『春待つ僕ら』:2018、日本

春野美月は小学生の頃、バスケットボールが得意な神山亜哉に抱き締められ、「何か大事な物が1つあれば強くなれるよ」と励まされた。彼女は亜哉のように強くなりたいと思い、清凌高校に入学した。彼女は大勢の友達を作り、楽しい高校生活を送りたいと考えていた。だが、彼女は1年4組のクラスメイトに上手く話し掛けられず、まるで馴染めていなかった。成り行きで放課後の掃除を引き受けた美月は、教室に残って転寝している浅倉永久に気付いた。彼女は大声で「起きて」と叫ぶが、永久は全く動かなかった。
美月が学校を去ろうとすると、体育館の前で大勢の女子生徒が騒いでいた。気になった美月が様子を見に行くと、男子バスケットボール部が練習をしていた。そこに永久が遅れて現れると、女子たちは「バスケ部イケメン四天王が集まった」と興奮する。2年生の若宮恭介と多田竜二、1年生の宮本瑠衣と永久は、そう呼ばれているのだ。美月は全く興味を示さず、その場を去った。バイトしているWORLD'S CAFEへ赴いた彼女は、先輩店員の柏木ナナセにクラスで全く打ち解けられないことを相談した。するとナナセは美味しいパンケーキ店を教え、一緒に行こうと誘うよう助言した。
地元の高校を選ばなかった理由をナナセに問われた美月は、「昔、この辺に住んでて、すっごく楽しかったから」と答えた。道路の向かいにある公園を見た彼女は、子供たちがバスケットボールをしている傍らで輪に入れず、ポツンと座り込んでいる少女に気付いた。美月が幼少期を回想していると、瑠衣が店にやって来た。彼は告白したがっている仲間がいると言い、美月を外へ連れ出した。すると待っていた竜二は、人違いだと指摘する。彼はナナセに惚れて、告白しようとしていたのだ。竜二が瑠衣と揉めていると、美月は彼らの言動に「失礼じゃないですか」と腹を立てて去ろうとする。永久は美月がクラスメイトだと気付き、フルネームを呼んだ。
次の日、美月はクラスの女子グループに声を掛けようとするが、小学生時代を思い出して動けなくなった。1人で読書している山田レイナを見つけた彼女は、話し掛けようとする。美月は教師に邪魔されてタイミングを失うが、レイナの方からパンケーキ店に誘われた。美月が喜んでカフェへ行くと、イケメン四天王が来ていた。ナナセは美月に、竜二の告白はハッキリと断ったこと、しかし全く諦めてくれないことを話す。試験前で部活動が休みになったため、四天王は店に通うつもりだった。
また一人ぼっちの少女を目にした美月はレイナに許可を貰い、向かいの公園へ赴いた。美月は少女に話し掛け、「みんなとバスケしたいと思わない?もしよかったら、私からみんなに」と提案する。しかし少女に「ミニバス入ってないから無理」と拒絶され、美月はカフェに戻った。永久から仲間を紹介したいと言われた彼女は、「ここは私の大事な場所だから、貴方たちみたいな人に通われると迷惑」と告げる。「チャラい人は苦手」と美月が口にすると、永久は「チャラくはないな。小学生の頃からミニバス初めて、みんなマジでバスケやってるから」と述べた。美月は彼に、「とにかく、貴方たちには来てほしくない」と語った。
美月はバックヤードへ行き、レイナに少女のことを相談した。するとレイナは、四天王に力を借り手はどうかと持ち掛ける。バックヤードから美月が戻ると、四天王は姿は無かった。店長は美月に、勉強の休憩で公園へ行ったことを教える。四天王は公園で子供たちと一緒にバスケをしており、そこには少女の姿もあった。少女が楽しそうにバスケをする姿を見た美月は感涙し、四天王に礼を言う。永久が「大事な場所って言ってたのと関係あるの?」と訊くと、彼女は「あの子、昔の私と何となく似てるの。小学校の頃、一人ぼっちだった。ここで亜哉っていう女の子と出会って、助けてもらった」と話した。
美月はレイナとバンケーキ店へ出掛けた時、彼女がスマホに四天王の隠し撮り写真を集めていると知った。レイナは「その辺のファンとは違う」と言い、もっと上のステージにいるのだと主張した。彼女が四天王のファンを敵視していたため、「ファンじゃないわよね?」と問われた美月は「ファンじゃない」と即答した。彼女はカフェで四天王を無視し、学校では永久を避けた。しかし不審に思った永久に声を掛けられて話している姿を、レイナに見られてしまう。事情を知った永久は、今後は話し掛けないことを約束するが、「大事にしたい友達なら、ホントのこと言った方がいいと思うよ」と告げた。
美月がカフェへ行くと、永久は来ていなかった。四天王の残り3人は、永久も自分たちも美月を大事な友達だと思っていると告げた。美月はレイナを呼び出し、事実を明かす。レイナは全く怒らず、友達として彼女を受け入れた。美月は永久に謝り、レイナに事実を話したことを伝えた。永久は美月に、レイナと2人で次の試合の応援に来るよう誘った。インターハイ予選会場に赴いた美月はヘアゴムを落とすが、全く気付かなかった。レイナが美月の名を呼んで一緒に会場へ向かう様子を、清凌高校の金髪の選手が見ていた。
清凌高校の試合が始まると、四天王のファンが観客席の一番前に立って熱狂する。美月は思い切って声を出し、みんなで応援しようと提案した。レイナも賛同し、女子生徒は一緒になって声援を送る。清凌高校の男子バスケ部は奮起し、勝利を収めた。試合後、美月はヘアゴムを探しに行き、それをレイナから聞いた永久は彼女の元へ行く。2人が話していると、金髪の男が来てヘアゴムを差し出した。彼は美月に「ずっと持ってくれていたんだね」と言い、「神山亜哉」と書いてある学生証を見せた。美月が困惑していると、彼は優しく抱き締めて「こうしてると思い出すでしょ」と告げた。
美月は亜哉が女の子ではなかったことに戸惑うが、それだけではなかった。亜哉はインターハイの優勝常連である鳳城高校のエースであり、天才プレーヤーとして全国的に注目されている逸材だったのだ。美月は永久を除く四天王の3人から亜哉との関係を冷やかされ、彼氏ではなく幼馴染だと説明した。夜、カフェで1回戦突破の祝勝会が開かれ、美月、ナナセ、四天王が集まった。美月たちが楽しく話す様子を、向かいの公園に来ていた亜哉が見つめた。
祝勝会を終えた永久は帰り道、恭介から「美月のこと、どう思ってんの?」と訊かれる。彼は「空気って感じかな」と答え、自然と一緒にいられるという意味だと説明した。彼が「今はインターハイ予選のことしか考えてない」と口にすると、恭介は「好きになっちゃったら、しょうがないけどな」と意味ありげに告げた。美月が仕事を終えてカフェを出ると、亜哉が待ち受けていた。いつ日本に戻って来たのか美月が尋ねると、彼は「去年だよ。アメリカでバスケばっかりやってた」と言う。性別について嘘をついていたことについて、彼は「美月が女の子のアヤに憧れてたから、ホントのことを言えなかった」と釈明した。
翌日、美月は学校で永久と会い、亜哉が男子だったことについて嘘をついた形になったのを謝罪した。永久は全く気にしていないと告げ、「良かったじゃん。美月にとって大事な人だったんでしょ」と述べた。夜、永久は公園にいる亜哉を見つけ、声を掛けた。2人は互いに、強烈なライバル心を剥き出しにした。亜哉が美月を懸けて1オン1の勝負を持ち掛けると、永久は「美月は関係ないでしょ」と言う。亜哉が「そんな中途半端な気持ちなら、美月の近くにいる資格は無いよ」と告げるが、永久は無視して立ち去った。
永久は亜哉への対抗心もあり、学校で美月を見ても冷たい態度を取った。四天王はカフェに集まった時、インターハイへの熱い思いを吐露した。美月は永久に、必ず応援に行くと約束した。瑠衣は全員が集まっている場所で、美月も含めた5人のライングループを提案する。それは美月と永久の関係を前進させるため、彼が恭介&竜二と一緒に考えた作戦だった。店を出て帰る時、永久は同じ方向だと言って美月と同じ電車に乗った。彼は亜哉の名前を出し、「絶対負けないから。バスケ」と告げた。最寄駅に着いた美月は、永久の住まいが全く違う場所だと知って「ありがとう」と告げた。帰宅した美月は、ライングルーフに参加して永久とメッセージを交換した。
インターハイのCブロック決勝に臨んだ清凌高校の男子バスケ部だが、連戦で疲労は隠せなかった。美月が応援していると、Aブロックで優勝した亜哉が隣に来て観戦した。清凌は前半をリードして折り返し、後半は永久と恭介を休ませた。しかし竜二は休むことを拒み、試合に出続ける。彼はスタンドプレーを繰り返して周りが見えなくなり、清凌は逆転されてしまう。無理なプレーに出た竜二は右足を捻って途中退場を余儀なくされ、清凌は試合に敗れた。
竜二は病院へ行き、全治2週間の捻挫と診断された。軽傷だったので美月が「良かったね」と言うと、彼は「何が良かったんだよ。試合に負けたんだぞ」と怒鳴る。永久は八つ当たりを注意し、イケメン四天王は口論になった。美月は公園で子供たちとバスケをしている亜哉を見つけ、自分のせいで永久たちが険悪になってしまったことを話す。亜哉が「大丈夫だよ。そんな顔しないで」と慰めると、美月は小学生時代の出来事を思い出した。亜哉は彼女に、「ずっとそばにいるよ。何があっても必ず美月を守ってあげる」と語った。
しばらくカフェにも姿を見せなくなった竜二だが、ナナセに会いたくて簡単に立ち直った。そして四天王の関係も、あっさりと元に戻った。「仲間っていいよね」と美月が口にすると、永久は「美月も仲間だよ」と告げた。放課後、美月はカラオケに行こうと話す女子たちに、思い切って「私も一緒に行っていいかな」と声を掛けた。美月がクラスメイトと打ち解ける様子を見た永久は、穏やかに微笑んだ。美月は国語教師から、作文コンクールに学校代表で作品を出さないかと提案された。しかし小学校時代にクラスメイトから嘲笑された思い出が蘇り、美月は前向きな気持ちになれなかった。永久は美月から作文コンクールのことを聞き、「大事な物を見つけられるかどうかは、美月次第じゃない?」と告げた。
帰宅した美月が作文に取り組もうとしていると、インターハイで優勝した亜哉から電話が掛かって来た。亜哉は美月に、「ご褒美に1つ、お願い聞いてくれる?」と告げた。彼は公園で美月と待ち合わせし、花火大会に出掛けた。2人が出掛ける様子を見ていたナナセは、店に来た永久たちにそのことを話した。平静を装った永久は、恭介に「無理すんなよ」と言われると「向こうには向こうの繋がりや時間があるから」と告げる。亜哉は美月に「好きだよ。昔も今も。これからは、ちゃんと男として見てほしい」と告げて頬にキスをした…。

監督は平川雄一朗、原作は あなしん『春待つ僕ら』(講談社「KCデザート」刊)、脚本は おかざきさとこ、製作は高橋雅美&池田宏之&村田嘉邦&角田真敏&山本浩&石垣裕之&橋誠&吉川英作&渡辺章仁&田中祐介&板東浩二&長坂信人、エグゼクティブプロデューサーは濱名一哉、企画プロデュースは春名慶、プロデューサーは大畑利久&長澤佳也、撮影は小松高志、照明は蒔苗友一郎、録音・整音は高須賀健吾、美術は佐久嶋依里、編集は伊藤潤一、音楽は高見優、主題歌「Anniversary」はTAOTAK。
出演は土屋太鳳、北村匠海、小関裕太、磯村勇斗、杉野遥亮、稲葉友、緒川たまき、泉里香、佐生雪、遠山俊也、酒井敏也、あうろら、菊池麻衣、藤本江奈、工藤美桜、谷藤海咲、笠本玲名早川渚紗、木下彩音、駒沢清華、国府田聖那、近藤佑子、島邑みか、有山尚宏、野口雅弘、高村佳偉人、長田凛大、古橋キット、田淵優太、青木悠介、池谷類、伊田智慧、浦川祥哉、北優心、工藤大貴、小松崎正幸、佐藤葵、永岡拓真、松永有紘、武藤潤、守山龍之介、赤峰匠、板橋駿、伊藤尚夢、江本光輝、小川翔、香山佳祐、川井優樹、栗林優、賢太、平野拓也、細野颯太、松谷鷹也、吉永孝胤ら。


講談社の『デザート』で連載されていた、あなしんの同名漫画を基にした作品。
監督は『想いのこし』『僕だけがいない街』の平川雄一朗。
脚本は『忘れないと誓ったぼくがいた』『リベンジgirl』のおかざきさとこ。
美月を土屋太鳳、永久を北村匠海、亜哉を小関裕太、恭介を磯村勇斗、竜二を杉野遥亮、瑠衣を稲葉友、亜哉の母のユーコを緒川たまき、ナナセを泉里香、レイナを佐生雪が演じている。カフェの店長役で遠山俊也、国語教師役で酒井敏也が出演している。

バスケ部イケメン四天王が勢揃いすると、女子生徒が1人ずつ名前と学年とポジションを説明する声が入る。そして1人ずつの姿が静止画になり、名前が表示される。
いかにも漫画的とは言えなくもないが、コメディー映画ならともかく、その演出はキツいなあ。
いや、決してシリアス一辺倒だったり、深刻な出来事ばかりが起きたりするわけではないのよ。それなりにユーモラスなシーンもあるのよ。
だけど、やっぱり「それは違うぞ」と言いたくなるんだよね。

美月は小学生時代に孤独な時代を過ごし、そのトラウマで高校生になっても全くクラスに打ち解けられずにいる。
しかし引っ込み思案で臆病者なのかと思いきや、永久が転寝している時は大声で「起きて」と叫んでいる。遠慮がちに小声で「起きてください」と言うだけで、済ませたりしていない。
人違いの告白を受けた時は、「失礼じゃないですか。勝手に人違いして、こんなのとか、地味とか」と批判する。
竜二と瑠衣が揉めている間に、そそくさと立ち去ったりはしない。

竜二からナナセを呼んできてくれと頼まれると、「お断りします」と強い口調で告げる。断り切れずに困惑し、ナナセに伝えたりしない。
一人ぼっちの少女を見つけるとナナセに許可を貰い、公園へ行って声を掛ける。「幼少期の自分を重ね合わせて助けてあげたいと思うが、勇気が無くて話し掛けられない」なんてことは無い。
永久から仲間を紹介したいと言われると、強烈な不快感を明確に示す。
引っ込み思案どころか、かなり自己主張が強くて積極的なトコも少なくないのよね。
「全く整合性が取れていない」とまでは言わないけど、キャラとしては中途半端じゃないかと感じる。

美月はクラスメイトをパンケーキ屋に誘おうとするが、なかなか言い出せない。しかしレイナを見つけると、すぐにバンケーキ屋のことを話そうとしている。
「なぜレイナに目を付け、声を掛けたのか」という理由を探したら、「向こうも1人でいたから」という答えは簡単に思い付く。
だけど、その手順をスムーズに描けているのかと考えると、それは出来ていない。
段取りに対して、ドラマとしての説得力は全く追い付いていない。

何とか少女を助けたい美月は、ナナセから四天王に相談してはどうかと提案される。しかし美月が相談しない内に、四天王は公園で少女も交えてバスケをやっている。
たぶん彼らは少女を助けようとしたわけじゃなくて、単純に「勉強の休憩でバスケをしたくなった。公園には子供たちがいるから誘った」というだけだろう。美月が少女を助けようとしていたことなんて全く知らず、結果的に彼女の願いを叶えたというだけだろう。
ただ、その描写だと、こっちは全く感動しないんだよね。少女が楽しそうにバスケをやる様子を見て美月が泣く理由は分かるけど、心は全く動かされない。
それって映画としては、完全に失敗だよね。
段取りを無事に消化できたとしても、観客の心が1ミリも動かなかったらダメだよね。

レイナが登場して四天王ファンとしてのオタク的な言動を見せ始めると、ここは喜劇パートになる。
ただ、そこが充分に弾けているのかというと、それは全くなのよね。
たぶん原作だと、シリアスパートとコメディーパートを上手く使い分けているんだろう。漫画という媒体では、そういう切り替えをやりやすいしね。
でも、この映画だと、コメディーパートが全く馴染んでいない。場違いに持ち込まれた異分子になっている。

いっそのこと、コメディー要素なんて完全に排除しちゃってもいいんじゃないかと思うんだよね。それでもストーリー進行には何の影響も無いんだし。
ただ「明るく爽やかな青春学園物」ってだけでも、別にいいんじゃないかと。
ハッキリ言って、オーバーアクト気味のレイナが邪魔な存在になっているのよね。
ただし、それは佐生雪の演技が悪いんじゃなくて、与えられたキャラに対するアプローチとしては正解なのだ。レイナを上手く馴染ませることが出来ていない、演出に問題があるのだ。

平川監督は、「スポーツ映画」としての要素に力を入れたらしい。プロデューサーの春名慶が彼を起用したのは、TVドラマ『ROOKIES』を演出した経験を買った部分はあるんだろう。
ただ、この作品でスポーツの部分に力を入れようとするのは、明らかに欲張り過ぎ。
上映時間が2時間に満たない中で(109分)、まず美月と永久の恋愛要素がある。そこに幼少期の美月を助けた亜哉が加わり、ここで三角関係が生じる。美月には、過去のトラウマから解放される成長物語もある。永久には仲間との友情ドラマもある。前述したように、主にレイナを使った喜劇の要素もある。
そこにスポーツ物の要素も含めて、全てを充分に描くことなんて絶対に無理だ。
だから映画化する時には、いずれかの要素を削り落とす必要がある。「いずれか」と書いたけど、かなり多くの要素を削らなきゃ厳しい。

たぶん「2人の男の間でヒロインが揺れ動く」という恋愛ドラマを描こうとしているんじゃないかと思うけど、かなり無理があるんだよね。
美月にとって亜哉は、「幼少期に心の支えになった大事な女友達」でしかないのよ。彼女の「誰かに恋する気持ち」ってのは、ずっと永久に向けられている。
だから、亜哉に慰められて幼少期を思い出すようなシーンもあったりするんだけど、それが三角関係を盛り上げる演出としては機能していない。
かなり無理をして、捻じ込んだ回想シーンのように感じてしまう。

後半には美月がユーコと会い、亜哉が隠していた過去を聞かされる。亜哉が学校で友達もおらず孤独だったこと、強い女の子に憧れる美月の気持ちに応えるために頑張っていたことを知る。
でも、その話を聞いて美月に芽生えるのは「申し訳ない」という感情であって、決して恋愛感情ではない。
だから永久が亜哉に強いライバル心を抱くのは、勝手に焦っているだけに過ぎない。
表面的には三角関係だが、中身を見ると「美月と永久が互いに惹かれていく」という部分でしか恋愛感情は動いていない。

ただ、「だから三角関係の恋愛劇として欠陥がある」とか、そこまで極端なことを言いたいわけではない。亜哉の入り込む余地が無くても、それは別にいい。
それよりも大きな問題は、前述したように「多くの要素を削らなきゃ厳しい」ってことだ。
美月と永久に亜哉が加わる三角関係の恋愛劇があるのなら、そこだけで精一杯と言ってもいいんじゃないか。
なので他の要素は、大胆に排除していくしか無いだろう。スポーツの部分に関しては、あだち充の漫画みたいな扱いにしちゃえばいい。
無理に熱血の色を濃くしようとしても、そっちに投入するための時間もパワーも残っていない。

この作品、「観客の心に響く名台詞」ってのを、かなり強く意識しているように感じられる。
「ここは刺さる台詞ですよ」「見終わった後に強く残る台詞ですよ」ってのを、露骨にアピールしているのだ。
そのことが、ものすごくカッコ悪い形で見えちゃってんのよね。
でも、ちょっと考えてほしいんだよね。誰かと喋っている時、ドヤ顔で「俺は名言を口にしてるぜ」みたいな言い方をされたら、何を言われても全く心に響かないでしょ。
それと同じような状態に、この映画は陥っているんだよね。

(観賞日:2020年7月22日)

 

*ポンコツ映画愛護協会