ。もっとドライで現実的で刹那的な人間に見えるのだ。
その後、「行くか、海」と勝人は言うが、ここはオリジナル版と同様に、海への強い目的意識、渇望といったものは見えない。

勝人はガソリンスタンドで給油するが、金が無いことは最初から分かっているはず。なぜ後のことを考えずに給油して、困った様子で店主 に「今、お金が無いんで、後で払いに来ますよ」と言うのか。所持金ゼロで給油しておいて、「後で払いに来ます」で済むとでも思って いたのか。
「そんなつもりは無かったけど強盗をやらかす」という形にしたかったのは、分からないではない。でも、その前に描かれる行動に、 ものすごく無理を感じる。
原宿で洋服を買い込むシーンだって、金が足りないことなんて最初から分かり切っている。だったら、なぜ原宿へ立ち寄って服を買おうと いうことになったのか。
まずショップで買い物する時点で「お金はどうするの」と春海が全く気にしていないのも変だし。
バカなのか。
大体、海へ行くのが目的なのに、寄り道をする理由は何なのか。
その辺りはオリジナル版と同様に、説得力のある答えは無い。
特に勝人なんて、いつ死んでもおかしくないと宣告されているんだから、ノンビリしている余裕は無いだろうに。

勝人が郵便局強盗を明かした時、春海は「自首しよう。今なら謝ったら済む」と言うが、だったら、最初のタバコとかテキーラとかの 不良的行為もやめとけよ。
もっと真面目なキャラで、勝人に引っ張られて、ちょっとハミ出した行動を取るという展開にしておけばいい。
そっちの方がスムーズだろう。
で、トランクを開けると大量の現金入りの重箱があるんだが、その時点で海へ向かえよ。直前に勝人は「さっさと行かないと死ぬかも しれねえ」と言ってたじゃねえか。まず海へ行って、その後で豪遊してもいいだろうに。
で、そこは春海も普通に喜ぶんだね。「何か危ない金なんじゃないの」と心配することも無いのね。

勝人と春海がホテルから逃走する時、辺見たちが気付かないのは不自然すぎる。
警官の格好に変装しても、春海はバレるだろ。なんで2人とも警官に化ける設定にしたのか。
メキシコ料理店に立ち寄った時、主人が「跪いて生きるより立って死んだ方がいい」とスペイン語で言うが、それじゃ勝人と春海には理解 できないだろ。
なんで勝人は、その言葉で行く気になったんだよ。

K3ホールディングスの設定は、すげえバカバカしいんだよな。
それは荒唐無稽というより、バカバカしい。
なんでそこを漫画チックにしたんだろうか。ベタにヤクザという設定にでもしておきゃいいのに。
知事の収賄に関与している企業という設定なんだけど、ややこしい設定を入れちゃってて、それが邪魔な要素にしかなっていない。
そこは変に凝ったことをせずシンプルでいいのよ。極端に言えば、重箱の金がどういう意味を持つ金であろうが、どうでもいい。そいつら がどんな犯罪に加担していようが、重要なのは「そいつらがワルで、その金を勝人と春海が手に入れて追われるハメになる」という大枠 だけなのだ。

小久保は刺客を送り込み、事故に見せ掛けて殺害するよう指示を出している。
オリジナル版でもギャングが殺し屋を差し向けているけど、後半の「トラックが襲ってくる」とか「小久保たちに捕まって銃を向けられる 」とか、その辺りのサスペンス的展開は、ホント、死ぬほど要らない。
内輪揉めも含めて、うっとおしいったらありゃしない。
その後の、警察に捕まる展開も要らない。

勝人は検問を強引に突破するぐらいムチャな行動を取ったのに、すぐに海へ行こうとはせず、「海は明日だ、もう日が暮れるし」と言う。
そしてホストクラブへ行き、春海に「好きなホストを選んでキスしてもらえ」と言う。
いや、そんなことより海へ行けよ。
で、そこに小久保が現われるんだが、どうやって突き止めたんだよ。
発信器でも付けてあったのか。

最後、勝人が春海の肩にもたれかかって死ぬシーンで、正面から2人を捉えるカットを入れるのは最悪の改変だ。
そこは後ろからのカットだけにすべきなのに。
その後、エンドロールに入って、アンジェラ・アキが歌う日本語歌詞の「KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR」が流れてくるが、これは 興醒め。アンジェラ・アキが嫌いなわけじゃないし、歌唱力もあると思うけど、そこは彼女の歌じゃダメなのよ。
そこがボブ・ディランの歌唱だったら、いや、ボブ・ディランじゃなくても、渋い声の男性歌手による英語での歌唱だったら、それだけで グッと雰囲気が変わっていたと思うよ。

(観賞日:2010年3月21日)

 

*ポンコツ映画愛護協会