『バックダンサーズ!』:2006、日本
2010年冬、使われていない屋外駐車場を利用した「ムーンダンスクラブ」では、大勢の若きダンサーたちが練習をしている。ある女子グループの中から、「こんな所じゃ誰も見てないじゃん」「人に見てもらわなきゃ上手くならない」「私たちって、ものすごく意味ないことしてるのかな」という愚痴や不安がこぼれる。すると、メンバーの一人が「大丈夫だよ、ミウとよしかだって、ここで踊ってたんだから。それで何千人というお客さんを集めてライブしたんだよ」と口にした。
2002年秋。高校生のミウとよしかが馴染みのクラブで踊っていると、渋谷北警察の警官隊がやって来た。18歳未満の立ち入りは禁止なので、その調査に。ミウとよしかは裏口から逃げ出そうとするが、見つかって補導された。さらに仲間たちの飲酒喫煙がバレたことから、2人は高校を退学になった。ある夜、2人がクラブの近くで佇んでいると、制服のままクラブに入ろうとして追い払われ、悪態をつくジュリという少女がいた。2人はジュリから、「一緒に踊りに行こうよ」と誘われた。
ミウとよしかがジュリに案内されたのは、使われていない駐車場だった。そこでは大勢の若者たちが踊っており、ジュリは2人をDJケンに紹介した。その日以来、ミウ、よしか、ジュリの3人は一緒に踊るようになった。やがて駐車場はムーンダンスクラブと呼ばれるようになり、月日は流れ、BOOTYレコードのチーフマネージャーの高橋修がジュリのスカウトにやって来た。ジュリはブリブリのアイドルとしてデビューするが、全く売れなかった。
ある日、ミウとよしかは高橋から会社に呼ばれ、ともえ、愛子という2人と会った。4人は小西部長から、いきなり「今日から君たち、ユニットだから。ジュリのバックで踊って」と言われる。小西は4人に、適当なノリでバックダンサーズというユニット名を付けた。ジュリと4人は「長部ジュリwithバックダンサーズ」という大型新人アーティストとして売り出され、会社の稼ぎ頭になるほどの人気を得るようになった。ミウは両親に連絡先も教えず、家を飛び出した。
ミウがライブ会場へ行くと、ジュリはマネージャーの美浜礼子に「引退して結婚する。今日のライブで最後だから」と言っている。彼女が結婚を口にするのは3度目なので、ミウたちは今回も本気じゃないだろうと考えていた。だが、ジュリはライブの最中に引退を宣言する。一方、時代遅れの売れないロックバンド、スチールクレイジーに付いていた新米マネージャーの茶野明は、呼び出しを受けて会社に戻った。彼は小西に「明日から、長部ジュリwithバックダンサーズをスチールクレイジーと掛け持ちで担当し」と言われる。浮かれる茶野だが、ジュリが引退したことを後から知ってショックを受けた。
茶野はバックダンサーズを連れて、予定に入っていたサマンサ・タバサのパーティーに赴いた。茶野はサマンサ・タバサの滝川部長たちに挨拶し、ミウたちにダンスの準備をさせる。しかしミウたちは泥酔してステージに上がり、その様子はゴシップ記事として週刊誌に掲載された。しかし小西は茶野や高橋たちに「大目に見てやろう。ジュリを戻すための手段だ」と告げる。彼は、ジュリが男に飽きて必ず芸能界へ戻って来ると確信していた。
ミウたちがクラブへ繰り出すと、そこに会社の後輩である如月真由と仲間たちが現れた。真由たちは露骨に嫌味っぽい態度を取り、さらに「如月真由とスーパータイガース」としてデビューが決まったことを高慢な態度で明かす。会社に戻ったミウたちは、茶野に明日からのスケジュールを尋ねる。ダンスレッスン以外は特に何も無いと言われ、愛子は「何でもいいからマネージャーだったら何とかしろよ」と詰め寄った。すると茶野は「分かりました。その代わり、絶対手に文句を言わないで下さいね」と言う。
茶野はスチールクレイジーの前座として、バックダンサーズをツアーに同行させることにした。スチールクレイジーは、ヴォーカルのジョージ、ドラムのロジャー、ギターのエース、ベースのトミーというオッサン4人組のバンドだ。ミウたちはケンをDJとして連れて来た。プロモーターの磯部元が用意した車で、バックダンサーズは最初のライブ場所であるホテルに到着した。しかし雪山でスキーを楽しんでエースが右手を骨折して全治2ヶ月の怪我を負ってしまった。。
スチールクレイジーが「どうするんだよ」と相談している横で、よしかはダンス練習を始めようとする。ケンは「なんか掛けて」と言われ掘り出し物として、22前にアルバム1枚だけを残して忽然と消えた鈴木丈太郎のレコードを掛ける。よしかは「私、この曲知ってる」と言い、踊り出した。すると、それに合わせてバンドが演奏を始める。会場にやって来た客は、ジョージ&よしかの歌、スチールクレイジーの演奏、バックダンサーズのダンスで大いに盛り上がった。その歌を作ったのはジョージだった。よしかはジョージから「なんであの曲、知ってるんだ」と問われ、「昔、ママが良く歌ってた」と答えた。
みんなで飲みに行こうと外に出た時、ともえは息子の翔太が来たので驚いた。翔太は「ここまで爺ちゃんに連れて来てもらった」と言う。ともえが「母ちゃん、東京で頑張って、翔太に金持ちの父ちゃん作ってやるからな」と告げると、翔太は「それより、サインくれ。俺の母ちゃんは東京でダンサーやってるって、みんなに自慢してえんだ」と口にした。母子の様子を、茶野だけが目撃した。彼はともえから「見なかったことにしろよ」と言われ、笑顔で「はい」とうなずいた。
ジョージはケンから「なんでああいう曲、やめちゃったんですか」と問われ、「あのアルバム、業界内じゃ話題になって、すぐに次のアルバムの製作が決まった。だけど曲を作ってレコーディングの直前にカミさんが出て行っちゃってよ」と説明する。ケンは唖然としつつ、「じゃあ未発表の曲があるんですよね。聴きたいっす」と持ち掛けるが、ジョージは「ダメだ、もう封印したんだ」と拒んだ。
ジョージがケンと話していると、よしかが来て「さっきみたいな曲、他に無いの。私、歌いたい」と言う。するとジョージは「歌うか」と軽く承諾した。ジョージは自分のトレーラーに戻り、ギターを演奏してよしかに歌わせる。よしかが誘惑するような態度を取るので、ジョージは明かりを消して彼女を抱こうとする。その時、よしかの携帯に母・なおみから電話が入った。その写真を見て驚愕したジョージは、慌てて「部屋に帰りなさい」と告げた。
ミウは茶野と2人きりになり、「ダンサーって先が見えないじゃん。バックダンサーに限らず、“あがり”が見えないっていうか、ゴールが無いっていうか」と言われる。ミウは「昔、ムーンダンスクラブで朝までよしかと踊りながら、いつか私たちだけで、ダンスだけで、お客さん一杯集めてライブやりたいなって話したことがあった。先が見えない話だけど」と語った。ミウは茶野に「そう思ってるなら、なんでダンスを続けてるの?」と訊かれ、少し考えてから、「カッコ良くなりたいから。それが“あがり”な気がするんだ」と答えた。2人は雪の上でキスを交わした。
会社に戻った茶野は、小西に「バックダンサーズ、もういいや。解散」と言われる。如月真由とスーパータイガースがデビュー早々から売れたため、ジュリの帰りを待つ必要が無いと会社は判断したのだ。バックダンサーズは如月真由とスーパータイガースのイベントで前座をやることになった。それは会社が用意した最後のステージだったが、茶野はミウたちに伝えられずにいた。
本番直前、バックダンサーズは磯部に「聞いたけど、今日で解散なんだって」と声を掛けられ、初めて事実を知る。ともえと愛子は互いを罵り、喧嘩を始めてしまう。ミウとよしかが止めに入るが、そのまま4人は客の前に出てしまう。ともえに罵られたよしかは、激しい口調で言い返す。前座の仕事はキャンセルされ、メンバーはバラバラになった。よしかは小西に呼ばれ、リハ中に真由と喧嘩したメンバーの代わりにスーパータイガースへ加入しないかと持ち掛けられる。
愛子はグラビアの仕事を持ち掛けられ、喜んで受ける。ともえは以前に働いていたキャバクラに復帰する。愛子は撮影現場に赴くが、そこで初めてヌードグラビアだと知らされる。ともえは客から「どうせ大した金貰ってなかったんだろ。ともえちゃんみたいな子はキャバクラが一番だよ」と軽く言われ、愛想笑いをしながらも息子の言葉を思い出して切なくなる。よしかが久しぶりにムーンダンスクラブへ行くと、練習している面々の中にミウの姿もあった。2人が話していると、ともえと愛子がやって来た。2人は「悔しい」と漏らし、4人は涙をこぼす。4人はケンに「私たちのためにトラック作って」と頼み、新人発掘のダンスコンテストに参加する…。監督は永山耕三、脚本は衛藤凛&永山耕三、製作は宇野康秀、エグゼクティブプロデューサーは河井信哉&星野有香&関一由&会田郁雄、Co.エグゼクティブプロデューサーは宮澤徹&石山信雄、プロデューサーは梅川治男&山崎雅史、製作エグゼクティブは依田巽、アソシエイトプロデューサーは武石宏登&東海林秀文、撮影は小倉和彦、美術は稲垣尚夫、照明は今井勝巳、録音・整音は横野一氏工、編集は宮島竜治、ダンス指導は松澤いずみ、振付はIZUMI&TERUYA&HIDEBOH&MITTAN&TETSUHARU&伊藤やす子&KEN(DA PUMP)、音楽はSin、音楽プロデューサーは永山耕三。
主題歌「いつか二人で」はhiro、Lyrics:Kozo Nagayama、Music:Sin、Arrangement:Sin。
出演はhiro、平山あや、ソニン、サエコ、陣内孝則、田中圭、木村佳乃、豊原功補、石野真子、長谷部優、北村有起哉、浅野和之、甲本雅裕、梶原善、橋本さとし、佐藤二朗、軽部真一、深澤里奈、田中要次、KEN(DA PUMP)、真木蔵人、鈴木一真、つのだ☆ひろ、三原康可、山中敦史、中村久美、樋渡真司、澁谷武尊、舞、小野春菜(現・「SCANDAL」のHARUNA)、立石沙千加、山田歩、中山伸子ら。
『東京ラブストーリー』や『ひとつ屋根の下』、『ロングバケーション』など、フジテレビの月9ドラマを中心に数々の人気ドラマを手掛けてきた永山耕三が初めて撮った劇場用映画。
よしかをhiro、ミウを平山あや、ともえをソニン、愛子をサエコ、ジョージを陣内孝則、茶野を田中圭、礼子を木村佳乃、滝川を豊原功補、なおみを石野真子、ジュリを長谷部優、ケンを北村有起哉、小西を浅野和之、高橋を甲本雅裕、磯部を梶原善が演じている。もう最初の10分ぐらいでダメな映画ってのが分かるような構成になっている。
まず冒頭で2010年冬から始まり、ミウたちが伝説になっていることが語られる。ここについては、この時点では、まだ完全に「ダメな導入部」というわけでもないが、結果的には「やはり導入部からしてダメだったな」と思わされることになる。
先に説明しちゃうと、ミウたちが「かつて伝説を作った面々」として描かれること自体が間違い。
そうじゃなくて、現在進行形で「今」を生きている若者たちとして描くべき。そして「明るい未来」を感じさせるラストで締め括ればいいでしょ。回想形式にしたことのメリットが全く見えないんだよな。
先に「何千人も集めたライブを開く」という成功が待っていることも明かしているし、当然、それがクライマックスになるってことも分かってしまう。序盤はミウのモノローグによって進行しているが、その展開が慌ただしい。
まだミウとよしかの充分なキャラ紹介を済ませているとは言い難い段階で、ジュリと知り合う。そして、すぐに「月日は流れて」と時間を飛ばしてしまう。
いやいや、そこを省略してしまうぐらいだったらさ、もう最初から「3人が仲良くムーンダンスクラブで踊る仲間」という設定で始めればいいじゃねえか。
クラブで踊っていたら捕まったとか、それで高校を退学になったとか、その辺り、わざわざ描く必要性ってあったのか。それこそ回想として処理してもいいし、セリフだけで軽く済ませてもいい。
3人がムーンダンスクラブで踊る仲間になるまでの経緯を描くことが、ミウたちのキャラ造形や物語の進行において重要な役割を果たしているわけでもないんだから、最初から「そこで踊っている3人」ということにして、ミウたちのキャラ紹介や周辺関係の描写に尺を使えばいいでしょ。
そっちをおざなりにして、なんで無意味でしかない「3人がムーンダンスクラブで踊るまでの経緯」をダイジェスト的に描かなきゃならんのか。しかも、そこから本格的に物語が動いて行くのかと思いきや、「ジュリだけがスカウトされてデビューするが全く売れなかった」というトコロを、これまたナレーションベースで処理してしまう。
で、全く売れないからミウとよしかがバックダンサーズになるというのも、これまたナレーションベースで慌ただしく処理される。
とにかくさ、ずっと「これまでの粗筋」を見せられている感じなのよ。
ともえと愛子のキャラ紹介も全くやらないから、ホントに「ただのバックダンサーズ」でしかない。茶野がバックダンサーズを担当することになり、高橋が書類を見せてミウたちのプロフィールを説明するというシーンが用意されている。だけど、それじゃあキャラ紹介として遅すぎるんだよ。
だったら、いっそのこと、「茶野が小西から、ジュリが引退した後のバックダンサーズの担当を指示される」というトコロから物語を始めればいい。
で、茶野を狂言回しにして、バックダンサーズを描けばいい。そこに来て、ともえはソロデビューまでの腰掛けとして考えていないとか、愛子はクビにならなくて良かったと安堵している程度だとか、2人ともダンスに熱いモノを持っているわけじゃないってことが分かるけど、それもタイミングとして遅すぎる。
こっちは、てっきり2人もミウ&よしかのように、ずっとダンスをやってきた連中なのかと誤解をしていたよ。
でも茶野が「残されたバックダンサーズの担当になる」というところから始めれば、2人とも「そういうキャラ」として登場することになるから、無駄な誤解も生まれない。それに、急にジュリが引退したことに対する4人のリアクションとか、ミウたちが不安になって会社に今後のことを尋ねるシーンとか、そういう手順を飛ばしているけど、それも茶野が「残されたバックダンサーズの担当になる」というトコロから始めれば、そもそも、そういう手順が不要になる。
何かに付けて、そうした方がいいと思えるんだよな。
あと、ミウのモノローグで物語が進行されていたのに、いつの間にか消えているのね。そりゃダメだろ。
途中から入れるのを忘れちゃったのか。ジュリが引退した後のイベントで、ともえと愛子はともかく、ミウとよしかまでダラダラしていて酒を飲みまくるってのは、どうなのよ。
お前ら、ダンサーとしての仕事に対して、何の意欲も持っていないのかと。
そもそも、バックダンサーズになった頃に、ミウとよしかはどういう気持ちで仕事に取り組んでいたのかも示されていないしなあ。
彼女たちのダンスに対する気持ち、ダンサーとしてプロデビューしたことに対する気持ち、人気を得たことに対する気持ち、しかしメインではなくバックダンサーであることに対する気持ち、そういうモノが全く描かれていないのよ。
で、ジュリのバックでデビューしたころの気持ちも描かれていなければ、ジュリが引退してどう気持ちが変化したのかということも描かれていない。
そもそも、変化なんて描けないよな。だって「ビフォー」の部分が無いんだから、どう変化したのかなんて描けるはずも無い。ミウたちが真由とスーパータイガースに挑発され、腹を立ててダンス対決を始めるシーンがあるが、そこは「ダンスバトルを描きたい」というのが先にあったんだろうけど、上手く組み込むことが出来ていない。
だって、ミウとよしかはともかく、ともえと愛子はそんなにダンスに対して情熱を持っているわけじゃないでしょ。
それなのに、なんでダンスバトルなのかと。
腹を立てたのなら、普通にケンカを吹っ掛ければいい。そっちの方が、よっぽどスムーズな流れだ。あとさ、「これまでスケジュールが一杯だったのに、ジュリが抜けてスッカスカになった」ということをもっと明確にアピールするために、スケジュール帳のアップのカットを入れるとか、そういうことをやっても良かったんじゃないの。
そこに限らず、この映画、細やかな気配り、丁寧な説明が全く無い。
「周囲にチヤホヤされて華やかな場所で活躍していたのに、ジュリの引退で一気に人気が無くなる」というところの落差の大きさも描けていない。
何から何まで、ものすごく粗い仕上がりになっている。
そりゃあもう、鬼ギャルが初めて挑戦したみじん切りよりも粗いよ。仕事が無くて、時代遅れのロックバンドの前座でツアーを回ることになったのに、ミウたちは特に不満を漏らすことも無く、スチクレに不快感を示すことも無く、楽しそうに雪合戦をして遊んでいる。
スチクレの面々も、そんな4人を前座に付けられて邪険にしたりすることはなく、仲良くやっている。
そうなると、「時代遅れのロックバンドのツアーに、今時の若い娘たちのダンサーを同行させる」という仕掛けの、物語としての意味は何なのかと。そんで最初のライブで、バックダンサーズとスチクレがセッションして、客は盛り上がっている。
スチクレと組んで客が盛り上がったのなら、それは小さいけれど「成功」でしょ。
だったら、それを茶野は会社にプッシュしろよ。そうすりゃ何か展望が開けるかもしれないじゃないか。
ホントはミウとよしかって、「ジュリだけがスカウトされて取り残される」「いきなりバックダンサーを命じられる」「ジュリが引退して取り残される」「仕事が無いのでロックバンドの前座にさせられる」という風に、苦渋や挫折の連続のはずなのに、そういうのが全く見えない。ミウたちは、ずっとお気楽ご気楽な感じだし、壁にぶつかって涙するとか、必死に頑張って苦難を乗り越えるとか、そういうのが全く無い。
「どん底まで突き落とされ、そこから這い上がる」というドラマは全く描けていない。
後輩である真由とスーパータイガースの前座をやらされても、それを屈辱だと思うことも無く、悔しさは全く見せない。
だからって、「今は前座だけど、いつか自分たちも」という這い上がることへの強い意欲を示すこともない。バックダンサーズが初めて「辛さ」とか「悲しみ」を感じるのは、解散してからだ。
「解散して初めて、ダンスに対する自分の気持ちに気付く」という展開にしたいのは良く分かるし、そこだけを取ってみれば、物語として間違っているわけじゃない。
ただ、そこまでの流れに問題があるから、「解散してから云々」という展開になっても、そこが上手く機能しない。
そこまでの出来事を考えると、「ジュリの引退でバックダンサーズだけが残されて辛い状況に追い込まれるが、頑張ってドサ回りをこなし、そこから這い上がる」という展開にすべきじゃないのかと。「解散」を「どん底」として設定しているのなら、バックダンサーズだけ取り残されるとか、ロックバンドの前座でドサ回りに出るとか、そういう「辛い境遇」っぽい状況設定に追いやるべきじゃないよ。
後半に入るまではジュリを引退させず、そのバックダンサーズとして活動する形にすればいい。
で、メンバーが不仲になるとか、誰かがダンスへの意欲を失うとか、そういう類の危機を盛り込んでドラマを構築していけばいい。
あと、愛子は「悔しい」と言ってるけど、それはグラビアでヌードを要求されたことへの悔しさであって、ダンサーとしての悔しさじゃないでしょ。そこは、なんかズレてると思うぞ。4人がコンテストに参加するんだから、そこで優勝するのがクライマックスかと思ったら、そうじゃない。
まあ冒頭でクライマックスが何なのかは明かされているけどさ、構成としては、「コンテストに向けて練習を積み、陰口を叩かれたりもするけどダンスを披露したら周囲も実力を認め、そして優勝する」ってトコロで着地しておけばいいんじゃないの。
でも、そこで終わらず、話を続けるのね。で、ミウはコンテスト会場で茶野を見つけて「私たち、このままじゃ悔しいの。何とかしてよ。最後まで面倒見るって言ったよね」と口にするけど、他力本願なのかよ。
そこはさ、頑張っている彼女たちの姿を目にした茶野が、自発的行動を開始するという形にしておけばいいじゃん。なんでミウが頼むという形にしちゃうかな。
っていうかさ、そこから茶野が奔走する形になってしまうんだけど、ミウたちが主役のイベントなんだから、彼女たちが企画やスポンサー集めなどに走り回って、それを茶野がサポートするという流れにすべきなんじゃないの。
なんで「茶野がイベントを企画し、実現のために奔走する」という展開になっちゃうのよ。茶野が頑張っている間、ミウたちは何もしてねえじゃん。ダンスの特訓を積んだり、斬新な振り付けを考えたりという「ダンサーとしての努力」が描かれるわけでもない。
っていうか、この映画、ミウたちがダンサーとして成長するとか、壁にぶつかるとか、壁を乗り越えるとか、そういうシーンって全く無いよな。
茶野がイベントを企画すると、滝川は簡単にスポンサーになってくれるし、レコード会社にはバックダンサースへの問い合わせが殺到する。会場には大勢の客が押し寄せる。
なぜバックダンサーズのライブに大勢の客が集まるのかは、サッパリ分からない。劇中、そこに説得力を持たせるための描写は何も用意されていない。
最後までグダグダだ。(観賞日:2012年7月16日)