『破裏拳ポリマー』:2017、日本

南米某国のスラム街。鎧武士はストリートファイトで勝利し、金を貰って去ろうとする。金を奪い取ろうとする男たちが立ちはだかったため、彼は破裏拳の奥義で蹴散らした。数年後、東京。コミュニケーションツールの発達による過激犯罪の増加に対抗するため、政府は重火器を無効化して機動力を備えたポリマーシステムの開発を進めていた。刑事の来間譲一や加藤たちは、武装した強盗団のカズヤやナオたちを追い掛けていた。刑事部長である土岐田恒は来間に、「気を付けろ、奴は必ず現れる」と無線で告げた。
警官隊が強盗団に追い付くと、そこへポリマーレッグカスタムのジンが出現した。来間は慌てて、土岐田に「現れました」と報告する。ジンが圧倒的なパワーで警官隊を蹴散らしている間に、一味は逃亡した。来間は命令を受けてもジンに発砲できず、助けに入った加藤が蹴りを浴びて絶命した。来間は立ち去るジンに拳銃を構えるが、やはり震えて撃てなかった。探偵として働く武士は、ぼったくりバーに騙された住谷という男を助けて謝礼の金を要求した。武士は財布の金を抜き取った後、住谷の妻から浮気調査を依頼されて尾行していたことを明かした。彼は証拠写真を見せ、口止め料を要求した。
土岐田と科警研の稗田玲は、監視カメラの映像で武士を捉えた。土岐田は武士を捜し続けており、彼が4ヶ月前まで国外を転々としていたことを突き止めていた。彼は来間に、武士を連れて来るよう命じた。来間がナンバビルの鎧探偵事務所へ赴くと、武士は南波テルという女と一緒にいた。テルはビルのオーナーであり、武士の第一助手も自称していた。テルは来間の名前を聞くと、シャーロックというニックネームを勝手に付けた。
来間が任意同行を求めると、武士は面倒そうな表情を浮かべて逃げ出そうとする。しかし土岐田が立ちはだかり、顔見知りの武士を警視庁へ連れて行く。警視庁へ出向いた武士は、玲を見ると即座に口説こうとして来間に制止された。来間は武士に、過激な犯罪組織に対抗するため防衛省と警視庁が協力してポリマースーツを開発したことを話す。しかし試作用の3体のスーツが盗まれたたため、土岐田は警視庁が保管する赤のポリマースーツを着て取り戻してほしいと武士に要請した。
ポリマースーツは音声入力で起動する仕掛けとなっており、ポリメットを被って「転身ポリマー」と叫ぶ必要がある。しかし誰でも良いわけではなく、武士の声でなければ起動しないようになっているのだ。なぜ自分の声なのかと武士は困惑するが、その理由は玲たちにも分かっていなかった。武士は軽く断るが、車で送り届ける来間に条件次第だと告げる。玲が条件だと言われた来間は「ダメです」と叫び、付き合っていることを嬉しそうに明かした。
鳥海銀行で強盗事件が発生したという情報が入ったため、来間は武士を乗せたまま現場へ向かった。事件の犯人は、カズヤたちの強盗団だった。来間の制止を無視して車から降りた武士は、人質の中にテルを発見した。銀行に飛び込んだ武士はテルと交渉し、助けたら滞納した家賃をチャラにするよう約束させた。武士が強盗団と戦っている間に、テルは人質を逃がす。ジンはテルを捕まえ、武士を蹴り飛ばす。強盗団はテルを連れて逃走し、武士は駆け付けた玲からポリマースーツを見せられた。
一味に捕まった来間が拳銃を発砲できずに震えていると、ポリマースーツを着た武士が現れた。武士はポリマーに転身するが、ジンの蹴りに吹き飛ばされる。来間は彼に、パワーを起動するコードがあることを説明した武士が来間に教わった言葉を唱えると、ポリマースーツは強化される。武士はジンを凌ぐ強さを発揮し、それを見た一味は来間とテルを置いて逃走する。ジンの動きを見切った武士は、ポリメットを弾き飛ばして彼を捕まえた。
来間はポリメットを回収しようとするが、バイクで現れたフルフェイスの女性ライダーに奪われた。ブーツを回収して警視庁へ戻った来間は、ジンが何も知らないと言っていること、強盗団がポリマースーツを分割して使っていたことを土岐田に報告した。警視総監の八城章人が通り掛かると、土岐田はポリマー開発の提言者だと来間に教えた。武士が報酬を受け取れば協力すると約束したので、土岐田は来間にパートナーとして動くよう命じた。
次の日、来間は武士を車に乗せ、盗まれたポリマースーツは赤のオリジナル版をコピーした物であること、誰でも使えることを説明した。武士は彼に、強盗団が落としたというキャバクラ『ピカデール』のマッチを見せた。そこへテルが来て拾ったのは自分だと告げ、2人に同行する。3人は開店前の『ピカデール』へ行き、中の様子を密かに観察する。武士は強盗団の様子を確認し、「あの赤いのフルスーツなのに、なんでジンのは足だけだったんだろう。あいつに騙されてるんじゃないの?」というナオの言葉に注目した。
武士は来間が本部に連絡するのを待たず、店へ乗り込んだ。彼が強盗団に襲い掛かったため、来間とテルも加勢した。カズヤとナオが逃亡すると、武士はポリマーに転身して立ちはだかった。彼は2人を捕まえ、情報を聞き出そうとする。そこへポリマーアームカスタムが現れ、カズヤとナオを始末した。アームカスタムと戦った武士は、自分の技を探ろうとしていることを悟った。破裏拳流の奥義を封じられた彼は、敵の正体に気付いた。敵は武士を圧倒するが、急に苦悶して逃亡した。
武士は土岐田の元へ行き、仕事を降りると告げた。土岐田は武士を自宅へ連れて行き、「君にはチャンスを与えたと私は思っている」と述べた。来間は玲に誘われて食事に出掛け、婚約を前提に今後も付き合ってほしいと告げてネックレスをプレゼントした。すると彼女は困惑した表情を浮かべ、少し考えさせてほしいと述べた。翌日、玲はコンピュータを使い、アームカスタムの正体を突き止めた。武士が確信した通り、やはり正体はバレット・ウォンだった。彼は武士と同じ賭けバトルで荒し回っていた仲間であり、必殺技を除く破裏拳流を教えたこともあった。
バレットが警視庁に乗り込んで来たため、武士は転身して戦う。バレットは破裏拳流の奥義を繰り出すが、また前回のように苦悶する。武士が駆け寄ってポリメットを脱がすと、バレットは彼の名を呼んで絶命した。武士は来間から、バレットの死因が麻薬の過剰摂取による心臓発作だと知らされた。バレットが教えていない構えを見せたことに、武士は疑問を覚えた。テルの「ポリマースーツが技を盗んだ」という推察に、武士は関心を示した。「ポリマーと戦わせて技を盗むのが敵の目的」という彼の推理を、来間は土岐田に伝えた。
土岐田はポリマースーツ開発に携わったメンバーのリストを確認し、既に亡くなった元警視総監と堀馬三郎と自衛隊の鬼頭剛蔵の血縁関係について調べるよう来間に指示した。来間は堀の長男である赤彦について調べ、その写真を見て驚いた。帰宅した土岐田は、古いビデオテープを確認した。武士は病院を訪れ、池内瑞樹という心臓の悪い少女と会った。来間の姿に気付いた武士は、瑞樹が姉の娘だと告げた。姉はトラックに追突されて死亡し、武士は瑞樹の治療費を賭けバトルで稼いでいたのだった。
来間は武士が堀赤彦であること、父親が土岐田の直属の上司だったことを指摘し、スーツ開発に関わっていたことを知っていたのかと質問した。武士は子供の頃に家を飛び出したので知らなかったこと、拳法を学ばされて嫌だったことを語った。彼は来間に、鬼頭がポリマーの攻撃力を上げるよう命じたため、それに反対した父がダイアログコードを設定して封印したのだと説明した。来間は武士に、ポリマーの開発を再開させたのは八城だと教えた。
来間は留守電を確認し、土岐田から「約束した鬼河原公園に来ない」というメッセージが入っていることを知る。しかし来間は約束した覚えが無いと言い、武士は彼を伴って鬼河原公園へ急いだ。すると土岐田は殺されており、武士は彼が重要な情報を掴んだのだと確信した。土岐田の自宅を調べた武士は、警視庁と自衛隊による親善空手試合を撮影したビデオテープを発見した。武士たちがテープを再生すると、堀が破裏拳流で鬼頭に勝利する様子が写し出された。鬼頭は3年前にポリマー計画が頓挫して退官し、心不全で死亡していた。
来間は偽の電話で工場地帯へおびき出され、敵の一味に襲われた。そこへフルフェイスの女性バイカーが現れ、来間は玲だと気付いて驚く。来間は玲に殴られて気絶し、目を覚ますと敵のアジトに監禁されていた。玲は拘束された来間の写真を武士に送り付け、おびき寄せようとしていた。彼女は来間に、オリジナルのポリマーのデータを盗む目的を明かす。玲は武士の技を盗むため、スーツを分割して戦わせていた。バレットを雇ったのも、ヤク漬けにしたのも彼女だった。最後はフルセットのポリマー同士を戦わせるというのが当初からの計画であり、その黒幕は八代だった…。

監督は坂本浩一、原作はタツノコプロ、脚本は大西信介、エグゼクティブプロデューサーは井上伸一郎、製作は堀内大示&小澤洋介&桑原勇蔵&前山寛邦&平田樹彦、企画は菊池剛、プロデューサーは山田駿平&丸田順悟&湊谷恭史、キャラクターデザインは野中剛、撮影は百瀬修司、照明は太田博、録音は山口満大、アクション監督は野口彰宏、美術は丸尾知行、造形デザインは蟻川昌宏&三上喜康、コスチュームデザインは川上登&高野裕子、編集は目見田健、VFXスーパーバイザーは三輪智章、音楽は坂部剛。
主題歌『悲しみ無き世界へ』 作詞・作曲:SHINGO KANEHIRO、編曲:グッドモーニングアメリカ、歌:グッドモーニングアメリカ。
出演は溝端淳平、山田裕貴、原幹恵、柳ゆり菜、長谷川初範、神保悟志、永井正浩、木村圭作、榊英雄、島津健太郎、出合正幸、加藤貴宏、佃井皆美、中村浩二、守時悟、北野淳、高橋広史、人見早苗、Chuck Johnson、采沢真実、篠原湊大、根本真陽、河本彩夢、栃原智、伊藤あきこ、渡邉達也、村田誠司、福吉寿雄、加藤雅人、ゴリきん、宮崎健実、坪谷隆寛、高平浩一、福崎峻介、Mansour Fakher、Christopher Oneil、Jashua Walters、野邉遼太、脇田和史、伊東健大、梶野英一、高木直人、山本太一、櫻井結花、荒井栞ら。
ナレーションは稲田徹。


1974年10月から1975年3月まで放送されていた同名のTVアニメを基にした作品。タツノコプロ創立55周年記念作品。
監督は『劇場版 ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!! 』『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』の坂本浩一。
脚本は『新・ゲッターロボ』や『閃光のナイトレイド』など主にアニメを手掛けてきた大西信介で、これが映画デビュー作。
武士を溝端淳平、来間を山田裕貴、玲を原幹恵、テルを柳ゆり菜、土岐田を長谷川初範、八城を神保悟志、堀を永井正浩、鬼頭を木村圭作、加藤を榊英雄、住谷を島津健太郎、バレットを出合正幸、カズヤを加藤貴宏、ナオを佃井皆美、ジンを中村浩二が演じている。
加藤貴宏は2016年9月で芸能界を引退したため、これが最後の出演作となる。

映画が始まると、武士はストリートファイトで勝利する様子や、金を奪い返そうとする連中との戦いが描かれる。
最初に主人公のバトルを描いて能力をアピールするってのは、アクション映画では常套手段だ。ただ、この映画の場合、主人公は「破裏拳ポリマーに変身して悪と戦う」という設定なので、生身のアクションを冒頭で見せない方が良かったかもしれない。
もっと気になるのは、チンピラたちとの戦いで「見せてやるよ、破裏拳の奥義を」と言っていること。
そんな奴ら、奥義なんて使わずに倒せるだろ。奥義ってのは、もっと強い奴と戦う時のために取っておけよ。
あと、どういう奥義なのかと思ったら、単に「裏拳を多用する」ってだけなのよね。そんな脱力感を誘うだけの奥義なら、設定としてバッサリと排除した方がいいわ。

それと、南米某国の賭けバトルで金を稼いでいた武士が、帰国して探偵稼業を始めているという設定に無理があるのよ。
彼は瑞樹の入院費を稼ぐため、賭けバトルで戦っていた設定だ。つまり多額の金が必要なはずなのに、なぜ帰国して探偵になったのか。
その探偵稼業では、4ヶ月前に帰国したばかりなのに、早くも家賃を滞納するほど稼げていないみたいだし。
瑞樹の入院費はずっと支払い続けていかなきゃいけないんだから、もっと金になるような仕事をやった方が絶対にいいはずでしょ。
それを考えると、賭けバトルから足を洗った理由もサッパリ分からないぞ。

ジンが登場した時、咄嗟に浮かんだのは「ダ、ダサすぎる」という言葉だった。
ポリメットを被ってスパッツを履き、上半身は裸という姿なのだが、ホントにカッコ悪いのよ。なぜ上半身裸なのかサッパリ分からないし、『マッドマックス』を狙って完全に失敗した出来損ないみたいにも見えちゃうし。
ムキムキの筋肉をアピールしたかったのかもしれないけど、それと引き換えに背負ったカッコ悪さのマイナスがハンパないぞ。
あと、「ポリマーシステムのレッグ部分だけを使っている」という状態が分かりにくいのもマイナスだ。蹴りで警官隊を倒しているけど、それだけじゃ全く伝わらないからね。
ちなみに、カッコ悪さは後で登場するアームカスタムも同様だ。こちらも無意味にヘソ出しルックなので、「普通に服を着ろ。裸にアームカスタムを着用する意味が無いだろ」と言いたくなる。

来間はジンを撃てず、加藤を目の前で殺される。なぜ震えるだけで発砲できなかったのか、明確な理由は用意されていない。「過去に何かあって発砲が怖くなった」ということではなく、単純に「臆病だから」という設定のようだ。
それはともかく、彼は加藤を死なせたことを引きずっている様子を、その直後は見せている。
しかし、そんな設定は早々に忘れ去られ、何も無かったかのようになっている。
簡単に忘れてしまうぐらいなら、そんな設定など最初から持ち込まない方がいい。
終盤になって再び「来間が拳銃を構えるが撃てない」というシーンがあるけど、上手く回収できているとは到底思えない。

シリアス一辺倒ではなく、コミカルなノリや明るい雰囲気を織り交ぜて話を進めている。それ自体は悪くないのだが、残念ながらコミカル方面の描写が外しまくっている。
例えばテルが来間の名前を「車鍵一」と思い込み、「車と鍵だからシャとロックでシャーロック」と勝手な呼び名を付けるシーンなんて、「いや無理です」と言いたくなる。そんな強引なこじつけまで持ち込んで、「シャーロック」と付ける意味なんて全く無いし。
あと、テルは唇を押さえて考え込み、「ひらめいた」と言うキャラに設定してあるんだけど、「指で抑えた唇」をアップで捉えるカットを不自然に入れたせいで、その設定まで不細工になっているぞ。
明るく楽しい雰囲気のための描写を盛り込むのはいいんだけど、それよりも重視すべき事柄が幾つもあるんじゃないかと言いたくなるのだ。
必要な描写を全て充実させた上でコミカルなシーンを盛り込むのはいいけど、そうじゃないので「余計な道草」や「時間の無駄遣い」になっている。

銀行から強盗団が去った後、来間が警官と共に追跡する様子が描かれる。シーンが切り替わると、来間が一味に捕まって暴行されている。
いやいや、どういうことなんだよ。なんで来間だけが捕まってリンチされているんだよ。銀行から逃げる時には容赦なく警官を射殺していたような連中なのに、なんで来間は殺さずに甚振るんだよ。
あと、そもそも一味が敵として貧弱すぎるんだよな。劇中では「強盗団」と呼ばれているけど、不良グループにしか見えないし。
実際の組織力や戦闘力がどうかっていうことも重要だけど、「表面的な印象」だって同じぐらい重要だからね。

来間は武士に、盗まれたスーツがコピーで誰でも使えることを教える。
だったら、音声入力で特定の人間しか使えないのはオリジナル版よりも、そっちの方が使い勝手がいいんじゃないのか。
「コピースーツは誰でも使えるけど劣化版で、オリジナルより質が落ちる」ってことならともかく、そういうことも無さそうだし。
後からオリジナル版が音声入力になった理由は説明されるけど、それでも「過激な犯罪対策としての道具」と考えれば、特定の1人しか使えないってのは不便すぎるだろ。

武士がピカデールのマッチを来間に見せるとテルが現れ、自分が拾ったと告げる。すると回想シーンが挿入され、ジンの戦いを見た強盗団が逃げた時にマッチを落とし、それをテルが拾う様子が描かれる。
そんなの、わざわざ回想として挿入する意味なんて全く無い。台詞だけでも充分だ。
他も色々と丁寧にやっているならともかく大半は雑に片付けているのに、変なトコだけ細かいんだよな。
あと、どうしても当該シーンを見せたいのなら、強盗団がマッチを落とした時に時系列順で見せておけばいい。

3人がピカデールへ行くと、武士はテルに強盗団が現れるまでの見張りを任せて、来間と共に近くの店で休憩する。それは不自然で無意味な行動にしか見えないが、そこには「武士が来間にネックレスを渡し、玲にプレゼントするよう促す。ただし代金を請求する」という手順を見せる目的がある。
そうまで無理をして描くほど意味があるシーンなのかと問われると、答えはノーだと断言できる。
あと、武士が「耳を貸せ」と言い、近付いた来間を「ワッ」と大声で驚かせて「ガキですか」と呆れられる様子も描かれるが、なんだそりゃ。来間以上に、こっちが呆れるわ。
これまた、わざわざ時間を割いて盛り込む価値が全く見出せない描写である。

武士は『ピカデール』へ乗り込んだ時、応援を呼ぼうとする来間の携帯を取り上げて「楽しませろ」と不敵に笑う。彼はポリマーに転身し、カズヤとナオを捕まえる。ここまでは調子に乗りまくっているが、バレットとの戦いでは相手に技を見切られる。
その戦いが終わると、彼は土岐田の元へ行って「知ってんだろ。俺の失態。降りようと思ってな。無理だったんだよ、俺に警察の片棒担ごうなんて話」と真面目に告げる。
だけど「調子に乗っていたら戦いで負けた」という出来事から「無理だから仕事を降りる」ってのは、流れが上手く繋がっていないぞ。
土岐田は「降りたいか。甘えたことを言うな」と言うけど、それは「武士が頑張って仕事をしたけど無理だと感じた」という形だからこそ説教として成立するのよ。この映画だと、武士は調子に乗っていたから戦いに負けただけなのよ。

っていうか、それで武士が実際に降りるわけでもないし、まるで無駄な時間にしか思えないのよね。そこは土岐田が「君にはチャンスを与えたと私は思っている」と言って終わるのだが、だから何なのかと。
武士が来間から「今も父親を嫌っているのか」と問われた時、そのシーンが回想で挿入されて、「チャンスを与えたと私は思っている」の後に、「これは堀さんが残した仕事だ。父親と和解できる最後のチャンスだ」と言ったことが明かされるが、それも含めて「だから何なのか」と言いたくなる。
そこに限らず、余計なシーンが幾つもある。
その一方、重要だと思えるシーンを淡白に片付けたりするし、その辺りの判断がデタラメだわ。

ポリマースーツに関する設定は、かなり温かい目で見ないと受け入れることが難しい。
まず、スーツを起動するために「転身ポリマー」と言わなきゃいけないという設定がキツい。戦闘力を上げるためには「この世に悪のある限り、正義の怒りが俺を呼ぶ」と唱える必要があるという設定は、さらにキツい。
子供向けの特撮ヒーロー物なら許容範囲かもしれないが、そこまで低年齢層を意識した作品じゃないはずで。
あと、本性を現した玲が「より正確なデータを得るためにポリマースーツを分割して戦わせた」と説明するけど、これも無理があるなあ。データを得るために強盗団を使うってのも、かなり不自然だし。
「八城の正体が死んだはずの鬼頭」という設定も無理がありまくりだし、玲が彼の娘という設定も取って付けたような印象しか無いし。

(観賞日:2018年7月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会