『遥かなる甲子園』:1990、日本

昭和39年、沖縄の北城ろう学校に通う真壁敏夫は初めて高校野球を甲子園で観戦して感動する。翌年、高等部に進学した敏夫は仲間を集め、野球部を作りたいと担任の新城に申し出る。危険が大きいと最初は反対した新城だが、熱意に打たれて監督を引き受けることにする。
だが、ろう学校は高校野球連盟に加盟できず、加盟高校と練習試合さえ出来ない。そこで校長達が高野連に働き掛け、加盟できるかどうかのテストとして練習試合が組まれることになる。大敗したが無事に試合を終えたことで、加盟は認められることになった。
しかし北城ろう学校の野球部は、公式大会ではコールド負けが続いてしまう。ずっと勝てないことで、選手達は次第に野球に対する意欲を失っていく。そしてついに一度も勝てないまま、敏夫に高校3年の夏がやって来た…。

監督は大澤豊、原作は小野卓司&山本おさむ&戸部良也、脚本は國弘威雄、製作は山本洋 清水文人&阿部日出夫、プロデューサーは野津修平&橋口一成、製作総指揮は徳間康快、撮影は山本駿、編集は菅野善雄、録音は浦田和浩、照明は小山勲、美術は細石照美、音楽は谷川賢作。
出演は三浦友和、林泰文、田中美佐子、小川真由美、植木等、大寶智子、ケーシー高峰、神山繁、柄本明、萩原聖人ら。


おそらくは、「聴覚障害者がハンディキャップに負けず、頑張る姿を描く感動作」として作られているはずだ。ところが、全く感動できなかった。
とにかくリズムが感じられない作品だ。加盟が決定してから最後の夏の大会までがダラダラするので、いっそ加盟が決まる練習試合までの話に絞った方が良かったのかもしれない。

テンポが必要な部分は間延びし、じっくり描くべき部分は省略している。無駄な部分も多い。例えば敏夫の母が昔を回想するシーンや、敏夫がガールフレンドの美和と障害について話すシーンは要らない。
この映画にとって、「なぜ聴覚を失ったか」「幼い頃からどれだけ苦労してきたか」をじっくりと時間を割いて描く必要は、それほど無かったと思うのだが。

実話に基づいている作品のはずなのに、妙にウソ臭い表現が多いのもマイナスだ。例えば野球が下手でノックも出来なかったはずの新城が、数秒後には上手くノックをしていたり。幾ら原作がマンガだからといっても、そういうウソは気持ちを萎えさせる。

試合のシーン、練習のシーンにも、何の気持ちも感じられない。カメラアングルの問題だろうか。音楽もダメだ。荘厳さを感じさせる音楽が、話の色に合っていない。あまりにもオーバーすぎて、物語を打ち消すような形になっている。

相手チームが手話を新種のサインと勘違いする場面は、ちょっと面白かった。同じ題材で、障害者を主人公にしたコメディを作れば面白いかもしれないと思った。しかし同時に、間違い無く人権団体から抗議が殺到するだろうとも思った。

 

*ポンコツ映画愛護協会