『FUTURE WAR 198X年』:1982、日本

1986年、アメリカの惑星探査衛星ボイジャー2号は天王星を通過し、地球人からの平和と友好のメッセージを発信しながら無限の宇宙へ旅立とうとしていた。同じ頃、ポリャールヌイ・ソ連潜水艦基地からはサイクロン級原子力潜水艦のリューリック号が出航した。艦長のストロガノフ中佐は、政治部将校のデンキン少佐と挨拶を交わす。デンキンは通信担当のスミルノフ一等水兵に「この暗号で始まる緊急電報が入ったら真っ先に私に知らせてくれ」と告げ、「鷲よ飛べ」と書かれたメモを渡した。
東西ドイツ国境線の近くにある西ドイツ北部平原地帯には、イギリス軍のミサイル部隊が配属されていた。暴れ牛を取り押さえた兵士のマイケルは、その飼い主である少女のマリーネに恋をした。日本海・北海道沖。ソ連爆撃機のバックファイアBが飛来したため、航空自衛隊のF-15戦闘機がコース変更を要求した。隊長は体当たりを思わせる飛行を行い、領空を侵犯したソ連爆撃機を退散させた。
宇宙ではアメリカ宇宙防衛軍レーザー戦闘衛星の実験が行われることになり、科学者の三雲渡とブラウン博士が整備を終えた。2人はスペースシャトルのアルバトロス号に収容され、レーザー戦闘衛星の開発者である未来科学研究所のバート・ゲイン所長はバンデンバーグ空軍基地から状況を見守る。ゲインの妹であるローラも、アルバトロス号に乗っている。ホワイトハウスのギブスン大統領やジラード国務長官、マッコイ統合参謀本部議長たちも、失敗の許されない実験を見守っている。
実験は成功し、バートたちは大喜びした。地球へ帰還した三雲は、仲間たちとディスコへ繰り出した。するとモイラ・ハケットという女性が三雲に声を掛け、ダンスに誘った。モイラが「後で私の家に来ない?」と三雲を口説いていると、その様子を見ていたローラが割って入った。彼女は三雲に責めるような言葉を浴びせ、2人は言い争いになった。翌朝、FBIのフーパー捜査官が三雲を訪ね、バートが誘拐されたことを告げた。車を襲撃したスパイたちはバートを失神させ、ソ連のアルファ級原潜へと連行した。
アメリカ政府はレーザー衛星の秘密を守るため、戦闘機から魚雷を投下する。しかし魚雷が届かないため、マッコイは核魚雷の使用を提言した。「表向きは事故による爆発と発表すれば良いのです」と彼は言うが、ギブスンは「危険すぎる。クレムリンは事故とは思うまい。下手をすれば戦争だ」と頑なに反対する。しかし決断を迫られたギブスンは了承し、核魚雷によってアルファ級原潜は撃沈された。
クレムリンでは政治局会議が開かれ、ブガーリン国防相は「願っても無い開戦の好機です。アメリカの核使用を全世界に公表し、報復攻撃に踏み切ったとしても、誰一人として我々を非難できません」とオルロフ書記長に進言する。クツーゾフ外相兼第一副首相は「アメリカを甘く見過ぎている。彼らは絶対に屈服しない」と反対するが、ブガーリンは「屈服させてみせます」と大量虐殺を口にする。オルロフは休憩を要求するが、開戦論に賛同できる部分もあることをクツーゾフの前で吐露した。
ギズスンはオルロフに葉巻を贈り、沿えた手紙に平和への祈りを綴った。しかし世界各地でソ連軍の実戦配備が進められ、米国の偵察衛星はソ連のキラー衛星に破壊された。ギブスンはマッコイから、レーザー戦闘衛星の実戦配備を急ぐべきだと促される。未来科学研究所の新所長となったブラウンは三雲に連絡を入れ、「技術セクションのチーフとして迎えたい」と告げる。彼は三雲に、6ヶ月以内に5機のレーザー戦闘衛星を完成させるよう大統領の特別命令が出たことを明かす。三雲が難色を示すと、ブラウンはバートの意思を引き継いで早急にアメリカヘ来るよう説いた。
考え込んでいた三雲は、ローラが日本での休暇旅行中に事故で入院したことを知る。飛行機に乗っていた際、燃料切れで不時着したのだ。三雲は新幹線で青森へ行き、ローラが入院している八戸総合病院へ赴いた。しかし病室へ行くと、ローラは冷たい態度を取った。ローラの叔父であるハミルトン駐日大使は、彼女がバートの死んだ海を見に行ったことを三雲に話す。何とか彼女を慰めてやってほしいと頼まれ、三雲は病室に戻った。バートを思って泣き出したローラに、三雲は近くに故郷があるので行ってみないかと持ち掛けた。さらに彼は、「君さえ良ければ結婚しよう。君を愛してる」と告げる。ローラは三雲に抱き付き、2人は熱いキスを交わした。
西ドイツ、ニーエンブルグ地方。クリスマス休暇を取ったマイケルは、マリーネの実家を訪れていた。2人がデートに出掛けようとした時、町の上空を未知の戦闘機が通過した。それはソ連の最新鋭爆撃機ブラックドラゴンだった。ブラックドラゴンはNATO空軍基地に着陸し、操縦していたソ連空軍のボリス大尉は西ドイツ政府に亡命を希望した。ブラックドラゴンの機密情報を守るため、オルロフは苦しい決断を迫られる。核ミサイルによる破壊活動を求められたオルロフは、「機体と乗員だけを消し去るのだ」と軍部に命じた。
ソ連の空挺部隊はNATO空軍基地を急襲し、激しい戦闘が繰り広げられる。空挺部隊は基地を爆破して引き上げるが、それと同時に西ドイツ・トーネード戦闘攻撃機部隊が飛び立っていた。トーネード部隊はソ連Mig-29迎撃戦闘機部隊を発見するが無視し、ソ連空軍基地を空爆した。三雲は退役願いを出すつもりだというローラを日本に残し、アメリカへ旅立つことにした。出発前の時を過ごしていた2人は、ヨーロッパで戦争が始まったことを知った。
ワルシャワ条約軍の大機甲部隊が予告せずに国境を突破し、西ドイツ北部平原地帯でNATO防衛軍と戦争が続いていると聞き、ローラは沈んだ表情を浮かべた。彼女は三雲に、「アメリカへ行くのはやめて。どこか遠くへ、戦争の無い世界へ行きましょう」と訴える。「貴方もアメリカに殺される」と彼女が告げると、三雲は「僕たちでバートの後を継ぐんだ。一緒に来てくれないか」と持ち掛ける。ローラは「そんな愛なら、私は付いて行けない」と言い、自分より仕事を選んだ三雲に別れを告げた。
戦火に包まれた町でマリーネを捜していたマイケルは、瀕死の状態で倒れている彼女を発見した。急いで駆け寄るマイケルの腕に抱かれ、マリーネは息を引き取った。東西ドイツ国境付近では戦闘が続き、大勢の犠牲者が出た。ギブスンはオルロフと連絡を取ろうとするが全く繋がらないことから、クレムリンで何かあったのではないかと疑う。NATO中欧連合軍司令部のリンゼイNATO軍司令官はギブソンと連絡を取り、「敵の大戦車部隊の攻撃に持ち堪えるには、戦術核ミサイルを使用するしかありません」と告げる。ギブスンはクレムリンを呼び出していることを説明し、待機を命じた。しかし正気を失ったマイケルが撤退命令を無視し、戦術核ミサイルを発射した。
リューリック号には「鷲よ飛べ」の緊急電報が飛び込み、デンキンはストロガノフに「オルロフ議長直接の指令だ。48時間以内にアメリカと開戦の可能性有り。ミサイル発射、スタンバイ」と告げる。ソ連の大部隊が石油を狙って中東へ侵攻する中、キャンプ・デービッドではギブスンたちが対策を練る。中東への対処で日本と太平洋が丸裸同然になることをギブスンは危惧するが、そちらに兵力を回す余裕は無いことをジラードやマッコイは説明した。
日本政府は緊急国防会議を開き、ソ連政府の「三つの海峡を封鎖すれば北海道の占領も辞さない」という脅迫への対応を話し合う。意見を求められた元統幕議長の遠野は、ソ連が北海道ではなく東京を攻撃するだろうと告げる。閣僚は「ソ連が東京を攻撃したらアメリカが黙っていない。ソ連も、そんな危険は冒さない」などと言い、懐疑的な態度を取った。すると遠野は、「アメリカの世界戦争地図からは、既に日本は消されております。自分たちの国土は、自分たちど守るしかないのです」と告げる。
ギブスンはウッド駐ソ大使が持って来たオルロフの覚書を見て、愕然とした。ソ連政府が軍を引き上げる条件として、中東の分割を提案してきたからだ。穏健派であるオルロフにしては不可解な要求だったため、実権がブガーリンに移っているのではないかとジラードは推測する。クツーゾフはブガーリンの粛清を目論むが、逆に国家反乱罪で逮捕された。ギブスンが中東の分割を拒否した後、ソ連軍は東京を空爆した。東京の陥落を確信したブガーリンは、テヘランとバグダッドを占領するためにペルシャ湾正面軍をバグダッド攻撃に投入しろと命じる。一方、ハバナが全滅したことを知ったデンキンは、SLBMの発射をストロガノフに要求する。ストロガノフが拒否するとデンキンは彼を殺害し、SLBM4基をアメリカ本土へ向けて発射した。ギブスンはノイマン司令官に、報復攻撃を命じた…。

監督は舛田利雄&勝間田具治、脚本は高田宏治、製作総指揮は渡辺亮徳、プロデューサーは吉田達、企画協力は岩野正隆、製作担当は横井三郎、イメージ・イラストは生頼範義、ヒロイン・コスチューム デザインはアンドレ・クレージュ、エフェクト・ディレクターは高山秀樹、文芸・設定制作は鶴見和一、撮影監督は白井久男&寺尾三千代、編集は千蔵豊&吉川泰弘、録音は波多野勲、オリジナル・メカ・デザイン&美術監督は辻忠直、キャラクター・デザイン&作画監督は須田正己、メカニック作画監督は新井豊、音楽は横山菁児。
主題歌『愛ゆえに哀しく』作詞:山上路夫、作曲:風戸慎介、編曲:青木望、歌:ポプラ。
声の出演は北大路欣也、夏目雅子、金内吉男、中村正、小林修、大塚周夫、石原良、納谷悟朗、大木民夫、宮川洋一、宮内幸平、雨森雅司、北川米彦、田中康郎、青野武、矢田耕司、岸野一彦、徳丸完、柴田秀勝、野田圭一、中田浩二、森功至、田中秀幸、寺田誠(現・麦人)、堀秀行、田中崇(現・銀河万丈)、玄田哲章、戸谷公次、佐藤正治、西村知道、松田重治、舛田紀子、佐久間あい、間嶋里美、鈴木富子ら。


『人間革命』『宇宙戦艦ヤマト』の舛田利雄と、『マジンガーZ対デビルマン』『わが青春のアルカディア』の勝間田具治が共同で監督を務めた長編アニメーション映画。
脚本は『野性の証明』『鬼龍院花子の生涯』の高田宏治。
三雲の声を北大路欣也、ローラを夏目雅子、ギブスンを金内吉男、ノイマンを中村正、ジラードを小林修、ストロガノフを大塚周夫、ナレーターを石原良、遠野を納谷悟朗、マッコイを大木民夫、クツーゾフを宮川洋一、オルロフを雨森雅司、ブガーリンを青野武、バートを柴田秀勝、ブラウンを野田圭一、スミルノフを森功至、マイケルを田中秀幸、デンキンを田中崇(現・銀河万丈)が担当している。

この映画は、その内容よりも公開に至るまでの経緯の方が、当時は大きな話題となった。準備台本を手に入れた東映動画の労働組合が教職員組合など他の団体にも呼び掛け、「戦争を美化している右翼的な作品だ」として大々的な反対運動を展開したのだ。
東映動画の労働組合が仕事をボイコットしたせいで、作業の大半を外部のスタッフが請け負っている。
実際に映画を見てみると、まあ確かに右曲がりという印象は否めないが、それほど大騒ぎするような作品でもないんじゃないかとは思う。
ただ、こんな映画で大騒ぎする辺りが、いかにも労働組合らしいなあとは思うけどね。

この映画の抱えている致命的な問題ってのは、好戦的な作品だということじゃなくて、単純に出来が悪いってことだ。
まず、導入部の描写が無駄に細かすぎる。
「アメリカの惑星探査衛星ボイジャー2号は天王星を通過し、地球人からの平和と友好のメッセージを発信しながら無限の宇宙へ旅立とうとしている」という語りの後、「しかし一方では、そうした平和目的ばかりではない人工衛星も数多く打ち上げられている」というナレーションが入り、オープニング・クレジットに移行する。だから、オープニング・クレジットが終わったら、その「平和目的ではない人工衛星」に関する描写が入るのだろうと思いきや、ソ連や西ドイツ、日本の様子が短く描かれるのだ。
たぶん「世界各地で戦争の兆しはありますよ」というのをアピールしようという狙いがあったんだろうけど、まるで要らないわ。
そんなことをやらなくても、アメリカとソ連が冷戦状態にあったことは、公開当時の日本人なら大半が知っていたはずだ。それに、導入部で各地の様子を見せなくても、ソ連がバートを拉致するシーンや、その後の米ソの動きを描写すれば、それだけで充分に事足りるだろう。

他にも要らない描写は幾つもあって、例えばアルバトロス号がレーザー戦闘衛星を回収し、基地へ帰還するまでの行程を丁寧に描写する必要なんて全く無い。ギブスンがゲインに電話を掛けるシーンの後、カットを切り替えたら既に三雲が地球へ戻ってゲインと話しているという流れにしても、何の問題も無い。
ディスコで三雲がモイラという女性に逆ナンパされるシーンも、まるで意味が無い。そのモイラが、以降の展開にも絡んでくる主要キャストなのかというと、その場だけの出番なんだし。
それにしては「三雲がモスクワ五輪の柔道優勝候補だったことを知っており、自信もハードル王者だったがボイコットで出られなかった」という、まるで主要キャストであるかのような設定を持っているので、無駄に存在感を示している。
モイラを使うことで「三雲とローラが言い争いになる」というシーンを作っているけど、別に彼女がいなくても同じような展開は作れるし。そもそも、別に言い争いなんて無くても特に支障は無いし。

それ以外の部分でも、余計な情報が多い。
この映画、主要や人物や場所、戦闘機や潜水艦などが登場すると、その度にスーパーインポーズで名前が表記される。
それは、ある程度ならば「親切設計」という風に受け入れられる。スーパーインポーズを全て無くしてしまったら、たぶん物語や登場人物を把握するのが相当に難しくなっただろう。
しかし、そのキャラや場所紹介が行き過ぎていて、「そこまでフォローする必要は無いんじゃないか」という部分にまでスーパーインポーズを入れるのである。

例えば、ギブスンが核魚雷の使用を迫られた後、カットが切り替わると「ミッドウェイ島 海軍航空基地」と表示され、そこから軍用機が飛び立って核魚雷を投下する様子が描写される。
しかし、核魚雷を投下する軍用機が、どこの基地から飛び立ったかなんて、どうでもいい情報だ。
スーパーインポーズが入ると、「そいつは重要人物なんだな」「ここは意味のある場所なんだな」という風に受け取ってしまいがちだ。しかし本作品の場合、まるで重要ではない人物や場所にまで、事細かにスーパーインポーズを入れている。
それは親切ではなくて、余計なお世話になっている。

前述したシーンなんかは、そもそも軍用機が核魚雷を投下するシーンさえ要らないのだ。
そこは、ギブスンが核魚雷の使用を迫られた後、「原潜の乗員が核魚雷の投下に気付き、撃沈される」という様子を描けば、それで充分だろう。
それ以降も、とにかく無駄に細かく登場人物の動きが描写されている。「もしも世界戦争が勃発したら」というシミュレーションの意図があったのかもしれないけど、あまりにも描写を盛り込み過ぎだ。
そのせいで、やたらと話がゴチャゴチャしている。

ローラの動かし方が、どうにもギクシャクしている。彼女は登場した直後、兄の「ここまで来たんだ、後は気楽に行こう。後は神様にお任せするさ」という言葉に「平和の神様?それとも戦争の?」と問い掛けている。レーザー攻撃衛星の開発に、反対しているような口ぶりである。
ところが実験が成功すると何の迷いも無く大喜びしており、地球へ帰還した時もバートにお祝いの言葉を掛ける。
しかし、その後のシーンでは、「今度のテストで戦争が早まるんじゃないかしら?クレムリンを刺激したかも」などと言い出す。
レーザー戦闘衛星の開発に賛成なのか反対なのか、どっちなのかと。

三雲がローラにプロポーズしてOKを貰うシーンは、あまりにも唐突に感じる。
ディスコのシーンでモイラと仲良くしている三雲にローラが責めるような言葉を掛けるシーンがあって、それは「嫉妬心から来る発言」と捉えることが出来る。
しかし、ローラの三雲に対する恋心が表現されるのは、その1シーンだけ。三雲に至っては、ローラに対する気持ちを表現するシーンなど1つも用意されていない。
そういう状況の中でプロポーズが行われるのだから、そりゃあ唐突に感じるのも当然だろう。

そもそも、この2人の恋愛劇そのものが、まるで要らない要素になっている。
っていうか、三雲とローラというキャラクターからして、まるで必要性が無い。なぜなら、世界戦争が勃発する中で、2人とも完全に存在意義を失ってしまうからだ。
特に難しいのは、アメリカとソ連の対立で世界戦争が起きると、日本という国が出来ることは、ほとんど無いという現実だ。
だから、そもそも日本人のキャラクターを、そういう構図の中で主人公に据えること自体に無理があるのだ。

三雲を「レーザー攻撃衛星の計画に参加している科学者」という強引な設定にすることで、序盤は物語の中心に位置している。
しかし戦争が勃発すると、民間の科学者である三雲に出来ることなど何も無い。全ては政府と軍部のトップにいる連中によって動いて行くのだ。
だから話が進む中で、三雲の出番はすっかり減ってしまう。もちろんローラも同様だ。
後半に入り、レーザー攻撃衛星を宇宙へ打ち上げるシーンになって、ようやく三雲は役目を与えられる。
しかし、それを担当するのは三雲だけでなく他の隊員もいるし、もっと言っちゃえば誰が担当しても構わないような役回りだ。三雲の存在意義なんて、何も無い。

一方のローラには「戦火の中で犠牲者を目にして悲しむ」という役割が与えられており、こちらの方が三雲に比べれば使い道は考えられる。と言うのも、前述したように物語は政府と軍部の人間が中心となって進められるが、犠牲となるのは大半が民間人であり、「民間人の目から見た世界戦争」というのをローラを通じて描くことが出来るからだ。
しかし、そこの描写は薄っぺらく、取って付けたようなモノでしかないので、やはりローラの存在意義も皆無に等しい。
そのままだとメインの2人がカヤの外に置かれたまま話が終わりかねないので、終盤に入って三雲には「キラー衛星の攻撃で酸素吸入装置が故障する中、レーザー衛星へ乗り移って操縦する」という重要な役割を与える。で、なぜかバンデンバーグ空軍基地に来ていたローラがモニターを通じてその様子を目撃し、「命懸けでICBMを撃ち落とそうとする三雲を救うために宇宙へ飛ばしてもらう」という役割を担当する。
でも、ホントならロケットの準備には時間が掛かるわけで、「飛ばしてくれ」と言われた直後に飛び立ち、すぐに三雲の元まで到着してしまうってのはメチャクチャだろ。

終盤、厚い信仰心を持っているらしき集団が砂漠で「悪魔は滅びろ、地球に平和を」と唱えながら行進を開始し、ローマ法王らしき人物が 「人はなぜ、悪魔の使いになって殺め合うのでしょう」などと説き、どうやら世界中の兵士たちにその声が聞こえているらしき描写が入る。
そして世界各地の兵士たちが武装を放棄し、「悪魔は滅びろ、地球に平和を」と唱えながらデモ行進を開始する。
ってことは、法王の言葉で兵士たちが戦いを放棄したってことなのか。
だったら最初からローマ法王が呼び掛けていれば多くの犠牲者が出ずに済んだんじゃないかと思う。

それにしても、あそこまで戦争が大規模に拡大する中で、どうやって物語を着地させるのかと思いきや、「ローマ法王の説法で全ての兵士が戦争を放棄する」という方法を選ぶってのは、ものすごく安直で陳腐な解決法だ。
ただ、どうやら前述した大規模な反対運動が大きく影響し、当初はバリバリに右傾化していた内容をハト派に改変したらしい。
だから、ローマ法王の説法で兵士たちが武装を放棄するという展開も、たぶん反対運動に負けて内容を改変した結果なんだろう。
それにしてもヌルいよなあ。

(観賞日:2015年1月19日)

 

*ポンコツ映画愛護協会